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エースと呼ばれるジャラランガが「壁」と呼ばれるチームメイトと喧嘩をする話

/エースと呼ばれるジャラランガが「壁」と呼ばれるチームメイトと喧嘩をする話

タイトルママ
言うまでも? なく♂×♂要素多分につき注意


エースと呼ばれるジャラランガが「壁」と呼ばれるチームメイトと喧嘩をする話 作:群々


 クソがっ、と毒づきながらジャラランガが、草むらを入念に見渡して、誰一匹として辺りにいないことを確認してから、太い木の幹にその逞しい背中を預けてあぐらをかいた。勢いのあまりに弾んだ鱗がやかましく鳴ったので、思わずビクリとして再び辺りを見回した。こういう時、自分の鱗が鬱陶しく思えてくる。
 深呼吸の後に、水に潜るように目を瞑って、瞼に赤く浮かんだ血管を見つめながらジャラランガは、自分が修行だと信じているところのものに取り組んだ。それは自分がまだ大丈夫であることを確かめるための一種の儀式。俺は決して負けてなんかいないんだという自己暗示。
 脳裏に浮かんできたのは、フカフカな真っ白のシーツの上で仰向けになってこちらを誘ってくるメスのアブソルの淫乱この上ない姿態だった。純白な毛並みからでも見える、引き締まり豊満な肉体、ほんの少しだけ盛り上がったように見える乳のあたり、そしてゆっくりと視線を下へ移すと、開けっ広げになった股から自ずと開くほんのりと赤い花びらのような陰部がしっとりと濡れて、粘液のもつれ合う音さえ立てている。ワンパチのように無邪気に、レパルダスのように媚びを見せ、全身をゆったりとくねらせながら、その罪深い肉体をアピールしていた。顔つきは挑発的で、額から伸びる鎌状の角を見せつけながら、嘲るように舌を垂らしていた。
 このビッチめ、俺が罰してやる、罰してやる! アブソル狩りだ、アブソル狩り! とジャラランガは念じるように言った。散々わざわいをもたらしてやがってからに、何の罪の意識も抱かずに、言葉巧みに勇猛な雄を誘ってきやがって。一体、そのグチョグチョのマンコで何匹の雄を堕落させて来やがったんだあ? クソがっ、クソがっ、でもてめえの悪事も今日までだ、俺が食ってやらあ! 頭から足まで撫で回して、キスして、涎でベトベトにして、そしたら今度はてめえのビッチマンコを俺のこのつのドリルなんか目じゃねえデカマラで蹂躙して、二度とふざけた真似できねえようにしてやらぁ! 腹ん中破裂しそうになるまでザーメンブッこんだら、今度はケツにぶっ刺して、アヘ顔でイキまくるてめえの面を見ながら、全身を俺の白くてアツアツの精液でいっぱいにしてやるからな……俺のチンコじゃなきゃ満足できないように丹精込めてブチ犯すぞ、このっ!
 ジャラランガの妄想がそこまで至ったところで、座禅のように組んだ逞しい太腿の間から、ペニスがピンと勃ち上がった。審判が両腕を上げるように、瞬く間に垂直に反り上がり、痛みを伴うほどの硬さを持ったそれを見た彼は、いきなり立ち上がると、太く逞しい両腕を力強く上げて歓声を上げた。
「っしゃあ、おらぁ! どうだっ! ざまあみやがれっ! クソがっ!」
 まるで、華麗なタッチダウンパスを決めた時のような興奮ぶりで、アブソルで勃起したジャラランガは扱くことも忘れて勝利の舞を踊った。



「っしゃあ、おらっ、来いよ!」
 ボールを片手で掴んで、相手の選手を挑発するように、あるいは自らを鼓舞するようにジャラランガは吐き捨てた。中腰の態勢で、ジャラランガの動きを伺っていた相手のナゲツケサルが微かに喉元を唸らせると、受けて立つ、と言わんばかりに両拳を叩き合わせると、ジャラランガに向かって突進してきたのを、大胆にも真正面から受け止めた。
「いいタックルだなっ、だがなっ」
 後ろ向きに吹き飛ばされそうになりながらも、ボールを持った腕は均衡を保っていた。相手の上体をしっかりと胸に受け止めながら、ジャラランガはしたり顔に笑って、シャラシャラと鱗を鳴らしながら、手首を捻った。
「へへっ!」
 投じられた爽やかな黄緑色のココナッツを模したボールはミサイルのような放物線を描いた。ジャラランガを押し倒した相手や、相手チームの選手どもがハッと宙を見上げた時には、いくつものマークから飛び出したナゲツケサルが、軽快な跳躍をしながら楽々とボールを掴み、颯爽とフィールドを駆けてタッチダウンを決めていた。
「……っしゃあっ!」
 仰向けのままでジャラランガはガッツポーズをし、唖然とした相手を振り落とした。後頭部から垂れた鱗がかち鳴らされてやかましかった。
 まっ、俺の勝ちってこった、な! 意気揚々とチームの歓喜の輪に飛び込んで、タッチダウンを決めたナゲツケサルの上に飛び乗って、おふざけにキスを浴びせた。
 ナゲツケサルたちに混じって、彼らのフットボールチームの一員で、エースと呼ばれるジャラランガは、陽気でノリのいい気性からすっかりナゲツケサルたちに溶け込んでいた。試合になれば、その大柄な肉体と、それに似合わぬ巧みで俊敏なステップでもって、相手を恐れさせた。元はナゲツケサルたちの間で始まったこのポケモンたちのフットボールにあって、彼の存在は新鮮で、このチームに加わって一目置かれるようになるまでにはさして時間はかからなかった。
「お疲れえっ!」
 試合が終わって、地べたに座り込んで休息しているジャラランガの背中を、決勝のタッチダウンを決めたナゲツケサルが強めに叩いた。チームに何匹かいるナゲツケサルたちを率いることから立場であることから「キャプテン」と呼ばれる彼は、数十匹で構成されたチームの中心で、選手一匹一匹を精神的に取りまとめるほどの人望を持ちながら、自らも群を抜いた実力を持つレシーバーであった。それゆえ相手からは常に警戒されながらも、その包囲網を掻い潜って踊るようなステップでゴールラインを踏むことだってお手のものだ。そんなキャプテンだからこそ、ジャラランガがこのスポーツにおいて果たすべき役割を誰よりもよく理解していたし、ジャラランガをチームに誘い、さらには今まではキャプテン自身が務めていたクォーターバックのポジションを与えたのだった。
 叩かれた背中から滲んだ汗が弾け飛ぶ。ジャラランガは横目でキャプテンを見て、尖った鼻先を自慢げに鳴らした。
「なあ、どうだったよ? さっきの俺のパス?」
「一番いいとこだったぜ!」
 キャプテンはジャラランガと肩を組む。うろこポケモンの腕にも劣らない逞しい上腕をがっちりと組み合わせながら、互いに頬を寄せる。白い毛並みがジャラランガの先鋭な顔面をくすぐる。
「だろ? だろ? へへっ! もっと褒めてくれたっていいんだぜ?」
「よし、よし」
 屈強なエースの肩を掴んで、そこから生えた白い毛をキャプテンはクシャクシャに掻き撫でた。黒地の先っぽの辺りに白い波打った模様のあるナゲツケサルの太い尻尾が持ち上がり、お調子者のジャラランガの編み上げのような鱗を弄び、チリーンのように繊細な音を鳴らす。
 自他ともにエースと認めるジャラランガは得意顔で、甘えるニャヒートを気取って尻尾を高く直立させてグラグラと揺らして、先端にトロピウスの房のようについている鱗を鳴らし、大地に根付く幹のような腕をキャプテンの腰に回し、がっちりと引き締まったくびれを掴んで張りのある脇腹を揉んだ。短く刈られたような黒毛はゴワゴワとしていて、クセになる触り心地だった。
「やめろっての!」
 照れ臭そうに、キャプテンがヘルメット代わりのココナッツのズレを直す。
「じれってえな」
 ジャラランガは晴れやかな顔つきをした。
「褒めるってったら、あれに決まってるだろ、キャプテン?」
「んだよ、ここですんのか?」
「いいだろっ、ほらっ、キャプテン、早く、早くくれってばあっ……」
 白と黒の毛の境目である腰を指でくすぐって、煽てるように囁く。節くれだった指が、キャプテンの腹筋を掴んで、鍵盤を叩くように交互に指を食い込ませた。
「ま、しょうがねえか」
 二匹はいっそうきつく肩を組んで向かい合って、互いにイタズラめいた視線を送り、目を瞑った一瞬の間に、他のチームメイトにも聞こえるほどのルージュラみたいな音を立てながらキスをした。他のナゲツケサルたちの好奇の視線が二匹に注がれ、周囲がどっと沸き立った。口を離すと、二匹とも腹を抱えて地べたに倒れ込んだ。丸めた全身をピクピクと震わせながら笑いを堪えるのに必死だった。酷使した腹筋がはち切れそうになっていた。
「あああっ、最高っ!」
 ジャラランガは全身の汗を撒き散らしながら叫んだ。
「次の試合も、頼むぜえっ、キャプテン!」
 すっくと上体を起こしたキャプテンは、肩甲骨ごと肩を慣らすように回した。屈強の上腕には、葉っぱを器用に組み合わせ、貼り合わせて作ったマキシマイザスのロゴが表現されていた。
「わーってるよ、エース」
 寝転んだままのジャラランガの脇腹を指でつねると、キャプテンは腰を屈めたナゲツケサル特有の姿勢で立ち上がり、次の試合に向けて、真っ先にグラウンド代わりの草地へ飛び出していく。キャプテンの雄らしい背中を横目で見送ると、ジャラランガは休憩がてら一眠りする。今日一番のベストプレイを頭の中で振り返って自画自賛しつつ、次の試合のことを考え始める。次はどんなことをしでかしてやろうかと、パス回しのアイデアをあれこれと巡らせていると、気持ちが自然と高まってくる。ポケモン同士のフットボールはとにかく楽しかった。力比べをするように相手のタックルを迎え打ったり、逆に相手の動きを封じたり、スナップで受け取ったボールをどこへ投げるか、一発で勝負を決めるロングパスか、敵陣を縫うように掻い潜るパスでキャプテン始めレシーバーのランへと繋げるか、勝負どころの一瞬一瞬の判断をシミュレーションしてみて、ジャラランガの思考はすでに試合という興奮の坩堝にいた。
 このスリリングなフットボールに、ジャラランガはすっかり夢中になっていた。今ではキャプテンと親しく呼んでいるナゲツケサルにスカウトされて以来、力をぶつけ合い、それでいて全体を俯瞰して瞬時に戦略を組み立てて得点を奪っていくこのスポーツの魅力に取り憑かれていたし、来る日も来る日もグラウンドに立って、何かとんでもないことをしでかしてやるのが楽しみで仕方なかった。持て余していた時間を、一戦一戦余らずぶつけることができるのがこんなにも面白いもんなのかと、ジャラランガ自身が驚くくらいののめり込みようだった。各チームに二匹まで許されている異種族枠の一角として、今や縦横無尽にグラウンドを駆け回り、相手の守りを欺いたり、かわしたりと巧みなプレイングで存在感を放って、キャプテンと並び、敵味方問わず畏怖されリスペクトまでされる立場だった。
 試合のことを考えながら寝ているのか、それとも夢の中でまで試合のことを考えているのかもわからないくらい、頭の中がそればかりになっていたジャラランガが目を覚ましたのは、さっきから何かが自分の上に覆い被さってジロジロと見られているような、そんな気がしたからだった。
「よ、よう」
 透き通った水色の目をこちらに向けて何やら不器用な笑みを浮かべていたのは、ボスゴドラだった。ボスゴドラと言っても、場違いではなくて、立派なジャラランガのチームメイトである。チームに二匹いる異種族枠の片方がこいつなのだ。こいつもまた、キャプテンがスカウトしたやつだった。黒ずんだ樽から頭部と手足が生えたような図体で、そのみてくれの通り動作は鈍いものの、並大抵の相手のタックルでは押し倒すことも叶わない。守りの局面にあってはただグラウンドに立っているだけでも敵オフェンスにプレッシャーを与えられた。
 文字通り鉄壁であるこのボスゴドラを念頭に置いて、敵チームは戦略を組み立てねばならないとなると、自ずと選び得る攻撃法は限られてくるから、ディフェンス陣はそれを踏まえて動けばよかった。そういう意味では、ジャラランガとは違った意味で、チームに欠かせないプレイヤーになっているのだった。フットボールにボスゴドラとは突飛だが、そう考えるとキャプテンもなかなか策士であると言えば言えた。
「休憩中だったか」
「まあな」
 顎でしゃくるような動作で応じると、ジャラランガはおもむろに上体を起こしてボスゴドラの前であぐらをかいて、大きなあくびをした。今日もこいつはいるだけでチームの守備に貢献した。それもそうだ。自分たちよりも二回りくらい体格が異なるボスゴドラに真っ正面からタックルを挑もうなんて相手は、さすがにもういない。スクリメージに臨むディフェンス陣の中心で、ボケっと構えていれば事足りた。
 まさしく周囲が言うように「壁」そのものだ。実際、チームメートはみんなこのボスゴドラを「壁」と呼んでいた。揶揄いのつもりだったが、別にこいつは嫌がるでもなかったから、こいつのあだ名は「壁」になった。ジャラランガも気にすることなく「壁」と呼んでいた。だってこいつは「壁」だから。
 とはいえ、フィールドをあちこちと走り回ってチームに貢献している、ジャラランガからしてみれば、どことなく「壁」は気に入らないヤツだった。そこはキャプテンの起用法が光るところではあるが、やっぱり腑に落ちねえ、そもそもどういう経緯で、ボスゴドラがこんなスピーディなスポーツをやろうと思ったんだ?
「で、何なんだよ、『壁』」
「いや、べ、別に」
 ボスゴドラはウッウのような瞳をジャラランガに注いだまま言った。そして、そのまま黙っていた。
「お前ってよ」
 沈黙に耐えきれずに口走った。訳のわからない気まずさにはウンザリする。
「別に、って言う時に限って、すげえなんか言いたげじゃねえかよ、いつも」
「……それは」
「ほらな、やっぱ何かあるんじゃねえか」
 こいつって、まったく見た目以上に鈍臭えな、と内心鬱陶しく思いながらジャラランガはボスゴドラを睨んだ。ここでスポーツを始める前は、ほとんど不良のような野良で通っていたから、睨みつければ凄みがあった。思わず、ボスゴドラが視線を逸らした。
「何だよ、言ってみろや、ごら」
「ええと、その、なんて言うんだろう、な」
 肘を覆う鱗を膝に置いて、ジャラランガは気怠げに頬杖をついた。うぜえ。
「お前、キャプテンとさっき、キ、キスしてただろ」
「へ?」
 本当は「は?」とでも言ってやるところだったが、唐突にそんなことを聞かれると困惑の方が先に出てしまった。何言ってんだ、こいつ。ウッウ以上に頭の悪そうな目がさっきからずっと宙を泳いでいる。
「んだよ、だから何だよ、何なんだっての」
「い、いや」
「ああ? ったく、何なんだよ、一体」
「わ、悪い」
 申し訳なさそうに、「壁」はしきりに頸のところを掻き続けた。いつも、それこそ片隅でウソッキーのように無言で佇み続けているくせに、たまに話すときたら変なことを言いやがる。ったく、よく分からんヤツ。
「ま、いいや。ちょうど目ぇ覚めたし、俺、行くわ」
 じゃーな、「壁」。おもむろに立ち上がって、両拳を強くかち合わせると、シャラランと剣を突き合わせたような金属音が響いた。ジャラランガは、「壁」に目も暮れずにフィールドへ向かっていった。熱心なキャプテンは日が沈みかかってもまだ一匹でフィールドゴールの練習をし続けていた。



