ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第四十七話 ソウイチ達の一日バーテンダー
「は?なんだって?」
「だから、パッチールがお前たち六人に用があるとさっきから何度も言ってるだろうが!!」
ペラップはうんざりした顔でソウイチに怒鳴った。
かれこれ三回も呼びかけたが、ソウイチがぼけっとしていて全然話を聞いていなかったのだ。
もちろん六人とは、ソウイチ達とシリウス達のことだ。
「なんでも急ぎの用事だから、すぐに来てくれとのことだ!依頼のほうはソウマ達に任せて、お前たちはさっさとカフェに行け!いいな!!」
ペラップは一気にまくし立てると、怒ってどこかへ行ってしまった。
「なんだよ・・・。あそこまで怒らなくてもいいだろ・・・。」
ソウイチはなぜあそこまで怒るのか理解できなかった。
何度も何度も言わせられたら誰だって怒るに決まっている。
「お前がずっとまぬけな顔してるからだろ?」
シリウスは意地悪そうな笑いを浮かべた。
「だ、誰がまぬけ面だよ!?」
ソウイチはシリウスに食ってかかった。
「二人ともそんなことやってる場合じゃないでしょ?早く行くよ。」
ソウヤは二人に声をかけた。
モリゾーたちはすでにカフェに向かって出発していた。
ソウイチ達もあわてて後を追いかける。
カフェについてみると、なにやらパッチールがいろいろと荷物を準備していた。
どこかへ探検に出かけるようだ。
ちょうど、モリゾーたちがどこへ行くのか質問したところだった。
「どうやらみなさんおそろいのようですね。」
パッチールはみんなを見渡して言った。
「実は、手前はこれからリサイクルの商品を探しに出かけるところでして。大分品物が不足してきたので、今のうちに仕入れておかないと底をつきそうなのです。」
「なるほどな~・・・。で、オレ達に代わりをやってほしいと?」
シリウスはパッチールに聞いた。
「そうですぅ。お願いできますでしょうか?」
ここまで頼まれては、さすがに断るわけにもいかないだろう。
「ああ!もちろんいいぜ!」
ソウイチは快く頼みを引き受けた。
その言葉を聞いて、パッチールの顔は輝いた。
「ありがとうございますぅ。それで、仕事の内容なんですが・・・。」
パッチールはこと細やかにやることをみんなに伝えた。
店の掃除、ドリンク作りの仕事、くじ引き、みんなはしっかりとやることを覚えた。
「それでは、いってきます。」
パッチールは、ソーナンスとソーナノを連れて店を後にした。
「よ~し!まずは店の掃除だね!」
「開店前にさっさと片付けよう!」
モリゾーとゴロスケは掃除道具を出して張り切っていた。
「かったり~な~・・・。」
「めんどくせえ・・・。」
ソウイチとシリウスはげんなりした。
あまり面倒なことはしたくないのだ。
「みんなやるんだからサボらないでよ!」
「ちゃんと掃除しないと、お客さんに失礼ですよ?」
ソウヤとコンに諭され、二人はいやいやながらも掃除を始めた。
みんなはほうきや雑巾で丁寧に床を掃除し、テーブルやいすなどもピカピカに磨いた。
開店時間の少し前には、店の中は見違えるようにきれいになった。
「ふ~・・・。終わった終わった~・・・。」
「もう疲れたぜ~・・・。」
ソウイチとシリウスはその場にへたり込んだ。
あまりやりたくない仕事をすると疲れるようだ。
「今から疲れてどうするの・・・。」
「本当の仕事はこれからだよ?ほらほら、準備するよ。」
ソウヤとモリゾーは二人をせかした。
二人はしぶしぶ腰を上げる。
話し合いの結果、ソウイチ、ゴロスケ、シリウスはドリンクスタンド担当、ソウヤ、コン、モリゾーはリサイクル担当となった。
ようやく開店時間となり、お客がぽつぽつと入り始めた。
最初に入ってきたのはチームかまいたちだった。
「お、今日はパッチールたちはいないのか。」
ザングースが言った。
「ああ。今日はオレ達が代わりをするのさ。」
ソウイチは自慢そうに言った。
「大丈夫か?初心者に勤まるとは思えねえけどな。」
ストライクはこばかにしたように笑った。
