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冬に奏でる白き音色

/冬に奏でる白き音色

こんにちは。赤いツバメ ?
最高だった奏でる楽しさの2話目です。



今日は朝からずっと走ってきた俺だが再び急いで玄関を通り過ぎ、階段を駆け上がっていく。
ふと窓の外に目をやるとチラチラと雪が降っている。ということは今日は今年度の初雪だ。

《ガチャッ》
部室(音楽室)のドアを開けて入ってみれば殆どの部員が揃っていて、皆の視線が一気に俺に集まる・・・。
予想通りの不快な一瞬だ。別にそんなこっち向くほど反応するなよ、静まり返ってたわけじゃないんだしさ。
とは思ってもそんなものなんだと分かっている。

「あ、おはよーローゼ♪雪だよ雪~。」
「おーす・・・。」
ロートは朝っぱらからテンション高いみたいだな、初雪がそんなに嬉しいか?
このポニマグが・・・。(ポニーテールマグマラシ)
俺はもう気分最低だよ・・・。そういえばロートはちゃんとユウトとは仲直りしたのかな・・・。
学校ではいつもこの調子のロートだから彼女の心境とか分からないんだよな・・・俺がただ単に鈍いのかな。
「暑くないその格好?」
「暑いです。走ってきたからね。よいしょっと・・・」
カバンとマフラーを学年ごとに決めてある荷物置き場に置いて、自分のパートの場所に座った。ロートも俺の後についてきて隣に座った。
音楽室の秒針がない時計を見るとこんな時間か。そろそろミーティング始まるかな。人数確認っと・・・あら春美がいない。
内心ホッとしたかも。「何を言う!」と思う人いると思うけど、今日の俺はできれば誰にも会いたくないと思っていたのですよホント。
しかも春美見たいな超元気すぎる奴は、今日の俺に対してどう反応するか恐ろしいくらいだよ。
「なぁロート、春美は?」
「家の用事。」
「そか。」
「・・・・・・ねぇ。」
「何だ?」
「この匂い、ローゼかなかな?」
・・・・・・あぅ!。やっぱり分かるよなー。もう・・・嫌だ嫌だ。
ロートは不思議に思うような表情で首を傾げている。
「・・・・・・分けありさ。」
『えー全員静かに~!ミーティング始めま~す。PL(パートリーダー)出席確認。はい確認したら集まって。』

はいはい、なるべく後ろの方に集まらないとな、一人欠席ね・・・出席用紙に春美春美っと。そしてササっと素早く戻らないと・・・。
ちっ・・・どうしてこんなめに合わなければいけないんだよ。思い返すのも嫌になってくる・・・。
『えー、そろそろ大会の自由曲を決めるのでー、一応全員に三曲ある候補を試聴してもらうので希望の曲を挙げて下さい。』

あ、そいえばそうだったな。別に俺はどんな曲でも良いので。まぁここは気に入った曲を挙げれば良いのね。
早速部長がCDをかけ始めて曲が始まったよ。
『最初の曲は[微笑みの国―セレクション]でーす。』
セレクション?セレクションってどういう意味だっけ??
「なぁロート・・・」
「し~~!」
ロートが迷惑そうに人差し指を立てて口に添えていた。まるで「曲が始まったんだからしっかり聴いててよ。」
とでも言いたそうな表情で・・・。
「・・・なんでぃ。」



ふぅ、やっと三曲終わったか。
最後の曲がいくらなんでも長すぎたから脚が痺れましたよ脚が。
ん~と、どの曲が良かったかな?やっぱり三曲目は長すぎでしょ。一曲目はフレーズごとのイメージの変わりようが激しかったな。
二曲目はマーチっぽかったね、マーチよりは静かな曲をやりたいんだけどな・・・。
「なぁロート・・・って、あらいない?・・・あ、キィのところにいる・・・。」

殆どの部員が一斉にどの曲にするか友達とザワザワと相談し始めた。
「ローゼはどの曲にするんスか?」
振り返ればホルンパートにいる幼馴染のブイゼルがやってきた。昨日休んだ奴だよ。
「ファルか、俺は最初の曲でいいよ。」
「でいいよ?何だそれ。」
「別にどんな曲でもかまわないってこと。大体俺一人くらいが悩んだって 
 そんなに影響ないだろ?てきとーさ。てきとー。」
俺の言葉にファルの顔が呆れたとでも言いたそうな表情になった。
「てきとーか。音楽なら何でもできるローゼなんだもんな、音楽の好き嫌いは無さそうだし、そりゃてきとーでもいいよな。ウン。」
「まてまて音楽の好き嫌いって何だ?」
「・・・ハーイ何でも無いです。」

《ガチャ・・・》
全員の視点が音のした方に集まる。遅刻者はー・・・シンヤ?あれ?シンヤって・・・あら居なかったっけ?
シンヤは今俺が話しているファルのパートナー。ちなみに同じクラスのクラパート。
あららシンヤさん黒縁のメガネのレンズがが真っ白になっていますよ真っ白に。
「ふぃー外寒い」
これがシンヤさんの初の発言となるわけか・・・可愛そうに。
そして次にはすでに皆の視線がまたシンヤの方向から一斉に散っていた。
「ところでファル、シンヤ何故遅れたし。」
「さあ?」
「いや・・・さあじゃなくて・・・。」
「今日は会ってないから何故遅れたとか分からないって。寝坊じゃないの?」
「まぁ・・・、そんな事だとは思うけど・・・」
これは、自由曲無効投票一票!・・・となるのかな?そういえばハルミとか休みの人はどうするんだろう?