 今日もいつもの木に寄りかかって、きつく目を瞑って想像した。
 今度はメスのエースバーンがシワくちゃのシーツの上で寝そべっている。アブソルに負けずとも劣らないほどの純白の毛並みは、短そうだがそのくせふんわりとして触り心地は良さそうだし、洗い立てのシーツのようなほのかな香りがしていそうだった。
 雄勝りな態度で、まるでサッカーにでも誘おうとでもするみたいに、ジャラランガをベッドの方へと誘ってくる。ほら、こっち来なってば! 準備はできてるよ。ぱっちりとした瞳は無邪気にも見えるし、思っくそ誘っているようにも見える。長い耳が豊かにピクピクと動き、それに合わせて鼻の上の三つ又の触覚も揺れるのが、股間をムズムズとさせる。馬鹿みたいに可愛い顔をして、胸から腰までほっそりと、なだらかで綺麗なスタイルが敏感そうにくねっているのは、いかにも発情期のウサギらしく食ってよ! とでも言いたげだった。
 それだけでももう十分興奮していたし、ぶち犯したいという感情が限界にまで触れ切っていたが、ここで終わってしまうのはもったいなかった。何よりその腰から下の赤いスパッツみたいなとこ。ぴったりとそのカラダにくっついて、履いてるのか履いてないのかすらもわからないほどに馴染んでしまってるその赤いスパッツを、こう、両爪で引っ付かんで一気呵成に脱がしてやりたい。それであられもない、ピチピチの陰部を外気に晒して辱めてやって、まんじりまんぐり返しする。
 余裕そうな態度をぶっ壊すくらいには視姦に視姦してやって、じゅぷにゅぷちゅぷ、とわざとらしい音立てながらしゃぶり尽くして、もうそれなしではいられないカラダにしてやる。イキリたった俺のチンコでテメエの恥知らずなマンコをやらしくペチペチ叩いてやって、たっぷりと焦らしてやって。
 小生意気な雌兎をすっかりわからせたら、あとはずっとこっちのエンドだ! メスのエースバーンと来たらヤルことは一つ、腕を掴んで立ちバックして意識飛ぶほど感じさせてやって、そんで容赦のない種付けプレスでこの発情クソビッチ、おらっ孕め、孕みやがれ、って叫びながら子種ぶち撒けてわけわかんねえ喘ぎ声あげさせてやる。何時間でも何日でもヤレるだけヤッてやらあ。インテレオンなんか目じゃねえぞ、俺の方がアッチの方はすげえんだからなっ!……
 目をつぶりながらでも、股間に血が結集する感じ。触って無理に扱かなくとも、ゆっくりと着実に大きくなっていく「アレ」の感覚。ジャラランガはぱっと目を開いた。鎌首もたげて勃起しきった太く逞しいペニスが、腹にまで立ち上ってきていた。
「っしゃあっ!……」
 安堵したように溜め込んだ息を吐き出すと、ペニスを握りしめて、無茶苦茶に兎を犯す妄想をしながら、一心不乱に扱いた。うっとりとして首を寝かすと、編み上げのような鱗が重なり合って綺麗な音を鳴らす。握り拳の中をエースバーンの膣だと思い込んで、激しく腕を上下させ、腰を弾ませるように動かすと、まるで自慢の逸物にエネルギーが注入されているようなおかしな感覚と共に、興奮が爆発的に充填されていく。
「ああっ……はあっ……」
 絶頂に達しそうになる寸前で腕の動きを緩めては、エースバーンの雌の姿態のあれこれをしっかりと頭の中に思い浮かべる。白い毛に覆われた股はもう愛液でドロドロになってしまっている。明るくも凛々しい表情も今は快楽に溺れて、焦点がボケて虚ろになった瞳にはハートが浮かんでいやがって。
「うっ!…………」
 俄かに怒張した自分のペニスから、堪らなくなった興奮と同時に白く濃厚な精液が噴き出してきて、音を立てて草地に零れ落ちた。鼻先に鋭い臭いを醸し出すそれが押し出されるたびに、腹の奥でツンとした痺れのようなものが走る。時間をかけて熱心に扱き通した時に感じるやつ。ジンワリとした快感なのか不快感なのかもわからないがためにクセになってしまう鈍痛に耐えながら、木の幹にどっぷりとカラダを委ねた。
 エースバーンの形を取ったイメージがたちまちボヤけて、雲散霧消していった。全身がグッタリとして、何も考える気が起こらなくなった。
 もう出したんだなカワイイ……
「あ゛」
 イヤな声を聞いた気がしてジャラランガの背筋が凍りそうになった。思わず、首を横に振ると、辺りの静けさを振り払うかのように鱗がやかましい音を立てた。誰もいなかった。風で草のそよぐ音がやたらと耳にこだましてきた。



