信楽焼の第一回短編小説大会参加作品
『からたち島の恋のうた・怒涛編』
~ピッピ人形~
※注意書き
本作品は官能小説です。
非常に特殊な趣味の他、強姦、口戯場面なども含んでおりますのでご承知ください。
暗い、暗い闇の中で、小さく灯された明かりが、部屋の中を映し出す。
窓を閉ざされ、どこかもわからない殺風景な部屋の中。
その中央に置かれたベッドの上に、横たわる影があった。
大きさは60cmほど。全身が薄桃色の丸まるとした姿でピンと尖った耳の先端だけが黒い。
前髪と尻尾の毛は長くフワリとした巻き毛で、いかにも触り心地が良さそうだ。四肢も翼も身体に比べて小さく、見るからに可愛らしい。
それは、そんなポケモンの姿を取った人形だった。
それが人形である証拠に、その美しい双眸はただ開かれたまま天井を見上げるのみで、明かりを灯した部屋の主が顔を覗き込んでも何を応えることもなく微笑みだけを湛え続けている。
「さあ、今日も遊ぼうね。僕の可愛いピッピちゃん」
部屋の主――〝彼〟は、その人形のことをそう呼んだ。
●
〝ダッチワイフ〟と呼ばれる性具がある。寂しい男が女性の代わりに抱く人形のことだ。
ピニールで出来た人型の風船で、股間にオナホールをセットするための空間がこしらえられていて、イラマチオプレイをさせるために口をぽっかりと開かせた、ルージュラを連想させる不気味な人形……を連想される方が多いだろうがそれは安物の話。もう少し高級品だと材質は布クッションやウレタン、最高級品ではシリコンなどが使われ、股間の穴も見た目重視の一体型や、外性器だけリアルに造形されて入れる場所がない鑑賞のためだけの物もあったりする。そしてルックスもリアルな美少女風からマンガチックな顔まで、とにかく見た目の愛らしさを重視した物が増えているのだ。
動物用のダッチワイフも存在する。家畜の人口繁殖のため精子を採取する際に種牡に抱かせて射精を促す〝偽牝台〟という物がそれだ。
しかし、このピッピ人形に限っていえば〝偽牝台〟などという呼称は明らかに不適当だろう。実物大のサイズに加え細部までリアルな造形と感触を持ち、所有者である〝彼〟の想いのまま愛されるためだけに存在しているこれは、まさしくこう呼ばれて然るべき物だった。
〝ラブドール〟と…………
●
「今日は後ろからさせてもらうよ。ほら、4つんばいになって」
甘い声で囁きながら〝彼〟はピッピ人形を持ち上げて裏返し、四肢を全て身体の前方へと折り曲げてベッドに接地させた。更に顔を持ち上げて少し後ろに振り向く位置にして、腰を反らせてお尻を突き出させる。高級な〝ラブドール〟は内部に骨格や間接が仕込まれているため、こうしたポージングも自由自在に取れるのだ。
「あぁ、色っぽい格好だなぁ……ゾクゾクするよ……」
〝彼〟は陶酔した表情でしばらく人形の顔を眺めていたが、そのうち身体全体を嘗めるように鑑賞しながらゆっくりと後ろに回り込み、お尻の前まで来ると尻尾を持ち上げてその下を覗き込んだ。
「わはぁ……ピッピちゃんの大事なところが全部丸見えだぁ……」
ピッピ人形の股間部は、別途用意したホールを取り付けるタイプではなく、ホールがドールのその部分に完全に組み込まれている仕様になっていた。使用後に本体ごと洗わなければならない手間は大きいが、使用感のリアリティはこちらの方が遥かに上だ。
〝彼〟の指が、その股間部へと伸びる。
「ふふっ、ぷにぷにっとしてて柔らかいなぁ。触ってるだけで気持ちいいよ」
ホール部分は、造形も実に緻密に出来ていた。
スッパリと奇麗に割れたスリット。
柔らかなそこを開けば、淫らに紅く色付いた花弁が顔を覗かせる。
その一端では、陰核が恥ずかしげに包皮に身を包んでいる。
その陰核の後ろに隠れている尿道口や、スリットと尻尾の間に咲いた菊門のすぼまりさえも。
まるで嗅げば臭いまでするのではないかと思わせるほどに、全てが本物さながらに作り込まれているのだった。
「美味しそうだなぁ……食べちゃいたい……食べても、いいよね」
興奮に膨らんだ〝彼〟の鼻面が人形の尻の間にもぐり込んだ。めくれ上がった唇がホールにしゃぶりつく。唾液がだらだらと漏れてそこを濡らし、赤黒い舌が別の生き物のように蠢き回った。
