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テオナナカトル(5):花を買うのは偽善者?

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花を買うのは偽善者? 

『当初のローラはシャーマンになるためと言う目的よりもむしろ日々の糧を得るために入ったのだと後から周囲に語っていたが、テオナナカトルとしての仕事をしているうちに客の喜ぶ顔を見ることがやけに気に入ったとも周囲に語っていた。まぁ、あのBキャンセルの一件ではナナやテオナナカトルの仕事への好感度が上がるのも頷ける。
 赤の他人の笑顔を喜ぶこんな気質は、酒場の仕事が大好きな俺と似たところがあるのかもしれない。
ローラは、失った父親(死んだと決まったわけではないが)の代わりに俺を心のよりどころとしている節があり、数週間居候をしていた歌姫の部屋に別れを告げて新居を得た今でも、たまに酒場にやってきては意気揚々と日々の出来事を語ってくれる。
 最近では、エーフィ特有の敏感な体毛が薬を作る際の温度管理や湿度調整に一役買っているらしく、それだけでジャネットは大助かり。若い後輩が出来てよかったと笑顔で語っている』

テオナナカトルの構成員、ロイの手記より。神権歴2年、6月18日
***

(全く、テオナナカトルのおかげで人生が良い方向へ変わって行っているじゃないか)

 日記を書きながらこの半年を振り返り、ロイはそんな事を思っていた。ローラがロイを発見できたのは、ロイが店を乗っ取ったり、酒場が有名になったおかげである。店を乗っ取れたのはテオナナカトルがくれた薬のおかげであるし、店が有名になったのはナナと歌姫のおかげだ。感謝してもしきれない事ばかりである。
 ローラの件は偶然がもたらしたにしても、それに対して漠然と恩を返したい気持ちがロイに芽生えるとともに伝説のポケモンを呼ぶ祭りと言うものに興味がわいてから、ロイはシャーマンとしての修行を少しずつ始める。修行と言っても、ナナが言った通り根気よく三日月の羽に語り掛けるというだけで、神龍信仰の信者が一日8回か12回*1行うお祈りと変わらず、傍から見れば独り言のようなものだ。違うことと言えば、ロイは三日月の羽を首にかけたポーチに入れているため、ポーチに向かって話しかけているということか。
 最初は面倒な気がしたが、それも続けていくと日常にすりかわってい行く。ローラ、ナナ、フリージア、ジャネットなどなど、たくさんの女性たちと関係を持つ淫夢を三日月の羽(クレセリア)に見せられていた日々もその修行によって終わりをつげて、じゃじゃ馬だった三日月の羽も今ではロイに穏やかな眠りを与えてくれる優れた神器となっている。

(順風満帆だが、そろそろ心配ごとも迫ってきたな……)
 心配ごととは、ユミルが店に訪れ、歌姫とナナを客寄せの踊り子や歌い手としてを雇わないかと持ちかけたあの日の話である。

***
「えぇ、そうでやんす。このまま放っておけば、教会は派閥争いによって分裂。それに合わせて教会が恐怖政治……とはちょっと違うんでやんすが、実質それに近い政策として魔女狩りを行うことが予想されやす。
 それを防ぐために……アッシらがこの地域の教会を統括するサイリル大司教その派閥の権威を地の底まで落とす。そのために、このお店を利用したいでやんす」
「なんだって……? ふざけんな……奴は過激派で知られる腐れ大司教じゃないか!? だいたい、大司教ったら教会の中でも上も上、そいつより上の奴なんて教皇くらいしかいないぞ。俺達ごときじゃ顔もまともに見れないような連中じゃないか。そんなの殺してみろ? この酒場どころか、酒場がある区画一つ丸ごと焼き討ちされるぞ? 俺の店でそんなことやるなんて冗談じゃない」
 凄むロイの前に、ユミルは純白の腕をかざして止める。
「あっしらが殺すわけじゃないでやんす……教会に殺させるでやんすよ。計画がうまくいけば、サイリルは悪魔扱い。教会は悪魔ならばアッシらが頼むまでもなく殺してくれるでやんす……さっきも言ったように、つまるところアッシらがサイリルを悪魔に仕立て上げる。そういう話でやんす」
 ロイは眉を潜めた。
「だから、無謀過ぎるだろう。下手したら、俺たちが逆に悪魔扱いだってば……一体全体どうするつもりなんだ?」
「サイリルは権力に溺れ、それを保つために魔女や貴族を敵視し、処刑することで恐怖による支配を得ているでやんす。今は、ロイさんたち世俗騎士から奪った領地を誰が統治するか? 利権の分配は如何にするか? 追われているからおとなしいでやんすが、状況が落ち着いたら……恐らくあと二年も待たずに落ち着くでやんす。その時はロイさん。サイリルは元貴族狩りを行い、あんさんは奴隷生活もしくは処刑でやんす。
 なんせ、サイリル大司教が『奴らは悪魔だ』と言ってしまえば、ほぼ最高権力の大司教に逆らえる部下はいない。民衆が異議を唱えるなんてもってのほか。
 ……けれど、フリージアが先にサイリルを悪魔だと罵ってしまえばどうでやんすかねぇ?」

「どういう状況で?」
 軽く首をかしげてロイは尋ねる。
「さっきも言った通り……サイリルは爵位を持ちながら教会に仕えない者……要するに、騎士には修道騎士と世俗騎士の2種類があるでやんしょ? その内の世俗騎士を敵視しているでやんす。イーブイはもとより、武勲を立てて貴族の株を買い爵位を貰ったものも同様に……なんせ、世俗騎士は力があるのにそれを教会のために使わないんでやんすからねぇ。ともかく、あんさんのその刺青は世俗騎士でやんしょ?」
 ロイはおずおずと頷く。
「サイリルは大司教でありながら好色家で、美しい女はモノにしなければ気が済まないでやんす。……自分の思い通りにならない女に首枷をつけて檻に押し込め、家畜同然に飼っているでやんすよ? 信用できる仲間内限定でその女性たちを好き勝手犯すパーティを開いているらしいでやんす。確かな消息筋からの情報でやんす」
「そこまでとは知らなかったが……やっぱりひっでぇ奴だな……」
「そのサイリル大司教は、半年後の巡礼……夏の巡礼でこの街に来て、フリージアにもてなされる予定でやんす。その際、確実にこの街、イェンガルドを歩くことになるでやんす。街を歩いている間に、万が一サイリル大司教の御眼鏡に適った女性は、まずは平和的に一夜を共にしようと誘われる」
「生臭坊主にも程があるな……」
 笑う所ではないといのに、ロイは笑ってしまった。
「平和的に誘ってくれる以上は……例えばナナが平和的に誘われている間は、ナナが誘えば勤めるお店に来てくれるでやんす。と言うか……フリージアに頼んでそういう風に誘導させる手筈でやんすね。ナナは美人でやんすから……あの手この手を使えば、『サイリル大司教にナナさんを誘わせる』事は難しいことではないでやんす。
 そうしたらこのお店に来るわけでやんすが……まぁ、さっきのナナさんがこのお店で働く事を許可するか否かのお話を了承してくれればの話でやんすがね」
「喩え話だ。了承したことを前提で話しても構わないよ」

「そうでやんすか。ではそうしやす。このお店でロイ……あんさんを見かけることになるでやんす……目障りな貴族。いや、世俗騎士の残党のあんさんを。世俗騎士のロイ、それでまず一人を殺す理由が出来たでやんす」
「うわぁ」と声を上げたロイは、これ見よがしに嫌そうな顔をした。
「そして……アッシらのリーダー……ナナさんの美貌ならば、サイリルの御眼鏡に適うと思うでやんす。そうして、どうにかして店までつれてきたら、サイリルが私を夜伽(よとぎ)の相手に誘うでやんすよ。これも、アッシらテオナナカトルの薬や呪術道具を用いてなんとしてでもそう誘導させるでやんす」
「……あのゾロアーク。ナナが言っていた惚れ薬とかいう奴か?」
「もうちょっと上の物でやんすね。司祭以上の階級にはメロメロボディのポケモンしかなれないでやんすから、赤い糸という呪術道具を使うでやんす。ま、これについては追々説明しやす。
 そして、当然のことながらナナさんは夜伽の相手を断るでやんす。しかし……普通のお客様に誘われたならばやんわりと断る事は出来るでやんすが、流石に大司教ともなると同じ方法で断ることが出来ないでやんしょ?」
 普通に断ることが出来なくなったナナさんは……あれほど美人なリーダーでやんすが……その美人な変身を解いて本来の姿を見せるでやんす」
 本来の姿、という言葉にロイは顔をしかめる。
「ナナとか言うゾロアークのあの若い姿は本当は……イリュージョンで作った見た目だってことか? だとしたらショックだなぁ。おばさんって本人は言っていたけれど……あれも本当の姿とは限らないし」
「……一応、リーダーもあんさんの信用を得るために本当の姿をさらしておくと言っておりやした。……暗記しているので全く歪みの無い変身が出来やすが……見るでやんすか?」
「いや、本人が見せたくなったら見るよ」
 ロイがそう言ったことに対して、ユミルは安心した笑顔を見せる。