「おおい!」
 試合形式の練習で腕と鱗を鳴らしていると、キャプテンに呼びかけられた。
「ん、どしたあ?」
「ちと、こっち来てくれやあ!」
「おうよ」
 ステップを踏みながらフィールドの片隅へと走っていく。薄々何で呼ばれたのかはわかっているから、草地を一歩踏むたびに心も重くなっていく。どことなく死んだ目をしながらキャプテンのもとにやってくると、ディフェンス陣がスタートの練習をしているところだった。ラインバッカー、コーナーバック、ディフェンスライン……それぞれのポジションを務めるナゲツケサルたちが白線の前で両膝をついて、合図と同時に瞬時に立ち上がって走り出す。それが終わると、今度は横向きに片膝をついたポーズ、それを左右とも済ませたら、今度は片腕だけを地面につけながら前屈みの姿勢と、次々とメニューをこなしている。
 そんな細身のナゲツケサルたちの中で、「壁」の奴が異様な存在感を放っていた。一番初めの基本のポーズでさえ、その黒い巨体を御しかねてプルプルと震えていて、いたたまれなくなってくる。掛け声と共に他のチームメイトが颯爽と走りだすのに、「壁」だけはようやっと立ち上がったかと思うと、一息つくようにワンテンポ置いてから、のそのそと走り出す。片膝をつく姿勢だって、ただしゃがんでいるのと何が違うかわからないし、片腕で自重を支えようとすれば、兜みたいな頭から伸びた突起が地面に突き刺さりそうで、引っかかってコケでもしないかと不安になってくる。
 よくもまあ、こんなナリでチームにいれるもんだな、とジャラランガは思わずにはいられなかった。他のメンバーに少し冷やかされながら、照れ臭そうに兜の後頭部を掻きながら、みんなに混じって粛々とメニューをこなしていく「壁」のことがいたたまれなくなってくる。そんな「壁」の姿を、キャプテンは微笑ましそうに見つめている。
「で、どしたよ、キャプテン」
 わかりきってはいたが、一応そう尋ねておく。
「うん。いつも悪いんだが、『壁』のディフェンス練習、お前が付き合ってくれ」
「あー……」
 わざとらしく背伸びをした。たっぷりと時間をかけ、あからさまに大きな声で欠伸をかます。ああ、知っちゃあいたけどやっぱめんどくせぇ。それを言葉に出さないだけ、マシだと思え。そんなことを考えるジャラランガのことを知ってか知らずか、キャプテンは苦笑いしながらT型のタックルシールドを手渡す。
「こいつのパワーに対抗できるのはお前くらいだからさ」
 といって、尻尾でジャラランガの背中を軽く叩くと、さりげなく尻尾の付け根に巻きついて、そっと一揉みしてきた。ゴワゴワした感触とともに、あらぬ場所に触れられるゾワっとクる感覚に身を震わせると、異種族枠のエースは肩をすくめた。
「へいへい、しゃーねえな」
 そんな二匹の様子を、ちょうどスタートの練習を終えた「壁」がじっと見ていた。コイキングだかウッウみたいなマヌケ面をずっとこちらへ注いでくるのは、鬱陶しくてならなかった。
「おい、『壁』」
 エースと呼ばれるジャラランガは、極力感情を込めずに「壁」に声をかけた。
「やるぞ」
「あ、あお、おう」
 憮然とした表情でタックルシールドを構えて、「壁」と相対する。パンチの練習である。こちらに向かって突進してくる相手を止めるための、ディフェンス陣にとっては基本であり重要な動きであるが、こと「壁」と言われるボスゴドラのこいつにはさして関係のないことだ。だって、こんなヤツと取り組むことになったら、ほぼほぼ全員、弾き返されるに決まっている。壁に向かって卵を投げつけるような、馬鹿げた真似だ。だから、みんなはこいつを避けるように戦略を組み立てているわけだし、味方のディフェンスメンバーはそれを前提にして先を読むわけである。こいつは別に何も考えず、ただそこにいるだけでいい。ヌケニンみたいに、ボケッとフィールドに突っ立っているだけで、チームに貢献できるわけだから、そもそもからしてこんな練習を積ませる意味などこれっぽっちもないのだ。
 と、せっかくの練習時間を削られてジャラランガは不満なのだが、キャプテンの考えは違うらしい。チームの一員である以上、やっぱり同じメニューをこなさせないといけないのか、それもあるんだろうが、他にも何かキャプテンなりの戦略があるのか、それは全く及びもつかないところではある。なにせ、不良だった俺に怖がることなく自分から近寄って来て声をかけてくれた親愛なるキャプテンだ。とにかく、キャプテンに言われた以上は、この「壁」のパンチに付き添わないわけにはいかなかった。キャプテンのためってんなら、「壁」の子守をするのもやぶさかじゃねえってわけだ。早く、フィールドに戻ってココナッツを投げ合いたい気持ちはひとまずグッと堪えて、ジャラランガはシールドを握りしめた。
「あ、あの」
「…………」
「いつものことだけど、よ、よろしく頼む」
「わーってら。けど、練習だろうが真剣に来いよ、『壁』」
「お、オーケー」
「じゃ、来いや、ほれ」
「うしっ」
 ディフェンス陣を取り仕切るラインバッカーが長い尾でココナッツをひっ叩いて合図をすると、ナゲツケサルたちが一斉に掛け声を出しながらシールドを素早く平手でパンチする。そんな他の連中からは明らかにワンテンポ遅れて、「壁」はやおら腰を上げて、まるでスローモーションのように手のひらをパッと開いた腕を突き出して、シールドを突いた。
「っ!」
 ジャラランガはしっかりと腰を下げて踏ん張って「壁」を受け止めた。ノロマな動きではあるが、ボスゴドラの巨体から繰り出されるパンチは流石に強烈だった。ドラゴンタイプのエースでさえ、その力をまともに受けて半歩ほどは後退してしまうほどである。ボスゴドラと比べて遥かに身軽なナゲツケサルなら簡単に吹っ飛ばされてしまうだろう。
「だ、大丈夫か」
「要らねえ心配すんじゃねえよ、ほら、また、来るぜ」
 合図のたびに、「壁」の重い一撃をジャラランガはシールド越しにくらい続けた。何とかその桁違いのパワーを受け流すことはできるが、少しでも集中を欠いたら腕を持っていかれそうである。こんな場所にいなければ、その力はきっとどこかの山でバンギラス相手にでも発揮していたものなのだろうが、どういうわけか、「壁」はナゲツケサルたちに混ざってスポーツをしている。ただ、そこにいるだけで脅威になる、というその一点だけが取り柄であるのだから、別にこんな練習をさせる必要もない、どうせパンチしたら相手は即負傷退場しかねねえんだから、けどキャプテンの考えってもんもあるし、とモヤモヤと考え続けているうちに、パンチのメニューが終わった。
「せ、センキュ」
 「壁」は言った。
「あいあい」
 それからシールドを用いた守備練習のメニューにもいくつか付き合った。クロスフェイスとかシェッドとか言うのだが、「壁」相手だとただのアローラ相撲にしかならなかった。いや、むしろスポーツにしてもなぜそっちの方に行かなかったんだ? 「壁」のひたむきながむしゃらさから来る訳のわからないパワーを、ジャラランガは淡々と受け続けるだけだった。練習に付き合ってやっているというよりは、自分は自分で何か精神的な修行をしているみたいに思えてならなかった。あまり考えると頭の中が空っぽになりそうだった。
 やっと「壁」に付き合う必要のあるメニューから解放されて、さっさと持ち場のオフェンスに戻ろうとしたら、「壁」が近寄ってくる。気づかないふりをして、そのまま帰ろうとしたら恐る恐る、そっと肩を叩かれた。
「き、今日もありがとな。悪いな、い、いつも」
 ジャラランガは肩をすくめた。肩をすくめる者がいかにも肩をすくめそうな時にするような肩のすくめ方である。「壁」はドギマギした。甲冑のような頭から飛び出る汗が見えるかのようだった。
「まっ、チームだし、キャプテンが言うんだから、しゃーねえ」
 「壁」はまだ何か言いたげにもじもじしていた。無視してしまっても良かったが、何だか離れるタイミングを逃してしまったように思えたので、そのまま相手が何か話し出すのを待っていた。
「そ、そだな、じゃ、また、よ、よろしく」
 「壁」は野太い装甲されたような腕をいきなり宙に振り下ろした。それはジャラランガの尻尾の手前でピタリと止まると、ガタガタと震えたが、意を決したように動き出すと、エースの尻のあたりを軽く叩いた。
「あ?」
 ジャラランガは訝しげに「壁」を睨んだ。「壁」はハッとして、慌てて両手を後ろに組んだ。しかし表情だけは相変わらずコイキングかウッウのような馬鹿面をしたままだった。
「いや、その」
「え?」
「ありがとな、って」
「それ、さっきも言っただろが」
 やれやれ、よくわかんねえヤツ。本当に壁と話してるみてえだ。そう思いながら、じゃあなと適当に片腕を上げて、後ろ髪のような鱗を鳴らしながら駆け足でフィールドの中心へと戻っていった。



