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信じる事

/信じる事

駄文執筆者 文書き初心者



勉強地獄から解放された放課後、僕達はいつものように校庭で野球をしていた。
「さぁ、来い!」
僕はバッドを持って、バッターボックスに入る。軽く一回バッドを回し、構え、正面を見る。
ピッチャーはゼニガメだ。
ゼニガメはキャッチャーのフシギダネとサインを合わせると、大きく振りかぶってボールを投げる。
投げられたボールは大きな放物線を描く。予想もしていなかったボールの軌道に僕は、バッドを振れないまま、ボールはフシギダネの蔦で静止した。
フシギダネは蔦の位置を確認すると
「ストライク」
と、言った。
「変化球を覚えたの?」
僕はゼニガメに聞く。
ゼニガメはそれを聞くなり、笑みを浮かべながら答えた。
「そう、一生懸命練習したんだよ。ねー、フシギダネ」
「うん」
この二匹、急に仲良くなったと思いきや、特訓をしてたとは……。
「そんなボール、打ってやるさ」
僕は、ゼニガメに向かってバッドを突出し、ホームラン予告をする。
ゼニガメは僕のホームラン予告を見るなり言った。
「ふーん、自信満々にホームラン予告か。ピカチュウに僕のボールが打てるのかな?」
「そんな大きな口を出せるのも、今だけだ」
僕は一回バッドを軽く振って、バッドを構える。
ゼニガメはフシギダネとサインを合わす。
そして、ゼニガメは大きく振りかぶり、ボールを投げた。
ボールは再び、大きな放物線を描く。
……大丈夫。打てる。さっきのでボールの軌道は分かった筈だ。
僕はバッドを思い切り振る。
カーンッ。
ボールは宙に舞い、ライト方向に大きく飛んでいく。
「どうだ!」
「なっ!」
流石に、ゼニガメは驚いている。
だが、ボールは風のせいか、さらに右に曲がりボールはファールのラインをきる。
そして、ボールは森に落ちた。
「ちぇっファールか……」
僕は、がっくりとする。
風さえなかったらホームランだったのになぁ……。
「ほら、拾ってきなよ」
フシギダネが僕に言う。
「ああ……」
僕達の決まりでは、ファールになったボールは基本的に打ったポケモンが拾うことになっている。
僕はトボトボと森へ向かっていった。



「確か……この辺だよな……」
僕は地面を見て、ボールを探す。
すると、急に背中に冷たい感覚がした。
僕が空を見上げると、雨が降ってきた。
「早く、探さないと……」
僕は急いでボールを探す。
だが、ボールが見つかる事は無く、雨は次第に強くなっていく。
それに伴い、身体はどんどん濡れていく。
「こうなったら、何処かの木で雨宿りしよう」
僕はボール探しを中断し、雨宿りが出来る木を探す。
だけど、どれも葉が小さくて少なく、雨が葉の間から漏れる木しか見つからない。
このままでは、風邪を引いてしまう。
僕は、走りながら必死に雨宿りができるところを探す。
すると、前方に洞窟が見えてきた。
あそこなら、暫くは凌げるだろう。
僕は洞窟に向かって全力で走った。



「はぁ……はぁ……」
なんとか洞窟には入れた。
僕は体毛を振り、水を飛ばす。飛び散った水は、辺りの地面を濡らした。
それでも、多少は濡れたままなので寒い。僕は寒さで身体を震わせる。
「今日はツイてないなぁ……」
と、口が自然に動く。確かに、今日はツイてない。
ホームラン姓の当たりがファール。ボールは見つからない。突然の大雨。何もかもが必然的の様なタイミングだった。
でも、洞窟を見つけられたから、まだマシな方だろう。
僕は外を見る。雨は激しく地面を叩き、雨音が洞窟まで響いてくる。雨は止みそうにない。
いざとなったら、この土砂降りの中、家に帰るしかない。
それよりも、洞窟の奥が、ちょっと気にかかる。奥から光が漏れているのだ。
きっと、誰かこの洞窟に居るに違いないのだが……。
「すみません、誰かいますか?」
僕は洞窟の奥に向かって言う。
洞窟なので、声が響いた。きっと、洞窟の奥の方まで聞こえた筈だ。
すると、奥からポケモンが出てくる。
体毛の色はピンクと白の中間で淡い色。僕よりも細くて、長めの尻尾。どうやら、空中浮遊ができるらしく、宙に浮いている。
見る限りでは、僕と同年代だと思う。
「少しの間、雨宿りがしたいんですけど……」
僕はそのポケモンに言う。
「い、いいですよ……。こんな所でよろしければ……。つ、ついてきてください」
「此処でいいですよ。迷惑になると思いますし」
「い、いいえ。困ったときはお互い様です。それに、そ、そこだと風邪を引いてしまいます。」
「じゃあ、御言葉に甘えて……」
僕は、彼女の後についていった。



洞窟の奥は住めるようになっており、ベッドとか色々な家具が置いてある。
ベッドが一つしかないから、一人暮らしなのだろうか?
彼女はタンスの中からタオルを引っ張り出し、僕に渡す。
「あの、これで身体を拭いて下さい」
「有難う。有り難く使わせてもらうよ」
僕は、彼女からタオルを受け取り、濡れた身体を丁寧に拭く。
彼女は、木の実の入っている籠に向かい、何やら漁っている。
そして、彼女が一つの木の実を手に持ちながら、僕の方に来る。
「こ、これマトマの実です。食べると、と、とっても、身体が温まります」
彼女はそう言うと、マトマという木の実を僕に手渡す。
「どうも、有難う」
僕は、彼女に御礼を言い、手渡されたマトマの実を食べる。
すると、すぐに身体がポカポカと温まる。さっきの寒気が嘘みたいだった。
「何だか悪いね。こんなにして貰っちゃって……」
「い、いえ、そんなことないです」
彼女は、うつむきながら言う。
……緊張してるのかな?まぁ、僕は彼女からしたら、見知らぬポケモンだしなぁ。
そういえば、まだ名前とか聞いてなかったな……。
「そういえば、まだ僕の名前言ってなかったよね?僕はピカチュウ。君は?」
「わ、私はミュウです」
「ミュウ、今度、御礼がしたいから、また今度来ても良い?」
ミュウは顔を上げ、僕と目を合わす。
「い、いえ、御礼なんか要らないです。そんな、大したことやってませんし……」
「でも、僕にとっては大したことなんだよ。このままじゃ、ミュウに悪いよ……」
「……と、取り敢えず、御礼の方はいいです。でも、また、此処に来てもいいですよ」
「本当?じゃあ明日行くよ」
「た、楽しみにしてます」
ミュウは笑みをこぼす。
「やっと、笑ったね」
「え?」
僕の言葉にミュウは目を丸くする。
「いや、正直、僕の事ウザったいのかと思ってたからさ……」
「そんなことないですよ。まぁ、突然の訪問には驚きましたけど……。普段は、この辺にポケモンなんて来ないんですよ?」
「へぇ、そうなんだ……。まぁ、僕もこんなところに家があるなんて知らなかったしなぁ」
僕が言うと、洞窟中に響いていた雨音が止んだ。
「あっ……雨が止みましたよ」
「そうだね」
そして、ミュウと僕は洞窟の入口に行き、外を見る。あんなに降っていた雨は見事に止んで、晴れていた。
「じゃあ、僕は行くよ」
「ええ、明日、遊びに来てくださいね。待ってますよ」
「うん!」
そして、僕はミュウに手を振る。ミュウも僕に手を振り、別れを告げた。