『はーいじゃあ、今日はいつもの通りに個人・パートで練習して下さい。
 それから各PLはパートの自由曲希望を集計してこの後ここ集まって下さい。解散。』
あ、待てよ・・・シンヤが途方にくれてますぜ。ま、いっか。
さてと・・・まだキィのところに居たか。
「ロート!希望曲は?」
「最初の曲~。あとカナちゃんもね~。」
はいはいっと。じゃあ俺もそうしますかな。考えてみればその曲結構気に入ったし・・・。

俺はちゃちゃっと集計を部長に伝えてと。楽器を持って2-3の教室へと。
それにしてもどうしようこの匂い・・・。まったくカズめ、しばらく口聞いてやんないぞ・・・。
ロートには訳アリとしか伝えてないし、いちいちめんどくさいなぁ。
できれば今日はずっと一人で練習していたいけど、昨日ロートとパート練習するなんて話してたっけ。
あれ、誰もまだ来てないのか・・・そうだ、今のうち早く準備して一人で練習しようか。
ふと窓の外を眺めれば雪の降る量も多くなってきたのが分かる。これは早くも積もりそうだ。
初雪・・・か。そういえば去年の初雪の日は・・・。
いや、早く音出しを始めようか。


個人で自分の音を良く聴きながら練習したい奴は大抵、しばらく教室の廊下で練習する。
特に俺がいつも使っている場所は廊下の隅っこだから、なおさら暫くは一人になれるかな。
先程組み立て終わったばかりのフルートを置き目の前の窓を開ける。
ここからの景色は・・・校舎の中庭を囲むようになっている。
少し遠くに真正面に音楽室が見える場所だ。誰か見えるが誰かは分からない程度の距離といったところ。
景色を右にずらせばここの棟につながる廊下がある。丁度・・・そこにはトロンボーンパートの五人が仲良くフルートパートの隣の教室に
向かっているところであった。
その中にはカズもいた。無口ながらパート内の雰囲気にとけ込んでる事が見ただけで分かった。
「・・・・・・ちっ・・・さてと、音出し音出し。」
昨日の事を思い出し、カズの姿から目を逸らした。

俺はロングトーンという音を安定した音を綺麗に伸ばす練習から音出しを始めた。
その音は中庭に響き返ってくる。だからロングトーンには最適の環境なのだ。
しばらくは一人でいたい気分。・・・しばらくは。

今年度の初雪の音色は・・・妙に雪とともに甘い香りがした。


その頃、

「お願いしマース。」
部活で使う教室に入る際に挨拶をすることはどこの中学でも基本なこと。
「お願いします。」「お願いしまーす。」
ロート、そしてカナとルルが教室に入り楽器を組み立てようと持ってきたファイルや楽器ケースを教室の端に置く。
そこにはローゼの持ってきた荷物と楽器ケース、そしてパート内で使うメトロノームがあるのをロートが見つけた。
「あれれ、ローゼもう何処かで練習してるのかな?」
「え、もうですか?いつもはパートの中では一番遅いのに・・・。」
「みたいだね。まぁいいや、今日の日程は午前中にパート練。午後からいつも通り基礎合奏だって。
 何時にパート練するかはローゼが戻ってきてからきめまーす。」
『は~い。』
1年生二人の返事が重なる。細かく言えば一匹と一人だが。

しばらくフルートパートは個人練習のようだ。その他のパートも個人練習に入っているみたいで廊下に出る部員がいつもより多くなっていった。
ローゼのいる廊下では、クラリネット、サックスのパートがよく使う場所だ。勿論場所は決まっていないがローゼは自分のパートの教室から離れた場所を
よく使っていた。それがここ、教室の廊下の隅っこという訳。
ローゼの近くに誰か来た、クラの・・・ヴィーゼだ。

「(・・・ヴィーゼ!?何でヴィーゼなんだ?)」
ヴィーゼとは少々予想外だったため俺は内心少し戸惑いながら何気なくヴィーゼとは反対方向を向いた・・・。
――――♪――――♪
今日は一段とロングトーンの調子が良い。それは音程がまったく揺れたりしないということだ。
――――♪
「ねぇ、」
――ピヒャッ!!
いきなり後方から肩に何かを感じ意識が飛びそうになった。そのおかげで出させられたとんでもない音にも驚く羽目に・・・。
「な、・・・何すんだよ!ヴィーゼェ。」
「何って?ただ肩に手を当てただけだけど?」
平然とした表情で答えられた。こっちはびっくりしすぎてハート(心臓)が破裂しそうだったのにも関わらず・・・。
「で、何用なの・・・?ふぅ。」
少しばかりその何事もなかったかのような表情にはムッっと来たがまあこれくらいは心に秘めといて・・・。
「大げさねぇ。そういえばアンタに気になる事があるんだけど・・・今日のニュース見た?」
「はい?ニュース?」
これまたいきなり何を言い出すのか・・・。
「・・・いや、あのね。あんたに言う事でもないのかもしれないけど・・・。
 そのニュース隣町の事なんだけど、昨夜の大雪の中で一匹のある野生だと思われるグレイシアが出没してたんだって。」
一応話は聞いてあげることにした。どうせ今は基礎練習の音出しの最中なんだし。
「ふうん?野生の奴らが?珍しい事も起こるもんだな。」
こういう事などの防止のために、街の周りは野生のポケモンが近づかないように仕掛けがしてある。
別に見た感じそんな脅威になるもの何て無いと思うんだよね。人間と生活している俺たちには何の意味が無い仕掛けらしいけど。