「なにい!?よ~し!!やってやろうじゃねえか!!おら、とっとと飲み物にする材料出しやがれ!!」
シリウスはストライクを思いっきりにらみつけた。
普通の店でこんなことをやれば即刻首だろう。
ソウイチとゴロスケはひやひやものだった。
「あの三人大丈夫かな~・・・。」
ソウヤはリサイクルエリアから心配そうに様子をうかがっていた。
不安になるのも当然といえば当然だろう。
「リサイクルしたいんだけどいいか?」
サンドパンだけはなぜかこっちのほうに来た。
「あ、いらっしゃいませ~。」
コンは笑顔で挨拶した。
「え~と・・・、これとこれをリサイクルしてほしいんだけど。」
サンドパンは道具をカウンターに並べた。
交換できる道具の種類は壁にメモしてあったので、ソウヤたちは特に混乱することもなく、ちゃんと道具を渡すことができた。
「ありがとな。」
サンドパンは礼を言うとドリンクスタンドのほうへ行った。
しかしドリンクスタンドのほうは問題が持ち上がっていた。
「まだかよ?早くしろよ!」
ストライクが文句をつける。
「うっせえな!今やってんだろうが!!」
シリウスはシェイカーにオレンの実を入れてしゃかしゃかふっていた。
一歩間違えれば吹っ飛んでいきそうな勢いだ。
「おいおいシリウス・・・。あんまり力入れなくても・・・。」
ソウイチはシリウスをなだめようとしたが、シリウスは全然聞く耳を持たない。
「ほっとけ!!あとちょっとででき・・・。」
すると、シリウスの手からシェイカーが吹っ飛び、ソウイチの顔面に直撃した。
中身も全部ぶちまけられ、ソウイチは液体まみれになってしまった。
「・・・・・・。」
ソウイチは無言だったが、切れていることは誰の目からも明らかだった。
「わ・・・、わりい・・・。別にわざとじゃ・・・。」
「シ~リ~ウ~ス~!!!!」
ソウイチの目は怒りに燃えていた。
シリウスの謝罪など全くの無意味だった。
「お、落ち着けって!!」
「ふざけんなこらああああああああ!!!」
ソウイチは猛然とシリウスに殴りかかっていった。
シリウスはあたりを逃げ惑った。
みんな呆然とその様子を眺めていたが、ザングースたちは我に返ってゴロスケをにらんだ。
「おい!どうしてくれるんだよ!」
「せっかく持ってきたのに台無しじゃねえか!!」
三人ともかんかんだ。
ゴロスケはあせるあまり言葉が出てこなかった。
「もう~・・・。これだから・・・。」
ソウヤはスタンドのほうへ行くと、自分と交代するようゴロスケに言った。
「ちゃんとできるんだろうな?」
ザングースは疑惑のまなざしだ。
「できる限りのことはやってみるよ。」
ソウヤは自腹でオレンの実をシェイカーに入れ、一生懸命ふった。
ようやく中身が液体になり、ソウヤはこぼさないようにコップに移した。
「やれやれ・・・。やっと飲めるぜ・・・。」
ザングースはぐいっと一気に飲んだが・・・。
「ぶへええええ!!!」
一瞬すごい顔になると一気に飲んだものを噴き出した。
もちろんソウヤの顔に直撃だ。
「うううう・・・。いきなりなにするのさ!!」
ソウヤは真っ赤になって怒った。
「お前らやる気あんのかよ!!こんなまずいもん飲めるか!!」
ザングースはもう切れる一歩手前だった。
シリウスみたいなへまはやらかさなかったものの、ソウヤには向いていないようだ。
ソウヤとザングースはにらみ合ったまま動かない。
いつけんかが勃発してもおかしくない状況だ。
すると・・・。
「はい。できたよ。」
唐突にザングースの前にコップが差し出された。
びっくりしてそのほうをみると、モリゾーがシェイカーを持っていた。
いつの間に作ったのだろう。
「今度まずかったらただじゃおかねえからな!!」
ザングースは怒りに任せて飲み物をあおったが・・・。
「・・・・・・。」
全部飲み終えると急に黙り込んでしまった。
「ど、どうした・・・?」
ストライクが声をかけると・・・。
「・・・うまい。うまいぞこれ!!」
ザングースは急に叫んだ。
みんなは思わず後ずさりした。
「お前らも作ってもらえよ!すごくうまいぜ!」
ザングースは二人にオレンを差し出した。