 練習後、他のチームメイトがいなくなり、しばらく居残って自主練をしている最中、休憩がてらに近くの茂みの飛び込んで、いつもの木の幹に背をもたれた。
 ここまでの動作は何度も反復してきた。フィールドの所定の位置から茂みまでの歩数、そこから樹木を掻い潜って目的の木まで辿り着くまでのステップ、最後に全身をターンさせてあぐらを掻いて座り込む動作のテンポだってすっかり身に馴染んでいた。そしてここからもいつものように、瞑想をするような体で目をきつく閉じて、イメージする。
 ラティアスが犯されている。兄のラティオス想いでいつも兄妹でべったりくっついて、どこへ飛ぶにも一緒の健気なメスだ。それがなんやかんやして攫われて、ねじ伏せられて、服従させられて、好き勝手に嬲られまくって。お兄ちゃん、お兄ちゃんって悲鳴をあげながら、柔和な瞳をうるわせてレイプされている。
 容赦なく、秘部に次々とどデカいペニスをぶちこまれて、膣をほじくり返されてイキまくってるうちに泣き腫らした瞳からは生気が失せてしまっている。胸に浮かんだ兄を思わせる青い模様がもはや痛々しい。抵抗する気力も、逃げる勇気もとうに消え失せてしまって、もうただの肉便器になってしまってラティアスは、呆然としながら白くて長い首を横に振っている。絶望しきった表情で、うわ言のようにお兄ちゃんと呟き続けている。無惨なほどに広がったマンコから臭気漂う精液が溢れ出している。しかし、それが無性にオスの性欲を高ぶらせてくれる。
「ふうっ……ふうう……」
 ジャラランガのペニスは既に勃起しきっていたが、まだ妄想を続ける。
 今度はうつ伏せに転がされて、御輿みたいに両側から持ち上げられながら、ラティアスのもう一つの穴がグチャグチャに蹂躙される。悲鳴を上げるまもなく、口にも太いペニスがぶち込まれ、飴のように咥えさせられる。押し潰された叫びの残り滓と、気味の悪い水音だけが響いて聞こえる。チンポが激しく前後に出し入れされて、やがて後ろから前から、大量の精液がぶち撒けられると、失神寸前の彼女の丸いお腹は孕んだようにいっそう膨れ、ドボドボと音を立てながら収まりきらなかった分が、尻や鼻の小さな穴から噴き出した。上に吊り上がった虚ろな瞳のせいで、可愛らしいラティアスの顔面が台無しになっていた。理性がはち切れて、押し寄せる快楽に抗えずに淫乱になったメスの哀れな表情が浮かんでいた。何かを言おうとすると口から精液が吐き出されて、ほんの少し腹に力を入れただけで洞穴のように開いたケツ穴から同じものが大量に放出された。
「あああああ、あっ!」
 息を殺しながら、ジャラランガは凌辱されたラティアスでヌいた。まるで、自分がその子のこころのしずくを粉々に、容赦なく、取り返しのつかないくらいにぶち割ってやったかのような空想をして、興奮が振り切れていた。今日はとびっきり白くて、ドロドロで、アツアツなやつが出た。エースと呼ばれるジャラランガはこの結果に安堵した。
「ううううっしゃあ、おらあっ!」
 手のひらの汚れをとりあえず草地に擦りつけると、しゃらんっ、と大きな鱗の音を立てながらジャラランガは立ち上がって、そそくさとこの場所を離れた。また妙な幻聴が聞こえないうちに、エッチなことは忘れてフィールドを後にした。
 大丈夫だ、とジャラランガは思った、俺はまだ大丈夫だ、これっぽっちも、狂ってなんかいやしねえ。もうガキじゃねえし、ましてやメスなんかじゃねえ。だって、こんなにメスでシコってんだ。なら、大丈夫、だよな! なっ?



「っし! おらっ、来いやあっ!」
 横一直線に並んだチームメイトのナゲツケサルたちの中央に陣取って向かい合うライバルたちを、ジャラランガは威嚇した。ライバルチームとの一戦、互いに膠着した試合で得たチャンス。大事にしたいダウンだ。
 審判役のナゲツケサルが右腕を振り下ろす。レディー・フォー・プレイ。ジャラランガはチラリとスクリメージの外側でボールを待つキャプテンに目配せをした。ワイドレシーバーの一角を務めるキャプテンがウインクをしながら首元のたわわな毛に親指を埋める仕草をしたところで、その背後の「壁」がつい気になってしまった。チームエリアでボケってとしている姿は、まさしく唐突に草地に突き出した「壁」。ただ立っているだけ。「壁」と呼ばれているボスゴドラは、パスラッシュのイメージトレーニングのためにか、太くて短小な手を交互に押し出す動作を繰り返していたが、それが変なダンスを踊っているように見えた。鎧のようなツノが帽子のツバのようになって顔面には影が差しているが、馬鹿に透き通った青い瞳と、デカい空洞のような鼻の穴がくっきり見える。どちらにせよ、滑稽だった。
 ともかく、ジャラランガは透き通るような鱗の音を立てながらキャプテンに向けて軽く頷き、腕っぷしに力を込める。
「へへっ、いつでもかかって来いよ。受けて立つぜ!」
 黄色の爪をくいと上げて相手のスクリメージへとちょうはつをかます。キャプテンは、ここでいつもの得意のパターンで攻めに行くという合図をした。ちょうはつによって、クォーターバックのジャラランガに相手の注意を集中させる。たまらずにタックルに来た相手をギリギリまで引き付けることで生まれた僅かな隙を掻い潜ったキャプテン含むレシーバーたちに向けて、ロングパスを放ってタッチダウンへまっしぐら、これだ。
 ジャラランガほどの体格であれば、生半可なタックルでは倒れることがないから、その間に周囲の状況をチェックする時間も生まれる。もし、敵ディフェンスのタックルが甘いようなら、自らランプレーしてボールを前へ進めてみるのもいい。一度スピードに乗ってしまえば、あとはこっちのもん、けたたましく鱗を鳴らしながら疾走するジャラランガを止められるやつはそうそういない。
 脳汁がじわじわと溢れ出す闘争心を感じながら、ジャラランガは身構えて、ニヤリと笑った。センターが後ろへスナップしたココナッツボールをキャッチして、片手で鷲掴むと前方をチラッと見渡した。自チームのオフェンスがキャリアーのジャラランガを守るように、相手ディフェンス陣と白い体をぶつけ合っている。そんな乱戦の中で、キャプテンたちレシーバーの面々は巧みに相手のブロックを掻い潜りながら、クウォーターバックに向けて絶妙なパスコースを作り出してくれている。
 焦らすように、ボールを両手でしっかり受け止めるように抱えた。オフェンスラインを抜け出した相手のディフェンスが飢えたケンタロスのようにこちらへ飛びかかってくる。ナゲツケサルらしく腰を低く屈めて、的確に腹の辺りへととっしんをかます。
「へっ、いいタックルじゃねえかっつうの!」
 後方へバランスを崩しながらも巧みに上体の均衡を取って、ジャラランガはキャプテンのいるところへとパスをする。その瞬間、「壁」の間抜けた顔と目が合ってしまった。デカデカとした体で佇みながら、倒れる自分のことをボケッと見つめている。まるで場違いな佇まい、間抜けづら、鼻の穴。こいつ、この局面でなんつう顔してやがんだっ!
 そんなツッコミを入れたせいで、パスするタイミングが一瞬遅れた。力強く投げたボールはタックルをかましたナゲツケサルの長いリーチに微かに触れて方向が逸れてしまった。しまった! と思った時には、ボールの軌道を目敏く察知した相手のレシーバーに奪われてしまっていた。インターセプト、ターンオーバー。審判が長い両手を力いっぱい交差させて、ピンと伸ばした。
 ライバルたちがビッグチャンスを生んだレシーバーを讃えに、フィールドの一点へ駆け寄っていた。ある奴は両手を高く掲げ、ある奴は背丈以上に飛び上がって、こちらのミスを煽るように喜びを爆発させてくる。いつも同じことを奴らにしているとはいえ、ちょっとメンタル的にクるものがある。それが自分のミスによるものだと、なおさら。
「どんまい、どんまい!」
 座りこんだまま呆然としているジャラランガを慰めるように、チームメートたちが寄ってきては肩の房毛を叩いて、意気軒昂と次の相手のダウンへ向けて動いていく。
「おい、大丈夫か」
 駆けつけてきたキャプテンがまだ呆然としているチームの要に声をかける。ジャラランガの目線にまで腰を下ろすと、逞しい両腕でいきなり腰を掴んで、くすぐるように指をちょこまかと動かしたので、思わず変な笑い声が出た。灰色の肉体が小刻みに震えた。
「大丈夫、みてえだな」
「へっ、大丈夫だっての、わかんだろ?」
「おう。けど、さっきのはお前らしくなかったぜ」
「……わりっ」
「俺、合図しただろうが。ここは一旦ランニングバックに渡して距離を稼ごうってさ」
 キャプテンの指が腰から股関節へと下がっていく。黒い肩に描かれたマキシマイザスのロゴマークが汗に濡れて白くテカって目立っている。
「あれ、そうだっけか……いつものアレ、じゃねえの?」
「それはこっちだろ」
 と言って、キャプテンは首元の毛に親指を埋めて、それから喉元を掻き切るようにさっと横へ動かした。
「あ゛!」
「ったく、勘違いしてたな? この!」
 キャプテンの顔面がジャラランガの鼻先まで迫った。五本の指が一瞬、ほの赤くなっている股間を一揉みした。野獣の眼光を煌めかせたキャプテンが笑いながら歯茎まで剥き出しにした。
「へへっ、サーセンっ!」
 ジャラランガは首をゆっくりと左右に傾けた。流れるような鱗の音がフィールドに静かに響き渡る。
「ま、しゃーねえや」
「たまには相手にも花を持たせてやらねえとな、って思っただけだっつの!」
 すっかり調子づいたジャラランガは、いつものようなじしんかじょうの表情を見せていたが、それでも内心「壁」のことが引っかかっていた。振り返って見ると、何食わぬ顔をした「壁」と呼ばれるボスゴドラがのしのしと草を踏み潰しながら、持ち場へとゆっくりと向かっているのが見える。やたらでかい「壁」のことに気を取られたと思っていたら、今度はあいつの顔が、とりわけバカに丸く大きくくり抜かれた鼻の穴をまじまじと見て、思わず気持ちが抜けてしまったのが、らしくもないパスミスをしちまった、とジャラランガは胸糞悪く先ほどのミスを振り返った。
 そんなことを知る由もないだろう「壁」の、のうのうとしたスローモーションを見ていると、ジャラランガはますます煮え切らない気分になった。試合が終わった後に、それとなくどやしてやろうと心に決めた。
「けど、気ぃ引き締めとけよ。大事なゲームだからな」
 キャプテンはジャラランガの尻をキュッとつねった。その痛みのおかげで、「壁」に向けてふわふわとしていた意識が、目の前のゲームに戻ってくれた。
「負けたら、アレはなしだぜ」
「へっ」
 ジャラランガは右腕を高く振り上げてキャプテンに応えた。
「おうよ!」
 やっと草地から立ち上がったエースのジャラランガは、調子を整えるように大きく息を吸って吐いてして、チームエリアへ引き上げた。なるべく、「壁」のことは目に入らないようにした。