「ううん、それでそのグレイシアがその街を酷く荒らし回ったそうだから警察が出たらしいのよ。
 そのグレイシア、相当素早しっこくて逃がしてしまったからニュースに出たの。そしたらそのグレイシアの特徴が出て私ビックリしてさ。
 それが両眼の色が通常色とは違かったんだってさ!」

「え?眼が?」
一瞬耳を疑った。両眼の色が通常色とは違う??何を言ってるんだヴィーゼは。
眼の色が違う奴なんて・・・。
「そう、そういえばローゼも眼の色違うよね~って思ってニュース見てたんだ。」
「ほ、本当かよ?じゃあそのグレイシア何色だって言うんだよ。」
「え~っと、確か水色と真っ赤な赤って言ってたかな。ローゼとは少し違うね。」
「言ってただって?そのグレイシアの姿はニュースに出なかったのか?」
「出てなかったわよ。真夜中だったらしいし。」

何なんだろう、・・・その話聞いたら何故か少し怖くなってきたかも。
いや、俺と同じ眼の色が違うだって?そんな奴聞いた事ないぞ。・・・この眼の色は医者には原因不明って言われたくらいだし。
問題ないだろうと言われて、それ以来は気にしなくなったけど。
俺と同じような奴がいる・・・。
「じゃあ何のためにそのグレイシアは街を荒らしてたんだよ。」
「さあ、そこまでは分からないよ。・・・・・・あ」
何処かへ行くのかと思いきや何かを思い出したのか?
「ん?どうした?」
「ただね、人探ししてたみたいだったらしいけど・・・それくらいしか分からないって。今は指名手配されてるよこの街でも。
 まったく・・・野生のポケモンの扱いって可愛そうよね。指名手配だなんてさ・・・。私、今日はそこで練習するからね。」
「お、おう。」

両眼の色が違うって?街を荒らして指名手配だって?何かいい気がしないな・・・。
まあ俺には関係ないことだしね。さてと、その事は気になるけど俺も練習再開しないとな。
「あとさぁ、ローゼェ。もう一つ気になる事があるんだけど!」
「ん、何だ?」
「その匂い、何?」
「きゅ///・・・ほっとけ!」
もうその後は練習で恥ずかしさを消すしかなかった。
その感情はもろにフルートの音色に出ていた。下手をすれば隣で練習を始めたヴィーゼに気付かれる程その音色は揺れていた。
(落ち着けよ・・・何やってんだ俺。)
今日は本当に誰かさんが恨めしい・・・猫又の恨みは怖い(らしい)ぞぉ。

ロングトーンを10分、いや15分くらいしたかな?。そしてリップスラー、タンギング練習。そして長調単調の音階ロングトーンに戻ってくる。
この練習内容で大体30分は経つ。
どんなパートでも、最低ロングトーンあたりは終わらせていないと曲の練習をしたって確実に上手くはいかない。
スポーツで言うと準備運動をしないでいきなり試合に望むようなものだ。それと同じようにある程度は口を慣らしておかなければならないのだ。
特にフルートパートは基礎練習に時間を掛けるようにという事は代々伝わってきた心得だ。
まぁ今は課題曲をゆっくり練習する時間もなさそうだし、基礎合奏で使うこれまた基礎的な曲でもやって・・・。
(それからパートに戻るか・・・。)

あまりパートに戻る事に気乗りしない。少しばかり窓からに首を出して黄昏ていると向こうのほうでトランペットの音色が聞こえてきた。
確かトランペットのパートは音楽室の隣の第一理科室だったかを使っているんだっけか・・・。
しばらく何も考えずにボサっと聞いているとトランペットが基礎練習曲をやり始めた。多重音声、きっとパート練習を始めたに違いない。
トランペットの音色は他の楽器よりも小柄な楽器の癖にやたらと大きな音が出る。多くの曲のメインになりやすい楽器ともいえるだろう。
それに、トランペット一つで成り立つ曲も数多く存在し、別に身近なものである。
・・・例えば・・・。『天空の城ラピ○タ』に出てくるの人間の男の子の『パ○ー』が吹いていた曲が誰もが知っている曲かな?
まあ、そりゃあ知らない人もいると思うけど・・・。

