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僕は君を愛し君は僕を愛す2

/僕は君を愛し君は僕を愛す2

名も無き人間
今回から様々なポケモンが登場していきます!


……どれ位寝たか分からないけど、僕は顔に感じる違和感で目が覚めたんだ。

「う~ん……何だ?」

「クゥ~ン…クゥ~ン……」

「ポチエナ!?分かった!起きるから止めてくれ~!」

「キャン!」

僕は口元に何かが触れる感じがしたから目を開けて確認したんだ。

それはポチエナが僕の顔を舐めてる感触だった。

僕は急いで起き上がるとポチエナの舐める攻撃を止めさせたんだ。

顔中ヨダレ塗れになっちゃったから僕は顔を洗いに洗面所に向った。丁度良かったかな?

「全くもぅ……舐めなくてもちゃんと起きるよ。」

「キャン! キャンキャン!」

「ん、時計がどうかした・・ってもう八時!? 急がないと遅刻だ!!」

顔を洗い終わると僕はポチエナに舐めなくても時間通りに起きると伝えた。

だけどポチエナは置いてあった時計を見て鳴いて、僕は時間を見たんだ。

見た瞬間に夢かと思ったよ。七時だと思ったのが八時になってたんだから。

学校へは八時半には入らないと遅刻になってしまう。僕は急いで準備を整えたんだ。

だけど僕はポチエナの事を思い出した。ゲットしてないから連れて行けないからね。

けど置いて行くわけにはいかない。僕はカバンを背負って、ポチエナを抱き上げた。

「ごめん、朝御飯は学校行ってから買ってあげるからね。少し我慢してね。」

「クゥ? …ギャウ!?」

僕はポチエナにご飯は学校であげると言うと、全速力で走り出したんだ。

ポチエナが落ちないように力一杯摑まるから爪が食い込んで少し痛かった。

だけど僕は遅刻にならないように必死に走っていたんだ。

途中公園を通って更に裏道を通って、なんとか始業のベルまでには教室に入れた。

「時間ギリだぞ? って、そのポチエナどうしたんだ?」

「昨日公園で会ったんだ。話せば長くなるけど……」

席に着くと前の席の友達が僕の方を見て笑ってきたんだ。遅刻ギリギリだったからね。

そしてポチエナを見付けると、少し驚いた表情で尋ねてきた。

僕は公園で会った事を伝えて、昨日の出来事を簡潔に伝えたんだ。

「なるほどなぁ……ところでもうゲットしてあるのか?」

「いや、まだしてないんだ。捕まえたくないから。」

「お前らしいな。だけどボールに入れないと不味いんじゃないのか?」

話を聞き終わると友達はポチエナをゲットしてあるのか聞いてきたんだ。

ゲットって言うのはモンスターボールで捕まえてある事を言うんだ。

だけど僕はゲットして無い事を伝えると捕まえたくないと答えたんだ。

友達は苦笑いしながら僕らしいと言ってくれたけど、一つだけ不味い事があったんだ。

学校内はポケモンを外に出しておくのは厳禁だったからね。

校則にもなってたから、破ったら退学も在り得るからね。

「おいおいどうするんだよ? もう始業のベルが鳴るぜ?」

「私、予備のボール持ってるけど使いたくないんでしょ?」

「俺のエーフィにテレポートを使わせる事も出来るぞ?」

回りの友達もポチエナに気付いたのか、色々な案を出してくれた。

僕はそんな友達の優しさに胸が一杯になっていた。

だけどそうしている内に始業ベルが鳴って先生が入ってきちゃったんだ。

「ほら席に着け~! 授業始めるぞ~!」

「げっ! おい早く隠せ! 見付かるぞ!」

「隠せって言われても……」

「クゥ?」

先生は教卓に着くと授業の準備を始めたんだ。

前に居た友達がポチエナを隠すように言ったけど、急には隠せないからね。

ポチエナは辺りをキョロキョロしながら様子を窺っていたみたいだった。

すると急に僕の膝の上から飛び降りて教卓の方へ走って行っちゃったんだ。

僕は勿論、前に居た友達も止めようとしたけど、掠りもしなかった。

「よ~し、出席取るぞ~。……ん? 誰だ? ポケモンを外に出してる奴は?」

「あちゃぁ……最悪のパターンだな……」

「仕方無い……正直に言うしかないよ。」

先生は出席を取ろうとして下を向いたからポチエナに気付いちゃったんだ。

直ぐにポチエナを出している人を探し始めて、辺りを見始めた。

友達は打つ手が無いと思ったのか、頭を抱えてしまったんだ。

僕は正直に言おうと思って立ち上がったんだ。

ポチエナを見ると先生に尻尾を振りながら舌を出していた。

「ごめんなさい。僕のポチエナなんです。おいでポチエナ。」