翌日……。
「えっと、確かこっちだよなぁ……」
僕はミュウの家を目指していた。
だが、場所がうろ覚えのせいか、辿りつけないという危機的状況だった。
十年以上住んでいる土地なのに分からないとは……自分が情けない。
行けども、行けどもミュウの家には着かない。
「参ったな……」
これじゃあ、ミュウとの約束が果たせない。こっちは約束を破るつもりなんてないのに。
取り敢えず、崖沿いに歩こう。どんなに時間がかかっても辿り着かなきゃ。
そう考えてたときに
「ピカチュウ!」
上からミュウの声がしたので上を見上げるとミュウがいた。
「ミュウ!」
ミュウは下に降りてきて地面に着地する。
「良かった。此処にいたのですね。てっきり来ないのかと……」
「道覚えてなかったみたいでさ……辿り着けなくて……本当に御免」
彼女は何故か暫く黙っていた。何か考えているように。
そして、気がついて口を開いた。
「いや、いいですよ。早く私の家に行きましょう」
「あ、うん、そうだね。道案内頼むよ」
「いえ、一瞬で辿りつくので」
ミュウがそう言うと、ミュウは僕の手を握り、目を閉じる。
何をするつもりだろう……と、思っていると、数秒後にはミュウの家にいた。
あれ?何でもう此処にいるの?
そう思いながら、辺りをキョロキョロと見る。
確かに、此処はミュウの家だ。
「驚きましたか?」
「うん、さっきまで外にいた筈なのに……どうして?」
「私がテレポートを使ったんですよ」
「テレポートが使えるの?いいなぁ、僕も使えたらなぁ……」
「でも、私の場合は、物質が複数の場合は、私がそれらに触れていないと効果が発揮できないんですけどね」
「あっ、だから僕の手を握ったんだ」
僕がそう言うと、ミュウは頬を赤く染め、僕の手を離す。
「ご、御免なさい。ピカチュウの許可も無く、いきなり手なんか握って……」
「いや、気にしなくていいよ。貴重な体験が出来たしさ」
「そうですか……。それを聞いて安心します。今からお茶を出すのでベッドに座って貰えますか?」
「わかった」



「おまちどうさま」
ミュウはお茶の入ったコップを僕に手渡す。
「有難う」
匂い、色と共になかなか良い。
僕はお茶を飲んでみる。
「……うん、とっても美味しいよ」
「そう言って貰えると、とても嬉しいです」
ミュウは笑みを浮かべ、答えた。
「何か淹れるコツでもあるの?」
「いえ、本で読んだとおりにしただけですよ」
「あの本の数のとおり、本が好きなの?」
僕は本棚を指しながら言う。ミュウの家には本棚もあり、本は軽く千冊以上ある。
「ええ、私は読書が大好きなんですよ」
「そうなんだ。僕はどっちかというと身体を動かしてる方が好きだから、読書はあまりしないんだよなぁ……。
本をあまり読まないポケモンでも読みやすい本ってある?」
「それだったら……」



その後、色んな本を紹介してもらったり、ミュウと雑談をした。
ミュウと過ごす時間はとても楽しく、別れを告げるのが惜しかった。



そして、僕は来る日も来る日ミュウの家に行った。 放課後、友達とも野球をしないで。
友達に何でしないの?と聞かれても、読書に目覚めたから、と、言ってミュウの事は教えていなかった。
だってミュウは……。




とある日の事……。
「そういえば、ミュウは何処の学校行ってるの?」
僕の言葉で、ミュウは黙りこみ、表情は暗くなった。
「御免、聞いちゃいけない事だったみたいだね……。さっきの言葉は忘れて」
そして、沈黙の間……。場は気まずい雰囲気に陥る。
どうにかしなくちゃ、と、思っていたときにミュウは沈黙を破った。
「……いえ、いいんです。ピカチュウは私の事を知りたいんですよね?」
僕は首をコクリと、ゆっくり縦に振る。
「……じゃあ、私の手を握ってください」
ミュウは僕に手を差し出す。
僕には彼女が手を差し出す理由が分かる。それはテレポートをするためだ……。
ミュウは僕を何処に連れて行くつもりなんだろうか?
僕はミュウの表情を見る。ミュウの表情は楽しくも哀しくも無い、無表情。
この手を握った方が良いのか、握らない方が良いのか……。
僕は覚悟を決めて、目を瞑ってミュウの手を握った……。



次に目を開けると、周りには木の実の樹が沢山あった。
何故だか、ミュウが隣には居なかった。
僕は後ろを振り返る。
「うわっ!」
僕は驚いて尻餅をつく。目の前が崖だったのだ。僕は落ちない様に下を見ると、
村が確認できたが、僕の住んでいる村じゃなかった。此処は何処なんだろう……。
僕は後ろに後退し、崖から離れる。そして、振り向き、木の実の樹の方向を見る。
ミュウは何の為に此処に連れてきたのだろうか?僕はそう思いながら先へと進む。



進んでいる時に気付いたのだが、これらの木の実の樹々には、
ミュウの家にある木の実の籠に入っている木の実がすべて成っていた。
これはどういう事なのか?まさか盗んでいるのでは?
いや、そんな訳無い。ミュウがそんな事をする筈が無い。
どんどん、疑問が募る。先には草原が見える。そこに行けば何か分かるかもしれない。