「あ゛っ」
 ぐそっ、どうして俺がこんなことになぎゃなじゃなぢゃない! 下腹部全体に感じられる射精感と共に、ジャラランガは言葉にならない声を出した。
「もう出したんだなカワイイ……」
「あ゛……あっ」
「こんなに出してスゴく溜まってたんだ……」
「はあっ……はあああ゛っ……」
「いっぱい出せて嬉しいんだな……幸せそう……!……ヨカッタナ」
「はあっ!……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」
 荒くなった息が収まらず、腹筋を幾度もキツく収縮させながら、イキリたったペニスから精液を最後の一滴まで絞り出そうとする。ピュッと放たれた白い体液が草地へと飛び散ると、草と汗の匂いと混じり合ったオスの臭いがツンと鼻へと立ち上った。いつも、出している臭いのはずなのに、まるで異物のようにすえた臭いに感じられて、吐き気がした。四つん這いにされた姿勢のまま、ジャラランガは草地に顔面を押し付けた。
 手が、射精したばかりのペニスへと伸び、再びぎゅうと握りしめて、萎えてしまわないように扱き始める。吐精すれどまだ硬さを保っていたそれは、忽ちにして血を上らせてゴムのようになった。
「うああっ……あ゛っ……う゛ううっふっ……」
 こぼれ落ちた精液を潤滑油代わりにしながら、手は立ち上がった男根を愛しげにさする。皮のないピンク色のオスの性器は、手の細やかな動きにも敏感に反応して、言葉にならない呻きをジャラランガに上げさせる。早くも、スリットの内側の精嚢に、子種が充填された感覚がした。
「やがっ……!……ああ゛っ……う゛うううっ!」
「また出したいのか……ダイジョウブ……いっぱい出してよ、欲しい……」
 ジャラランガの雄を執拗に扱き上げながら、空いたもう一方の手が突き出された灰色の筋骨逞しい尻の片割れを掴んで、捏ねるように揉みしだいた。積み上げた練習によって鍛え上げられた尻の筋肉は、質の良い食肉のように柔らかかったので、鷲掴む手の指一本まで、凌辱される雄のカラダに伝わった。がむしゃらに尻を揉んだ手が、やっと離れていっても、触られているような感触が残った。まるで、ドデカバシの羽毛をぎっしり詰めたマットレスに埋めた手の輪郭がしばらく残るようだ。
 手に扱かれる不快感と快感のせいで、ジャラランガはまともな言葉が出せなかった。下半身に走る飛び上がるような衝動に堪えるだけで精一杯だった。何かを考えようとしても、中途半端なパスのようにインターセプトされて、全く思考が繋がらなくなっていた。気持ちいいのと、それを打ち消そうとする思いとがぶつかり合っては打ち消されて、頭の中はノイズだらけだ。
「はあっ……ああうっ……ん゛……ん゛……んっ!」
 手が今度はジャラランガの尻を力任せに打った。精悍な尻尾でも隠しきれないほどに発達した臀部を、手は高く振り上げてから力を込めて折檻すると、爆ぜるような音と共に、振り乱された全身の鱗がやかましい不協和音を奏でる。
「んっ!……んううっ!……んん!……んん、んんっ!……む゛、む、むう゛ううんっ!」
 まるで太鼓に触れたサルノリのように楽しげに、手はジャラランガの尻で何かのリズムを刻み出す。丁寧に尻の一番柔らかい箇所を一発叩けば、尻尾の付け根を小気味よく連撃し、鈍痛のするあたりを労るように撫でさすったかと思えば激しく打ってきた。その間にも片方の手はずっとジャラランガの勃起したペニスを介抱していた。染みるような尻への痛みと、下腹で高まる性感が複雑に混じり合って、試合のことしか考えられない頭では、それを何と言ったらいいのかわからなかった。
「叩かれるのがイイの……」
 ペチンと叩いた手のひらが尻にピッタリと吸着すると、生温い熱が肌に伝わってくる。叩かれて赤らんだ尻が温められると、ヒリヒリとした痛みが走って焼けるようだった。手汗が腫れた肉体に染みて、いい加減離して欲しくて自然と腰が揺れた。その度、鱗がしゃららん、と鳴る。
「はあああああああっ……! んううあっ」
「またダシタイノ」
 手は扱くペースを加速させた。タッチダウンを目前にしたキャリアーのように。
「んぐああっ……むうんっ!」
「ああ……出ちゃう……イッパイイッパイ……」
 ジャラランガのペニスがもう一度射精するために立ちあがろうとする寸前に、手は股下を離れて、片方の手と同様に、尻の丸みにピタリと密着した。両房を掴んだ手は、そのままマッサージするように尻たぶを揉み上げた。ナマコブシのようにプニプニと柔らかい肉が外側へ退けられると、谷間に埋もれていたアナルが押し広げられて、涼しい外気に触れた。
「う゛うっ……」
 尻の穴が開かれて、ジャラランガは堪えきれなくなって思わず放屁してしまった。ぷう、という気の抜けたような音が鳴ると、恥ずかしさもひと塩だった。クォーターバックを任されるエースである俺が、どうして四つん這いの姿勢でデカい屁を放り出さないといけないのか、と考える間もなく、舌がモチモチとした尻を舐めまわし、精液でベトベトになった爪が開かれたアナルをくすぐり始める。
「ああっ……ん」
 粘液で濡らされた穴周りはあっという間にトロトロになって、普段はキツく窄んだそこは、指一本導き挿れるほどには縦割れしていた。
「ほら」
「んぅ……」
「ん、イッパイ挿入ってる……」
「んおうんっ……!」
 直腸の入り口に挿入り込んだ指の腹が、グルグルと中を掻き回してスペースを押し広げようとしてくると、下腹いっぱいに異物感から激しい放屁感に襲われるが、ジャラランガはぐっと腹に力を入れて堪えた。引き締まった内壁で指を押し出すと、本当に出しているように決まりが悪かった。排泄感が収まらないうちに、指がまた肛門を掻き回してくる。さっきよりも滑りが良くなった尻の中を、指先が一層乱暴に弄り回していくと、いきんだ時にあのアレが腸を滑り落ちていく感覚が延々と続いているようでキツい。
「ん゛んうううっ……ふんぐっ!」
 ガバガバになってきた穴から絶えず放屁音が吹き出して、漏らしてしまわなかったか不安になる。そんなことをしたら、エースとして以前に、ジャラランガという種族としてもう駄目になりそうだった。泣きそうだった。
 指は調子づいてリズムをつけて前後にピストンしながら、直腸の感触を楽しんでいた。おかしなことに、激しく尻を弄られているうちに排泄感を伴う気持ち悪さに慣れて、その感触をまんざらでもないと感じるようになっていた。それに、時々動きを緩めた指が、その腹を押し付けるように勃起したペニスの裏側あたりの腸壁を執拗に揉むと、痺れるような衝撃が腰全体に行き渡ってワケがわからなくなった。弄られるごとに、カラダが飛び上がりそうだった。
「んぐっ!……む、む゛ううううっうっうっ……」
 タマゴから生まれてこの方あげたことのないような呻き声を漏らしつつ、脚をガタガタと震わせて、この得も言い難いカオスな感覚を堪えていた。無防備なペニスが徐々に硬さを増して立ち上がっていくのを、草と汗の臭いを鼻腔いっぱいに吸い込みながら感じた。なぜそうなったのかはわからなかった。自分の肉体のことが、自分でもわからなかった。
 なんで、なんで、なんぢぇ、なんじぇ。同じ言葉がグルグルと頭を駆け巡るうちに、アナルを犯す指は二本となって、よりキツく、激しくジャラランガを責めあげた。
「モウ一本挿入ってる……」
「ふう゛ううっ……ぐにゅにゅっ……」
 頭が真っ白になってくると、ただ尻をこねくり回す指の感触しかわからなくなる。ぐじゅぐじゅと汚い音を立てて中をかき混ぜられ、突き抜かれ、弄られ続けていくうち、腹を渦巻く不快感が和らいで、さっき下半身を襲ったくすぐったい痺れが再び走って、腰が弾けそうになった。
「イッパイ、イッパイ、挿入っちゃってる……」
「ぐっ……にゅにゅ……ふにゅ、ふんにゅっ!……」
 二本の指がむちゃくちゃに尻の中で暴れ回ると、ジャラランガの理性が壊れた。ただ刺激に反応して、腰を振り乱すだけしかできなくなった。指はいつの間にか3本になって、ますます狂おしいほどにジャラランガの体と心を犯した。ほんの一瞬気持ちがいいと感じてしまったのを、耐え難い眠気を堪えるように堪えていくうちに、もうダメになった。
「む゛、う゛あ゛あ゛あ゛うお゛お゛お゛お゛おんっ!」
 ずっと草地に押し付けていた顔を突き上げて、勝鬨のような咆哮を上げると、ジャラランガは雄ということもジャラランガということもエースということも頭からすっぽ抜けて、全身を激しく震わせた。
「イッパイ、気持ちいい?」
「むん゛っ……」
「イッパイ、キモチイイノ?」
「ふうっ……んん゛んっ」
「キモチイイ?」
「ぬうううんっ」
「良かった、良かった、カワイイ、カワイイイ゛っ……」
 3本の指が引き抜かれた。腸が捲れるかと思うくらいに勢いよく抜かれたので、滑るように中から出て行く感触が気持ち良かった。
 そんなことを思わずに思ううちに、いきなり尻から手でどつかれて、ジャラランガは草地に突っ伏してしまった。自分が放出した精液の冷たさを腹に感じていると、そのまま乱暴に脇腹を掴まれて仰向けにひっくり返された。しゃん、という髪飾りのような鱗の音が鳴り渡って、青々とした空を、違う、それを覆い隠すような雲、でもなくて巨躯と、ジャラランガは相対した。
「あ゛っ……」
「はあ、はあ……ああっ」
 石炭色のまん丸いカラダに、白骨のような刺々しい鎧を纏った頭部。紛れもない「壁」が、草地に寝そべったジャラランガの前に聳えていた。



