ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第四十二話 未来から来たポケモン 前編
「うわあっ!!ぐ・・・、ぐふう・・・。」
アグノムはリーフのエナジーボールを受け、顔をゆがめた。
「これ以上はオレも戦いたくない。そこをどいてくれ。」
リーフはアグノムに言った。
「ど・・・、どくもんか・・・!ときのはぐるまは、絶対に渡さない!!」
アグノムは必死で体勢を立て直すと、サイコキネシスを放った。
しかし、リーフは軽い身のこなしでかわすと、リーフブレードをアグノムの腹に叩き込んだ。
「ぐああああああ!!!」
アグノムは地面に突っ伏した。
もうリーフを引き止める力は残っていなかった。
「悪く思うな・・・。もらっていくぞ、ときのはぐるまを。」
リーフは湖のほうへ足を進めた。
「・・・ううっ・・・。ま・・・、待て・・・。待つんだ、リーフ・・・!」
アグノムは切れ切れながらもジュプトルを引き止めた。
「オレの名前を知ってるのか・・・?」
リーフは少し驚いたようだった。
「盗賊ジュプトルのリーフ・・・、お前がここに来ることは、エムリットとユクシーから聞いていた・・・。本当は・・・、僕の手でお前を倒せればよかったんだけど・・・。」
次にアグノムの口から出てきた言葉は、リーフに衝撃を与えた。
「もし、だめだったときのことも考えて・・・、あるしかけをしておいたんだ。」
「何!?」
ジュプトルが湖を見やると、急にあたりがゆれ始めた。
「な、何をした!?」
リーフはアグノムに怒鳴ったが、アグノムは何も答えない。
すると、湖からおびただしい数の水晶が飛び出し、リーフの行く手をふさいだ。
これ以上は先へ進めなくなってしまった。
「こ・・・、これは・・・。湖が水晶に覆われて、ときのはぐるまを取ることができない・・・。」
リーフはその光景を呆然と見つめていた。
「り、リーフ・・・。ときのはぐるまは・・・、絶対に渡さない・・・!僕の・・・、命にかえても・・・。絶対に・・・!」
アグノムはリーフをしっかりと見据えた。
ぼろぼろに傷ついていながらも、ときのはぐるまだけは渡さない、その意志は強固なものだった。
「き、キサマ!!オレはなんとしてでも手に入れる!ときのはぐるまを!アグノム!キサマを倒してでもな!!」
再びリーフが攻撃の構えに入ろうとすると・・・。
「待てこらあああああああああ!!!」
ドスン!!
ソウイチがたいあたりでリーフを吹っ飛ばした。
しかし、リーフは受身で体勢を立て直した。
「これ以上アグノムに手は出させねえぜ!!はぐるまも渡さねえ!!」
「もうこんなことはやめるんだ!!」
ソウイチとソウヤはリーフの前に回り込んで通せんぼをした。
遅れてモリゾーとゴロスケも続く。
「お前たちに用はない。そこをどけ!!」
リーフはみんなをにらみつけた。
「どくもんか!何があっても絶対にどくもんか!!」
モリゾーはリーフを睨み返した。
すると、リーフの目つきが一瞬緩んだように思えた。
しかし、それはほんの一瞬のことに過ぎず、誰も気付かなかった。
「本気で言ってるんだな・・・?どうしてもどかないというのなら仕方がない!お前たちから倒してやる!」
リーフは戦う構えに入った。
「へん!返り討ちにしてやるぜ!!行くぞ、みんな!!」
「おう!!」
ソウイチ達もバトルの体制をとる。
しかし、先手を取ったのはリーフのほうだった。
俊敏な動きでソウイチ達の背中にリーフブレードを振り下ろす。
ソウイチ達はとっさのことで対処できず、地面に突っ伏した。
「ぐう・・・。あ、相変わらずはええ・・・。」
「よけることができなかった・・・。」
みんなは痛みをこらえて何とか立ち上がった。
しかし、リーフはすぐさまエナジーボールを打ってきた。
「いつまでも調子乗ってんじゃねえ!!」
ソウイチはかえんほうしゃでエナジーボールを焼き払い、その勢いでかえんぐるまをおみまいした。
リーフはリーフブレードでそれをはじくが、その直後にゴロスケのれいとうビームがヒット。