「キャン!」

「お前ポケモン持ってたか? どちらにしろ、早くボールに仕舞え~。」

「実は……」

僕は席を立って、僕のポチエナだと伝えて、ポチエナを呼び寄せたんだ。

ポチエナは一声鳴いてから僕に走って戻って来てくれた。

先生は僕がポケモンを持っている事に首を傾げたけど、仕舞うように言ったんだ。

僕は先生にポチエナの事を簡単に説明して、ゲットしてない事を伝えたんだ。

「それじゃ野生のままって事じゃないか! もし校内で暴れたらどうするんだ!?」

「ポチエナは暴れたりしません! それにゲットしなくても仲良くなれます!」

「それとこれとは別だろ!? それにボール外に出すのは校則違反だぞ!?」

「それは……」

それを聞くと先生はポチエナを警戒し始めたんだ。校内で暴れたらどうするんだって。

僕はポチエナは暴れる子じゃないって伝えたけど、無駄だったみたいだ。

更に先生はボールの外に出しておくのは校則違反だって僕に言ったんだ。

そればっかりはどうしようも出来ないから、僕は何も答えられなかった。

「出て来いエーフィ!」

「貴方もよマッスグマ!」

「お前もだバクフーン!」

「皆……」

少し俯いていると、周りに居た友達が一斉にボールを持った。

そして次々にボールを投げて、ポケモンを出したんだ。

勿論その友達は僕の過去を知ってた。

僕は友達の大切さを改めて知ったよ。

「こいつの過去を知らない癖にボールに仕舞えとか言うなよ!」

「そうです!誰にも事情があるのに、校則でそれを蔑ろにするのは良くないです!」

「もしこのクラスの先生ならそんな事言わないぜ!」

「お前等まで何をやってるんだ! 早くボールに仕舞え!」

友達は僕の過去を知らない先生に僕に言った事に反論してくれていた。

今の先生は来たばっかりで、‘あの事故’の事を知らなかったんだ。

僕が今までポケモンをパートナーにしなかった理由もその事故にあったんだけどね。

だけど先生はポケモンを出した友達に怒りながら、ボールに仕舞うように言った。

「おい! 俺等も出そうぜ! …出て来いガーディ!」

「よっしゃ俺もだ! 来いヘルガー!」

「クゥ……? キュ~ン……」

それを聞いたクラスメートは次から次へとボールからポケモンを出したんだ。

暫くするとクラスはポケモンで一杯になっていた。

あまり親交の無いクラスメートもポケモンを外に出してくれてたんだ。

僕はそれだけで胸が一杯になって何も言えなくなっていた。

ポチエナは周りを見渡しながら、様子を窺っているみたいだった。

「こいつ一人を責めるならポケモンを出した俺等も責めてみろよ!」

「何!? お前等何を言ってるのか分かってるのか!?」

「何の騒ぎですか? 外まで声が聞こえてますよ。」

「あ、校長……実は……」

最初にポケモンを出した友達は僕を責めてるなら自分達も責めてみろって言ったんだ。

勿論そんな事をする理由は分かってた。僕を助ける為だから。

だけど先生は逆に嘗められたと思ったのか、今にも教室を出て行くような状態だった。

そうしている内に教室へ校長先生が入ってきたんだ。多分騒ぎを聞きつけたんだと思う。

先生は入ってきた校長先生に騒ぎの原因を伝えているみたいで、僕の方を何度か見たんだ。

「成程……ではクラスの殆どが校則違反をした。という事ですか?」

「そうなります。私が仕舞うように言ったのですが、まるで聞く耳持たずで。」

「待ってください! 元はと言えば僕が悪いんです! 皆は悪くありません!」

「おい何言ってるんだよ!? 俺等は好きで出したんだぜ? 皆もそうだよな!?」

暫く話を聞くと、校長先生は周りを見渡して、殆どが校則違反をしたのかと言ったんだ。

先生もそれに頷いて、自分が注意したけど聞いてくれなかったような事も言った。

だけど皆を巻き込むわけにはいかない。僕は自分が事の発端だと伝えたんだ。

僕がそれを言うと前に居た友達が自分で好きに出したんだと言って、皆にも聞いていた。

皆もそれに頷いて、自分の意思で出したと言ってくれた。

「とりあえず皆さん、ポケモンを仕舞いましょう。君は私に付いて来て下さい。」

「はい。おいで、ポチエナ。」

「クゥ~ン……」

「よし、授業始めるぞ~!」

校長先生はそれを聞いて何度か頷いてから、僕に付いて来るように言ったんだ。

僕はポチエナを抱き上げると、校長先生の後を追って、教室を後にした。

正直教室を出た後は凄く心細かったかな。だけど皆を巻き込むより遥かに良いと思ってた。

そして校長先生は自室。つまり校長室に向っているみたいだった。