 練習が終わって、他のメンバーがフィールドを離れてからも、ジャラランガは淡々とロングパスの練習を続けていた。フィールドの一直線上には円筒形のバスケットが並べられていて、外側にはガオガエンのヒールな顔面がデカデカとプリントされている。その一つ一つを目標に、クォーターバックは狙いをつけてボールを投げた。緩い放物線を描いたボールは、バスケットの中に入ったり入らなかったりした。成功率は上々といったところだ。
 縁に当たってあらぬ方向に弾んだボールが、フィールドに散り散りに転がっていく。ジャラランガがパスコントロールに集中している間、その一個一個を追いかけて拾っているのは「壁」であった。駆け足する時は、両肘を脇にピッタリと当てて腕を直角にしたポーズのままドタドタと草を踏んだ。一個拾うと、また近くに転がってきた適当なボールを掴んで、ジャラランガの側へと置いたら、またドタドタと駆け出してボールを拾いに行くのを繰り返していた。
「ふうっ……ふうっ……」
 この間の試合は負けこそしなかったが、あからさまなパスミスをしたことによって、ジャラランガにとっては手痛い敗北感の残るものになった。キャプテン含め、他のナゲツケサルたち、そして「壁」さえも、自分のミスを擁護して励ましてくれさえしたが、それでも煮え切らないものがずっとわだかまりつづけていた。何より、「壁」だ。スピーディなゲームにはまるで似つかわしくないボケッとした風采のボスゴドラ。こいつのおかげで恥を掻いたというのに、こいつは知ってんのか知らないのか本当に無頓着な態度を取り続けているのが無性に腹が立った。
「はっ……はっ……」
 直接にこそ言わなかったが、それからというものジャラランガは鼻持ちならない「壁」をそれとなく無視したり、冷たくあたったりするようになった。呼びかけられても一度目はきこえないふりをした。ノロマだとわかっていてもノロマな野郎だとチームメイトの前で揶揄った。お前はこのスポーツに向いてないんじゃないかということをそれとなく口にしてみたりもした。
「ひいっ……ふうっ……」
 それでも「壁」は「壁」だった。そのおとぼけた表情は、照れたように戸惑いを見せつつも微塵も崩れることがなかった。やけにそわそわしながら、樽のような黒い腹に両手をあてながら、ジャラランガの刺すような言葉を聞いてはコクリと頷くばかりで、いびる手応えもなかった。本当の本当に、壁に話しているような虚しい気分に襲われることすらあった。ヤツの鼻の穴から大きな噴出音が上がった。バクガメスの腹の穴じゃねえんだから、とエースは苛立った。
「ほっ……ほっ……」
 「壁」にボール拾いをさせているのも、そういう溜まりに溜まった諸々への意趣返しであった。こんにゃろめ、少しは俺を不愉快にさせてることを自覚して反省くらいしやがれ、この、このっ、と内心毒づきながらジャラランガはバスケットに向けてロングパスを決める。
「おいっ、ボール切れたぜ」
「わ、悪いっ」
 あたふたと「壁」は太い腕いっぱいにココナッツボールを抱えてジャラランガの方へやってくる。どっさりと草地にボールの山を置くと、今度はドタドタとバスケットに入ったボールの回収に向かった。灰色がかった鱗で覆われた横に長い背中と、そこから垂れ下がる無駄に長い尻尾を見ていると、思わずボールを投げたくなった。
「お、おうっと」
「悪い。コントロールミスったわ」
 ジャラランガは平謝りしながら、陰険な笑みを浮かべた。再度ガオガエンの顔面が描かれたバスケットに向き直した「壁」の後頭部に向けて、またココナッツボールを投げた。疾走するマッスグマみたいに飛んだボールが丸みを帯びたうなじにぶつかると、コツンと音を立てると、大きな弓形の軌道を描いてフィールドの端っこへ転がっていった。
 打たれたようなショックを受けてから、「壁」が後頭部に手を当てた。太い腕を上げて、肘を窮屈に曲げ、三本の爪をボールのぶつかったところに触れるまでに、随分と時間をかけた。その間にランをしてタッチダウンができるくらいの余裕さえあった。この緩慢さ全てがジャラランガをイライラさせた。
「痛い」
「悪かったな」
 素っ気なく呟いて、今度は草地を這いずる尻尾にボールをぶつけた。間髪入れずに猫背気味の白い背中にぶつけた。もう一度とぼけた後頭部に気持ち強めにボールをぶつけた。
「い、い、い、痛たたっ、い、痛い」
「痛えのは当たり前だろうがよ」
「そんなに、ぶ、ぶつけられたら痛い」
「そりゃそうだな」
「じゃ、じゃ、どうして」
 「壁」は一旦真横を向いて、そしてまた真横を向いて、ココナッツを構えるジャラランガと向き合った。黒い樽みたいな胴体、とぼけた目、その目と同じくらいにポッカリと空いた鼻の穴。速さが求められるフィールドにはおよそ不適格なボスゴドラという野郎が、ますます憎たらしく見えてきた。
「あのなあ」
 今まではっきりと言わずに、心の内でグツグツと煮えたぎっていたことを、ジャラランガは口に出した。
「お前、ちっとはチームん中の役割とかって考えたことあんのかよ?」
「お、おう」
「おうじゃねえよ」
 ドギマギしている「壁」の足元に力を込めてボールを投げつけた。勢いよく弾んだ薄緑色のココナッツボールが宙高く、夕焼け色の空を飛んでいく。
「そりゃ、テメエはその図体で突っ立ってりゃ相手のナゲツケサルたちをビビらせることができるかもしれねえけどな、悪く言やあ、味方にとっても邪魔な存在だってこと忘れんなよ」
「え、えっと、それは、その、どういう」
「ああ、うっぜええええ!」
 鱗を激しく掻き鳴らしながら、エースは怒鳴り散らした。
「そんなのほほんとした顔で、ボケっとしやがって! こちとら、試合中はずっと体ぶつけ合ったり、どこにパス投げりゃいいか、走って相手の隙を突くかとか、ひっきりヒマなしで考えてるってのに、テメエみてえなのにいられたら気が散るんだっつうの! こっちがどんだけ頭と体使ってんのかも知らねえでよ、そりゃキャプテンにも考えってのがあるんだろうがよ、俺はこの際言っとくからな『壁』、テメエ、マジで鬱陶しいからな」
「ご、ごめん」
「ゴメンで済むなら、もっとできることがあんだろ他に」
「そ、それって、その、何だろう」
「テメエで考えろや、ボケ!」
 我慢ならなくなって、「壁」の顔面めがけて思いっきりボールを投げた。振りかぶって投げたボールは、奴の額から少しだけ迫り出したツノに突き刺さって、目の前ギリギリで止まった。
「わっ!」
 鈍い反応をしてきた「壁」も流石にビビったのか、素っ頓狂な悲鳴を挙げて、ガックリと跪いたつもりでしゃがみ込んだ。
「ちっ」
 もう一球投げつけてやろうかと思ったが、手持ちのボールはもうみんな投げてしまっていた。言いたいことは他にもたくさんあったのだが、煮えくり返った頭では、何を言えばいいのかすぐには出てこなかった。ただ、ムカつくということだけ伝えられれば、差し当たっては十分だった。
「俺もう帰るからな。片付けはテメエがしとけや」
「な、なあ」
 ジャラランガは無視した。
「なあ」
 後ろは一切振り返らずに、鱗の音かとすっとボケながらフィールドを離れようとする。
「なあって!」
 「壁」の叫ぶ声がする。それでもジャラランガは鬱陶しそうに腰に手を当てながら、今度の試合のことを考えていた。肩の毛がフサフサと生えたあたりがソワソワとして、腰を屈めて全身を身震いすると、鱗同士がぶつかり合って、賑やかな音を鳴らした。そのせいで、ドタドタと草地を駆ける「壁」の足音に、ギリギリになるまで気が付けなかった。
「あ゛……」
 振り向きかけた瞬間には、もう腹這いに組み伏せられてしまった。かろうじて首を捻ると自分の背中にのしかかった「壁」の形相が見えた。いつものコイキング面はそのままだったが、額から、顔面から、腕からジリジリと脂汗のようなものが垂れていた。奴のぽっかり空いた口から漏れる生温い息が、背中にかかってゾッとする。
「て、てめえ」
「お前、キャプテンのこと好きなのか」
「は、はあ?」
「キスしてるだろ、試合勝ったらいつも、くれ、くれって言って」
「それがどうしたんだっての」
「お前、キャプテンとできてんのか」
「は? 何言ってんだよテメエは……」
「いいな」
「はあ?」
「俺も、お前とキスしたい」
「はああ?」
 全身に力を込めて、ボスゴドラに抑え込まれている体勢から抜け出そうとしたがダメだった。いくら、俊敏さで優っているとしても、自分の何倍も体重のある奴に力勝負で勝てっこなかった。助けを呼ぼうにも、キャプテン含め他のチームメイトはフィールドにはいなかった。
「くっ、キメエからとっとと離せ!」
「キモいなら、どうしてキャプテンとキスするんだ、どうして俺はダメなんだ」
「知るかっ、んなもん!」
「何でだよ、何で」
「うっせえ! 黙れ! 『壁』がっ、どきやがれ、このっ」
 不意に、「壁」の奴が体を浮かせた。その隙にとっととこんな気持ち悪いノロマから逃げてやろうと思ったが、立ちあがろうとした四肢には全く力が入らず、腕一本持ち上げることさえできなかった。「壁」の体重をしばらく全身に受け続けたせいで、麻痺してしまったらしかった。
「クソがっ、テメエ……クソみてえな真似しやがって……!」
 悪態を吐く間に、今度は急に腰をギュッと掴まれて持ち上げられた。尻尾をめくり上げられて、指がそこへ触れた。
「あ゛!」
「はあ……はあ……好きなんだ、スキなんだ、だから好きになって……!」
「わ゛、わげわかんね゛え」
「ワカラセテヤルコレから……」
 支離滅裂な「壁」の呻きを聞きながら、ジャラランガは「壁」の手や指にカラダを任せる羽目になってしまった。