さて、あまりサボりすぎてもまたせっかく慣らした口が、また基礎練習からやらないといけない羽目になる。
練習曲に取り掛かろうか・・・。
気が付けば隣にいたヴィーゼがいなくなっている。ファイルとか荷物までなくなっているからパートに戻ったのかな?
俺もなるべく手短に練習曲を終えるとしますか。ヴィーゼもパート練習をしに戻ったのかもしれないし・・・。
・・・~~♪♪
そう思った次には予想的中なんだなー。クラリネットの重なった長く伸びる音色が聴こえてくる。一方窓の外からはトランペットの基礎曲練習・・・。
俺達もしないわけにはいかないんだよな。

そう思いながらもローゼはたった一人、基礎練習曲を通して吹いている・・・。
そう焦る程の事ではないが良い気持ちではなかった。もっとも今日は一人にしてほしいと思う自分もいれば
普通に一人で練習したいと思っている自分もいる。
「ローゼローゼ。」
ん、誰か俺を呼んでる。声のした元を振り向いてみるとぐっしょり汗をかいたユニホーム姿の小柄なワンリキーが立っていた。
「ロハンじゃないか。中練の休憩か?」
「おう、雪が降ったから今日から体育館なんだ。」
こいつは野球部のロハン。こいつのイメージ通りの部活でしょ?
というと俺は何?スポーツができないみたいな感じになるの?俺だけは外見では判断しないで欲しいね。ちゃんとした牡ですよ。
おっと少し話がずれたか・・・。
「何故ここまで来たし・・・。」
「昨日教室に忘れ物した。だから取りに来たんだ。そうだローゼ、午後から暇か?」
真後ろの2-1の教室に入りながらロハンは俺にそう訊いてくる。
「れんしゅー・・・。」
「そか。吹奏楽も大変だな。午後から俺の家に皆遊びに来るけど・・・頑張れよっと、じゃあな。」
「うーい。」

ずれたって言ったさっきの話だけど・・・俺はエーフィだからなのか知らないけど、初対面の奴にはよく牝だと間違われるんだよな・・・。
特に一番この事で苦い思いをしたのが入学してからの4月時期。
ここの学校はポケモンには制服指定がなく、殆どのポケモンが私服である。そんなわけでて何回牝仔に見間違われたことか・・・。
今となっては学校内でそんな事はないのだが。でもなぁ俺ってそんなに見た目牝っぽいかな?自分でそう思った事ないけどね。
あっそうだ、来年度の新一年生に聞いてみようかなw

・・・さて、練習再開。
(「その匂い、何?」)
くそ、ヴィーゼの言葉が蘇ってきやがった・・・。
集中、集中と。



「遅いよローゼ・・・。」
教室の戸を開けて最初に掛けられた言葉がこれふぁ。まあ想定内だけど。
確かに遅かったかも、一人で一時間少しは練習してたから・・・。
「・・・じゃあパート練する?」
「そう、ローゼを待ってたのよ?早くしようよ。」
やっぱり俺を待っていたのか・・・。じゃあやりましょうかね。
「パート練、基礎からやる?」
「もう基礎は皆終わってるし曲の練習しようよ、ほら課題曲さ。」
「そうだな。えーじゃあブライアンの休日?休日でいいのかな?ブライアンやりまーす・・・って言っても皆できないか・・・。」
そういえば昨日配られたばかりなんだっけか。あ、そうだそうだ。ファイルファイルと。
問題は何よりCDなんですよハイ。
今、家にはコピー用のディスクがないのですよ。カズが使いすぎて・・・。
カナに頼めるかな?やってくれるかな?
「えーと、フルートを最初に回す課題曲のCDなんだけど・・・カナ人数分コピーしてこれる?俺っち丁度ディスク切らしてて・・・。」
「私が?・・・5人分だっけ?」
ロートにはコピーとかそういうの頼めなさそうだし・・・。カナかなこういうのは。
「頼めればいいんだけど。ぉK?」
「全然いいよ。じゃあ今日コピーしておくね。」
カナはそういって俺から受け取ったCDをカバンのに入れた。頼れる1年生だ~良かったヨカッタ。
あ、今の会話で少し違和感があったかと思うかな・・・え?何故一年生が2年生にタメ口かって?
いや、そうそれなんだけど・・・。こういうものなんですよポケモンと人間の関係は。
大人になって社会に出てからは、そりゃあ身分によってだけど・・・。
学生のポケモンと学生の人間という関係までは、人間の方がポケモンより何かと色々優先的にされがちなのですよ。
そこのところはここの学校も平等にどーだこーだ言ってるけど。結局はこんな一面もあるのですよ。
要するに学校では先輩の立場のポケモンと後輩の立場の関係、先輩後輩とかの意識が薄くなってるって訳。つまり後輩からは友達みたいな態度とられてる訳。
でも・・・別に気にするほどの事じゃないんだけどね、逆に堅苦しくなくていいかな?みたいな?
「えー。昨日ちょっと楽譜調べてスコアに最低限注意する箇所を何箇所か書いておいたから暇な時間にでも自分の楽譜にメモッといて。」
「早速かーして♪」
《シュッ!》
ロートにスコア取られた・・・。
わっ・・・ちょ、右前脚の毛が切れた!毛、何本かすり切ったよ!?危ないなもー・・・。
 