「さぁ、入って下さい。コーヒーでも飲みますか?」

「あ、いえ、まだ学校が終わってませんから遠慮します。」

「そうですか。それではそこの椅子に座って下さい。」

「はい。失礼します。」

校長先生は扉を開けると僕を招いてくれた。

そしてコーヒーサーバーを手に取るとコーヒーも勧めてくれた。

だけどまだ授業中だから断ったんだ。

それを聞くと校長先生もコーヒーサーバーを戻して、長椅子に座るように言われた。

僕は足元にポチエナを降ろすと、一声言ってから、椅子に座った。

教室の椅子と比べて遥かに柔らかいから少し座り難かったかな。

「今回、君がそのポチエナ君を連れて来た事で騒ぎになったんですね?」

「はい。家に置いて行く訳にはいかなかったので。それに……ゲットもしたくないんです。」

「矢張りまだ‘あの事件’を忘れられないのですね。」

「それは……。」

「無理をしないで良いですよ。ポチエナ君が心配そうに覗き込んでいますよ?」

校長先生も僕の前に座って、教室での騒動について聞いてきたんだ。

僕は素直に自分が事の発端だと説明して、ゲットしたくない意思も伝えた。

すると校長先生は少し顔を渋らせて、事件の事を忘れられないのかと聞いてきたんだ。

僕は答える事は出来なかった。‘あの事件だけは’忘れる事は出来ないから……

すると校長先生が笑みを浮かべながら、ポチエナの事を教えてくれた。

見るとポチエナは今にも泣きそうな顔で僕を覗き込んで居たんだ。前足を掛けてね。

「君の気持ちは痛い程分かります。ですが過去に縛られ続けるのは止めにしませんか?」

「それだけは出来ません。あいつは……僕のせいで死んだんですから。」

「それは君のせいではないですよ。今のままでは亡くなった彼が悲しみますよ?」

「知った様な事言わないで下さい! 校長先生に何が解るんですか!? ……ぁ……」

校長先生は手を組んで顎に当てながら、過去に縛られるのは止めにしないかと言ったんだ。

だけど何度言われてもそれだけは頷けなかった。あいつを忘れる事は出来ないから……

だけど校長先生は首を横に振りながら僕のせいじゃないと言ってくれたんだ。

そして亡くなったあいつが悲しむと言って、悲しげな笑みを浮かべていた。

そこから僕は頭が真っ白になったみたいで、校長先生を怒鳴っていたんだ。

多分‘あの事’を良く知らないでそんな事言ったから頭にきたのかもしれない。

怒鳴ってから僕はハッとして口を止めたけど、殆ど言い終わった後だったんだ。

「ごめんなさい…僕…こんな事言う積りなくて……その……」

「良いんですよ。私も君の気持ちを深く考えずに言ってしまい申し訳ありませんでした。」

「そんなっ…校長先生が謝らなくても!」

「君の彼への愛情の深さが良く分かりました。そして事件が起こした傷の深さも。」

「……。」

僕は直ぐ校長先生に謝った。いくらカッとなったからって怒鳴っちゃったから。

だけど校長先生は笑顔のままで許してくれて、校長先生も謝ってくれたんだ。

僕はまさか謝ってくれるとは思ってなくて、少し焦りながら止めたんだ。

すると校長先生は少し悲しげな笑みを浮かべて僕とあいつとの絆の深さを認めてくれた。

それと同時に‘あの事件’に因って生まれた傷の深さも。

「私も昔はパートナーが居たんです。ガーディでね、凄く人懐っこかったんです。」

「そうだったんですか……それで…そのガーディは?」

「私が教頭を勤めていた頃に、交通事故に遭って亡くなってしまったんです。」

「あ……ごめんなさい。」

「気にしないで下さい。ガーディは亡くなっても、私の心の中で生きているのですから。」

少しすると、校長先生は自分にパートナーが居た事を教えてくれた。

ガーディで人懐こかったっていうことも。

僕は初めて知ったから、校長先生にガーディの所在を聞いたんだ。

すると校長先生は少し寂しそうな表情を浮かべて、過去に亡くなった事を明かしたんだ。

知らなかったとは言え辛い過去を聞いてしまったから、僕は直ぐに謝ったんだ。

だけど校長先生は自分の心の中に生きていると言って、笑顔を浮かべていたんだ。

「私も君と同じ状態でした。ガーディの死は自分に非があると思い込んでいたんです。」

「それじゃ…今の僕と同じ……」

「ですが次第に間違いに気付いたのです。ガーディは今の私を見たくないと。」

「あ……」

「ですから私は自分を責めるのを止め、過去の事故を忘れる事にしたのです。」

そして校長先生は僕と同じ様に自分に非があると思い込んでいたと明かしてくれた。