「そうでやんすか……リーダーの醜い姿を見せるのは正直気が進まなかったでやんすから、助かりやした。とにもかくにも……変身を解いたら、醜い姿。これは、プライドの高いサイリルならば耐えられない屈辱と受け取ることでやんす。無茶苦茶短気なことでも有名でやんすからねぇ……本当に、血縁とコネだけで苦労もせず人の上に立つとロクなことにならないでやんす」
「あー……耳が痛いな。俺もコネで百人長やったことあるし」
 ロイは頬を掻いて誤魔化した。
「あ、あんさんは別でやんすよぉ」
 わざとらしくかぶりを振るロイに、慌ててユミルは否定する。
「と、ともかく……耐えられない屈辱は、腐敗した思考の奴にとって殺意の発端になり得るでやんす……本当に短絡的に他人を殺すような奴でやんすからね。これで、あんさんとナナさん。二人を殺す理由が出来たでやんすね。
 さらにもう一人……フリージアさんやその親はこの街の教会の一番のお偉いさんでやんすから、巡礼に訪れたサイリル大司教をもてなす役目がありやすのは、さっきも言ったとおり。
 フリージアは、サイリルと敵対しているクラウス司教派の司祭。派閥だけを見ればサイリルとは相容れない関係にあるんでやんす。今はまだどちらの派閥も静観している時期でやんすが、貴族から奪った領地の権利関係がひと段落付いたら、フリージアたちは必ず障害になるでやんすよ。
 なんせ、クラウスはサイリルの権力をいつ脅かすかもわからない身分でやんす。権力争いの上では眼の上のたんこぶのような存在でやんすから、サイリルは少しでも負担を減らしておく必要が……つまるところ、クラウスの味方を減らしておく必要があるでやんす。これで、この酒場にサイリル大司教の目の敵が三人集まりやした……」
「集まったとして、そこから先……俺の酒場でなにをどうすればいいんだ?」

「お店に毒をまくでやんす……が、その毒の解毒剤をサイリル大司教の料理に混ぜるでやんす。そして、解毒剤を混ぜるのはロイさん……あんさんでやんす」
「つまるところ、サイリル大司教を毒を撒いた犯人に仕立て上げるわけか」
 えぇ、とユミルは頷いて続ける。ロイの飲み込みが早い事を感心しているような、何処か感心するような笑顔を見せていた。
「その毒、歌姫の癒しの鈴で回復させるので命の心配はほとんどないでやんすよ。それによって、客と従業員の命の危機が去った所で……とどめに、フリージアが罵るんでやんす。『悪魔め!!』と。そしてあんさんやナナ、歌姫もそれに追従して同じことを叫ぶ。……大まかな作戦はここまででやんす。何か質問は?」
 ロイは考える。
「すばらしい筋書きだが……それ、そんなに上手くいくのか?」
「正直なところ、わからないでやんすよ。失敗したら最悪酷い拷問にあって死亡でやんすし……だから、あっしとジャネットにはこの件には一切絡ませないようにリーダーから言われているでやんす。あっしらが居なくなったら、本当に黒白神教の教え……テオナナカトルは絶えてしまうでやんすから……」
 溜め息をつき、苦虫をかみつぶしたような表情でユミルは続ける。
「この巡礼には、奪われた聖地の一部を取り戻すために近隣諸国の王や有力な領主や有力な修道騎士も参加するでやんすよ。そんなお偉いさんが参加するこの聖地巡礼の旅に、悪魔呼ばわりされた大司教が先導するなんて、巡礼に参加した諸王の顔すら潰しかねないでやんす……
 で、やんすから、もしそうなったときは落とし前をつけるためにもサイリルを始末……処刑しなければならないでやんすよ」
「教会の内部の事は流石によくわからんが……確かにそうなればサイリル大司教とやらの派閥が権威が地に落ちる……ってのはよくわかる。今回の巡礼の神龍信仰にとっての重要さも理解しているつもりだ」
「で、やんすから……『悪魔め』と、罵ってしまえばあとは難しくないと思いやす……問題は罵れる状況までどう持ち込むかでやんすが……その大まかな作戦はさっき言った通りでやんす。
 考えても見てくれでやんす。店の外にも聞こえるくらいの大声で、悪魔め!! と叫ぶでやんすよ? 客と通行人全員に口止めをするのと、サイリル一人に責任を押し付けるのはどっちが容易いでやんすかねぇ」

「なるほど……な。サイリル大司教……か。直接の恨みはないけれど、俺たちブイズに幸福を許さなかった……のはまだいいとして、わざわざ絞首刑にして糞尿たらした死体を蛆虫が食い尽くすまで晒した奴だとは聞いたよ。……ひどいやつだよな」
 ロイは冗談めかした口調で言う。表情一つ崩さず、ユミルはただ笑いもしなければ口出しもしない。沈黙、それでロイの説得にかかった。
「……『そうでやんすね』とか、『そんな言葉じゃ済まされないでやんす』とか、そういう言葉も無しかよ。だんまりか……いいや、もしその仕事を請けなければどうなると言うんだい?」
「何もしないでやんすよ」
 ユミルは笑う。何かを企んでいるとかそういった感じでもなく、純粋な笑顔である。
「臆病者と罵って毒殺するとでも思うでやんすか? リーバー君を人質にとってやれと脅すとでも思うでやんすか? そう言う事はしないでやんす……やんすが、けれど……」
「あぁ、『けれど』?」
 ユミルはゆっくり頷いて、『聞く準備は出来たか?』と目の動きでロイにたずねる。ロイは、『準備OK』と無言で返した。
「……断るんだったら、出来るだけ早くこの街から逃げる用意はしておくでやんすよ。アッシらも、ロイさん無しで作戦を行うためのプランぐらいありやすから、そっちに賭けるでやんす。至善の策が駄目なら次善の策をとるまで……と言う事で。で、やんすから……本当に無理に『やれ』とは言わないんでやんすよ。ここで、ゆっくり酒場を経営しながら静観していたって構いやせん。
 で、やんすが。もし失敗した時は、2年以内……出来れば1年以内に。少なくともこの領地から逃げるでやんす。大小あわせて万を越える領地の分配が終わって教会の内部が落ち着けば、聖地奪還云々とは別の争いがこの国の内部で始まりやす。さっきも言った通り、サイリル大司教は腐敗した教会の象徴みたいなやつでやんす。で、やんすから派閥争いも起こりやすい……。そうして派閥争いになって権力が危うくなった時は」
「魔女狩り……かよ」
「ぇぇ、権力が安定している時は魔女狩りは行われないでやんす。でやんすが、教会で派閥争いが始まれば権力は必ず揺らいでゆくでやんす。そして、権力が揺らげば……示威行為や抗戦の意思を見せるためにも……」
「魔女狩りをせざるを得ないという事か」
 うん、とユミルが頷いた。

「以前にダトゥーマ帝国周辺で魔女狩りがどうして起こったか知っているでやんすか?」
「あぁ、知っているよ……教会の腐敗に対抗してプロテスタント*2が台頭してきたんだろう? そのせいで『プロテスタントを悪魔の手先だという事にしよう』と、カトリック派*3の奴が考えたことで、プロテスタントもそれに対抗して『俺は魔女狩り・悪魔狩りしているから悪魔じゃないよ!!』って言うために大々的な魔女狩りを行った」
「腐敗した教会の象徴とプロテスタントがぶつかれば……」
「俺のような落ちぶれた世俗騎士は真っ先にその標的になるという事か」
 ユミルが頷く。
「えぇ……と言うか、そうせざるを得ないような事を言っていたでやんすよ。その時、あんさんがサイリル大司教のいる領地というか……本当はこの国自体にいるのが危なすぎるでやんすよ。教会内で分裂が起こるという話はフリージアだけじゃなく、修道女および修道士複数からの情報でやんすから……それへの対抗策に各派閥がどう出るかはわかりやせんが……もし、ダトゥーマの二の舞になってしまったらと言う事を考えると……」
「なるほど……その状況を、サイリル司教一人殺すことで覆せると?」
 ユミルは首を振って否定した。
「ただ殺した所では無駄でやんすね……。首がすげ変わるだけでやんすし。だからこそ、悪魔扱いさせるという最も奴らサイリル派のメンツをつぶす方法で始末するでやんす。サイリルらカトリック派を民からの信用も教会内での地位も地の底まで落とすでやんす。プロテスタントの代表格であるクラウス司教を……大司教に押し上げるにはそれしかありやせん。
 クラウス司教が大司教になれば、『派閥が分裂しようが好きにしなさい』というくらいの寛容な体勢にも出来るでやんす……まぁ、流石にそこまで簡単ではないでやんすが、サイリルがトップの状態で派閥争いが起きるよりかは……」

「まし、ってわけか」
 ロイの言葉にユミルが頷いて肯定すると、二人はしばらく押し黙る。気まずい沈黙の中、先に口を開いたのはユミルだ。
「しかし……どうしてあと半年って段階まで店に当たりをつけなかったんだ? もっと早めに作戦の舞台を用意しておいた方が確実だと思うのだがな」
「神託でやんすよ。……信じられないと笑ってもいいでやんすが、この酒場の前に生えていた季節外れの雑草。それが、神託の証でやんす」
 ユミルに言われ、ロイはこの年始と言う冬の季節に生えた季節外れの青々とした雑草の存在を思い出す。
「神託……信仰心の薄い俺にそんなことをぬけぬけと言うとは……」
「神龍信仰の神託ではないでやんすから……」
 そこで言葉を切ってユミルは沈黙する。しばらくして気まずい雰囲気を打ち破るようにユミルが喋り出す。
「あんさんが手に入れたこの酒場……『暮れ風』と言う名の領地は守られるでやんすよ。でやんすから、お願いするでやんす……コレは、私たちだけの問題じゃないでやんすから」
「……考えさせてくれ」
 とはいいつつも、テオナナカトルの言うことに従った方が得な気がしてならないロイは、考えなんてほぼまとまっている。言いなりになるのが嫌なわけでもないが、話の真偽を確かめたい気持ちだけが即決しない理由であった。
 ユミルのお話の後は、ナナと歌姫が勝手に店内でパフォーマンスを始めていたので、断るに断れない状況となっていたというオチがあったわけだが。