「ああっ……」
 溶けたような目つきをした「壁」が、仰向けにさせられたジャラランガを見下ろしている。勝者が敗者を見下す視線ともまた違う、迫力の滲み出た視線である。それに何より、あまりの体験に呆然としたエースの視界にもはっきりと見えたのは、その黒樽の下辺りから飛び出したとてつもない血みたいな色のイチモツだった。てっきり、内臓か何かが飛び出して来たもんかと思ってしまった。
「や゛、やめ……」
「イヤだ」
 「壁」が背中をドンファンのように丸めて、ジャラランガの口を塞いだ。下からはみ出るイチモツに負けず劣らずデップリとした舌が、ねじ込むように口の中を侵してきて、息ができない。
「あう゛っ!」
「ふんっ……ふんん……」
「がっ……がっ……!」
「んんふうううっ……」
 鼻の穴からやっとのことで吹き出す息がむさ苦しい。ジャラランガを貪る「壁」の吐息が自分の息と混じり合って逆流して、呼吸しているという気が一向にしなかった。フィールドを全力で駆け回るよりも何倍も苦しかった。頭に酸素が思うように入らず、少なくとも試合においては明晰なエースの思考もままならなくなってきた。
「ふはあっ!……ぐふぅ、あふうっ……あぐっ!」
 意識が飛びそうになる寸前で、やっと口が自由になった。我を忘れて空気を肺から全身に行き渡らせようと頻りに胸を膨らます。ねっとりと臭いを放つ唾液が、ベールのように鼻先にまとわりつき、鼻呼吸するとそいつが気管に流れ込んできて、喉に痰が絡み付いたようで気持ち悪い。
「ううっ……好き……スキ……」
 譫言のように「壁」が呟き、喘ぎ散らすジャラランガの肉体を撫で回す。胸元の鱗を指で乳くりまわしながら汗ばんだ胸と腹を入念に揉んで、しっかりと鍛えられた筋肉の感触を楽しむかのようだった。しつこく撫でさすられると、エースのカラダが敏感に反応して、痺れたように全身が跳ね上がった。
「カワイイっ……」
「で、でべえっ……!」
 やっとのことで返す言葉を口にした途端に、「壁」の手が再びアナルに移った。二つの爪を慎重に挿し入れて内壁に引っ掛けると、ぐいと両側へと引っ張った。先ほど激しく弄られた尻穴は緩くなって、ゴムのように入り口が広がった。
「ひあっ、ひゃえっ!」
「はあっ……ああっ……スキナンダ……スキ……!」
 目ん玉のようにひん剥かれた後穴に、そっと「壁」の巨物の先っぽが触れて、詰るように縁をなぞった。ヌメヌメとしたそれが尻たぶの谷間に埋まると、思わず尻尾を振ろうとしたが、「壁」にしっかりと乗りかかられていたせいで先端しか動かせず、鱗の音がしゃららんと鳴り渡るだけだった。
「欲しいんだ……ウレシイ……じゃあ、俺の、ヤルよ……」
「ぐあ゛ぅ!」
 鱗の音を誘ったものと思い込んで、「壁」がボスゴドラ特有の凶悪な男根を蕩けたアナルへヒトツキした。違う、と否定する暇さえなかった。
「ぐふぅあああああ゛っ!……あ、あ、あ、あ、あ、あ゛あ!」
 指で慣らされていたとはいっても、まるで腕のように太い「壁」のペニスを受け付けるのは地獄のようだった。ジャラランガの意識は尻の裂けるような痛みでいっぱいになって、それでも無理矢理捩じ込まれる巨根に、やかましい悲鳴を出さずにはいられなかった。狂ったように頭を振り乱すと、垂れ下がった鱗が一様にけたたましい金属音を立てて、周囲の物音の一切が掻き消される程だった。
「ゼンブ挿入った……」
「あ! あぅ! あ゛っあっ!」
「挿入っチャった、ふはああっ……!」
 「壁」は感情たっぷりのため息を吐くと、両手でジャラランガの太腿を軽く掴んで持ち上げて、ぎゅっと自分の方へと引き寄せると二体の下半身はピッタリと密着した。一つになって興奮したのか、尻の中で「壁」のペニスがいっそう太さと硬さを増して、エースの腹にもその形がはっきりと浮かび出した。
「俺もキャプテンみたいにキスされてみたい……ズルい、俺、スキ、なのに」
 腸壁がねっちょりと肉棒を絡め取る感触に浸りながら、「壁」が腰を振る代わりに樽のような胴体を揺らし出した。指で弄られたのとは比較にならないくらいに、乱暴に尻が荒らされる。
「あああっ!……あああああっ……!」
 ジャラランガの灰色の腹の裏側で巨大なものが暴れ回っている。まるでバチュルか何かが何を思ったのか直腸に忍び込んで、その中で跳ね回っているかのような衝撃が、休まることなく続いた。
「ふあああっ……いい、いいっ、むぅおおおおおんっ」
「ぎあああっ!……ひああ、ああ゛っ……う、うぎっ!」
 支離滅裂にカラダを震わせて、エースの中で肉棒がドリルすると、尻どころか全身が弾け飛びそうな衝撃に身悶えする。動いても辛いし、動かなくても「壁」の異物の感覚を下半身に感じてなおさら辛い。麻痺した脚で「壁」の顔面を蹴ろうとしてもダメだった。
「んんんふっ!……もう、タマラナイよお……」
 短くて太い腕でジャラランガの両腕を押さえ込むと、「壁」はそのまま前へもたれかかって、ペニスを挿入しながら相手に抱きつく姿勢になる。グソクムシャのように背中を弓形にして、全身でエースのカラダをがっちりと固定すると、そのまま再びもがき苦しむ相手に死ぬほど長い下手なキスを浴びせた。
 「壁」の顔面で視界が覆われ、ろくに息もできず、骨ごとすり潰されそうな重みを全身に浴びながら容赦なくカラダの中までをも蹂躙されていると、もうこの拷問のような時間から解放されたいと考える余裕もないままに、ただ押し寄せてくる圧倒的な感触におしひしがれていた。
 やっと口を解放され、「壁」のヨダレまみれになった顔でジャラランガは、すぐ目の前で催眠にかかったような目をしてじっとこちらを見つめてくる「壁」の顔をぼんやりと認識した。「壁」、ボスゴドラ、なぜかチームにいるデカくてノロマなやべえヤツ。あまりに犯され過ぎて痛覚まで麻痺したおかげで、この異常な状況が多少なりとも冷静に受け止めることができるようになっていた。なぜだか知らないが、興奮した「壁」が自分に襲いかかってきて、メスみたいにレイプされてる。チンポを扱かれて射精なんかさせられて、ケツん中に「壁」のクソでかいチンポをぶち込まれてアヘアヘ言わされてる。
「ふおっ……て、でめっ……」
「あああはっ……はっふうっ……」
「ぐおっ……ごるっ!……るああっ……!」
「ふんっ……ふうんっ……」
「や、や゛めっ……だのん……ががががっ!」
「うあああああああああああっ!」
 イキリたった「壁」はもう手の付けようもなく、エースの尻にぶち込まれた熱棒を冷まそうとして、大岩のような全体重をかけながらジャラランガの中で暴れ回る。
「スキだ、スキ……わからせてやるっ、わからせてやるっ……俺のことをスキにっ……ならせてやるう!」
「ぐあ゛」
 カラダごと叩きつけるように、巨大なイキリ棒でジャラランガの腹の奥を突っつくと、凄まじい一撃に全身が弾け飛びそうだったが、ボスゴドラの巨体にのしかかられて微塵たりとも動けないので、指をヒクヒクと動かすことくらいしかできなかった。
「に゛ゃっ!……みゃああ゛っ!」
 カラダの奥を繰り返し突かれるたびに、射精を堪えるのとはまた違ったもどかしい感じが、まんぐり返された股間の奥から疼いてきた。尻を指で弄られていた時にも起きた痺れの、何倍もすごいの。それが何なのかは、同性に無理くり抱かれるとは今の今まで夢にも思わなかったジャラランガには理解しようがなかったが、乱暴ながらも何度も突かれたことで、彼の前立腺は「飛ぶ」寸前であった。
 「壁」のどでかい下のツノに突き上げられるように、あれだけ精液を吐き出したペニスが再び勃起し出していた。しかし、股間はすっかり「壁」にのしかかられていたので、膨らめば膨らむほど、固くなれば固くなるほど、自分と「壁」の腹の間で押しつぶされて、すり潰されるようで、ずっとアソコがミルタンクの乳のようにキツく搾乳されているようだった。
「んあ゛ああああああっ!……んにゃあああああっ!……」
「ぎゅううううっん!……このっ!……コノ!」
「びょうおおおおおおん!……お゛っ……んみ゛ょおおおおおうっ!」
「ああっ!……くそっ!……クソっ!……イケ、ほらイゲ、っよ!……」
 二匹の巨体な雄が盛るフィールドはさながら嵐のようだった。バシャバシャとジャンプして水溜りを踏んづけたような音に、軽く擦れただけでも騒音のような音を立てる鱗に、もはやジャラランガとボスゴドラのメチャクチャな喘ぎは、試合中に対峙するチーム全員の上げる鬨の声よりもずっとうるさかった。
「あ゛! あ゛! あ゛、あ゛っああっ、あ゛んあ、あ゛、あ!」
 一番のやかましい咆哮と共に、エースであるジャラランガの尻の奥が、ついに弾け飛んだ。言いようのない、イカれた内臓の震えがウェーブのようにカラダに広がってケツイキの意味も理屈もわからないままに絶叫していた。
「んうううううううっ!……あう、お、お、お俺もい、イッぢゃう゛ううう、んうううっ!」
 ケツイキして一気に収縮した内壁の締め付けにトドメを刺された「壁」の肉棒も、とうとう限界を迎えて、ジャラランガの奥の奥へとたちまちに射精した。
「んあああああっ!……んああああっ!……んあああああっ!……ふはあああああっ!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
 「壁」の溜まりに溜まった精液は、並大抵のものではなかった。ケララッパのやかましい囀りのような、アマージョの辛辣な蹴りのような勢いで、一発ごとに重みのある液体がジャラランガの飛んだ前立腺に向けて放たれて、巨根で蹂躙される衝撃と理解を超えた疼きがずっと続いた。
「ああはっ!……はああっ!……あああっ……!」
 たらふく水を飲んだあとのように腹が張って、次第に「壁」の放つ液体が中からエースのカラダを浸そうと上へポンプされていく悪寒を、喘ぎ散らしながらジャラランガは感じた。
「あ゛、あえっ!……お、お゛う、お゛うおふっ!……」
 ついに喉元で込み上げてくるような嘔吐感を感じる間もなく、白くておどろおどろしい腐った草のような臭いのする「壁」の精液が勇猛なジャラランガの口から溢れ出した。吐き気に吐き気を重ねがけして、エースが尖った大口を開けてえずいても、止まらない白濁液が、胃液や涎やまだ消化されていなかった何かと一緒に噴き出して、眼前の「壁」の甲冑のような顔面や、首元や金色の鱗を汚した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 必死に酸素を取り込もうとして息せくと、今度は白い模様のついた鼻先から細い筋のように鼻汁と混じったゼリーのような精液が流れてきた。押し出されてくる濁った液体が長い上口を伝って、額の鱗へと垂れ、目にまで入り込んで来ようとしたので、ジャラランガは反射的に目を閉じた。目の前が真っ暗になって、留まることのなく体内を逆流し続ける精液と「壁」の重みを感じながら、いつしか意識の糸がちょん切れた。