気合が入っているせいか、威力も普通より高い。
「くそお・・・。なかなかやるな。」
「これ以上罪を重ねないで!」
モリゾーもでんこうせっかでリーフに突っ込む。
そのときも、リーフはモリゾーの顔を見た。
クールに装っているが、やはりあの時いわれた言葉が気になっているようだ。
「(オレはこいつの親父ではない。だが、なぜだ?なぜこいつには、妙に親近感がわくんだ・・・?)」
リーフは攻撃をかわしながら、そんなことを思っていた。
「おらあ!!ぼさっとしてんなよ!!」
背後からソウイチが大文字を放つ。
「ぐおっ!!」
だいもんじは、考え事をしていたリーフをそのまま直撃し、水晶の突き出している部分まで跳ね飛ばした。
ちょうどとがっている部分に腕をぶつけてしまい、リーフは顔をゆがめた。
「お、おのれえ・・・。」
「どうだ!これ以上やられたくなかったら、さっさと帰るんだな!!」
ソウイチはリーフを見据えた。
「ここまでやられるとは思ってなかったな・・・。ならば・・・!」
すると、リーフの体の周りを、どこからともなく木の葉が舞い始めた。
木の葉は勢いを増し、ぐんぐんと回るスピードを上げる。
「あ、あれって・・・。」
モリゾーは見覚えがあった。
あの技、リーフストームはグラスが使っていたものと全く同じだった。
グラスがリーフストームを使うときは、木の葉の回転速度を上げて一気に相手を倒すのだ。
それは、グラス自身が無用な戦いを防ぐ手段でもあったのだ。
「みんな!!気をつけて!!」
モリゾーはみんなに注意を促したが、もう遅かった。
「これで決める!リーフストーーーーム!!!」
木の葉はグラスから一気に離れ、ソウイチ達を襲った。
「ぐああああああああ!!!」
「うわあああああああ!!!」
みんなは嵐の中に封じ込められ、木の葉に攻撃されるままになった。
嵐が収まると、すでにソウイチ達に攻撃する力は残っておらず、立っているのがやっとだった。
くさタイプのモリゾーや、ほのおタイプのソウイチさえもダウンさせてしまうほどのすさまじい威力だった。
「く・・・、くそお・・・。」
ゴロスケは悔しそうにリーフをにらんだ。
お尋ね者に歯が立たなかったのが相当悔しいのだろう。
とはいえ、みずタイプとくさタイプでは、みずタイプのほうが不利なのは当然だ。
「そこをどくんだ!!」
リーフはみんなをにらみつけた。
「(く・・・、くそ・・・!声が、声が出ねえ・・・。)」
「(だけど、どかない・・・!絶対どくもんか!!)」
みんなはリーフストームの衝撃で声が出なくなっていた。
おまけに動く力も残っていない。
それならば、このまま動かずになんとしてでもリーフを足止めしようと思ったのだ。
「どかないというのか!ならば仕方がない!」
リーフは止めをさすつもりで距離を近づけてきた。
「ま・・・。待て!!」
ようやくのことで、ソウイチは声を絞り出した。
「なんだ?まだなにかあるのか?」
リーフは足を止めた。
「お前に聞いておきたいことがある・・・!」
「聞いておきたいこと?」
「お前は・・・、記憶をなくしてるんじゃないのか・・・?」
記憶という言葉を聞いて、リーフの表情が変わった。
しかし、あくまでも冷静さを保とうとしている。
「どうしてそう思うんだ?」
「直感だ・・・!直感でそう思っただけだ・・・!」
すると、リーフはふっと笑った。
「確かに、オレは記憶をなくしている。」
それを聞いて、みんな驚きの表情を浮かべた。
まさか本当に記憶を失っているとは思わなかったのだ。
「だが、失った記憶なんかはどうでもいい。オレには、やらなければならないことがある。そのためには、ときのはぐるまが必要なんだ。そこをどけ!」
「どくわけねえだろうが!どんな事情にせよ、そんな重大犯罪を見逃すわけにはいかねえ!!」
ソウイチは強固にどくことを拒んだ。
「そうか・・・。全てはときのはぐるまを取るためだ・・・、許せ!」
リーフはリーフブレードで止めをさそうとした。
もうだめだ・・・、みんながそう思ったそのとき・・・。