 その日のロイの手記にはこう書かれている。
『教会の派閥争いを収めるためには、今の所俺達が暮らすミリュー湖周辺を統括しているサイリル大司教と、その派閥を完膚なきまでに叩きのめさなければいけない。
 ……だからと言って、サイリル派に対する大規模な暗殺なんて方法が出来るわけもなく、だからトップであるサイリルを悪魔に仕立て上げて殺すことでサイリルの派閥の地位をとことん貶めるしかない。それをやるのが俺達というわけか。サイリル蹴落とさなければ、派閥争いが必ずと言っていい確率で起き、派閥争いが起きればかつてのダトゥーマ帝国のように大規模な魔女狩りが起きる確率は否定できない。
 魔女狩りとなれば、没落した世俗騎士である俺の立場は非常に危ない……だから、サイリルを殺すのを協力しろというのは正直唐突な話だったが、信用出来る気になってしまう。テオナナカトル……不思議な奴らだ。
 だからこそ、ナナ達を何も言わずに店でパフォーマンスさせるあの強引さは少し頂けなかったな。もう少しスマートに頼めないものだろうか?』

***

 とにもかくにも、その神龍信仰の巡礼者が来る日は刻々と迫っている。歌劇をやるわけでもないので練習らしい練習は出来ず、出来るのはイメージトレーニングのみ。
 最近のロイは、何よりもサイリルの殺害の事ばかりを心配してていた。

 そんな初夏の昼下がり、仕入れの仕事が早めに終わり、仕入れた商品はリーバーが現在運んでいるはずだ。きつくなり始めた日差しは、道行く物の体を全力で温めにかかる。ただでさえそれで暑いというのに、ブラッキーの漆黒の体毛は堪え切れない熱量を吸収する。
 歩くだけで体力が奪われ、日中は体温を下げようと常に舌を出し続け息を荒げる始末だ。反面、リーバーは最近になって朝早くから日向ぼっこに精を出しているらしく、何も食べないでもお腹が空かないほどだ。
 仕入れた水や食料を運ぼうと意気揚々に申し出たのもあり余った体力が要因と考えて間違いない。まぁ、反面冬は外に出たがらないのだが。
 リーバーは一人で先に行ってしまい、店の準備は任せろと頼もしい声をロイに向ける。そうして余った時間、ロイは久しぶりに街をふらついてみてみたくなり、ホームレス時代に北風を凌いだ路地裏やゴミを漁ったゴミ捨て場など、今となっては思い出となってしまった場所に向かっていた。

 ただなんとなく前から後ろへ流れていく街並みを抜ける間、ロイは暑さを紛らわそうと物思いにふけり始める。
 ユミルに半年後と言われてから3ヶ月、短いような気もするし長いような気もした。例えば、何もない日々はあっという間に過ぎるけれど、この数カ月は本当に色々な事があったような気がする。その『色々』の印象ばかりが月日を長く感じさせてくれたのが、長いような気にさせる要因なのだろう。
 指折り数えてみても、シドを殺したり、リーバーがナナに(性的な意味で)襲われたり、ローラがこの街に来たり、ユミルとジャネットが盗賊団を完膚なきまでに叩きのめしたりと、ビークインを救済したり、本当に大きなイベントは5つしかない。
 一つ一つのイベントがどれだけ印象深いかを伺わせる。

 そして、何もない日々と言っても細かく言えば悩み事が募って行く日々であった。テオナナカトルは、フリージアの息がかかっているため、相変わらず非合法の薬(といっても、麻薬のように有害なものは取り扱っていないが)を売り捌いては小銭を稼ぎ、たまに蜜と乳の香りがする香油やBeeキャンセルを売り捌いては大金を稼いでいるらしい。
 これまで確認できた限りでは、自分やレシラムの逆鱗も含めて殺しの依頼も三つほど受けている。それはロイの時や、ジャネットやユミルが行商の子供の敵打ちをした時と同様、そうされても仕方がない奴らだったので黙殺してはいたが、少なからずローラの手が血に染まっているかと思うと少々気が気でない。
 それをローラに問いただせば、本人曰く悪党を倒すとスカッとするとの事。コーヒーよりもタバコよりも魅力的な娯楽なのだという。その悪党と言うのもユミルを中心とした調査によって何度か悪事の証拠を押さえたり、自白強要罪(テオナナカトル)状況を聞いて取り決められているのだから、一応は大丈夫と信用出来るのだが。
 他にもフリージンガメンとやらの神託もあるし、ロイの依頼を受けた時も前もってターゲットとなるシドの噂を酒場の従業員から伺っていたらしい。ならば、ローラも善人や一般市民の血で牙を汚す事もないだろう――と、ロイはなんとか信じたかった。
(心配しても仕方がないことかもしれないな……それに、俺も同じ穴のムジナなのだしな。殺しをした者が殺しはダメだなんて、説得力に欠ける)

 自分とて、戦争で3人殺したのだ。その後、現地にて行われる盛大な略奪祭りには名誉の負傷と悪夢が原因で参加出来なかったが、たった三人を殺しただけで、その後しばらく悪夢を見続けた日々を思えば略奪に参加できなかった事は幸福なことだったのかもしれない。
 なんせ、戦友と呼べる者達は命乞いする子供を強姦した挙句に殺したり、やせ細った子連れの女性から僅かばかりの銅貨を奪って殺したりと、散々な狼藉を働いてきたのだ。黒い眼差しで逃げられないようにしてから甚振るような悪趣味なことも平然と行われたのだとか。
 その光景を目の当たりにしたら、悪夢と食欲不振で死んでいたかもしれないし、スラムで燻ぶっていた時も流石に不健康すぎる見た目でサラさんにも拾ってもらえなかったかもしれない。
 しかし、自分は悪夢にとことん縁があるようだ。ようやく悪夢が治まった後も、波乱万丈な人生は散り散りになった家族が殺される夢。これはホームレス時代に見たものだ。そして酒場に雇ってくれた女主人のサラさんが死んでからは、シドに強姦されるようになり、悪夢の内容も蠢く触手に強姦される夢へとその趣を変えた。テオナナカトルと出会ってからようやく悪夢を見なくなったと思ったら、ナナがくれた三日月の羽に淫夢を見せられる始末だった。
 しかし、重要なのは悪夢に縁があるということではない。家族が殺される夢や強姦される夢はともかくとして、殺しによって生じた悪夢は罪の意識……言ってしまえば(やま)しさが生み出したものだ。シドを殺しても僅かな罪悪感しか襲ってこず、悪夢も見るには見たが、詳しい内容を覚えていない程度の軽いもの。心の奥底で罪の意識をほとんど感じていないという点で、やっぱり自分もなんだかんだ言って殺しを正当化する癖があるのだと感じてしまう。

 ロイは自分が解せないが、それ以上に解せないのはローラや自分と全く違う存在のほうが解せなかった。
 敵の民族に殺戮と略奪と凌辱をしても悪夢を見なかった者達は、一様に敵国のポケモンをポケモン扱いしていない節がある。もしかしなくても、サイリル大司教と言う輩はそういう奴なのだろう。罪の意識が無いのならば悪夢など見ないのだ。
 目の前で虫がじたばたともがいている。それを殺して楽にしてあげるのが正しい事なのか、それとも最後まで生かしてあげるのが正しい事なのか、それは分からない。けれど、虫がもがく状態を楽しむ者がいる、と言うのがロイには解せない。
 そう言う奴に比べれば自分はまともだ――と言ってしまうのはとても楽な解決法。しかし、言い換えれば五十歩百歩である。なんとか自分を正義にしたいロイには悩ましい事実であった。
(親父は……あの立派な親父はどんな風に考えながら戦っていたんだろうな?)
 物思いにふけりながらロイは歩いた。
「着いたか……」
 ロイはなんとなく行きたくなった場所にたどり着いて、物想いにふけっていた思考を中断する。

 ここは相変わらずベトベトンやマタドガスがたむろしている。
 風景も自分がいた頃とあまり変わりもなく、今でもかつての自分と似たような境遇の者が道の隅っこや広場の隅っこに立てられたボロ布とか細い柱だけで作られた掘っ立て小屋でくすぶっている。毛色の良いロイからお金を恵んでもらおうと物乞いの声が響くが、どうするべきだろうか。一度与えてしまえばきりがないし、中途半端にあげてしまえば争奪戦が起こってしまう。
 自分も同じ状況に陥った事はある。森を開墾したくても、そこは領主の狩り場であったり共同利用の入会地であったりという理由で、田畑を広げることも出来なければ物乞いに走りたくもなる。それでもロイは物乞いに頼ることなくゴミを漁ってでも生活しようとしたのだから、まとわり付いてくるものたちと自分の事情が違うと言えばそうだった。
(働かざる者食うべからずだな)
 尻尾(うしろがみ)を引かれる思いで、ロイは立ちさる。食い扶ちが無いからと言って、それに甘んじている者に金をやる義務はないだろう。ゴミ漁りをしてもダメそうならば助けてやってもいいかもしれないが、ここでダレているだけの怠惰な者にはそれも必要無いと、割り切るしかなかった。

 読み書きや四則演算が出来るという理由で奇跡的に自分が抜け出す事が出来た地獄のような生活を見ると、感慨深くなる半面、気分も重くなってきた。
(帰ろう。ここにいても俺には何も出来ない。思い出に浸ってなんになると言うのだ……)
 酒場で働くことも、酒場に来る客も、『生活が辛い』などといいながらここに比べれば随分楽な生活をしている事を改めて感じる事が出来る。何せここは生きる希望に極めて乏しい。神龍信仰の言う『神龍信仰に非ずは人に非ず』という勝手な正義感は何かと腹が立っていて、神の愛を謡っておいて聖地で虐殺と略奪を繰り返す神龍信仰など、馬鹿馬鹿しい――とロイは思っていたが、ここに住む者達が救いを求めてそういった道……聖地巡礼という名の虐殺と略奪の旅へと書きたてられるのも納得できる気がした。
 何せ、異国の地を奪い取れば蜜と乳の河が流れる土地まで行けると銘打っているのだから、行ってみたくもなる。その謳い文句に縋りつきたい気分になる。