 ジャラランガが、草むらを入念に見渡して、誰一匹として辺りにいないことを確認してから、太い木の幹にその逞しい背中を預けてあぐらをかいている。つまり、いつものようにこっそりと茂みに潜って、いつもの瞑想、と思っているものを始める。目を瞑る前に、身震いしながら何度も深呼吸をした。
 妄想の中で、白い毛並みをしたお尻が、四つん這いで高く突き出した姿勢でジャラランガを誘っている。早くチンコを挿れて気持ちよくなりたいと言わんばかりに、房のように淫靡に揺らしているとそれだけで勃ちそうになるが、目をいっそうキツく閉じながら想像を逞しくする。
 ボールを掴む時みたいに、二つの尻たぶに触れると毛の奥にしっかりとした肉付きの良さが感じられる。すらりとした尻の筋肉を解すように揉むと、その筋肉の触り心地が手を通して、胸をドキドキとさせて、股間まで熱くなる。この形のいいケツを、甘ったるい喘ぎ声を聞きながら犯すと考えるだけで、ロングランした後のように息が上がってくる。
 軽く一発叩いてみると、犯されるのを待ち侘びる白い尻からは意外と高い音が鳴った。調子に乗ってドラムみたいに数発叩けば、柔らかな尻の肉がプルンと揺れていやでも興奮してくる。耐えるような声が口元からそれでも漏れてくるのも唆られる。これからこいつをむちゃくちゃに犯してヤりたいって気になってくる。谷間を掻き分ければ、念入りに準備でもしていたのかアナルがとろっとろに広がって、爪で慣らすまでもなさそうだった。
 この変態が! 今から俺が完膚なきまでに前も後ろもブチ犯して罰してやっからな! 覚悟してろや、このっ……わざわい野郎!
 そして、腰のくびれに掴みかかって、白い毛並み豊かなお尻をこちらへ引き寄せると、そのままイキリ立っていた自分のペニスを一気に突き挿した。
「くううっ……!」
「んあっ……!」
 前方から上がった嬌声の低さに、ジャラランガは違和感を覚えた。そう言えば、両腕で掴んでいる腰の辺りの感触はフサフサしているというよりは、チクチクする。何より、尻の間から伸びているチューブみたいな尻尾はなんだ。俺が犯しているのはメスのアブソルのつもりだったんだが。
「おい、どうした……」
 チンポを尻に挿れられているヤツが、さっきからずっと低く埋めていた頭を上げて、こちらを振り返った。
「あ゛」
「んっ……早くヤろうぜ……なあ、エース」
「あ゛」
 目を開くよりも早く、エースと呼ばれたジャラランガは立ち上がっていた。立ち上がるというよりはいきなり垂直に跳び上がったので、頭の鱗が振り上がって、先端のがいくつか木の枝に引っかかるほどだった。胸がけたたましく鳴ると共に、全身が怖気だっていた。しかし、腹の下ではペニスがしっかりと勃起して赤みがかった先っぽが上を向いていた。
 ジャラランガのカラダから力が抜けて、ヨワシのような気持ちで幹にへたり込んだ。アブソルだと思い込んでいた妄想のセックス相手がキャプテンのナゲツケサルに変わってしまった。
「あーちくしょう! くそっ、くそっ!」
 拳を思いっきり地べたに叩きつけた。エースと呼ばれるジャラランガの頭はいつしか、オス同士であるキャプテンとヤる妄想を勝手にするようになってしまった。練習中や試合の時に戯れでカラダを触りあったり、キスしたりしていると、今までは感じていなかった別のこそばゆい感情が生まれるようになっていたことに、フットボール以外ではあまり良いとは言えないジャラランガの頭も気づかざるを得なくなった。
 それもこれも、「壁」にあんな襲われ方をしたあの時以来のことだった。気がつくと。フィールドにはジャラランガしかいなかった。悪い夢でも見たのかと思ったが、自分のカラダがおぞましいほどに臭くドロっとした精液で汚れまくっていたし、尻が刺されたようにズキズキとしていた。近くの水場でカラダを洗って、フィールドについた汚れを洗い落とすのは一手間だった。しかし、「壁」に背中を押される直前までやっていた自主練のバスケットは全て綺麗に片付けられていた。
 「壁」はその日以来、練習場に姿を見せなくなった。不審に思ったキャプテンが心当たりがないかジャラランガに尋ねたが、知らないフリをした。本当にあったことをキャプテンに包み隠さず話す勇気は、エースと呼ばれるジャラランガと言えども無かった。キャプテンは困ったように、ヘルメットのズレを直した。
「いやあ、残念だな。なかなか、いい感じにハマってたし、あいつも結構楽しんでるみたいだったんだけどなあ。ちょっとイジり過ぎちゃったかあ」
「さあな」
 ジャラランガはできる限り無感情に答えたものである。
 とはいえ、「壁」がいなくなったこと以外、チームには何も変わりなかった。それだったら、以前までやっていた通りにディフェンスは動けばいい。他のナゲツケサルたちも、すっかり前のスタイルに適応した。相手チームの連中からすれば、反則スレスレなボスゴドラがフィールドから消えてほっと胸を撫で下ろしていることだろう。要するに、大した影響はなかった。「壁」をチームに引き入れたキャプテンにしても、切り替えは早かった。
 しかし、「壁」に好き勝手に凌辱されたジャラランガは、あの一件でカラダだけでなく心も犯されたことに気付かされた。キャプテンに対する自分の意識は、単なる信頼できる仲間とは違う何かに変わっていた。さりげなく引き締まった胸や腰や尻を触るだけで緊張するようになった。逆にキャプテンに尻を揉まれたりすると、どことなく物足りなさを覚えるようにもなった。それは、もしかしたら今までもそう感じていたのかもしれないが、「壁」との一件以来、それに妙な意味合いを感じるようになってしまった。
 キャプテンの背中と、白い毛に覆われた尻に何か催しそうになるのを、必死に打ち消そうとして、こっそり自主練の合間にメスを犯したりメスが犯されたりする姿をオカズにしてシコってきたわけだった。あんなクソデカいチンポをした「壁」に力で物を言わされて好き放題に犯されたが、俺はあんなチンポになんか負けねえ、というつもりだったが、その妄想に「壁」のおぞましいあの狂ったささやきや、キャプテンの姿が浮かんでくるようになって、それを抑えようとしても勝手に妄想が進んでしまう。
「あークソっ、クソがあっ! あいつ、『壁』! 『壁』があっ!」
 今日もまた、キャプテンのナゲツケサルでヌきそうになりかけたが、必死に堪えて自然とペニスが縮こまるのを待つことができたものの、薄々それすらも我慢できなくなることに恐怖しながら、エースと呼ばれるジャラランガは忌々しげに叫んだ。
「あの野郎、いつか会ったら、ぜってーぶっ殺してやるからなあ! ぜってーにタダじゃおかねえ! あー、ムカつく、ムカつく!」
 時々、尻が何か物欲しげに疼くようになった気がするが、それは知らんぷりをしている。



後書きとエクスキューズ

勝手にTwitterでのやり取りを引用するけど許して、R氏!

R氏「これはフィクションなので実際に言われたことはないんだけど、友達に「ジャラランガってどんなポケモンなの?」と聞かれたら「自称ノンケの受け専ホモだよ」って言う準備はいつでもしてあるよ」
  「自分ではメスでばかりシコってるのに力で物を言うおちんぽ600族♂から好き放題犯されて実践は♂としか経験がない可哀想なジャラランガちゃんが性癖です」
僕 「整いました。commission代としてケツ出す用意しとけ」
R氏「あ゛っ♡」

……というやりとりがあったのが、先日の仮面小説大会のすぐ後のことである。
で、今は何月か? 5月である。仮面小説大会は1月である。つまり4ヶ月である。時間かかった、ごめんよR氏!
話としてはタイトル通り……いかにもケモホモ小説っぽくて単純明快でしょ?……と言ったら叱られそうなので噛み砕いて言えば「フットボールのエースで鳴らしてるジャラランガ♂がチームメイトの『壁』と呼ばれるボスゴドラ君に好き放題に犯されてキャプテンへの恋心?を自覚して微妙な気持ちになってしまう話」です。でもたぶんもっといい要約があると思った。

苦戦した原因は間違いなく、アメフトなんてミリシラなスポーツを取り扱ったことと、そんなスポーツにおよそ場違いなボスゴドラを登場させてしまったことですね!
実際、書いてる途中でアメフトについての記事やドキュメンタリーなんかを確認したら、全然思ってたのと違って細かいところ書き直す羽目になったりね。
単純にナゲツケサルを出したかっただけかもしれない。通常姿勢からケツ突き出してるとか……エロいじゃないですか。それと、アローラを舞台にした「はいけい」ではじまる長いお手紙でも出せなかったこともあるし、ここでちょっと書きたかったというのがあった。

思ったよりも文量も作業時間も要したけれど、書くと言ったものを書いて投稿できたので満足、すっきり。
けれども、これが氏の願望に沿っているのかは当人に委ねることと致します……


作品の感想やイシツブテはこちらかツイ垢へどうぞ

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Last-modified: 2021-05-25 (火) 18:59:56
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