実はロートは最近焦っていたのであった。ローゼに遅れを取らないように必死になって。
勿論自分の楽譜にも昨日の配られた段階で見落としやすい表現などをチェック軽くしていたのだが。
しっかりとローゼがスコアにより深くチェックしていたので、彼女は一本取られたとでも思っていそうな表情でスコアを熱心に眺めていた。
「えー、じゃあどうしようか。出だしだけやるか、最初の一行目だけやりまーす。」
《ハイ》
おっとメトロノーム回してないや。
「元のテンポが速すぎるから少し遅めでやります。」
そう言いながら俺は念力でメトロノームのネジを回す。本当は学校でポケモンは能力とか使っちゃいけないけど・・・バレなければいいんだ。バレなければ。
「4。・・・・・・」
・・・・♪~
「ハイハイハイ止まってトマッテ。・・・最初の音、誰かずれてるよ。もう一度。・・・4」
誰がズレているかは勿論分かってるが言わない。やり始めた曲はこんなものだ。
先程から俺が「4」と言っているのは曲を初める合図である。その僅かな合い間の後、全員で曲を奏でる。
「4」という数は4拍後に曲を始めるということだ。
もっと早いテンポだと、それだけ速いから6泊とか合間がもっと必要になるけど・・・テンポ120程度なら4泊で十分。
・・・・♪・・・♪・・・♪・・・♪♪~
最初の一行は大体こんな感じかな?でも・・・。
「えーと三連八分音符の後にある音、皆『スタッカート』(弾むように短く吹く表現)があまり付いていないから、そこを意識してください。」
《ハイ》
「皆、他に気付いた事とかあったら・・・。」
「その三連符には『スラー』(音と音とを滑らかにつなげて演奏)も付いているので、そこのスラーも意識したほうが良いと思いま~す。」
《ハイ》
(う~い)

まぁ、こんなな感じでパート練習はパート内で意見のやり取りを交わしながら練習していく。
自分では気付かないところがあったりするのでこういった意見のやり取りはとても大切なのだ。
PLなんて最初の頃は俺では荷が重過ぎるんじゃないかと思っていたが・・・最近は慣れてきて大分PLらしくなってきたと少しは自分でも思えるかな。
「・・・じゃあ最初から今言われたことを意識して2行目までやります。・・・4」
・・・・♪・・・♪・・・♪・・・♪♪~
まぁクラのPLほど苦労はしないけどね。彼女はホント俺と違ってPL一生懸命頑張ってるよな。
人数が8人いるもいる中で、しかもポケモンなのにPLだなんてね・・・あ、でも俺もポケモンなんだよな。
ヴィーゼはやっぱり実力だよ実力。ポケモンがPLになるなんて実力くらいしかありえないよな。うん。・・・あ、でも俺もそうなんだよな。
てことは俺もやっぱり実力か?
「今のやったところは一音一音ハッキリと出せるように。はい他に・・・次に行きます。
 えーそこから大分休みがあって~・・・20小節目からの八分音符ののところ。そこだけやります・・・2」
・・♪♪♪~
・・・実力ねぇ。多少その実力というものをを勉強に移動させられたらなー。ハッキリ言ってロートとかカズよりも成績は下回ってるんだよね。
ほ、ほら結構そんな奴いるでしょ?部活が凄くできるけど勉強があまりできない奴とか、勉強できるけど帰宅部とか・・・。
「スラーもmfの音量もいいけど『クレッシェンド』(徐々に音量を上げていく表現)が足りないと思うんで
 もう少し強調してもいいと思います。他に意見は・・・。じゃあ28小節目までまた休みなんで今と同じようにそこからやります・・・2」
・・♪♪♪~
別にそれほど勉強は酷くはないよ!?丁度平均・・・より少し下なのがあるかな。得意なのは結構上位の方だと思うけど。
その成績のバラツキさえ無くせばテストの合計とかでロートもカズもよゆーで超せるのになーっていう・・・ね。
おっ、次からメロディーラインだな。
「えー、今のような感じで前の20小節目もやってください。
 うーんと。次は36小節目からのメロディーラインやります。ここの二連八分音符の全ての一番目の音は『スタッカート』(短く弾むように表現)がつているので
 そこを意識して吹いてください。・・・4」
・・・・♪・♪♪・♪♪
「えーと。今のは・・・ん?」


「ちょっと失礼~、えー少しの時間だけPL会議するからローゼ・・・。」
部長が戸越しで手招きしてる。ちなみに言ってなかったけど部長はサックス担当。
「え?今から?」
「そう、あまり長引かないから。あ、やっぱフルートもパート練してたんだ・・・。」
「うーん。まあね。」
「音楽室で待ってて、まだ他のパートにも伝えないとだから。」
「うーい。」
いきなり中断かよ。エーどうしようかな。あとはロートに任せる?でも課題曲の最初のパート練習だし・・・。
俺がパート内の状況分かってないとダメなんだよなぁ。でもすぐ終わるって部長は言ったし。
「えー。じゃあPL会議に俺が戻ってくるまで皆は課題曲の練習しておいて、今やったところまでのところ・・・ってあれ」
『ルルちゃん20と28小節目の・・・』
早速ですかいしかも無視。まあ別に良いんだけどね。結構今でも時々思うんだけど
このパートって他のパートに比べるとまとまりあると思うんだよね。PLの俺がどうこうっていう事じゃなくて
仲が良いっていうか平和で面白いって言うか、・・・何か居心地が良いんだよね。
俺がPLを自分でも妙に思えるほど素直にPLを引き受けたのもこのパートだったからなのかな・・・なーんてね。
さて、ちょっくら用事済ましてきますか。えーと音楽室だっけ?

