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アドバンズ物語第四十六話

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ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第四十六話 ソウマの思い出 帰ってからのサプライズ


一方そのころ、ソウイチ達はいやしのもりで薬草を探し回っていた。
モリゾーたちに飲ませる特効薬を作るためだ。

「アニキ~!!あったぜ~!!」
ソウイチは生えていた薬草をつかむとソウマの元へ走っていった。

「これであってるか?」

「ああ。これに間違いねえ。」
ソウマの言葉にソウイチはほっとした。
間違ってでもいたら大事だからだ。

「とりあえず、これで全部?」
ソウヤが聞いた。

「ああ。これで特効薬が作れる。」
ソウマも一安心だ。

「だけど、アニキってほんと薬草に詳しいよな。」

「ほんとほんと。詳しいだけならまだしも、特効薬まで作っちゃうんだから。」
二人はすごく感心していた。

「最初から知ってたわけじゃねえさ。ペラップにいろいろ薬草の知識を聞いて、そこから発展させて特効薬を作ったのさ。」
実はソウマ、人間のときは薬剤師になりたいと思っていたのだ。
病気で苦しむ人のために、副作用の少ない安全な薬を作りたい、それが動機だった。
その思いが、偶然にもこの世界で実ったというわけだ。
三人が帰ろうとすると、空が黒くなってきていることに気付いた。
今が夕方なのか夜なのか判断がつかない。

「なんか雲行きが怪しくなってきたな・・・。」
ソウイチは空を見上げて言った。

「雨が降らないうちに帰らねえとな。薬草は濡れると乾燥させなくちゃいけねえから、薬を作るのに余計に時間がかかっちまう。」
ソウマは薬草がぬれないようにバッグの下のほうにしまった。
もと来た道を引き返し始めたその時・・・。

ぽつり ぽつり ピチピチピチ 

とうとう雨が降り始めた。

「うわあ!降ってきたよ~!」
ソウヤはあわてた。

「やべえな・・・。本降りになる前に雨宿りできる場所探すぞ!」
ソウマは二人を促すと走り出した。
しかし、場所を見つける前にとうとう本降りになってしまった。

「ひえええ!つめてええ!!」
ソウイチはぶるっと震えた。

「雨が激しすぎて前が見えないよ・・・!」
ソウヤも必死で走る。

「お、あそこに洞穴がある!あそこで雨宿りするぞ!」ソウマは二人を抱きかかえると洞穴に向かってダッシュした。

「うえ!?」

「わわわわ!!」
二人ともいきなり抱えられたのでびっくりした。
洞穴の中は思ったより広く、雨宿りにはちょうどいい場所だった。
幸いにも、以前誰かが雨宿りしたのか、中には手ごろな大きさの木の枝が何本か落ちていた。

「ちょうどいいな。これを薪に使うか。」
ソウマは木の枝を何本か拾い、かえんほうしゃで火を付けた。
ソウマは火力のコントロールもできるのだ。

「うわあ~・・・。あったけえな~・・・。」

「ほんと、あったかいね~。」
三人は早速焚き火に当たって濡れた体を乾かした。
雨はなかなか降りやむ気配をみせず、雷もゴロゴロとなっていた。

「結構すごいな~・・・。」
ソウイチは外を見てつぶやいた。

「雨宿りできる場所があって本当によかったね。」
ソウヤも一安心といった感じで言った。

「(雷か・・・。そういえばあの時もこんな感じの夜だったよな・・・。)」
ソウマは昔のことを思い返していた。

それは、ソウイチたちがまだ人間だった時のこと。
あの夜も雨が降っていて、雷が鳴っていた。
その時、ソウイチとソウヤはまだ五歳と四歳だった。
二人は夜の特番の怖い話を見ていたのだ。

「おい、そろそろ寝ないと寝坊するぞ。」
ソウマは二人に注意したが、

「もうちょっとで終わるから!」

「今すっげえいいところなんだって!!」
二人は聞く耳を持たない。

「ったく、寝坊しても起こしてやらねえからな!」
ソウマは呆れて二階へ上がった。
自分が寝るまでには多少時間があったので、しばらく薬学の本を読んで過ごしていると、ものすごく大きな雷が鳴った。
「うわ・・・。いまのはすごかったな~・・・。」
ソウマが少しびっくりしていると、誰かがドアをノックした。