花弁が押し開かれる。あらわにされた陰核が舌と唇とで弄ばれる。ホール内部にまで舌がねじ込まれ、内壁の襞の一つ一つに唾液が絡み付いて行く。
やがて〝彼〟が顔を離すと、たっぷりと注がれた唾液がホールから溢れて、小水のように滴り落ちた。
「こんなに濡れちゃって……気持ち良かったんだね、ピッピちゃん」
荒い息遣いで喘ぎながら〝彼〟が呟く。瞳が爛々と滾っている。
「もう、我慢出来ない……挿れるよ……」
〝彼〟の黄土色の脚の間で、猛り狂った雄が弓なりに屹立した。
既に先走りを滴らせている鈴口がホールにあてがわれ、唾液の潤いに導かれて花弁の内へと滑り込む。
「あぁ……ピッピちゃんの中、今日はすごく温かい……」
口戯で吹き込まれた熱が、人形の胎内に写し与えられたのだろう。そんなほのかな温もりに包まれて〝彼〟の雄は進行する。3Dスパイラルにうねる細路を掻き分けて、幾重にも連なる襞に擦られながら、やがてポルチオ突起*1の感触すら感じられる最深部へとそれは到達した。
「奥まで、入っちゃった……あぁ……」
愛しげに〝彼〟はピッピ人形を掻き抱いた。ふたまわりほど大きい〝彼〟の身体が人形にすっぽりと覆い被さり、メロメロボディそのままの心地よい感触を全身で味わう。
「ピッピちゃぁん……大好きだよぉ……」
感極まった声を上げ、〝彼〟は振り向かせていた人形の唇に鼻面を寄せて口付けた。そしてそのまま、腰を律動させ始める。
「ピッピちゃん! ピッピちゃん! ピッピちゃん! あぁ、ピッピちゃぁん!!」
切なげな声で人形の名が紡がれる。
その度に腰が打ち付けられ、過熱した雄がホールに突き込まれる。
張り詰めたホールの表面で、掻き混ぜられた唾液が白く泡を立てる。
律動は勢いを増し、雄は更に熱を帯びて、そして、遂に。
「ピッピちゃん!! ああぁぁぁぁあぁーーーーっ!!」
雄叫びと共に、それは脈動した。
頂点を迎えた喜悦の証しが、どくどくとホールの中に注がれて行く。
最後の一滴を放ち終えるまで〝彼〟は人形を抱き締めて快楽の海に浸り続けた。
「あぁぁ……ピッピちゃん愛してる……愛してるよぉ……」
●
ぐったりと萎れた雄がホールから抜け落ち、ドロリとした白い液体が溢れてシーツを汚した。
束の間そのままの姿勢で肩で息をしていた〝彼〟だったが、おもむろに人形の向きを変えて、唾液と精液がベットリと纏わり付いた雄をその顔に近付けた。
「ねぇ、綺麗にしてよ」
ピッピ人形の可愛らしい唇に、ぶらぶらと揺れる雄が押し付けられる。
なすり付けられた愛濁で、人形の口元は無残にも汚された。
だがもちろん〝彼〟がどんなにせがもうと、人形がその唇で雄の汚れを嘗め取ったりすることなどありえない。
人形の唇が、自ら動くはずなどないのだから。
「…………や……いや……」
人形の唇が。
自ら動くはずなどない。
――はず、なのだが。
しかしその唇は確かに動き。
その喉笛は拒絶の言葉を奏で。
「嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
地に着いて動かなかったはずの手は〝彼〟の腕を振りほどこうともがき。
「やめて!! 放して!! 助けてぇぇぇぇっ!!」
虚ろだったはずの瞳は、恐怖と嫌悪とに彩られて。
「どうしてぇ!? なんでこんな、酷い……」
「うるさいなぁ。お前、勝手に喋るなよ」
恐怖と嫌悪に彩られた瞳の前で、〝彼〟の指から下げられた振り子が揺れる。
1回。
2回。
3回揺れた時、その瞳は再び何の感情も示さぬ人形の瞳と化していた。
「お前なんか、イらないよ」
空気が凍りつくような声だった。
それまで人形に向かって囁いていた声と同じ者が発したとは思えぬ、それは冷たい声だった。
「僕がずっとこんなにも想っていたのに、いつも汚物を見るような眼で僕のことを見下して。それなのに、いくらトレーナーの紹介だからって、あんなマリルリなんかと育て屋に行って卵なんか産んできたりして! お前みたいな、誰との卵でもボコボコ産むようなスベタな雌なんかイらないんだよ!! お前は人形のように黙って僕だけに愛されてイればいいんだ!! そうだよ……」