草原、と、言うよりは荷が重いような気がする。確かに草原なのだが……。
一ヶ所にまとまって沢山の木材、窓硝子などが粉々に砕け散っていた。
恐らく、ログハウスが建っていたのだろう。
そして、その隣には……ミュウがいた……。十字架の墓石の前に。
僕は歩いてミュウに近付く。僕が歩く度に草を踏む音が響く。それ程、此処は静寂だった。
「お父さん、お母さん、あの子がピカチュウだよ」
ミュウが墓石に向かって言っている言葉が聞こえた。
そして、僕がミュウの隣に立つと、ミュウは僕に向かって微笑んだ。だけど、どんな反応をすれば分からなかった。
取り敢えず、僕は墓石に向かって言った。
「始めまして、こんにちは。ミュウのお父さん、お母さん。僕がピカチュウです」
そして、お辞儀をする。
ミュウは再び、墓石に向かって言う。
「ね?私の言ってたとおり真面目なポケモンでしょ?お父さん、お母さん、私、ピカチュウと話すことがあるから、少し離れるね」
そして、ミュウは墓石から離れる。
「失礼します」
僕は再び、墓石にお辞儀をしてミュウを追う。
ミュウはログハウスの跡地前に座ると、続いて僕も隣に座った。
適度に冷たく、乾燥した心地よい風が吹き、草や木の葉を揺らせ、この場をザワザワと響かせる。
だけど風はすぐに止み、再び静けさを取り戻すと、彼女は口を開いた。
「私のお母さんは、私が生まれて間も無く死にました。
だから、私はお母さんの事はよく知りません……。写真で見たことがあるだけです……。
だから、お父さんが私の面倒を見てくれました。私はいつもお父さんにくっついていて……。
お父さんは私にとても優しくて……あっ、でも、私がいけない事をしたら、ちゃんと怒ってくれましたよ。
あと、毎日、毎日、私に絵本を読んでくれたりとか……」
ミュウが僕にお父さんの事を説明してる時、ミュウはとても嬉しそうな表情をしていた。
それほど、お父さんが好きだったのだろう。
「……でも、私のお父さんは病弱だったんです。ずっと、無理をして私の面倒や樹達の世話をしてたんです。
そして、樹達の世話をしてたときに倒れて……。とっくに許容範囲を過ぎてたんです。だけど、私の前では何時も元気で……。
私は直ぐに村の病院にテレポートして、お父さんを診て貰おうとしました。
でも、医者は私の事なんか無視して、お父さんを診ようともしませんでした……。
そして、私のお父さんは死にました。村の皆に見殺しにされて……。
なんでも、私の両親は駆落ち夫婦で外部から来た余所者だったから、村の皆には嫌われていたそうです。
お父さんが死んで、身内もいなかった私は村のとある民家に引き取られました。
最初の内は皆、私に優しくしてくれましたけど、暫く経つと、私は奴隷のように扱われました。
田畑の手伝いを大人並に手伝わされ、駆落ち夫婦の子供はゴミと同然だ、と、言われながら暴力を受けて……。
私には自己再生が使えたらので傷跡は残りませんでしたが、心の傷跡は癒えませんでした。
その為……誰も信用出来なくなりました。頼れるのは自分だけだ、もう誰とも関わりたくない、と、思うようになりました。
自殺しようと思ったときもありました。だけど、折角、お母さんから授かった命を無駄にしたくはありませんでした。
そして、私がとった行動は一つ、この村から逃げることでした。
今、私の後ろにあった家を壊して、お父さんとお母さんの形見の千冊以上の本と一緒に逃げました……。
そして、今、住んでいる洞窟で私は孤独に住んでいるという訳です……」
彼女が言い終えると、風が吹いた。だけど、この風は冷たくて、僕は寒気がした。
「……寒くなってきましたね。帰りましょうか?」
ミュウは心なしか冷たく言う。それとも、僕の気のせいなのだろうか。
「……うん」
僕が答えると、再び、冷たい風が吹いた。




ミュウはあの日、誰とも関わりたくないと言った。
だから、僕はミュウの事を学校の皆、村のポケモン達、姉、両親でさえも話していない。
僕の心に引っ掛かっていたものがある。それは、他人は信用出来ないというミュウの言葉……。
この言葉が本当なら、僕は信用されていないという事になる。それは、僕にとって、何より悲しい事だ……。
でも、ミュウの言葉は矛盾しているんだ。その証拠に僕の手元にはミュウの本がある。
正確には、ミュウの両親の物で、さらに形見でもある。
ミュウが僕に自分の事を話す前に、ミュウが貸してくれた物だ。普通、形見の物を信用していない者に貸す訳がない。
……ミュウは僕の事信用してくれてるのかな。



ミュウが自分自身の事を僕に話してからも、ミュウは以前と変わらぬ様子でいる。
それはそれで、良いことだけど、やっぱりミュウの本心が知りたい。僕の事どう思っているか……。
僕は放課後、何時も通りにミュウの家に行った。ミュウが貸してくれた形見の本を持って……。




「いらっしゃい、ピカチュウ」
ミュウは何時も通りに出迎えてくれた。
「……うん、御邪魔するね」
「どうぞどうぞ」
ミュウに招かれ、僕はミュウの家に入った。



僕はミュウのベッドに腰を掛ける。ミュウは僕の隣に腰を掛ける。
「その本、読み終わりましたか?」
ミュウは僕の持っている本に指を指しながら言った。
「……まだなんだ。丁度、半分読み終わったところ」
「ピカチュウのペースで読むといいですよ。本を返すのは何時でもいいのですから」
「……うん、有難う」
「お茶を淹れに行きますね」
ミュウは、ベッドから降りると、お茶を淹れにいく。
僕は独りベッドに取り残された。
駄目だ……。ミュウに聞かなくちゃいけない事が聞けない。
言葉にしようと思っても、言葉にならない。だって、この関係が崩れるのが怖くて……。
胸が苦しくて、苦しくて、たまらなかった。精神的にも、肉体的にも。
呼吸はしている。だけど、酸素が肺に入ってないような気がした。
「はぁ……はぁ……」
僕は酸素を吸う為、呼吸する速度を上げる。
だけど、どんどん苦しくなるばかりだった。
目の前のものがどんどんぼやけていく。死ぬんじゃないかと思った。
いや、いっその事、死んで楽になったほうが良いかも知れない。
所詮、僕は、彼女から信用されてない奴なんだ。
だったら、僕は彼女の友達でも何でもない。赤の他人だ。
そして、彼女がお茶を持って僕の方に来る。ぼやけてて、彼女の体の色ぐらいしか分からない。
彼女が僕の方に近付いてくる度に、どんどん目の前が暗くなっていく。時間は余り無いらしい。
でも、最後ぐらい言わせてくれたっていいだろ?
「だいっ……すきだ…ったよ……」
もしかしたら、彼女には届かないんじゃないかと思うくらいの小さい声で。苦しくて、このくらいの大きさでしか言えなかった。
別に、彼女に届かなくてもいい、言えただけで充分だ。
完全に目の前が真っ暗になると、僕は倒れた。
倒れるときに何か割れたような音がした……。



僕は気が付くと、誰もいなくて、一点の光も射さない、真っ暗な空間にいた。
死後の世界だと、僕は感じた。
皆はお花畑とかイメージするけど、実際はこんなにも空しいものだ。孤独で、闇に包まれているだけ。
僕はもう戻れない。死前の世界に。
まさか、父さん、母さんより先に逝くはめになるとは予想外だったな。
そう、思ったときに、頬に滴が落ちる。
可笑しいな。僕は泣いてなんかないのに。大体、此処では僕の肉体は存在しない筈なのに。
また、僕の頬に滴が落ちる。
雨でも降っているのだろうか?いや、こんな空間では雨なんか存在しないはずだ。
それに、雨が降っていたら、耳か頭が真っ先に濡れるはずだし、雨にしても冷たくない。
頬に落ちた水はぬるかった。まるで、涙のように。
きっと、誰かが泣いているんだ。その涙が、たまたま此処まで届いただけ……。
……でも、僕の死によって、誰かが悲しむぐらいだったら、まだ生きたい。皆には、笑ってもらいたい。……彼女にも。
すると、暗闇の空間に一点の光が射した。小さくて、すぐに消えそうな位の光。
僕は光に向かって歩いた。