 サイリル大司教がここの街に訪問した暁には、聖地巡礼・兼聖地争奪戦の有志を募るのであろう。神龍のために戦えば、神に与えられた権限に従って教皇がその罪を赦すという餌をぶら下げて。なんせ、神龍信仰では『ポケモンに生まれたことそのもの』が罪なのだ……そうして、ポケモンに生まれてしまった罪すらも、戦うことで魂の救済に繋がるというのなら、戦いとは何とも魅力的なことではないか。
 そして、巡礼と共に移住する事が出来ればその場所に『蜜と乳の流れる河』という希望がある。それは嘘のようなもので、本当のところは絶望しか持ちえない場所かもしれないが。
 ともかく、サイリル大司教をこの街で殺すというのはここまで歩いてきた巡礼者。神龍軍たちの希望を潰すことにはならないのだろうか。ここで神龍軍が消滅することはこの街で何か悪い事を起こす要因になりえないだろうか?
 この街が犠牲になると言うのならば、聖地までの道のりに生きる異教徒たちの事を思えば逆にプラスなのかもしれない。黒白神教よりも遥かに信者が多い宗教の生き残りは、未だに虐殺や略奪の危機に晒されているのだ。神龍軍を消滅させたとあればテオナナカトルは英雄にさえ見えるだろう。
 結局、誰もが満足できる世界などありはしないのだ。この街の誰が居なくなっても街は回り続けるし、きっとサイリル大司教とやらがいなくなろうとも神龍軍は歩みを止めないのであろう。

 むなしくなって、ロイは溜め息をついた。むなしさを振り切るようにロイが早足で歩き始めると、所々ガタがきているに違いない古びた荷車を引いて、花を売り歩くブイゼルの少年の姿が見えた。
 このスラム街の新入りなのか、もしくは元からここにいた子が一念発起してそんな商売を始めたのかは定かではないがどうにも気になった。
「はい、いらっしゃいませ」
 子供と言う事もあり、元気いっぱいな声は聞いていて悪い気分はしなかった。元気よく客を迎える少年の目はきらきらと輝いていて、見ているとすがすがしい。


 ロイは勧められた花を5本買って帰った。パン1個買うのに5本は売らなければいけない計算だから、これだけで丁度パンが1個買える計算になる。
 元手との差額を考える必要は恐らく無かった。恐らくは街から数キロ程離れた所にある水場に生えた草花を切り取っただけのものであるから、実質ただの乞食と相違は無い。
 ロイは『暮れ風』にの窓際に飾る予定で花を買い、それが終わったら店の掃除でもしようかと思いながら店の裏口の戸をあけた。
「こんにちは。今日もおいしい料理をお願いしますね」
「あぁ、ロイさん。今日はナナさん来ているよ」
 すでに料理の準備をしているフリアおばさんの横を通り過ぎようとした時、笑顔ながらに彼女が口にした何気ない一言。一体何の用だろうと、厨房を出て客席に行くと思わず失笑をもらすような状況が広がっていた。
「こんにちは……」
 思わずロイは間の抜けた挨拶をしてしまう。なぜって、ナナが手に持っていたのが……
「お帰りなさい兄さん」
「あらこんにちはって、ロイそれ……私が買ってきたのと同じ花」
 掃除をするリーバーの横で、花をなるべくきれいに見せようと四苦八苦するナナ。それが、ナナの言葉どおりで二人は思わず笑ってしまった。
「仲いーねー……二人とも」
「まぁね」
 ニヤ付いた顔を見せて冷やかすリーバーを華麗にウインクで返してナナは黙らせた。
「やだもう、花瓶二つもあったっけ、このお店?」
 リーバーのこれ以上の冷やかしを阻止したナナはロイに色っぽい目をやる。
「ほんとは食器だけれど……ガラス製の杯でも使う? あんまり見栄えしないかもしれないけれどさ……」
 ロイが尋ねると、ナナは意外な反応を見せる。
「あら、紺色のあの杯よね? あの杯だったこの花に合うと思うわよ?」
 ナナはロイにとって意外な答えを出した。
「ん……? あぁ、そうだね。あの杯ならこの花も見栄えするかも。それじゃ、そうしてみよう」
 違う杯を想定していたらしいロイは、ナナの提案を受け入れる。
「ポカーン……」
 すっかり除け者にされているリーバーは、わざわざ口に出してまでそれをアピールして、それは二人に気が付かれなかった。


 店が終わると、ロイとナナはどちらともなく酒を飲みに誘いあった。
「まさか、同じお店から同じ花を買うなんてね。リーバー君に冷やかされちゃうのも仕方がないわ」
 最初の話題はやはりと言うべきかこれであった。
「うん、なんと言うか偶然だよね」
 ロイがそこで言葉を切ると、ナナはゆっくりと頷いて葡萄酒を口に含み、その香りを楽しんだ。
「貴方は……どんな気分であの花を買ったの? 私は、なんていうかさ……踊り子をやり始めたときは本当に客なんて全くいなくって、1日1個パン買えるかどうかだったわ……そんな時代の事を思い出しながら、興味本位で買ったわ。
 なんというか、あの初々しさがね……私に似ていたのよ。元々踊り子も酒場の女性の見よう見まねで始めたものでさ。その頃はゾロアだったらから、自分の姿を偽って……というか丸ごと幻影で踊っていたふうに見せていたわね。その踊りも、オリジナルに比べると劣化だったから……ゾロアークに進化するまで苦労したものよ。
 それでも、たまに私にお金を落としてくれる人が居たのよね……確かグラエナの女性でね……所々に傷を作っていたみたいだけれど、家庭に問題あったのかしらね?」
 ナナの言っている事が一瞬分からなくて、ロイは口ごもる。
「この酒場の元店主……サラさんだぞ、それ。多分」
「え……」
 ナナの声は、今まで付き合って来て一番の間の抜けた声だったかもしれない。どちらも、互いの言っている事が分からないようだ。
「恋のキューピッドってのは居るもんだな。きっと、俺達を引き合わせてくれたんだよ……サラさんは」
「ねぇ、恋のキューピッドって……」
「それでさ、お前からの質問」
 ナナの質問には答えることなく、ロイは再び喋り出した

「どんな気分で花を買ったかっていうお話なんだけれどさ……なんとなく、なんだよな。もっときれいな花は街にいけば売っているのに……いや、確かに値段は安いんだけれどさ。いい事をしていい気分になりたかったんじゃないのかな? 結局、あんなのその場しのぎにしかならないんだけれどね。これじゃ偽善者だな……
 いや、リーバーと始めてであったときの事を思い出したよ。なんだか愛らしくって、守ってやりたくなるっていうかさ……神龍信仰じゃ、全ての者を平等に愛しなさいなんていうけれど、やっぱり神の愛なんて無理なことだよな」
「大丈夫よ。神の愛は、『神の』愛なのよ。打算なきその愛は、『ありがとう』の言葉すら欲してはいけない。食料を恵んだら唾吐きで返されても怒ることもなく、それを受け入れなければいけない。そんなの、神でしか出来やしないもの。天使様*4だって、神の愛なんて持っていなかった……なのにあなたは、食料を与えたのに唾を吐かれても『この子が飢えをしのげたならそれで満足だ』って言える?」
「無茶言うな。それが神の愛って言うんなら、神は全員変態か?」
 ナナの意地悪な質問に、ロイは肩をすくめて答えた。

「そうよね。だから私たちは等身大の愛をささげればいいの。道行く子供に、愛する家族に、大切な友人に、親しい異性に。背伸びして『あそこのスラムにいる奴らを全員救いたい』だなんて思い上がった台詞は、貴方が神になってから言いなさい。もしくは、神になろうと決めてからね。
 偽善者でいいのよ……偽善でも長く続けていれば、それもいつの間にか日常になって行くから」
「そうするよ……俺は、神にはなれそうもないし……それともさ、シャーマンやっていれば神にもなれるのかな?」
「神になれるものもあるけれど……それ、完成するのに最低でも10000年以上かかる神器の完成が条件だから……生きているうちに日の目を見る事は無いんじゃないかな? ただし、完成すれば世界を救うどころか、もう一つの世界が作られるとすらいわれる代物よ」
「へぇ、どんな代物?」
「真珠が埋め込まれた青銅の板の上に3本のダイヤモンドの柱と円錐状に積み上げられた大小の白金の輪。大きい輪は小さい輪の上に置いてはいけないというルールで、左端の柱に詰まれた白金の円錐を右端の柱に全て移動させるの。輪が1枚なら2-1=1回で全て移動できる。輪が2枚なら4-1=3回で移動できる。輪が三枚なら8-1-=7で移動できる。さて、輪が4枚なら?」
「……15?」
「御名答。輪が5枚なら24回……ちなみに、完成させるべき神器の輪の数は40よ。全て他の柱に移動出来たら完成……なんだけれど、40も輪があると一兆回以上動かさなきゃならないわ。長生きしなくっちゃね」
「無茶言うなよ。それはとても俺が生きられる年月じゃないって」
「そうね、おばあちゃんになっても無理よね。っていうか、貴方のせいで話が横道にそれちゃったじゃない」
 何やら気分よさげに、ナナはぶどう酒を口に含む。