僕の今の状態がそれだったから、校長先生も同じなんだと思ったんだ。

だけど校長先生は間違いだと気付いたと言って、ガーディは今の姿を見たくないと言った。

それは僕の胸にも届いていたんだ。きっとあいつも今の僕を見たくないと思うから……

そして校長先生は過去を忘れる事にしたと頷きながら教えてくれた。

「無理にとは言いません。ですが君も、彼も今の君を望んでいませんよ?」

「……」

「それに、ポチエナ君だってさっきから君の周りをウロウロしっぱなしですよ?」

「あ……ごめんポチエナ。おいで。」

「キャン!」

少し間を置いてから、校長先生は今の僕をあいつは望んでいないと言ったんだ。

僕も勿論あの事件を忘れたいよ。だけどどうしても忘れられないんだ……

僕があそこに行って、あいつのボールを置きっぱなしにしたから……あいつは……

暫く黙っていると、ポチエナの事を教えてくれて、さっきからうろうろしていたらしい。

僕はポチエナを抱き上げて、膝の上に乗せてあげた。

「過去も大事ですが……今を生きる事の方がもっと大事なんですよ?」

「分かってます。あいつの分まで今を大事にしていきます。」

「それで良いのです。……喋り疲れましたね。内緒で、コーヒーいかがですか?」

「それじゃ、遠慮無く頂きます。」

校長先生は膝で寛いでいるポチエナを見ながら過去も大事だけど、
今を生きる方がもっと大事だと言ったんだ。

勿論僕もそれ位は分かってたんだ。今を生きる事で、あいつが生きていた証になるからね。

そう答えると校長先生は満面の笑みで頷くと、またコーヒーを勧めてくれた。

今度は人差し指を口に当てて、内緒にすると言ってね。

正直喉が渇いたから、僕は一度お辞儀をしてからコーヒーを貰ったんだ。

それからは校長先生とコーヒーを飲みながら色々と雑談した。

お互いのパートナーの事や、学校の事。

そして過去にパートナーを失った事を照らし合わせたりもしたんだ。

話をしている内に、あの事件の事を少しだけ忘れられてきたんだ。

暫く雑談をしていると終業のベルが鳴り始めた。

「もうこんな時間ですか……君は教室に戻って授業を受けて下さい。」

「でも……今回の校則違反の件は……」

「私の話し相手になってくれたので不問にしますよ。また来てくださいね。」

「はい! 勿論です。では失礼します。」

「キャンキャン!」

校長先生はコーヒーカップを置いて、教室に戻るように言ったんだ。

僕は今回起こしてしまった校則違反の事を尋ねたんだ。

だけど校長先生は不問にしてくれたんだ。話し相手になってくれたからって。

そして笑顔をでまた来てくれと言うと、ポチエナの頭を撫でてくれた。

僕も笑顔で頷くと、ポチエナを抱きかかえて教室へ戻ろうとした。

だけどポチエナを連れて行ったらまた同じ事になってしまう。

「あの…校長先生。お願いが……」

「良いですよ。授業が終わるまで責任を持ってお預かりします。」

「ありがとうございます。ポチエナ、良い子にしてるんだよ。」

「キャン!」

僕は校長先生にポチエナを預かってもらおうと思ったんだ。

校長先生も分かっていたみたいで、言い終わる前に承諾してくれた。

校長先生なら安心して預けられるから、僕は御礼を言ってからポチエナを降ろしたんだ。

そしてポチエナに良い子にしてるように言って、頭を撫でてあげた。

ポチエナは笑顔で鳴くと、校長先生に擦り寄っていたんだ。

「それじゃ放課後まで宜しくお願いします。」

「はい。授業、頑張って下さいね。では行きましょうポチエナ君。」

「キャン!」

僕はポチエナの様子を見てから、校長先生にもう一度頭を下げたんだ。

校長先生も軽く頭を下げて、ポチエナを連れて校長室に入っていった。

今日は金曜日だから授業は午前中で終わりなんだ。後二時限で放課後。

僕が教室に戻ってくると、皆に処分の行方を聞かれたよ。

だけど校長室での事を教えると、皆は自分の事のように安心してくれたんだ。

それからの授業は問題無く進んで行った。友達が居眠りして怒られてたけどね。
次の物語へ・・・僕は君を愛し君は僕を愛す3


ーあとがきー
うーん、区切りが難しい・・・
もっと長くした方が良いのだろうか・・・

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Last-modified: 2010-11-19 (金) 00:00:00
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