気が付くと、仰向けでベッドで寝ていた。 天井からすると、彼女の家だ。
「……夢か……ハハッ……」
僕は微笑した。僕は馬鹿だった。あんなに死後の世界とか、自分は死んだとか言ってたのに、結局は夢だった。
でも、夢で良かったと思う。誰も悲しまないで済んだから……。
「ピカチュウ」
彼女の声を聞こえたかと思うと、彼女は僕に抱き付いてきた。僕は彼女を抱き、目を合わせた。
彼女は震えていて、瞳からは涙が溢れていた。
彼女は泣いていたのだ。
「ピカチュウが倒れてっ……私っ……」
彼女の頬を伝って落ちた涙が、僕の頬に落ちた。
……そうか、夢の中での滴は彼女の涙だったのか……。結局、僕は彼女を悲しませてしまった……。
「……御免、心配かけて。でも、泣かないでよ。ミュウには笑って欲しいんだ」
「……泣きますよ。だって……愛しいポケモンが……グスッ……目の前で倒れたら……」
彼女は僕の事を好きだったのか……。それなのに僕は……。
「……僕はミュウの事を疑っていたんだ。ミュウは僕の事を信じていないんじゃ
ないかって……。僕はミュウの事を信じることが出来なかった。最低だよ、僕は………」
そう、最低なんだ。彼女の事は好きなのに、心の何処かでは疑っているなんて。
「いいえ、私の言い方が悪かったんです……。ヒック……私があの時にちゃんと言っておけば……」
彼女の涙で僕の体毛はびしょ濡れだった。こんなに悲しませたのは僕のせいだ。僕が悪い。
「ミュウ、自分の事をそんなに責めないで……。全部、僕が悪いんだ。
ミュウを信じれなかった、悲しませてしまった。これらは、僕の罪だ。だから、僕は償うよ。ミュウの望む事なら、何でも……」
「えっ、でも……」
「いいんだ。……それに、僕はまだミュウに御礼をしていない。 初めて会った日の御礼をね。
ミュウは要らないと言ったけど、僕は御礼をしたいと思ってる。だから、ミュウの望む事、何でも言っていいよ」
多分、いや、必ず、彼女の望む事は、僕の望む事と一緒だから……。彼女の事を信じているから分かる。
「……私と交えてくれませんか」
彼女は頬を赤く染めながら、小声で恥かしそうに言った。
「……分かった」
僕は彼女の事を見つめる。彼女は僕の事を見つめる。
彼女の頬は紅潮している。きっと、僕もそうなのだろう。
彼女が目を閉じると、僕の顔に涙が落ちた。まだ、彼女は泣いている。それを止めるのは僕の役目。
僕も目を閉じた。
彼女の口と僕の口との距離がどんどん短くなって、ついには、無くなった。
ただ、重ねるだけ。重ねるだけだけど、心地良くて温いキス。
だんだん、彼女の震えが収まっていく。安心してくれたのかな……。
そして、僕達は口を離した。
キスしている時間は短めだったけど、僕にはとても長く感じた。
彼女と僕は目を開けて、互いの姿を確認する。
もう、彼女の瞳からは、涙が落ちていなかった。そして、彼女は僕に微笑んだ。
この笑みは僕が欲しかったもの。彼女には笑って欲しいから。
僕も微笑んだ。彼女が笑ってくれた事が純粋に嬉しかったから。
再び、お互い、目を閉じる。
口と口が近付いていって、そして重なる。
今度は重ねるだけじゃない。大人のキス。淫らなキス。
自分の舌を彼女の口内に入れる。
彼女は自分の舌を僕の舌に絡ませ、唾液を僕の口内に送り込む。
僕も唾液を彼女の口内に送り込む。
お互い、興奮してきて、息遣いが荒くなっていく。それほど、僕達には刺激的だった。
そのせいで、僕のモノは段々、肥大化していく。そして、彼女の下腹部辺りに当たった。
ムードのぶち壊し……と、思ったが、彼女は気にせず、むしろ、先程よりも積極的に舌を絡ませてくる。
この態度から、僕は彼女が喜んでいる事を感じ、彼女に応えるように舌を絡ませた。
お互いの唾液を吸いあったり、口内を味わったりした。
一通り、行為を終えた後、お互い口を離し、目を開けた。
互いの口の間には、唾液で作られた橋が掛かった。電灯で、唾液の橋はキラキラ光る。
しかし、そんなに長くは持たず、重力で橋は崩れ、僕の体毛を汚した。
その光景を見た後、彼女は僕を抱擁するのを止めたので、僕も止めると、彼女は僕のモノが見える位置に移動した。
「結構、大きいんですね……」
彼女が頬を紅潮させながら、凝視する。
彼女が頬を赤らめながら、凝視するものだから、僕のモノは益々、立派になっていく。
彼女は更に大きくなっていく僕のモノを無言で見つめていた。
僕のモノの変化が終わると彼女は口を開いた。
「……こんなに反り立っていて、痛くないんですか?」
僕は自分のモノをチラッと見て、答えた。
「……痛くは無いよ」
彼女は引き続き、僕に問う。
「……それを手で…やったり、口で…やると、気持ち良いんですよね?」
「……まぁ、そうだね」
僕だって、自慰経験はあるから気持ち良いということぐらい分かる。……口は自分で出来ないからやった事は無いけど……。
彼女が僕のモノを手に取り、小声で言った。
「……気持ち良くさせますね」
彼女は僕のモノを手でぎこちなくシゴく。
「……んっ」
僕は喘ぎ声を漏らし、快感を味わう。
やっぱり、自分でやるよりも気持ち良い。彼女にシゴかれているという状況で興奮していることもあるかも知れないが。
「気持ち良いですか?」
彼女に上目遣いで問われた。
「うん。……とってもね」
上目遣いの彼女はとても愛くるしい。
彼女は笑みを浮かべ、答えた。
「そう、良かった……。ピカチュウにそう言って貰えると嬉しいです……」
彼女はシゴくのを続ける、が、途中で止めた。
すると、彼女は指で僕のモノの先端を弄った。
彼女は指先についた液体を見て言った。
「何でしょう、この液体……」
彼女は疑問に思いながらも、指先についた液体を指で弄んでみる。
「それは、我慢汁って言うんだ。正式名称はよく分からないけど……」
「我慢汁ですか?」
我慢汁と聞いた彼女は指先についた液体を舐めてみる。すると、彼女は頭に、『はてな』でも出てきそうな表情をした。
「そう、大体、射精が近いときとかに出るんだ」
僕の乏しい知識じゃそんな詳しくは教えられないが。
「じゃあ、ピカチュウは射精が近いのですか?」
「……うん」
彼女に直球で聞かれ、僕は赤面しながら、素直に返答した。
「じゃあ、口でやってもいいですよね……」
彼女はそう言うと、僕のモノを咥える。
「……くぁっ」
彼女は舌で僕のモノを舐める。口を動かして、僕のモノをシゴく。
そして、次々と滲み出てくる我慢汁を吸っていく。
初めてのフェラに、僕は身を快感に委ねていた。手とは比べ物にならない。
愛しい彼女が、嫌な顔せずに、むしろ嬉しそうな表情をして僕のモノを咥えている姿は淫らで、僕をより一層興奮させる。
顔射して彼女の顔を汚したい、いや、口内に射精させて彼女に僕の白濁液を飲ませるのもいいかもしれない。
そんな、変態な発想が脳裏を過る。
僕は顔をぶるんぶるんと横に振って、発想を捨てようとする。
僕は何を考えているんだ。自己中心的になっちゃいけないのに。自己中心的だったからあんな夢を見たのに。
あの時、僕は彼女の事は信じられないって、勝手に決め付けて、勝手に現実から、いや、世界から逃げた。
あの夢は僕が勝手に作り出したもの。
あの空間が真っ暗だったのは、自分の事しか頭に無くて、他のポケモン達の事なんて考えて無かったから。
自分の事しか頭に無いのだったら、他のポケモン達を見る為の光なんて要らないから。
だから、あの空間は真っ暗だった。僕はそう推測する。
だから、僕は決めたんだ。あの夢を見て。
自己中心的になってはいけない。他のポケモンを思いやらないと、と。
それなのに、僕は自分勝手に彼女の事を汚そうとしている。
決めるのは彼女だ。僕じゃない。
「このまま、口内に出していいの?」
僕は彼女に聞いた。
「ふぁい……。いっふぁいらしてくらさい……」
彼女は僕のモノを咥えたまま答えた。
そして、彼女は僕の敏感な裏筋の辺りを舐めた。
幾度も幾度もその部分を集中して舐める。
勿論、敏感な所を何度も舐められては、耐え切れる訳が無く、僕は彼女の口内に勢いよく白濁液を出した。
「あっ……くうぅっ」
「んっ……んんっ」
彼女は僕の白濁液を喉を鳴らしながら飲んでいく。
しかし、量が多いせいか、口元から白濁液が垂れ、彼女の身体を汚す。
僕は彼女の口内から僕のモノを抜いた。
僕のモノは白濁液で汚れていた。
僕は僕のモノについた白濁液を拭き取るため、ティッシュを探す。
だけど、辺りを見回してもティッシュのある場所が分からない。
彼女に聞こうと思った時、彼女が僕のモノを舐めた。
彼女は僕のモノについた白濁液を舐める。
彼女が舐める度に快感が伝わるから、射精して萎え始めていた僕のモノは、再び固さを取り戻していく。
そして、僕のモノが綺麗になった。
「綺麗になりましたよ……」
彼女は身体を起こしながら言った。
「うん……有難う」
僕は仰向きから、彼女と向き合う体勢になる。
「此処についてるよ」
僕はそう言って、彼女の口元についた白濁液を舐めた。
白濁液は何とも言えない味だった。
「……僕のやつ不味くなかった?」
「美味しかったですよ。ホットミルクとは違う味でしたけど」
僕にとっては不味くても、彼女が美味しいと言ってくれればいいや。
「あの……こっちの方を慰めてくれませんか?」
彼女はそう言って、尻尾で秘部を指した。
彼女の秘部はもう既に濡れていて、秘部から愛液が垂れてベッドのシーツを汚していた。
そんな光景を見れば、勿論、興奮する訳で……。
「……きゃ」
僕は彼女を押し倒した。
そして、僕は真っ先に彼女の秘部に指を入れた。
「あっ……」
彼女の秘部は熱く、入れた指に愛液が絡みつく。
「すごく、濡れてるね。僕のモノを咥えて興奮したの?」
彼女は恥かしそうに頬を紅潮させて、首を縦に振る。
彼女のこの仕草が可愛いなぁ、と、思ってしまう。
僕は指を秘部出したり入れたりして動かす。彼女に気持ち良くなって貰う為に。
「んっ……ああっ……」
彼女は艶っぽい声を出す。気持ち良くなっている証拠だ。
洞窟内は彼女の喘ぎ声、秘部から発せられる淫らな音で満ちる。
僕はもう片方の手で彼女の胸を擦る。
胸の膨らみはあまり無い。けど、突起物は起っていて固い。
突起物を摘んでみる。
「んあっ……ふぁ……」
やはり、敏感な所らしく、彼女は喘いだ。
僕は胸の突起物を集中的に弄る。摘んだり、擦ったりして。
「ああんっ……っああ……」
彼女は快感に支配されてく。目は虚ろになり、口元から涎が垂れ、秘部から愛液
がどんどん垂れ、止まる気配が無い。
彼女は僕の白濁液は美味しいと言った。だったら、僕も彼女の愛液を味わいたい。
そう思い、僕は指を彼女の秘部から引き抜いて、顔を彼女の秘部に近付ける。
僕の興奮が最高潮に達する。こんなに近くで雌の性器を見たのは初めてだからだ。
僕なんかで汚していいのだろうか、と、思う程、彼女の性器は綺麗だ。
だけど、僕は迷いもなく彼女の秘部を貪るように舐めた。
「ふぁっ……あっ……らめぇっ……」
彼女の味は僕にとって美味しかった。病付きになるくらいに。
僕は秘部にある小さな豆を味わうことにする。舌で転がしてみたり、舐める。
「そこっ……苛めちゃっ……らめええええっっ」
小さな豆は、友達から聞いていた通り、雌にとって一番敏感な所だった。
その証拠に、彼女は絶頂を迎えた。
秘部から愛液が飛び散り、僕の顔にかかる。シーツに愛液が染みる。
僕は身体を起し、腕で顔についた愛液を拭う。
「ピカチュウ……激しいですよ……」
彼女は疲れた様に言った。
それに彼女の呼吸は荒かった。
「御免、やり過ぎた……」
「謝らなくていいですよ……その、気持ち良かったですし……」
そう言って、彼女は微笑んだ。
僕も釣られて笑みを浮かべた。