《ガラガラ》
普通に戸を開けるのは面倒なのでここでも念力を使う。いいじゃん別に先生とか見ていないんだからさ・・・。
先程から教室から外を見ていると雪の大きさと勢いが強くなってる気がしたから、廊下の窓越しで外を見てみる。
・・・もう積もり始めてるよ。そういえば去年も初雪でいきなり積もったんだっけ・・・その日は確か丁度クリスマス?
「ローゼ?」
「あぅ!!」
キ、キィ・・・か。ビックリしたぁ・・・。(本日二回目)
「どうしたの?」
「いや、気付いてなくてビックリしてさ・・・。で、キィは?パート練終わったの?」
キィはトランペットを抱えていた。廊下で練習するのかな?
「うん。丁度パート練終わったときにアキちゃんがPL集まりに呼ばれたからね。」
「そ、そうか・・・。」
少しの沈黙が流れる・・・そしてまだ心臓がドキドキしてる。先程の事は落ち着いたハズなのに。
「そういえばさローゼ・・・。」
『ローゼ、音楽室だよ音楽室。』
ヴィーゼ・・・か。
「あ、キィちゃん。廊下で練習?頑張ってね~、ほらローゼ行くよ。私たち以外集まってるらしいよ。」
「マジでか。じゃ、じゃあ頑張れよキィ・・・。」
「うん・・・。」


キィの周りには沈黙が再び辺りを包んだ。
そして窓を開け、寒い空気と冷たい雪を感じながら下を向いていた。
大きな雪の降る中でただ一粒、大きな水滴が落ちていった。
「ローゼ・・・。」

(え・・・私、また泣いてるの?
 ・・・・・・どうして?
 今になってローゼを思うことで泣いちゃってるの?・・・嗚呼これでまたローゼに伝え辛く・・・)

彼女はローゼに対する想いが深くなれば深くなるほど、自分からその感情を本人の前で出そうとしなくなるのだ。
その上ローゼもローゼなりにいつ頃からかキィに対する意識、いや・・・態度は変わってしまっていたから、こんなにも彼女は本当の想いが届けられないのかもれない。
果たして彼は彼女をどう思うようになったのか・・・。
「・・・えと・・・・・・キィちゃん?」
突然考え事に項垂れてた彼女の後ろから聞こえてきた、聞き取れないほどの小さな声・・・それはもはや呟いた様にしか思えないほどの声の細さだった。
その声だけをを聞くからにして大人しそうな性格のイメージが脳裏に浮かぶであろう。
「あ、ルーちゃんどうしたの?」
彼女はハッと振り向き、話しかけてきた牝子のグラエナに何事も無いような素振りをした。
「・・・ううん。・・・・・昨日くらいからずっと元気ないなぁって思って・・・。大丈夫?」
このルーちゃんと呼ばれたグラエナ。キィと同じトランペットパートのクラスメートである。
名前は「ルレ」と言い、とてもクラスでは存在感が薄いが物静かで成績優秀な牝子だ。
「え、そんなことないよ。全然・・・元気だって。」
最後のほうで声が小さくなってしまってしまっているのを彼女自身でも気付いていた。
「・・・悩み事・・・あるの?」
ルレは無口な方だが人に優しい性格で、誰からも影で頼りにされているらしい。
その性格に似合わず何故かトランペットをこよなく愛しているのはとても意外なものである。イメージ的にはバスクラあたりが似合うところ・・・。
「え・・・別に。」
「・・・聞いてあげるよ・・・?」
「・・・・・・」

キィは俯いてしばらく黙した。ルレは彼女が元気がないということをずっと心配していた。
耳が垂れている上に、いつものあどけない表情が今は悲しく曇っているというということが誰にだって一目で分かると思う。
普段はルレは自分から人に声を掛けることなどは少ないのだが、幼馴染の彼女が心配で仕方なかったのだろう。
「ねぇ、・・・ルーちゃんは好きな人いる?」
「え・・・?」
流石にルレでも予想もしなかった事を訊かれたようで、少し彼女なりに動揺しているようだ。
「僕?僕はい・・・いないよ。まさかキィちゃんの悩み事って・・・ローゼのこと?」
「・・・うん。」
俯いたままキィは頷く。少しの間、沈黙が辺りを包んだ。
「そっか・・・二人の事だったら僕、役に立てそうにないよね・・・。」
「どうして?」
キィは不思議に思い顔をあげてルレを見詰める。
「・・・だってさ・・・。キィちゃんとローゼの仲なんだもん。誰も力になれないって・・・」
「それってどういう・・・」
「そういう話の相談は・・・もう何度も聞かれてるけど・・・今回は・・・ねぇ。」
「・・・どうして?」
ルレは僅かに笑顔をつくっているところを見ると別に悪い意味ではないようだ。
「二人共、一番長い付き合いでしょ?・・・僕には何もいえないよねぇ。」
彼女の表情が苦笑いに変わった。普段は人からの相談などで力になっている彼女だがからこそ、今は役には立てないと残念に思っているらしい。