「それよりもさ……等身大の愛って言えば……・」
 ナナはテーブルに肘をつきロイに体を寄せる。
「ロイ。あなた、私達の恋のキューピッドってのはどういうことかな? 何気に問題発言よねー。それは何? 貴方は私を好きになってくれているってこと?」
「えー……キューピッドってのはサラさんの事かな……好きになってくれたってので合っているよ……うん」
 ロイは照れたような恥じらうような表情、それでいて笑顔を見せる。
「いや、なんて言うかさ。初めてかな……妹以外の異性にここまで気を許したのは。……何とも言えないんだけれど、そう言う事」
「私は、そんな風に貴方を意識した事は無かったけれど……そうね、確かに貴方とは父親以外で一番よく話した男性かもしれない。……けれど、私の何が他の女性と違ったのかしら?」
「う~ん……なんて言うかさ、神龍信仰を信じる信じないにかかわらず、どこか考え方に好感が持てるって言うか。……生きている事を楽しんでいるんだなって感じが好き。真面目に生きているって感じがさ……いや、こんな言い方だと他の女性に失礼か。
 何だろう……お前は、人間が好きなんだよな。神の愛ってほどではないけれど、隣人愛は備えているというかなんというか……」
「ふむ……隣人愛ね。確かにそれはあるかもしれないわ……でも、それは貴方やローラもあるようだけれど? ユミルやジャネットだって、隣に泣いている者がいればいい顔はしないわ」
「そうだな……別に他の奴らと変わんないか。じゃあ、もう一つの理由が……お前に惹かれる原因なのかな?」
「私が『真面目に生きている』云々のお話かしら? ……真面目に生きていることに関係があるのかどうかは分からないけれど、私はこう考えているの」
「うん、何?」
 思わせぶりな口調でナナが言うと、ロイは興味深そうにナナを見つめる。
「神に祈っても、何も変わらないって思っているの。同じ事を別の人に言うとね……多分、聖職者は怒る。『そんな心掛けで祈るからいけないのだ』って言うと思う……でもね。私はね、こう思うの。例えば……何か私が死にそうな貴方を助けて、貴方に感謝されるとしましょう? その時、貴方は何と言う?」

「そりゃまぁ、『ありがとう』かな」
「うん、そうよね。でも、ね……それは言葉だけかしら? もちろん、言葉だけでも嬉しいわ……頭を深く下げてくれたら更に嬉しいわ。ただ……お金をくれとか何かくれとは言わないし、私に対して実質的な恩を返せなくてもいい。どこかで、その命を役立ててほしいって思わないかしら?
 『最高の感謝の表し方とは、言葉ではなく、それを指針として生きることだ。』って言葉があるの。『神は、祈られる事を望むか?』と尋ねれば、神は祈られる事を望むと答えるでしょう……でも、同時に神は何を望むか? 『神の愛を心に抱いて生きよ』とまでは言わないでしょうけれど……きっとね、誰かを愛して生きろってことなんだと思う。それこそが、『指針として生きること』ではないかしら?
 ……フリージアは、神に祈っても何も変わらないって言ったら首を横に振る。でもね、『祈るだけじゃ確かにきっと何も変わらない』って言ってくれたわ。食べるものを清貧にしても変わらない……そんなこと乞食だって否が応なしに出来てしまっているから。実際に聖書の1節にもそのような記述があるわ。自身を苦行に置くために断食をするわけではない……ってさ。
 祈ることも同じ。祈るだけでは、その結果に生まれるものは何もない……だから、私は祈る代わりに何かを生み出せることを、出来ることから始めてみたいと思ったの。
 祈るのは、感謝の言葉を贈るのとそう変わらない……だから、言葉だけではなく行動しなくてはいけない。だから、黒白神教は都合が良かったの……神への感謝の気持ちは、祈りよりも行動で表す事が推奨されているから。
 私は、行動することでこの世界に感謝を表すの……祈りではなく、行動することで。 そうして、私は神に感謝して神に仕える者の力を使えるようになるの……貴方が、三日月の羽で穏やかな眠りを得るように、ジャネットが紅蒼翠の宝石で天候を操るように。
 そして、祭りに神を招く事もまた……神に仕える者の力にして役目」
「それが神を呼ぶことなのか……人の不幸と幸福に触れる……」
 うん、とナナが頷く。
「……神に歌と踊りと酒と闘いを捧げる祭り。それを行うためには、人々の幸福と不幸にたくさん触れなければならない……殺しなんて汚い仕事もたくさん請け負っているけれど、これでも救った人の数の方が多いんだからね。だから、私は堂々と生きていけるの……神に目を背けることなく、胸を張ってね」
「救った人数の方が多いのは知ってる。ローラがあんなに明るい顔をしていたのは、貴族として生活していた頃には見れなかったよ」

 家にいた頃、教育役のイーサンに叱られてばかりでいつもしかめっ面だったローラを思い起こしてロイが笑う。
「それに、ビークインの件も良かったと思うし、盗賊狩りの件も俺の件も……確かに殺したっちゃあそうだけれど、救った奴は大勢いるんだよな」
「うん、そうよ。誰かに怨まれてばっかりじゃ気が重いもの」
 ナナは笑って髪を掻きあげる。
「そうそう、フリージアの事を祈っているだけの役立たずみたいなこと言っちゃったけれど、彼女はは神のために祈るだけでなく、きちんと行動しているから誤解しないで。例えば、私達を教会に隠れて保護しているのも立派な仕事だと思うし……老若男女分け隔てなく病人やけが人を看護すると言う仕事も取っても立派な仕事だわ。
 フリージアがしている事は……立派な仕事なのよね。それなのにどうしてロイは私を別物と考えるわけ? フリージアで私の代用は出来ないかしら? ま、あの子は神の婚約者だから結婚できないっていうのはあるかもしれないけれど。私はシャーマンをやめようと思えばいつでもやめられるけれど、あの子は一生純潔ってのが大きいかしら?」
「違うよ……ま、確かに一生純潔なの所とか……そもそも神龍信仰自体嫌いだし、そう言う所は厳しいけれどさ。なんて言うかその……ナナは行動してるからかな。いや、フリージアも行動しているよ、そりゃ……だからフリージアも好きさ。うん、けれど……現状を打破しようって動いている感じは、ナナのほうが上かな。そういうところが好き」
「何言っているのよ、私も現状を変えるのは難しいって考えているからこそ、チマチマコソコソとやっているんじゃない」
 自分が好きである理由を否定されて、ロイは言葉に詰まる。
「単なる神龍信仰嫌いなのかもしれないな。いや、それでも……」
 言葉に詰まってようやく絞り出したのは、子供のような言い分で、
「なんとなく好きなのね?」
 畳み掛けるように図星のことをナナに言われて、ロイは再び言葉に詰まる。
「いいのよ。確かに、明確に『○○が○○だからナナじゃなきゃダメなんだ!!』って言ってくれるのは嬉しいけれど……理屈じゃ説明できないことって色々あるから」
「まぁね……好きって感情は理屈じゃないってユミルに言われたけれど、本当に理屈じゃ説明出来ないや……なんとなく、ナナが好きなんだ。……なんとなく。ごめんな……貴族にキザな言い回し学ぶ義務がなくって」
 ロイは冗談めかした口調でナナから視線を逸らし、ごまかすように葡萄酒を飲み始める。
「なんとなく……かぁ」
 ロイが葡萄酒をピチャピチャやっているうちにナナは喋り始めた。
「私が『私のどこが好き?』なんて意地悪な質問を何度も何度もするような意地悪な女じゃなくってよかったわね、ロイは。それに私もそう、私も貴方には少し惹かれている……リーバー君があなたと一緒にいると楽しそうだし、酒場で自慢話や愚痴をするお客さんもとても楽しそうだし……そういうところが好き。けれど、そんな言葉だけで説明できているのかどうか、疑問だわ」
「感情は理屈じゃないから説明できない……か」
「うん、そういうこと。私はただ、私を育んでくれたこの世界に感謝したい。ならば……私がそれを指針に何かを育まなければいけない。私はただ、そう思いながら生きているだけ……それだけの私でも、そんなに魅力的かしら? よく生きているって思うかしら? 好きになってくれる?」
 ナナが組んだ指に顎を乗せ、ロイに肩を寄せる。
「十分なってあげられるさ。それに、どうしても好きになって欲しくないなら、幻滅させればいい……例えばほら、お前の素顔を見せてくれないかな。いつかのように『こんなおばさんでいいの?』なんて茶化したりせず……まじめに」
 ロイはナナを見上げる。口をしっかりと閉じたまじめな顔で見上げられると、ナナは笑ってしまった。

「確か、私の正体はユミルが見せるって言った時に見なかったんだっけ? それで、今見せて欲しいと……困ったわね。そんな目で見られたら嘘をつけないじゃない……私、今は神子だから惚れられると真剣に困っちゃうんだけれどな。貞操守らなきゃいけないから」
 言葉の終わりを待つことなくナナは自身の髪に手を掛け、髪をまとめる珠に手を突っ込んだ。珠はまるでそこに存在しないかのようにナナの指を受け入れ、貫通した。その様子をに驚愕しながらロイが見ていると、ナナの左手には純白の紐にガラスのように透き通る紅白・蒼白の羽を付けられた装飾品が――
(あれは、確か果樹園の雇い主に使ったのと同じ……)
『ダークライ……』
 同時に、ロイのネックポーチにある三日月の羽がせわしなく騒ぎ出した。
「やっぱりダークライの髪の毛なのか? ってことは、あれもレプリカグレイプニル……」
 ロイが呟いたまま真っ白な紐が握られたナナの左手を見ていると、左手は見る見るうちに火傷を負った醜いケロイド*5へと変貌してゆく。
 ナナの豊かな髪からは、珠がいつの間にかなくなって、ただの長いクセッ毛が無造作に広がっているだけになっている。髪の色もピンク色から赤の通常色へと変わっていて、あの艶やかで手を入れれば暖かそうな髪質も今となっては艶に乏しい枯れ草のようだ。
 いつの間にか右手には虫入り琥珀の首飾り、フリージンガメンも握られている……ということは、今のナナは本当にありのままの姿なのだろう。
「ダークライって……その三日月の羽から聞いたのかしら?」
「そうだけれど……その白いのは一体なんだ? 以前果樹園で使った奴とは……」
 白い紐を見ながら頷いてロイが尋ねる。