前戯は終わった。残すは本番だけになった。
お互い、ベッドの上で座りながら向き合っている。
彼女の身体が僅かながらも震えている。やっぱり、怖いのだろう。
僕は彼女を抱き締める。『大丈夫だよ』って。
抱き締めると彼女の身体の震えが徐々に収まっていく。
彼女の身体の震えが止まると、彼女は仰向きになり、受け入れる体勢になった。
僕は目で『入れるよ』の合図をする。
彼女はゆっくりと首を縦に振った。
僕は彼女の秘部に僕のモノを宛行う。
そして、彼女に痛みを与えない様にゆっくりと慎重に入れていく。
それでも、彼女は初めて雄の性器受け入れる為、痛そうな表情をしている。
そして、僕のモノが何かを裂いた。
「痛いっ……」
彼女はとうとう耐えきれず、声をあげた。
彼女の目には涙を浮かべていた。
結合部からは微量の血が垂れる。血は彼女の辛さを物語っていた。
僕は入れるのを止めた。せめて、痛みが和らいでからにしようと思ったから。
だけど、彼女の目は違かった。『大丈夫だから、入れて』と、言っていた。
僕は首を縦にゆっくり振って、行為を再開した。
慎重に慎重に入れていく。
そして遂に、僕のモノが彼女の膣奥に到達した。
彼女は泣いた。今度の涙は嬉しさのものだった。
愛しいポケモンと一緒になれた。待望んでいた事が遂に叶ったから。
僕達は暫く祝福のキスをした。
重ねるだけだけど、温みのあって、心地よいキスだった。
キスを終えて、僕達は向き合い見つめあう。暫くの間の後、彼女は首を縦に振った。
僕はそれを確認すると腰をゆっくり動かし始めた。
彼女の膣内はキツくて、僕のモノを締め付ける様だった。
彼女はまだ痛そうな表情をしている。
彼女には早く楽になって貰いたい。
不器用に何度も腰を振って、彼女の膣奥を何度も突く。
「あっ……ああっ……」
彼女は艶っぽい声を漏らす。遂に、痛みから快感に変わったようだ。
僕も段々慣れてきて、滑らかに彼女の膣奥を突く。
結合部から淫らな音が発し、淫液が垂れる。
お互いの身体は火照っていて、息遣いも荒かった。
急に、彼女の長い尻尾が僕のジグザグの尻尾に絡み付く。
お互い、尻尾は敏感なので、尻尾から刺激が伝わる。そして、二度と尻尾を離したくない衝動に駆られる。
僕は前のめりになって、彼女とディープキスをする。舌と舌を絡め、唾液を交換し合う。
上の口、下の口、尻尾、それぞれが彼女と一緒になる。
理性なんてとっくに無くなっている。
僕達は本能のままに互いを愛し合い、互いに快感を味わっていた。
次第に僕は射精感を込み上げる。彼女も絶頂に近い様だった。
僕は彼女の目を見る。彼女の答えは『出していいよ』だった。
僕はさっきよりも激しく突く。彼女が壊れるくらいに。
「くっ……あっ……」
「んああっ……あああっ……」
お互い、口を離して喘ぎ声をあげる。
そして、最後のとどめとして、彼女の膣奥を深く突いた。
「くうぅっ……」
「あああああっっっ……」
お互い、同時に絶頂を迎えた。
僕は疲れて、彼女と抱き合いながら横に倒れる。
彼女の膣内に勢いよく大量の白濁液が注がれる。
そして、彼女の膣内は許容範囲を越え、結合部から白濁液と淫液が混じった液体が垂れる。そして、その液体はシーツに垂れた。
洞窟内は淫臭が立ち籠めていた。
だけど、僕達は気にしないで、そのまま眠りについてしまった。尻尾と下の口が繋がったまま……。