ベッドに転がった人形……否、倒れ込んだピッピを見下ろす〝彼〟――スリーパーの声は、
「そうやっておしとやかにしている君が、一番可愛いんだからさ」
元の甘く優しい声へと、戻っていた。
●
このピッピ人形に〝偽牝台〟という呼称は明らかに不適当だった。
何しろそもそも偽物などではないのだから当然であろう。
スリーパーの身勝手な愛のままに一方的に弄ばれるだけの存在。
〝ラブドール〟今のピッピは最早、それ以外の何物でもありえなかった。
●
「ずいぶん汚れちゃったねぇ。待っててね、今洗ってあげるから」
行為の後、ピッピ人形は風呂場へと運ばれてUの字型の椅子*2の上に脚を開いて座らされていた。
Uの字の窪みの上で丸出しになったその股間に、下からホースに繋がった細長いノズルが差し込まれる。
蛇口を捻り、吹き上げた流水をビデとして、スリーパーはホールの中を指を突っ込みながら隅々まで洗い流した。
その後全身にシャワーをかけ、口元の愛濁も、内股に垂れ落ちていたものも、ベッドに転がった際シーツから付いた汚れも全て流し落とし、ふわふわとしたボディスポンジを用いて跡も残さず拭い取る。
「よし、すっかり綺麗になったよ」
洗い終えたピッピ人形を、スリーパーはマットの上に仰向けに寝かせた。
腰を持ち上げ、脚を開かせてホール周辺を灯りの下に曝け出させる。
「あぁ……本当に綺麗だなぁ……」
じっくりとそこを見つめていたスリーパーの股間で、雄の振り子が再び天に向かって大きく揺れた。
「洗ったついでだ。もう一回しよう。今度は前からいくね……」
石鹸を泡立て、ローション代わりにホールに塗りたくる。奥まで指を挿れて潤滑を確認し、スリーパーはそのままの姿勢の人形にのしかかった。
「泡踊りだね……ふふ、気持ちいいよぉ……」
シャボンの玉を撒き散らしながら、振り子がホールの中で欲望のままに振り乱れる。
「これからも、ずっとずぅっとこうやって愛してあげるからね。愛しい愛しい、僕だけのピッピちゃぁん…………」
甘い、吐き気を催すほど甘ったるい愛の言葉を放ちながら、スリーパーは人形を穢し続けた。
けれどもピッピ人形の虚ろな瞳は。
恐怖も、嫌悪も、悲哀すらも示す事なく。
ただただ、中空に向けて見開かれているだけだった。
~完~
ノベルチェッカー結果
【合計枚数】 15.1枚(20字×20行)
【総文字数】 4273文字
【行数】 301行
【台詞:地の文】 20:80(%)|863:3400(字)
【漢字:かな:カナ:他】 26:53:8:18(%)|1097:2263:324:779(字)
恥ずかしい作品です。
いや、出来がではなく、大会の結果がでもなく、書いてあることそのものが。
どういうことかといいますと、つまり、要するに、ぶっちゃけて言ってしまえば……持っているんですよ、僕www
もう少し具体的なことは、また別の作品でネタにする予定ですのでお楽しみに。
○大会中に頂いたコメントへのレス
>>一番怖いのはお化けよりも人間ということですね
貴重な一票をありがとうございました。
最初に見たときは、本作の悪役はスリーパーなのでもしや他の作品を見て言われているのではないかと焦りました(←リンク先は冗談です。時間的にあり得ません)が、他の大会参加作品と見比べてみることで得心しました。
大会のテーマ『怖い話』に関して他の参加者はお化けや超常現象などの『怪奇』を書いたのに対し、僕だけが普通の人間でも薬などを使って似たようなことをやっても不思議ではないような『猟奇』を書いたと言うことですね。
いつものひねくれ癖が出てしまっていたようです。変態選手権にこっちを出してたら良かったかも知れませんね。今後も頑張ります!
追記・仮面を外した当初この作品は『飛翔編』に入れるつもりでしたが、別のエピソードに絡めるかもしれないので『怒涛編』に変更しました。未定な予定ですしいつになるかも分かりませんが……
スリーパー「ねぇ、君も僕の人形になってよ……!」
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