「メインの素材は同じだけれど、追加でラティアスとラティオスの羽が付いているわ。昔、私の髪の毛が燃え落ちて……その時一緒に珠が落ちてしまったから……珠がなくなるとゾロアークはイリュージョンの特性を使えない。だから、代わりにレプリカグレイプニル(コレ)でイリュージョンの特性を発動させているの。ダークライの力は悪夢をみせるだけじゃないのよ。幻影を操ることもできるし、髪を結ぶことだって……
 って、説明したけれど……そんなことはどうでもいいでしょ? 大事なのは、私の本当の姿……どう、私の姿は? 幻滅した?」
 ナナの年は子供が2~3人いるくらいといったところであろうか。とはいえ、前に『こんなおばさんでも良ければ』と冗談めかして言ったときよりも遥かに若く見える。それに、左半身は腕から顔に掛けて火傷を負ってこそいるが、残された顔半分は変わらず美しかった。14~15くらいの印象を受けるいつもの変身姿には及ぶべくもないが、火傷さえなければ十分酒場の踊り子として通用しそうだ。
 だが、確かに顔半分は醜いと言えば醜い。確かに、ユミルが3ヶ月前に言っていたように大司教クラスのお偉いさんともなれば屈辱を感じ、逆恨みもありえない話ではないかもしれない。

「でも、綺麗じゃん……幻滅できるほど醜くなんてないじゃないか」
「そう言われると……嬉しいようなそうでもないような。だから、そんな目で見つめられると困るって言ったんだけれど。そんな眼で見られると、私貴方を好きになっちゃうじゃない……」
 ナナはうつむいてため息をついた。
「神子であるうちは恋なんてしたくなかったんだけれどね~……私のことを綺麗だなんて言われたら、惚れちゃうじゃないのよもう」
 肩をすくめて力ない笑い、いそいそと二つの装飾品をつけ直す。いつもと同じ桁外れに美しく若いナナに戻る。
「……いつごろまでには神を地上に呼びたいと思っているんだ?」
「そうね、10年以内には片をつけたいわね……だからまぁ、私をお嫁さんにしたいならそれくらいは待っていて頂戴?」
「その頃には……俺も28になってしまうな」
「私は42ね……」
「ブッ!!」
 ナナのさりげない爆弾発言にロイは噴き出した。
「ナナ、若くない? さっきの正体を見た時は25か26に見えたんだけれど……」
「琥珀は、中に入り込んだ物を太古の昔から今まで、全く形を変えることなく今へ届けるわ。そして、私たちもまたこの琥珀の中に入り込んだ虫を見て、過去に思いを馳せる……それこそ、セレビィの持つ時渡りの力。
 神々さえ魅了するこのフリージンガメンにはその時渡りの加護が込められているの……即ち老いを遅らせいつまでも他人を魅了するその力を。逆に物を成長させる力もあるのよ……いつもは草に使っているのがそれ。限界はあるけれどね……年寄りじゃダメかしら?」
「いや、むしろ嬉しいかも。俺年上好きだし」
「あら、意外な趣味ね……でも、やっぱり元気な子供を生める間に神子としての責務を終えたいし。もうちょっと頑張って神子やシャーマンの仲間を探した方がいいかしらね? サイリル大司教の心配事がなくなったら、ちょっとスピードあげられるし、いくらかシャーマン候補のあてもあるけれど。それも予定通りいくかどうか……」
 ナナはテーブルに肘をつき、遠い目で溜め息を一つ。
「予定は未定だからね」
 ナナはワイングラスを指ではじき、キンッと心地よい音を響かせる。
「まぁ、仕方ないさ。俺もシャーマンの修行とかがんばるからさ」
 ロイは力なく笑って皿につがれた葡萄酒をピチャピチャと音を立てて飲む。

「そうそう、こんなお話があるのよ。人の不幸と幸福に触れる事がシャーマンとしての力を高めることならば……きっと神子としての制約は必然的な不幸という風に意図的に組み込まれたものなんじゃないかしら?」
「歯が浮くような気障(キザ)なセリフだな。歯無しになっちまうぞ?」
 ロイは茶化して笑う。
「これは黒白神教の神話の一説の受け売りよ……神子のシャーマンがゼクロムになぜ『神子は性交をしてはいけないのか』と問いかけた時のセリフを引用してみたの……『自分を苦境に置いてこそ、シャーマンの力は高まるのだ。神子なればより苦境に立つことが出来る』ってゼクロムは答えたわ……あー私って苦境に立っているのね。本当に子供作れる体でいられる間に終わらせたいものね」
 あー理不尽、とナナは笑う。
「とにもかくにも……神子でいる限りは、本番は無しか。今の雰囲気なら、お前が神子でもなければ襲っちゃおうかとも思ったんだけれどな。一度俺たちの手で祭りを執り行うまで神子でいるって言うんなら、俺も祭りの準備を真面目に手伝うことにする……。早いとこお前を襲えるようにね。
 手っ取り早くシャーマンの力を高める方法ってない?」
「シャーマンとして成長したいなら、神器に話しかけたり酒場で客の愚痴を聞いているだけでも十分よ。それよりも仲間を集めてくれるほうが助かるかしらね……」
 ほろ酔い気分で語るナナは葡萄酒を一気に口に含んで飲み下す。
「それよりもさ」
 ナナが甘い声でささやきながらロイに唇を重ねる。
「前にも言ったけれど本番はダメって言うのは、転じて言えば本番しなければいいって事よ? 前に『あなたに夢のような快感を与えてあげたのにぃ』みたいなことを言った時はかわされちゃったけれど。普通に貴方にめくるめく快感を与えることなら何ともないわ。本当に……むしろ、そうしてあげたいとすら思う」

 顎の付け根を軽くつかまれ、強制的に口を開けさせられる。簡単に逆らえる力加減ではあってもロイは抵抗しなかった。その口にナナは自分の舌を入れる。
 暑さを紛らわすために唾液に濡れた舌同士が絡み合い、同時にまだワインの匂いが残る吐息が直接流れ込んでくる。酒以上に悪酔いをしそうな甘ったるい匂いに、思わずロイは噎せ返った。乾いた咳が漏れたのもそう長い時間ではなく、今度のロイはゆったりとした呼吸でナナの吐息を吸い込んだ。
「危険な香りだな……媚薬みたいに酔ってしまいそうだけれど、文字通り危険ってことはないよね? 口の中に薬を仕込んでいたとかさ。さっきのセリフ……『めくるめく』って言うのがすごく引っかかるんだけれど」
「あら、まるで私が毒タイプみたいな言い草ね。ま、それもよさそうだけれど……安心して、私の息は匂いだけ。酔わせる効果なんてないから」
「でも、それはそれで残念かもな、もうちょっと酔いたかったのに」
 ロイはおどけて笑ってみせて皿に注がれた葡萄酒の処理にかかる。
「ロイがお薬を使いたいというのならばご希望に添えさせてもらうわ」
「薬は遠慮するけれど、『据え膳食わぬは男の恥だ』って親父が……言っていなかったか。あれは別の誰かだ。でもいいや、浮気しているわけでもないし……」
 ロイが再び葡萄酒の処理を再開する。ナナは待っているのも手持ち無沙汰なのか、ドポドポと水を注ぐように葡萄酒を各々のグラスや皿に注ぎ、並々と注がれたワイングラスを手に満面の笑みを浮かべる。今ナナが飲んでいるのは安い酒ではあるが、やはりこうまで豪快に飲まれると前後のセリフも相まってロイは耳をたれ下げながら苦笑いするしかなかった。

 ロイが小さなスープ皿に注がれた葡萄酒を飲み干すと、ナナもちょうど飲み終えたところのようで、渇いた木の音を響かせてテーブルの上にグラスを置いた。酒に一切酔うことのないナナでも雰囲気に酔うことはあるのか、熱に浮かされたナナの視線は定まらない。危うい眼をしながら危なげなくナナは立ち上がり、椅子に座ったままのロイの頬と顎の下をくすぐるような手つきで撫でる。
「なら、いきましょう……本番があろうとなかろうと、ここでやったら匂いが残るわ。みんなにそういうことをしたって見せ付け……いえ、嗅がせ付けたいならともかくだけれど」
「そうだね。リーバーに気が付かれない程度にやろうか……」
 言いながらロイが椅子から降りると、ナナはグラスと皿を手にして厨房へ片す。ナナが厨房から出てくるのを確認して、ロイは自分の部屋へと案内する。自分の部屋に他人を案内したのは歌姫が風邪を引いて以来だなんて考えながら、ロイはこれから行われるであろう事に心を躍らせる。
 表面ではいかにも平静を装ってこそいるものの、男としての本能は素直だ。気を抜けば、まだなにもされていないのに下半身に熱が滾ってしまいそうだ。
 じゃじゃ馬だった三日月の羽を飼いならす前の淫夢のような濃厚なものは流石に期待できないだろうが、現実でそれが行えるのは嬉しくて、初体験でもないのにいい年して舞い上がっている。
 愛してもいない者と婚約してなし崩しで行った性交は思えば疲れるばかりで、自分の舌で自身を慰めていたときのほうがよほど快感だった。そんなのに比べればテオナナカトルを服用させられ霞がかった意識の中でも、ナナの奉仕の腕前は相当なものだったのだとロイは思う。
「この部屋が俺の部屋……隣はリーバーだから、あまり音を立てないようにしよう」
 ロイがサイコキネシスでドアを開けようとする前に、ナナがドアノブに手を掛け開く。
「あら、よく片付いているじゃない」
「ナナの家ってまだ散らかっているのか? ビークインの時は色々散らばってたけれど……」
「ちょっとね」
 Bキャンセルの件で見せることになった自分のだらしない部屋に対して恥じらいはあるのか、控えめな口調でナナは目をそらす。ナナは目を逸らしたその先の視線にあるベッドに、演舞のようなゆったりとした歩みで近づき、崩れるように横になった。
 横たわった姿勢のナナは、股を擦り合わせて色っぽい目をロイに向ける。足を組み替える動きに合わせてベッドが軋む音まで魅力的に感じてしまうナナの所作は、レプリカグレイプニルの仕業か、もしくはフリージンガメンの仕業か。
 そんな事ばかりに思考が働いてしまう自分が急に恥ずかしくなり、ロイは首を振る。