目を開けると、彼女の顔があった。彼女は幸せそうにスヤスヤと眠っている。
彼女の寝顔が可愛いくて、僕は彼女の事を撫でる。
「……んっ」
彼女が寝言を漏らすと、ゆっくりと目を開けた。
彼女は暫く、目を開けたままボーっとしていた。恐らく、意識が覚醒していないのだろう。
段々、目が覚めてきたのだろう。彼女は頬を紅潮させていく。
それもそのはず、僕達は抱き合いながら寝ていたから。
彼女が口を開く。
「お…おはようございます」
「おはよう」
僕は挨拶を返し、彼女に微笑む。
彼女も釣られて微笑む。
僕達は暫くこのままでいた。



「おまちどうさま」
そう言って彼女が料理を運んでくる。
運ばれてきた料理はとても美味しそうだ。
「ミュウは凄いね」
「いえ、それ程でもないですよ」
彼女は照れる。
「じゃあ、食べましょうか?」
彼女は椅子に座りながら言う。
「うん」
「「頂きます」」
僕は彼女の料理を食べる。彼女は心配そうに僕の事を見ていた。
「美味しいですか?」
彼女は不安げに聞いた。
「うん、美味しいよ」
僕は即答した。もしかしたら、お母さんのより美味しいかもしれない。
「そうですか。そう言って貰えると嬉しいです」
彼女は笑みを浮かべる。
そして、彼女も料理を食べ始める。
こうして、考えると僕達は新婚生活をしているみたいだった。まぁ、結婚なんて先の話だけど。
「そういえば、家に帰らなくていいんですか?」
彼女の何気ない質問。
「え?」
僕は思わず、質問を質問で返してしまう。
「いえ、ご両親が心配しているのではないかと思って……」
「……」
僕は思わず無言になる。
無断で彼女の家に止まったし、ましてや、朝帰りなんて……。
お母さんのボルテッカーを食らうかも知れない……。
「あはは……やばいね……」
僕は思わず苦笑しながら答える。
下手をすると、今日が僕の命日だし……。
「あの、私もピカチュウの家に行っていいですか?」
「え?どうして?行ったら怒られるよ」
「私にも責任がありますし……それに、挨拶ぐらいは……」
「ミュウがそう言うんだったら、一緒に行こうか」
「はい」
取り敢えず、今は、何れ味わう、新婚生活を味わっておこう。



家の前にはお母さん、お父さん二匹とも居た。姉は……多分まだ寝ているのだろう。
お母さん、お父さん、両方とも笑ってる。初々しいカップルでも見るかのように。
僕達は肩を並べて、家に近づく。彼女の手を握りたかったけど、両親の前では恥ずかしい。
背中に冷や汗が流れる。ぶっちゃけ、怖い。朝帰り、寝泊りなんてした事が無いから。
そして、僕達は両親の前に立った。
「おはようございます」
「……」
彼女は僕の両親に挨拶したが、僕はなんとなく挨拶ができなかった。
「ピカチュウ、朝の挨拶は?」
僕の態度を見て、お父さんが言う。
「……おはよう」
僕はぶっきら棒に挨拶をした。
「そちらの方は初めましてだよね?僕はデンリュウ、彼女が僕の妻のライチュウ」
「あっ、はい。初めましてミュウです……」
彼女、両親はお辞儀をする。
「それにしても、馬鹿息子には似合わない彼女を連れてきたね~。その様子だと昨日は盛んだったのかな?」
お母さんが冷やかす言葉を投げる。
僕と彼女はお互い、頬を染める。本当の事を言われてなにも言い返せない。
「初々しいふたりだね。それにしても」
「まぁ、あたし達程じゃないかな?」
「それにしてもピカチュウが彼女かぁ……。孫の顔を早く見たいなぁ」
「そうねぇ……。馬鹿息子には似てほしくないけど」
その後、僕の両親はふたりで話し合う。正直逃げたい、恥ずかしい。
「えっと、ミュウさんはこの辺に住んでるの?」
お父さんは彼女に聞く。
「はい。訳があって、見つかりにくい所に住んでますけど……」
彼女は質問に答える。
「学校は何処行ってるの?」
今度はお母さんが聞いた。
「訳があって、行ってないです……」
彼女は答えづらそうに答えた。
「その訳、話してくれる?」
お母さんは彼女に優しく聞いた。
「はい……」