「アニキ、入ってもいいか・・・?」
その正体はソウイチとソウヤだった。

「どうしたんだ?特番終わったのか?」

「違うよ・・・。雷が鳴ったところと怖いところがたまたま重なって・・・。」
ソウヤは少し涙目になっていた。
怖くなってそれ以上番組を見ることができなくなってしまったようだ。

「で、なんでオレの部屋に来たんだ?」
ソウマは少し目つきを強くして二人に聞いた。

「いや・・・、なんか二人で寝るのが怖くってよお・・・。」

「アニキと一緒に寝たい・・・。」
さすがにまだまだ子供だ。

「あのなあ・・・。一人ならまだしも二人だろ?大体早く寝ろっていうのに言うこと聞かないから・・・。」
すると、二人はソウマに抱きついて離れようとしなかった。
かなり怖かったのだろう。

「・・・ったく、しょうがねえな。今晩だけだからな。」
結局ソウマは、二人を自分の部屋で寝かせることにした。
ソウイチとソウヤは両端、ソウマが真ん中だった。
二人はソウマがいることで安心したのか、すやすやと眠ってしまった。

「(強がっちゃいるけど、まだまだ子供だな・・・。)」
ソウマは二人の寝顔を見てそう思った。

「(あのころはまだ二人とも小さかったけど、今じゃこんなに立派になったんだな~・・・。オレがいない間に、かなりしっかりしたんだろうな。)」
ソウマはしみじみとそんなことを思っていた。
ふと二人のほうを見ると、二人は疲れたのかぐっすり眠っていた。

「寝ちまったのか・・・。無理もねえよな、ギルド出てからずっと薬草探してたんだし。しかしやっぱり雨の夜は冷えるな~・・・。」
ソウマはマントを脱ぐと、ソウイチとソウヤにかけた。こうすれば少しは暖かくなるだろうと思ったのだ。

「もう乾いてるから大丈夫だろ。オレはもともと、寒いのには慣れてるしな。」
そうつぶやくと、ソウマは薪をくべた。

そして、ようやく夜が明けた。
雨はいつの間にか上がり、濡れた木や草は太陽の光で輝いていた。

「ふわあああ・・・。いつのまにか寝てたんだな・・・。」ソウイチはあくびをすると、自分にマントがかけてあることに気付いた。

「ん?なんでアニキのマントがあるんだ・・・?は・・・、はっくし!!」
ソウイチはくしゃみをした。

「うへえ・・・、寒っ・・・。雨の後は冷えるんだな~・・・。・・・そうか、それでアニキは・・・。」

「ふわああああ・・・。」
すると、ソウヤも起きた。

「あ、おはようソウイチ。ックシュン!!なんか冷えるね~・・・。あの雨寒冷前線だったのかな?あれ・・・、なんでアニキのマントが?」
ソウヤも不思議に思っていた。

「たぶん、オレ達が寒くないようにってかけてくれたんだろうな。アニキらしいぜ。」
二人はソウマのほうを見た。
ソウマはいつの間にかうとうとと眠っていた。
二人はソウマの近くへ行くとソウマを起こした。

「アニキ、起きろよ。もう朝だぜ。」

「ん・・・。ふわああ・・・。もう朝か・・・。」
ソウマは眠そうに目をこすると、外をみてみた。

「どうやら、雨も上がったみたいだな。」
すると、ソウイチはソウマにマントを差し出した。

「ん?」

「アニキ、ありがとな。」

「とっても温かかったよ。」
二人はソウマに礼を言った。
体の温かさももちろんだが、心も温かだった。

「風邪引かなくて良かったぜ。風邪引いてるモリゾー達のために集めに来て、オレ達が風邪ひいたら元も子もないからな。」
ソウマは笑顔になった。

「よ~し、それじゃあ帰ろうぜ!」
ソウマはマントを羽織ると二人に言った。

「おう!」

「うん!」
三人は森の中をギルドに向かって走り出した。

ギルドに帰ると、ソウマは早速薬草を混ぜ合わせて特効薬を作った。
モリゾーとゴロスケがその薬を飲むと、たちまち症状が治まっていった。
しかし、飲むときの苦さは計り知れないものだった。