「どうしたの?」
「いや、首飾りと髪留め……無い方がいいかな」
「あぁ、これ? なにかしら……これをはずしてわざわざ年上の女性を……火傷を負った女性を相手したいのかしら?」
 静かに首を振ってロイは否定する。
「正直、最初出会った日の年の取り方だったら……流石に年の差がありすぎて敬遠していたかもしれないけれどね。でも、さっきのナナが本当のナナならば……うん、俺は受け入れられる。っていうか、俺は若すぎる姿よりかは本当の姿の方が魅力的かな。そりゃ、火傷はいただけないけれどさ。
 大丈夫、農奴の女性なんて親子以上の差があっても嫁がなきゃならんのさ。これくらいの年の差なんて乗り越えられないほうが恥ってもんさ」
「ありがとう」
 ナナは目を瞑る。そのまま眠ってしまうんじゃないかと思うような安らかな笑顔を浮かべながら、これまた優雅にグレイプニルを外す。まとまっていた髪がばらけるとともに、ナナを覆っていた幻影が剥げ落ちて、醜い火傷の跡が残る正体が露になる。
「そう言ってくれて嬉しいわ……」
 確かにあれで女性としての価値は下がる。けれど、その醜さに嫌悪を抱かなかったのは決して酒の力によるものではなかったろう。ナナは自分のコンプレックスであったのだろう火傷を見られてなお受け入れてもらえたことがよほど嬉しいのか、グレイプニル無しでも潤んでいた目からは僅かにしずくが滾り落ちた。
 ロイがそれを無言で舐めとると、ナナは若い乙女のような顔で破顔する。ナナから顔を離して微笑んで見せたロイは鋭い牙を覗かせて笑うナナによって抱きしめられた。カタツムリのようなゆったりとした動作での抱きしめにロイは身を任せる。
 きっちりと火傷していないほうがロイの目に触れるよう、ナナの右半身はロイの右半身の横にあり、抱きしめられたそばからロイの首筋には彼女の吐息が触れる。二人は言葉を交わさないままにひたすら抱き合って、クソ暑い熱帯夜を更に熱く楽しむ。
 十数回にわたる深呼吸を繰り返しているうちに、ナナの右手は徐々に背中から腰へ腰から太ももへと移動して、焦らすことを楽しんでいる。太ももの表から裏へと回り込む辺りで、ロイの体に力がこもるのを筋肉の動きでナナが感じる。柄にもなく緊張したロイの態度にナナは年上の貫禄で母性本能を発揮して、可愛がりたいと欲求を募らせた。

 ナナの手がついにロイの肉棒に触れる。高ぶる劣情に応じて、すでにして普段とは一線を画する硬さを得ていたそこだが、卵を握るような弱々しい力でもロイは敏感に反応した。ナナが相当手馴れていると思っているのか、完全に身を任せる態勢のロイと主導権を握る態勢のナナ。
 話し合うこともなく役割を分けた二人は、もつれ合いながらベッドに横たわる。出会った日のように四肢が全く地面に触れることのない無防備な体制ながら、ロイが正気を保っている事は大きな違いだ。期待と挑発がこもる眼差しでナナを見上げるのは、薬で無理やり無防備にされた時にはなかったもの。
 理性を保ったままのロイは、ナナの焦らし攻撃にも本能を優先させることなく余裕を秘めた笑みでナナを見つめるばかり。
 対するナナはまだ本気を出すつもりも無いようで、妖艶な笑みをちらつかせながら横たわったロイに覆いかぶさり、口づけを交わす。ナナの口から滴り落ちる唾液を、ロイは口で受け止め自身の唾液と合わせて喉を鳴らし飲む。互いに歯並びのよい歯列をなぞって口内をまさぐりあえば、次第に体の境界線さえあいまいになる淫靡な感触を覚えて、顔の筋肉が弛緩する。
 だらしなく開けた口が湿っているのはよくあることだが、開け放たれたナナの口からはどちらのともわからない粘液が水滴となって落ちた。落下地点を自身の胸にされたロイは、生暖かい水滴の感触を感じて、さらに気分を高まらせた。
 緩んでニヤついた顔を眺めながら、ナナは再び口付けを交わす。今度は手をロイの股間に添えて、ゆっくり確実に愛撫を始める。母親にロクに構ってもらえなかった思い出のせいか年上の女性に甘えたい欲求もあって、実を言うとナナの年齢が程よく年上だったことはロイにとってはむしろ朗報だ。
 子供を愛でるような手つきで自分に快感を与えようと腐心するナナは、ロイにとってそれだけで天にも昇るような好みのシチュエーション。声に出して甘えることには抵抗があるものの年上を相手にするのはサラ以来だし、それに今度は不倫の関係でもない。
 心置きなく快感に身を任せようと脱力していると、ナナの攻撃はまずはゆったりとしたものから始まる。卵を握るような力加減で肉棒を握り締められ、思わず腰が浮く。しかし、必要以上に攻めたりしないで少しずつ焦らしてゆく。
「どう?」
 口を離したナナは、気持ち良いかしら? と挑発するようにロイへ問いかける。
「どうもこうも、まだ始まったばかりじゃないか。意地悪しないで気持ちよくしてくれよ」
 困った口調で、しかし余裕ぶった表情でロイはナナに告げる。

「意地悪だなんて、そんなの酷いわ」
「酷いかな? 手っ取り早く気持ちよくなろうなんてばかげてる?」
 ナナはおかしくて笑う。
「美味しい物は長く楽しむものなのに……でも、そんな事を言うならリクエスト通りにしてあげちゃっても良いかも。大サービスよ」
「うぁ!?」
 酒が入っているからなのか、ナナは異様な上機嫌でロイの尻を鷲づかみにして、ベッドの上を滑るように移動させた。調度、彼女の正面にロイの大事なところが見える。
「よーし、よく見える」
「はは、お手柔らかに」
 心底愉快そうなナナの顔には、想像よりも激しいことをされそうだとロイは苦笑する。

「情緒もへったくれも無いけれど、代わりに意地悪も無いわ。だから、出来るだけ可愛らしい声で鳴いて頂戴。返事は?」
「かしこまり」
 いつものリーダー口調でナナが問えば、ロイは戯けて笑ってみせる。ナナの魂胆が知れないことは怖くもあったが、それ以上に楽しみでもあった。
「じゃ、いただきます」
 前フリはそれだけ、ロイが唾を飲み込んでいる間にナナはロイの肉棒に喰らいつく。先ほどの愛撫によって肥大化し、外部に晒された雄槍は再び熱にくるまれて否が応なしに反応する。
 喰らいつかれた直後に浮き上がった腰の動きを、煩うでもなくナナはロイのしたいように任せた。
「ロイ、貴方が気持ちいと思えるように動いて」
 口に一物をくわえたまま、聴覚に働きかける幻影でロイに話しかける。
「そんな事言われたら自重しないかもよ?」
「あら、だから良いんじゃない」
 ロイが冗談めかして言ったことも、ナナはやってみろとばかりに挑発で返した。流石に本気で動くのは忍びないし、あまり遠慮なしにやり過ぎると歯が立ってしまいそうで怖い部分もある。けれど、手加減はしても遠慮はしなかった。ナナに言われたとおり、腰を突き上げてナナののどの奥にまで肉棒を突き刺す。
 口内をこすれる感触に、はじけるような快感を感じる……ナナは動じていなかった。むしろ先ほどまで静かに肉棒を咥えていたのに、今はグチュグチュといやらしい音を立ててロイをさらに挑発している。
(なんだ、十分意地悪じゃないか)
 こっちの都合なんてお構いなし。過ぎたるは及ばざるが如しとは言うが、長持ちさせる気の全く無い攻めと言うのもまた意地悪な気がした。ナナの攻めはひたすら容赦ない。
 あれだけ遠慮の無い音がすれば、意識は否が応なしに下半身へ向く。そんな風に意識を集中なんかしていると完全に起き上がったロイの肉棒は、精を吐き出せとせわしなく命令を下す。ここで終わってしまうのは少し物足りない気もするが、そういったところで延長してくれそうなナナでもない。

(自分が望んだことだし仕方が無い。ナナに全て任せてしまおう)
 あきらめたロイは、ナナの思うがままに攻めさせた。可愛い声で鳴いてと言われたので、わざとらしくない程度に喘ぎ声を上げる。少しばかり情けない気もしたが、時折ナナが楽しそうに声を上げるので何よりだ。喘ぎ声に呼応してさらに激しく快感を押し付けたナナは、いとおしそうに口元を綻ばせて一気にロイを快感に導きにかかった。
「んくっ」
 程なくして、ロイはナナの舌技によって達してしまった。天然ではなく、努力によって得たのであろう舌技によってたちまち骨を抜かれたロイは、精と共に大きく息を吐き出した。ナナはまるで母乳を求める赤ん坊のようにそれを吸い、飲み込んでいく。上等な酒を飲んだかのような恍惚とした表情は、たとえようもなく淫靡だ。
「……だめね」
 ナナの口から何か恥ずかしい褒め言葉か、もしくは男のプライドをえぐるような貶す言葉の一つでも飛び出すかと思ったが、ナナはそのどちらでもない。男のプライドどころか、聞いているほうが申し訳なくなるほど残念そうな声色のナナは、静かに首を振った。
「……貴方は、年上が好きらしいけれど、年上の女性に何を求めているのかしら?」
「何って……母性、かな」
「貴方が父親のことばかり話して母親のことを話さないのは、そういうこと……でも、母性と言うよりは貴方が求めているのは……母親の影よね。『お母さん』って大声で年上の女性に言ってみたいとか?」
 ロイの心の中を見透かすようにナナが言う。どうしてそこまでわかるんだ、と思いながらロイが頷く。
「そう、私はまだ貴方に心を開ききってもらえていないのね……でも」
 ナナの残念そうな顔は一転、鼻が触れあう距離まで近づいて笑顔を見せる。
「今度やる時は私をママって呼んでもいいのよ。好きでしょ、そういうの? 貴方はそういうことに興味を示していたからね」
 言い終わると、ナナはロイの返答を許さずに口を掴んで封じ、そのままベッドに倒れてロイと並んで横になる。