「・・・でも、少し変わったといえば変わったよね・・・」
「何が?ローゼのこと?」
「ううん、二人とも・・・両方避けてるというか・・・最近はそう見えるよ。」
「私がローゼを?ローゼが私を?」
「えと、悪い意味じゃなくてさ・・・。」

確かに最近キィはローゼに話しかけ辛くなっていたのを感じていた。
どうしても何故かドキドキするというか、少しでも勇気がいるようになってきたとか・・・。
そんな事は薄々感じていたが

自分はローゼを避けている
そんな事は考えもしていなかった。寧ろ逆にローゼの気を引こうとしているのに
何故ルレには避けているように見えたのだろうか彼女は不思議に思った。

「皆からは、私がローゼを避けてるように見えるんだね・・・。」
「・・・いや、私だけがそう思っているだけかもしれないし・・・ゴメン。でもローゼがキィちゃんを避けているっていうのは
 照れくさいからなんだよ・・・ていうかそれは見れば分かるよね・・・」

「そ、そっか・・・それなら良かったけど。最近ローゼは部活以外でもローちゃんと何かと仲良いからさ。
 見てると不安にもなってちゃたりもしてたんだよね。」
やはりルレは役に立てないと自分から言っても相談に乗れば必ず力になってくれる頼りのある牝子である。
「それは同じパートだから仲良くしないといけないし、ただ馴染める友達として付き合ってるんじゃないかな?・・・ローちゃんには悪いけど。
 でも・・・キィちゃんに照れくさがっているところを見るとさ・・・好きなんでしょ?まだキィちゃんのことが。」
「う、うん。そうだね。照れくさいのは私もそうだよ。もう昔の子供のような感じじゃないもんね。」
キィは少し安心したようで、ルレは彼女の笑顔を見る事ができてルレ自身も安心した。
「・・・そうだよ。悩む事なんてないじゃない・・・」
「有難う。相談に乗ってくれて。」
「どういたしまして・・・。」

「どうしようか、私たちパート練終わって個人練習なんだったら、これから二人で課題曲の練習する?」
「・・・そうだね。やろうか。」



音楽室はパーカス(パーカッション)のパートが後ろの方で練習している。
こういう会議とかになると聞こえてくるので少なからず色々な情報が得られて何かと便利。

「というわけで自由曲は『微笑みの国』に決まったよ。しかし決まったばかりでまだまだ楽譜が来る日は分からないので
 各パートは課題曲の練習をしっかりやっておいて」
部長が最後の言葉を言い終えるかどうかのところでトランペット(tp)リーダーが口を挟んだ。
「午後の基礎合奏は課題曲やらないんでしょ?」
そう、こいつがアキだ。んー学年で一人はいるような何でもできる優等生ってところかな。
このような性格上の人が仕切る軍隊はさぞ強いだろうな・・・いや何でもない。

「えー、今日はやらないと思うよ。まだ始めたばかりの曲だから顧問がいないときヘタに練習しても意味無いからね。」
「そうよね。」
確かにそうだな。あのインテリがいないんじゃ課題曲も合わせられないか。
「じゃあ皆解散。パートに戻ってくださーい。」

「あーあー、あの曲が良かったな~・・・。」
見苦しいPLがあそこに約一名。そいつは放って置いてと。
えーとパート練の最中だったかな・・・うーん10時過ぎか、午前中はずっとパート練でいいかな。
さ、戻ろ戻ろ。
《ガチャ》
またも音楽室からパートの教室に向かうため廊下へ出た。その瞬間肌寒い冷気がローゼを包む。
そういえば廊下の気温が急に下がったよな・・・まあ暑いのよりは全然いいか。
うお、まだキィがいる・・・ルレと一緒に練習してるのか・・・。

ローゼはあまり二人を気にせずに、いや、気にしない振りをして二人の練習する背後を通って2-3の教室に戻っていく。
キィはしっかりと今のローゼを見ていた。その目は何を思って彼を捉えていたのか・・・。
「・・・キィちゃん?…聞いてた…?」
「え、え?ああゴメン!」
「・・・・あのさ、キィちゃん…。」
ルレには珍しい少しいたずらをする子供みたいな顔をして彼女はキィに話しかける。
「な、何?」
ただでさえルレの声は聞き取れないほど小さいのに囁かれたらホントに聞き取りにくいものである。
やはり聞き取れないらしく、何度か聞き返している。そして・・・
「・・・・・・えっ!?・・・もうっ、何でそうなるのっ///」
「・・・だよね・・・。」
キィの顔が急に真っ赤に染まった。その赤い顔は明らかに羞恥に満ちた表情であったからにはルレも
それ以上のことは何も言わずからかうことをやめた。
「でも・・・確かに私から行動しないとずっと、こんなままなのかな?」
キィは赤くなった顔のまま苦笑いをしてそう言った。
「・・・ローゼもあんな顔してても牡の子なんだから・・・ローゼのほうからは多分何も言ってこないと思う・・・。」
「・・・うん。分かる気がするよ。」