彼女は僕の両親に自分自身の事を話した。
両親を幼い頃に亡くしたこと。
前に住んでいた村では酷い扱いをされていたこと。
それを境に誰とも付き合いたくなくなったこと。
そして、この村に逃げてきたこと。
前に僕に話してくれた事すべてを僕の両親に話した。
「……そう。大変だったね」
「でも、大丈夫よ。この村ではそんな奴居ないし、居たら、あたしが潰すから」
お父さんはちゃんと同情しているけど、お母さんは言ってる事怖いし。
「それにこれからは、あたし達の事をお母さん、お父さんって思っていいんだよ」
お母さんは彼女の事を抱きながら言った。
「……有難う御座いますっ」
彼女はお母さんの胸で泣きながら答えた。
その光景を見て、僕とお父さんは居づらかった。



「それにしてもこの馬鹿の事どうして好きになったの?」
お母さんは僕の事を指しながら、彼女に聞いた。
お母さん、さっきから思ってたけど、僕の事を馬鹿馬鹿って言いすぎだよ。
「初めてお会いしたときから、何かを感じていたんです……。よく分からないですけど、前の村の方々とは違うと感じました。
毎日、ピカチュウと会っていくうちに段々惹かれていったんです」
「成る程ねぇ。道理で馬鹿があれ程好きな野球をしない訳だ」
「あの野球って?」
彼女はお母さんに聞く。
「あの馬鹿は放課後に毎日野球をしてたんだよ。でも、ある日を境に全くしなくなったから、何でだろうと思ってたら……。
貴女に会いに行ってたからかぁ……。あの馬鹿も隅に置けないねぇ……」
「そうだったのですか……」
そう言うと、彼女は僕の事を見た。
僕は彼女に向かって微笑む。
だって、君を独りにしたくなかったから。
「貴女はあたし達の学校に来る?ずっと馬鹿の側に居られるよ」
お母さんは彼女を学校に誘う。
「学校ですか?」
「そう。学校行ってないんでしょ?嫌なら行かなくてもいいけどね。
でも、あたし達の教え子に貴女を傷つける奴なんか居ないし、楽しい奴らばかりだよ」
「えっ、教え子って……」
彼女が教え子と聞いて戸惑う。
お母さんは自信満々に答えた。
「あたし達は学校経営者兼先生ですから」




「は、初めまして……。ミュウと申します……。よ、よろしくお願いします……」
黒板の前で彼女が挨拶をする。僕と初めてあったときのような挨拶だった。
やっぱり、彼女は緊張しているのだろう。
そして、クラスは拍手の音で満ちる。
「じゃあ、ミュウさんの席はピカチュウの隣ね」
お母さんが空席を指しながら言う。
「はい……分かりました」
彼女は僕の隣の席に近づき、僕の事を見るとお辞儀した。
僕もお辞儀を返す。
彼女が席に座る。
「僕はピカチュウ。よろしく!」
僕は彼女に挨拶をする。
「よろしくお願いします」
彼女も僕に挨拶をする。この彼女の挨拶は、さっきの自己紹介のときとは違って、何時も通りの声の調子だった。
多分、気づいている奴は居ない。僕達は知り合いだって。いや、知り合いじゃない恋人同士だって。
「じゃあ、今日の科目は数学から。皆、教科書出して」
お母さんがクラスの皆に言う。
皆は教科書を出す。勿論、僕も。
だけど、彼女は教科書を持っていない。言うべき言葉はやっぱりこれだ。
「僕の教科書見る?」
僕は彼女の目を見ながら言う。
「はい。有難う御座います」
彼女は僕の目を見て、御礼する。



お母さんは僕達の光景を微笑ましく見ていたそうな。


番外編ハロウィン 


 夕日が沈んだ黄昏時、僕は校庭に唯独りぽつんといた。
 何時も一緒にいる彼女、ミュウは、教室に忘れ物をしたとか言い、取りに行ったきり帰っては来ない。
 待たされて、かれこれ十分以上は確実に経過している。こうも戻って来ないとなると、流石に心配になってくる。
 様子を見に教室へ行こうか、そんなことを考えている矢先に、昇降口から誰かが出てきた。
 黒いマントを羽織り、胸に付けリボン、黒い三角帽子で表情を隠しながら、僕の彼女は出てきた。
 所謂、コスプレという奴だろう。今日はハロウィンだし、魔女の格好をしても違和感は無い。現に僕の母は、毎年飽きもせずにやっている。
 それに、これがまた可愛いんだ。母とは比べ物にならないくらいに。いや、母は比較の対象じゃないか、じゃあ学校中、いや世界中の誰よりも可愛い。
「あの、どうですか?」
 恥ずかしそうに俯きながら、彼女は訊いてくる。少し怖い所為なのか、声色を震わせながら。
「可愛いよ、すっごく……」
 僕は思ったことを素直に述べた。だって、本当に可愛いのだから。
「本当にですか? 嬉しいです……」
 僕の言葉を聞いて、彼女は顔を上げる。これがまた、彼女は上目遣いをしながら答えてくるから、僕はどぎまぎしてしまう。
「あっ、えっと……とりっくおあとりーと?」
 彼女は頭にハテナでも浮かべた感じに言う。多分、トリックオアトリートの意味を知らないで言ったと思う。
「トリックオアトリートはお菓子を貰うときに言う言葉だよ。……でもまぁ、いまはお菓子なんか持ってないからあげられないけど」
「あ、そういう意味なんですか……。でも、持ってないなら、悪戯しちゃいますよ」
 彼女はそう言って、僕の前へ一歩進むと、僕の唇を奪った。そして、躊躇うこともなく、舌を侵入させてくる。対する僕も、舌を彼女の舌に絡ませて応える。
 これって悪戯なのかな。でもまぁ、そんなのどうでもいいや。僕はそんなことを思いながら、彼女と共に“悪戯”に夢中になっていった。
 お互いに声を漏らしながら、唾液を交換し合い、口内を舌で味わっていく。そんな大人がするような行為を僕達はやっている。多少の後ろめたさはある。だけど、彼女の満足気な表情を見てしまえば、そんなのはどうでも良かった。
 口と口同士を離せば、透明な橋が架かる。それはまるで、僕と彼女を繋いでいる様に見えた。自分で言うのもアレだけどさ。
 そんなふたりだけしかいない校庭はとても静かで、唯一音があるとするならば木の葉が揺れる音だけであった。そんな木の葉もすっかり秋色へと染まっていた。
 そんな秋の情景が突然歪み始める。だけど、何度も体験していることだから驚きはしない。彼女の特技、テレポートだ。