「これでしばらく安静にしてれば元気になる。」
ソウマは道具を片付けながら言った。

「ありがとう、ソウマ。おかげでだいぶ楽になったよ。」
ゴロスケはソウマに礼を言った。

「おいおい、オレ達だって探すのに協力したんだぜ?」
ソウイチは口を尖らせた。
薬と作ったのはソウマだが、それは自分が探してきた薬草のおかげだと思ったからだ。

「もちろんソウイチ達にも感謝してるよ。ありがとう。」
モリゾーはソウイチに礼を言った。
それでソウイチの気もおさまったようだ。

「あ、そうやそうや。ソウマ、お前にお客さんが来とるで。」

「お客さん?だれだ?」

「会うてみたらわかる。」
カメキチはソウマを別の部屋へと連れて行った。
なんと、そこにいたのはあのフレイムだった。

「せ、先輩!!帰ってきてたんですか!!」
ソウマはびっくりしたが、それと同時にうれしさがこみあげてきた。

「よう!相変わらず元気そうだな。」

「先輩のほうこそ元気そうで何よりですよ。どうしたんですか?」
ソウマはフレイムの前に腰を下ろした。

「ああ、実は頼みがあってな。」

「頼み?頼みって何ですか?」
ソウマはフレイムに聞いた。

「オレを、お前のチームに加えてくれないか?」

「えええええ!?せ、先輩をですか!?」
ソウマは予想外の頼みで驚いた。
チームに入るということは、すなわち探検隊に復帰することを意味する。

「ああ。この四年間で、オレは世界のいろいろなところを見てきた。そして、まだまだ探検していない場所があることがわかったんだ。オレにもまだまだ、探検家の血が流れてるってことだな。ハハハハ!」
フレイムは豪快に笑った。
しかし、ソウマは戸惑っていた。
今のアドバンズのリーダーはソウマではなくソウイチ、決定権はソウイチにあるのだ。

「先輩、ちょっと待っててください。」
ソウマはそういうなり部屋を飛び出していった。

「ソウイチ!ちょっと来てくれ!」
ソウマはいつもの部屋に戻るとソウイチに言った。

「は?なんで?」

「いいからこい!」
ソウマはソウイチの首根っこをつかむとさっきの部屋へ引き返して行った。
みんなはぽかんとした顔でその光景を見ていた。

「待たせてすみません。」
ソウマは部屋に入ると、ソウイチを自分の隣に座らせた。

「いってえな!首つかむことねえだろ!?」
ソウイチはさっそく文句を言った。

「いいから黙ってろ!」
ソウマの目つきが真剣だったので、ソウイチもしぶしぶ我慢した。

「先輩、オレとしては、先輩が入ってくれるのはうれしいんです。だけど、オレはもうアドバンズのリーダーじゃないんです。」

「リーダーじゃない?どういうことだ?」
フレイムはわけをたずねた。
ソウマはフレイムが去ってからの出来事をわかりやすく説明した。

「なるほど。つまり、お前は弟にリーダーの座を譲ったから、決定権はそのヒノアラシにある。そう言いたいんだな?」
フレイムの言うことにソウマはうなずいた。

「じゃあ、改めて頼みたいんだが、オレを仲間に入れてもらえないか?」
フレイムはソウイチに頼んだ。
ソウイチはしばらく考えていたが・・・。

「別にいいぜ。アニキが世話になった大先輩なら、オレ達にとっても大先輩だ。それに、お前がいればドンペイも喜ぶだろうしな。」
ソウイチは賛成のようだ。

「こらソウイチ!先輩に対してお前はないだろう!!」
ソウマはソウイチの頭をぽかりと殴った。

「いちいち殴るなよ!!」
ソウイチはソウマをにらんだ。

「ほんとすみません・・・。弟が無礼で・・・。」
ソウマはすまなそうに謝った。

「ハハハハ!まあいいさ。リーダーっていうのはそれぐらいの元気がなけりゃあな。」
フレイムは軽く笑い飛ばした。
ソウマはいくらか不服そうだったが、ソウイチはフレイムの性格が気に入ったようだ。

「おい、アニキ。みんなにこのこと報告しに行こうぜ。」
ソウイチはソウマをつついた。

「ん?あ、そうだな。ドンペイもきっと喜ぶぜ。」
二人は早速みんなにこのことを報告に行った。

「(あのソウイチとか言うやつ、これからぐっとのびるな。さすがソウマの弟だ。あいつには、やはり探険家としての素質が十分にあったんだな。今までドンペイの面倒を見てくれて、ありがとな。)」
フレイムは、心の中でソウマに礼を言った。
こうしてまた、アドバンズに新しい仲間が加わったのであった。


アドバンズ物語第四十七話



ここまで読んでくださってありがとうございました。
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Last-modified: 2011-05-03 (火) 00:00:00
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