二人はいまいちぴんと来ないようだったが、モリゾーにお願いして作ってもらうことにした。
モリゾーは慣れた手つきで二人のドリンクを作った。
みんなその鮮やかな手つきにすっかり魅了されていた。
本業としても十分通用しそうな腕だった。
「はい。お待たせ。」
モリゾーは二人にドリンクを差し出した。
二人は顔を見合わせ、一気にそれを飲んだ。
「・・・う、うめえ!!」
「ほんとだ!こいつはすごくうまい!!」
二人はドリンクの出来をすごくほめた。
モリゾーは嬉しかったのか照れ笑いを浮かべていた。
「いやあ~、いいものをご馳走になったぜ!ありがとな。」
ザングースは礼を言うと、二人を連れて店を出て行った。
どうやら満足してもらえたようだ。
「モリゾー、お前すげえな~・・・。」
ソウイチはただただ感心していた。
「ほんとほんと!すごいよ!」
「ドリンク作ってるときのモリゾーさん、すごく素敵でした。」
ゴロスケもコンも興奮していた。
特にコンはモリゾーの動作に完璧にほれていた。
シリウスは何も言わなかったが、舌を巻いているのは確かだった。
それからのカフェは大賑わい。
ザングースたちの評判を聞いたのか、みんなモリゾーの作るドリンクが飲みたいと来たのだ。
モリゾーはもちろん忙しかったが、ソウヤ達リサイクルのほうもかなりお客が来た。
ソウイチとシリウスは、ずっと何もしないのも居心地が悪いのでドリンクをテーブルに運んだり、掃除をしたりとせわしなく動いた。
すると、なんとソウマ達まで評判を聞きつけてやってきたのだ。
依頼の帰りに寄ったのだろう。
「すごいな。大盛況じゃないか。」
ソウマはモリゾーに言った。
「うん。みんな、オイラの作ってくれたドリンク、すごくおいしそうに飲んでくれるんだ。」
モリゾーは嬉しそうに言った。
「じゃあ、オレ達も作ってくれん?」
カメキチは材料を差し出した。
「もちろんいいよ。すぐ作るからテーブルで待ってて。」
モリゾーは早速材料をシェイカーに入れて作り始めた。
ソウマ達はテーブルから見ていたが、やはりその手つきにはすごく見とれていた。
モリゾーの意外な才能が明らかになったといっても過言ではないだろう。
「お待ちどう~。」
ソウマ達はソウイチとシリウスがドリンクを持ってきたのでびっくりした。
「なんでお前らそんなことやってるんだ?」
ソウマは二人に聞いた。
「いや~・・・。なんかやることがなくてさ~・・・。」
「バーテンは向かないし、リサイクルはコン達がいるから人出は足りてる。だからこんなことでもしないと居心地悪くてさ。」
二人は恥ずかしそうに言った。
「でも、そういう仕事も大事よ?地味に見える仕事でも、それがなければ成り立たないこともあるんだから。だから恥ずかしがることないわ。」
ライナは二人に言った。
仕事に大事かそうでないかの区別などあるはずはない。
どんな仕事でも、一生懸命してこそなのだ。
ソウマ達はドリンクを飲むと、すごく幸せそうな顔になった。
言葉にできないほどおいしいということだろう。
大分時間が経つにつれて、お客のほうも少なくなってきた。
そして店を閉める頃に、ようやくパッチールたちが帰ってきた。
「今日は本当にありがとうございました。町の人からも大変好評でした。」
パッチールはみんなに礼を言った。
「まあ、ほとんどモリゾーのおかげだけどな。」
「そうそう。あんな才能があるなんて思わなかったよ。」
みんながモリゾーを褒め称えると、モリゾーは照れて真っ赤になった。
「今日は本当にお疲れ様でした。お礼といってはなんですが、みなさんに手前特性のスペシャルドリンクをごちそうします!」
「ほ、ほんとか!?」
「やった~!!」
みんなは大喜びした。
仕事の後に飲むスペシャルドリンクは、格別な味がした。
みんなは、今まで味わったことのない深い味わいを楽しんでいた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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