 気が付いたら、見覚えのある岩肌の天井を眺めていた。そして覚えのある本棚等々。テレポート先は岩屋で特徴的な彼女の家だった。
 僕はどうやらベッドの上で寝そべっているらしい。その証拠に、彼女から見下ろされている。
 僕は状態を起こそうとする。しかし、起こすことは出来なかった。それも、何度やっても、精一杯に力を入れてみても。
 その光景を見て、彼女はクスクスと笑う。ただ無邪気に笑うのではなく、何やら邪気でもあるかの笑みを浮かべながら。
「何をやったの?」
 僕は恐る恐る訊いてみる。
「金縛りですよ。私、言いましたよね? ピカチュウに悪戯をするって」
 僕はその言葉を聞いて、既視感が過ぎった。かつてに体験した事があるような無いような、何とも言えない感覚が襲う。
 とにかく、手や足は動かないから、彼女に抗うことは出来ない。僕はこれから何をされるのだろうか?
 彼女の手が、あるモノに向かって伸びていく。そして、それを優しく握る。
「気持ち良くなって下さいね」
 彼女はその一言を告げると、僕のモノを上下に動かし始めた。
「あぅ……っあ……」
 僕のモノは彼女によってみるみるの内に大きくなっていく。まるで欲望を露にするかの様に。
 経験数が乏しい僕にとっては、手だけでも充分な快感が走る。その所為か、みっともない声を漏らしてしまう。
 僕の喘ぐ光景を見て、彼女は何やら満足そうな表情をしている。もしかして、彼女は加虐が好きなのだろうか。いや、こういうことはあまり考え無いようにしよう。
 刺激に反応して、僕のモノからは透明な液体が分泌されていく。彼女はそれを指で弄る。
「我慢汁が出てきた……。それなら……」
 彼女は独り言を呟くと、口を僕のモノに近付けていく。その際に、彼女の吐息が僕のモノにかかる。そして、僕のモノは次第に彼女の口へと飲み込まれていく。
 彼女は僕のモノをアイスキャンディーでも舐めるかの如く、先端の辺りから根元の方までと、隅々まで味わっていく。更には溢れてくる我慢汁も。
 前回に比べると、行為が上手くなっている気がした。前は不慣れた手付きだったのに。だから、より一層、僕はジワジワと追い詰められていく。
 ねっとりと唾液が絡み付いた舌で幾度となくモノを舐めれば、何やら水っぽい音が響き渡り、僕の喘ぎ声と重なって盛り上げる。
 普段は静かなこの部屋も、今となっては著しく変化していた。
 そして、それをはっきりとさせるかの様に、僕の声が響いた。
「あぅっ……ぁああああっっ……」
 久し振りの快感が身体中を巡る。以前、彼女と交わったときと同様の快感が。身体がすっと軽くなるような感じの心地良さ。
 僕のモノから勢い良く発射されたドロドロの白濁液は彼女の口内を汚していく。彼女はそれを吐き出さずに、喉を鳴らしながら美味しそうに飲み込んでいく。
 それでも、溢れ出てしまったのか、彼女の口元からは白濁液が垂れてしまう。そして僕はそれを見ると、普段大人しい筈の彼女が何だか艶やかに見えてしまう。
 彼女は手で、口に垂れた白濁液を拭き取り、跡を取り除くように舌でペロッと一舐めすると、口を開いた。
「お菓子の代わりに濃厚なミルク、ご馳走さまでした」
 彼女は口調では満足しているが、気配からするとまだ物足りなさそうにしている。案の定、僕の束縛は解かれてはいない。それに僕のモノだって未だに元気な様子である。そうすると、おおよそこの後どうなるか想像がついてしまう。
「えっと、やってもいいですよね? 一応、私の此処は準備出来てますし……」
 多少、言葉が婉曲になっているが、彼女の言いたい事は分かった。要するに僕と交わりたい訳だ。
「その前に束縛を解いてよ。動けないからさ」
 僕がそう言うと、一瞬にして身体に自由が戻ってきた。心無しか身体が軽くなった気もした。
 僕は身体を起こすと、彼女の身体に触れて、そのまま前へ体重をかける。彼女はベッドの仰向けとなり、僕は彼女を覆う形となり、先程の立場とは逆転した。
 彼女のしなやかな身体がよく見える。発育途上の胸や、愛液を垂らしている恥部からなにまで僕に晒けだしている。
 そして僕は彼女の恥部にモノを宛行い、無言で彼女の目を見て、入れていいか訊く。すると、彼女も何も言わずに首を縦に振った。ふたりだけにしか分からない暗黙の了解。
 彼女から了承を得て、僕はゆっくりと腰を沈めていく。初めてではないとは言え、経験数の少ない彼女にはあまり負担をかけたくない。
 じっくりと時間をかけて、見事に僕のモノが彼女の恥部に収まった。彼女の方に目をやれば、苦しそうに荒い息遣いをしていたが、彼女の眼は僕に、動いて、と訴えているように見えた。だから、僕は意を覚悟してモノを動かした。
「あぁ……あっ……」
 さっきの僕みたいに善がっている声ではなく、苦しみを帯びた喘ぎ。愛液と言う潤滑油が少ないのか、それとも、まだ少し抵抗があるのかは僕には分からない。しかし、そんな僕にだって彼女の為に打つ手は考えてある。
 僕は彼女の乳房に片方の手を置く。そして、軽く揉んであげる。
「ああっ……」
 すると、僕の行為に反応してか、彼女は身体をのけ反らせる。彼女の対応で刺激を感じているという事が目で見て分かる。
 更に、僕は胸の突起物を優しく摘んでは、玩具のように弄る。其処が彼女の敏感な所だと知りつつも。いや、分かっているからそうした。彼女に楽になって貰おうとして。
 今まで恥部に締め付けられていた僕のモノは少し動かしやすくなった気がする。それに対して彼女も心持ちか快感を味わうようになってきている。
 僕はモノをピストン運動し、それと平行して彼女の胸を弄ぶ。その行為を何度も繰り返しては、彼女と共に快感を感じていく。
 お互いの身体が炎タイプであるかのように、熱く、火照っている。肌寒さなんてろくに感じさせないくらいと言うよりかは、汗をかいてしまう程に。
 以前、交えたときと同様に、彼女が自身の長い尻尾を僕の角張った尻尾に絡み付いてくる。お互い、尻尾は敏感で、こうして絡み合っているだけでも、こそばゆい感じがして止めたくなる。しかし、何故だか解きたくないと言う衝動に駆られて、僕はジレンマに陥ってしまう。
 そんな考えを振りほどきたくなって、僕は彼女の口を奪う。舌を侵入させて、彼女のものに絡み付く。唾液だって、二つのものが交ざって一つとなっていく。何からなにまで彼女と一緒になっていた。

 段々、終着点へと近付いてきた。僕の身体、彼女の身体、互いに果てることを望んでいた。
 だから、僕は最後に向かって、ひたすら乱暴に腰を沈めることに努める。
 そして、僕達は快楽へと陥った。身体全身に快感が駆け巡り、まるで何かの魔法にでもかかったかの様に、気分は心地好く、意識は現実ではなく夢みたいな何処かへと飛んだ。

 結合部からは卑しく、とけたホワイトチョコレートが垂れていた。


感想、コメントご自由にどうぞ。


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Last-modified: 2013-05-28 (火) 00:00:00
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