その後、フルートパートの午前中の練習はというとPLのローゼが戻って来るまでは、個人で課題曲を練習していて
ローゼの帰還後はパート練の再開だった。
実はというと最後のほうには殆どおしゃべりの時間だったと言えるだろう。
ロートがローゼの匂いについて執拗に気にしてくるので・・・彼は本当のことを話したらパート内が大ウケ・・・。
「匂いのおかげで完璧これで牝子だね。」
そういったのはロートで。
「ルックスからして牝子だし。」
これはカナ。
「ボクも最初はパート内全員牝子かと思ってました。」
何気にルルまでそんなことを言う・・・。皆がその事について言う度にローゼがとっても小さくなっていった。
彼が適当に話の方向を変えてその話を流したがルルに見破られてまたまた彼は小さくなって・・・。


~♪~♪~~・・・
「うん?あ、もうこんな時間?じゃあ午前のパート練終わりにするんで解散して一旦音楽室に行ってください。」
時計を見れば12時10分を回っていた。
午前中の練習が終わると午後の予定を伝えるため全員音楽室に集合して少しばかりミーティングを行う。
12時10分といえばもう少しで始まる時間だった。あまり楽器の手入れとかしている時間もないので俺たちはすぐに音楽室に向かった。
またまた廊下の窓から外を見てみると地面全体が真っ白に雪が積もってなっていた。こうなると誰かさんのテンションがヤバくなってしまう・・・あぅあぅ。


ギリギリの時間でお陰で、丁度ミーティングを始めるところだった。俺たちのパートって他のパートより人柄的な意味で全員のんびりしてるからなぁ。
「ふぅ、間に合った・・・。」
奴ら俺以外何も感じてないのかよ・・・。
ここの部活の恐ろしいところのひとつは全員集まってなくてもミーティングを始めるとかろかな。

遅れてきたやつは自分の責任だ。あーだこーだ。by・インテリ顧問
だそうです。

『えー、ミーティング始めるから皆座って~。』
んー、腹減った。・・・ん!?
そのときだ、急に嫌な予感がして寒気がした・・・。

(そういえば今日、弁当持ったっけ・・・?)

・・・・・・楽譜とかCD出すときに弁当あったか?

・・・答えはNOである。
(ノォォォォォォォォォ!!!!!)
『午後の予定は個人でパート練習してください。3時から基礎合奏です。これで午前中の部活を終わります。解散。』
部長の解散の声に部員たちは一斉に賑やかになりそれぞれ散っていく。

「お腹減ったー、お弁当~お弁当~♪」
うう、子供かよロート・・・ちくしょー。

俺はどうすればいいんだぁ!
(キュルルルル~~)
・・・・・・・・・ひゃあお腹がなりました~・・・。もう死んだ。(ガクッ




「・・・・・・・・・ローゼ?」
しばらくパートの席で動かないローゼを見て気になった誰かが話しかけてきた。
「・・・ぅん?」
生気の失った顔に力のこもっていない声にそのものは何故か少し笑った。
「どうしたの?ずっとそこに居るじゃん・・・。何かあったn」
(キュルルルル~~)
「あ・・・。」
「ナルホド・・・やっぱり。」
「ぅぅ。いや、あのこれは・・・。」
「よ、良かったら、私の・・・分けてあげようかなって・・・」
ざわめく賑やかな音楽室の中で、俺を見て少し赤く微笑んでる。
俺はその時だけ妙に静かに思えた。
「いや、いいよ・・・ありがとう。キィ。」
「ホント?・・・遠慮しなくて良いんだよ?」
尚も心配そうに誘ってくるキィ・・・。
「ううん。別に自分が悪いんだしさ・・・。」
「そ、そう・・・遠慮しなくていいのに。」
「ホントに、キィに悪いって。じ、じゃあね!」
「あぁローゼ・・・」

これはキィに迷惑がかかるから、俺から逃げるしかなかった。
キィに迷惑がかかるから・・・。そう。自分が悪いんだから・・・ここは流石にガマンしなければね。
《バタン》
音楽室から出てドアを閉める。やはり廊下は気温が低くて肌寒いな・・・。
(キュルルルル・・・・・・)

み、水飲みに行くか・・・。
その腹の虫の音はどこか冷たく寂しかった。・・・「空腹の鐘」、その理由以外のほかにも意味があるのか・・・。



(ローゼ・・・。どうして?)
一方残されたキィは静かに立たずんでいた。自分は・・・ローゼと一緒にいたい。
しかしローゼはこうして何度も自分を避ける。
恥ずかしいから避けられているとしても、やはり悲しくなってくる。
実は他にも自分を避ける理由があるのではとキィは色々考えてしまっていた。

「・・・キィ?・・・一人なら一緒に食べよう・・・?」
「ルーちゃん・・・。うん。いいよ。」

ルレはまた元気になったはずのキィの表情が、曇っていることを悟った・・・。



何かコメントあれば気軽にぞうぞ





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Last-modified: 2010-08-26 (木) 00:00:00
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