 ◇

 ……と言う夢を見た。
「で、どうしてナナが眠っているのか」
 突如目が覚めると、髪の色がいつもの状態に戻ったナナが隣で眠っているだけだ。ロイは女性にだけ頑張らせて自分はさっさと眠ってしまうだなんて甲斐性無しのつもりでもないから、あの後そのまま眠ってしまったということは無いだろう。
 だからと言って夢にしては生々しすぎるし、射精後特有の虚無感もきっちりと残っている。行為の後にすぐ寝て起きたと言うわけでもなさそうだが。
 ふとロイは、眠っている間に見せる顔が素顔だと言っていたことを思い出す。今のナナは無防備に眠っているのだから、一切の幻影を出していると言うことも無いだろう。ナナの顔をまじまじとのぞいてみると――
「雄の匂い……? いや、まさか」
 と思って、ロイが股間を調べてみると案の定、ナナに男である証が……
「ナ……ナ……?」
 ロイは口をだらしなく開けた間抜けな顔をする。
「ドッキリでした」
「ヒャウッ!!」
  絶望きわまって情けない声を出したところで、ロイの背後からナナの声。尻尾の毛が逆立って普段の二倍ほどの太さになったり、反射的に威嚇の体制をとったりしながら、ロイの意識は現実に引き戻された。
「ちょっといたずら心が浮かんじゃったから、遊んでみちゃった。っていうか、気が付いていなかった? 髪の色がピンクになっている時は、幻影を纏っている証拠だから、さっき眠っていたのは幻影だって簡単に分かるのに」
 いたずらっ子のように笑うナナの髪にはいつの間にかグレイプニルが巻かれている。どうやらいつの間にか幻影を見せられていたのだとわかって、ロイは苦笑した。
「まったく、心臓に悪い。変な幻影を見せるのは勘弁してくれ」
「ごめんごめん……貴方が私の口の中に出してから、正体が男だと気が付くまでは夢と言うか幻影だから安心して」
 ロイの肩を抱くように擦り寄って、ナナが微笑む。
「じゃあ、あれも夢……いや、それよりもナナ。お前は満足……出来たのか?」
「そんなのしてないし、出来ないの。神子だからね……」
 ロイが言い終わる前にナナが否定する。ナナの寂しげな影が差した表情は、表面上笑顔であるために心がちくちくと痛む。ロイが何かを言おうとする前にナナは首を振る。
「いいのよ、男と違って女には溜まるものは無いんだから」
 言いながらロイの萎んだ肉棒を指で弾いて、ナナは髪の毛を抱き枕にしながらベッドに横になる。
「今日はここに泊めて貰えるかしらね? なんだか眠くなってきちゃったから……明日は、梅毒治療用の培養した青カビから薬作らなくっちゃならないのに疲れは残せないわ」
 ナナは今度こそ横になって目を閉じる。
「あ、あぁ……構わないよ。ゆっくりお休み」
 ナナの隣でロイも目を閉じる。彼女に無理をさせたつもりはないのだが、ナナは恐ろしく早い段階で寝付いてしまう。一人起きているロイは今の状況を反芻する。
 ローラのときは無性に緊張してなかなか寝付けなかったが、ナナと一緒にいるときはそんな気も起こらない。それが射精後の虚無感のせいなのか、ナナがいい意味で特別な存在ではなくなったのか。
 ロイは、きっと後者だろうと考え、それならどう特別なのかと考えた。
(『これからはママって呼んでもいいのよ』か……。俺はとっくに母親に甘えられる年齢なんて過ぎているって言うのに、まだ未練たらしく……だからあんな幻影を見たのか、それともナナがあんな幻影を見せたのか。
 でも、ナナの正体が男という荒唐無稽な夢はともかくとして、あのときのナナの幻影は……あれは意図して見せたものなのだろうか? だとしたらナナは子供をあやしてみたくて俺を……いやいや、そんなことは流石に無いよな)
 悩んでいるせいで、ロイは結局眠れない。酒場の夜は静かに過ぎていった。

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  • やっと全部読み終わった・・・
    作品が凄く長いのに読み手に飽きさせない書き方を出来るのが凄いと思います!!
    ロイ・・・真っ白になればよかったのn(殴
    ―― 2014-10-18 (土) 22:55:13
  • >狼さん
    読破お疲れ様です! 他の作品も見て行ってくださいね。

    >2014-03-27 (木) 16:27:23の名無しさん
    気合を入れて書いた長編ですので、ものすごく長くなってしまいましたね。それを苦にならないくらい楽しんでいただけたようで何よりです。
    ――リング 2014-03-28 (金) 00:43:56
  • 長編かぁ面白いだろうなと思い読むことを決意したのち読み更けること既に3日目…読み終えて50万字もあったのかと後書きを見て知る私 面白いと苦にならず得した気分です(眼は痛いのですが)まさかの番外編もあり喜びましたよ この年になっても\(^∀^)/ワーイ と
    番外編にて  ナナの期待どうりロイ…真っ白にならなかったですねw
    ―― 2014-03-27 (木) 16:27:23
  • テオナナカトル 読破しました
    ↓のコメント(?)から今までかかってしまいました。 やっぱり私は読むの遅いです。(悲
    ―― ? 2013-05-25 (土) 01:53:17
  • テオナナカトル これは強敵です
    張り切って読むぞー(燃
    しばらくここから離れることが出来ないです
    ―― ? 2013-05-21 (火) 21:14:12
  • >Mr余計な一言さん
    見逃していて、ものすごく変身が遅れてしまってすみません……今日直しました。ご指摘ありがとうございます

    >2012-11-19 (月) 20:19:00の名無しさん
    こんなところにも誤字が……たびたびすみません。お世話になります
    ――リング 2012-11-27 (火) 22:54:11
  • 今更めいた誤字報告です。

    「神龍の顎には、一枚だけ他の鱗とは違う方向。逆の向きに生えている鱗があると言われているの。その鱗が逆鱗……逆鱗に触れられると、龍は怒り狂うと言われているわ。それゆえ、我を忘れて攻撃する龍の技を逆鱗と称されるようになったの。

    技を逆鱗と称される
    は間違いで、正しくは
    技が逆鱗と称される
    技を逆鱗と称する
    のどちらかです。
    ―― 2012-11-19 (月) 20:19:00
  • 番外編で、誤字がありました。

    最後のシーンで
    [ナナの神の中にいるロリエの方を見て]
    になっております。

    失礼致しました。
    ――Mr余計な一言 ? 2012-03-17 (土) 21:46:28
  • >イカサマさん
    あんな言葉遊びで衝撃を受けてもらわれると、どうにも反応に困ってしまいます><
    今はこの作品が自分の中で一番だと思っていますが、いつかこれを超える作品を作られるように頑張りますね!
    ――リング 2012-03-16 (金) 22:46:09
  • 全体を通してみてBeeキャンセルの衝撃が忘れられませんでした!
    すばらしい作品をありがとうございます!
    ――イカサマ ? 2012-03-11 (日) 22:15:45
  • >チャボさん
    まずは、誤字の報告ありがとうございます。直させていただきました。
    そうですねぇ……作者としては主人公とヒロインに人気があって欲しいところなのですが、リムファクシの謎の人気に嫉妬せざるを得ません。
    今年中にテオナナカトルのお話をもう一度上げられるかどうかはわかりませんが、また皆さんの目に触れられるように頑張りたいと思います。
    コメントありがとうございました。

    >2012-01-09 (月) 02:14:10の名無しさん
    来年のことを言うと鬼が笑い……はい、どう見ても私の方が先に来年のことを言いましたすみません。
    見ての通りのスピードで執筆しておりますが、やはり更新量にも限界があるため、来年になってしまうことは避けられないと思います。それでも、待ってくれる人がいる限り、頑張らせてもらいますとも!!
    コメントありがとうございました。
    ――リング 2012-01-15 (日) 19:05:39
  • ふぅ…リム君最高ぉーっス…
    来年も期待しております!(早
    ―― 2012-01-09 (月) 02:14:10

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*1 起床した時と眠る時。仕事がの始まりと終わりにも祈りをささげ、また食事の際にも食前と食後で祈る。
通常は朝に一食を行い仕事が終わって夕食を食べる二食だが、仕事の合間にもう一食食べる場合は仕事も二回行うと言う風にカウントされる。
睡眠1回、食事3回、仕事2回でそれぞれ終わりと始まりにお祈りをするため、計12回。
現在では、食事回数が3回と言う文化が根付き、12回が主流となっている

*2 『抗議する者』の意。特定の宗派をさす用語ではない
*3 『普遍』の意。公同、普公とも訳される
*4 神龍信仰ではラティアスとラテイオスのこと
*5 火傷や切り傷の跡に出来る瘢痕組織が過剰に増殖し、隆起したもの

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Last-modified: 2011-07-30 (土) 00:00:00
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