「待て!!」
突然声がすると、ソウイチ達の目の前にヨノワールが現れた。
ヨノワールはリーフブレードを白刃取りで受け止めた。
「くっ!!」
「大丈夫ですか!?みなさん!ここは私に任せてください!」
ヨノワールはそう言うと、リーフの腹にげんこつを叩き込んで吹っ飛ばした。
「うおっ!!き、キサマは!?」
「久しぶりだな!探したぞリーフ!」
「(え・・・?それってどういうこと・・・?)」
「(あいつは、リーフを知っているのか!?)」
みんなはヨノワールの言葉を聞いてびっくりした。
二人は知り合いなのだろうか。
「くっ!ここまで追ってきたというわけか・・・。ずいぶんと執念深いんだな。」
「リーフ!もう逃がさんぞ!」
ヨノワールはじりじりとリーフとの間合いを詰める。
後ろには水晶の壁が迫り、これ以上逃げ場はない。
「ヨノワール・・・。キサマがこの世界に来たのは驚いたが、しかし!」
リーフは再びリーフブレードの構えに入った。
「戦うのか。いいだろう。しかし勝てるかな?この私に?」
ヨノワールもバトルの構えを見せる。
ヨノワールがリーフとの間合いを詰め始めたとき・・・。
急に閃光が走り、何も見えなくなった。
まぶしさがおさまると、リーフは忽然と姿を消していた。
「(な!?リーフがいねえ!?)」
「リーフめ!はじめから戦うつもりなどなかったな!逃がすものか!」
すると、ヨノワールもその場から突然姿を消した。
みんなは何がどうなっているのかさっぱり分からず、混乱するばかりだ。
「(ううっ・・・。だめだ・・・、もう限界・・・。)」
「(これ以上・・・、立ってられない・・・。)」
みんなは急に力が抜け、地面に倒れこんだ。
今まで立っていられたのが奇跡とでもいうべきか。
誰かが駆け寄ってくるのが見え、みんなはそこで気を失ってしまった。
ソウイチは夢を見ていた。
人間だったころの夢を見ていたのだ。
「よ~し!今日も森で特訓するぞ~!!」
「ソウイチ!少しは調べるの手伝ってよ!」
張り切っているソウイチにソウヤが文句をつける。
「調べるのはお前の専門分野だろ?オレは戦いの専門分野。そういうわけで行ってくるぜ!」
ソウイチは勢いよく玄関を飛び出していった。
「もう・・・、しょうがないんだから・・・。」
ソウヤは呆れてため息をついた。
「仕方ないさ。ソウマがいなくなった今、あいつはなおさらしっかりしようとしてるんだ。」
ソウヤの隣にいるジュプトルが言う。
「だけどいっつも特訓するのもね~・・・。」
「ま、早めにつれて帰ってくるさ。じゃあな。」
そして、ジュプトルも家を出て行った。
ソウヤはその後姿を見ながらつぶやいた。
「まったく、ソウイチに付き合うリーフもリーフだよね。」
[オレは・・・、リーフと一緒にいたのか・・・?あいつは・・・、オレの・・・。]
その疑問がはれる時は、刻一刻と迫っていた。
それと同時に、最大の危機が訪れようとしていたが、そのことを、ソウイチはまだ知らない。
「う・・・、ううう・・・。」
ソウイチが目を覚ますと、ソウイチの目に映ったのは心配そうに四人の顔をのぞきこむギルドメンバーだった。
「ううう・・・。」
そして、モリゾーやソウヤも気がついたようだ。
「あ!きがつきました?」
チリーンが様子をうかがう。
「こ・・・、ここは・・・?いててて!」
ソウヤは起き上がろうとすると顔をしかめた。
結構傷が痛むようだ。
「ギルドのお部屋ですよ。皆さん傷ついてずっと寝てたんですよ。」
チリーンが説明した。
「そうか・・・。みんな、大丈夫か?」
ソウイチはみんなを気遣った。
「うん。オイラは大丈夫。」
まだ少し傷が痛むようだったが、モリゾーは大丈夫だった。
「僕もだよ。そういえば・・・、いつの間にか声が出るようになってる・・・。僕たちすいしょうのみずうみで気を失って・・・。」
ゴロスケは気を失う前のことを思い出していた。
そして、みずうみという言葉を聞いて、ソウヤははっとした。
「そ、そうだ!アグノムは!?アグノムは大丈夫なの!?」
ソウヤはリーフに倒されたアグノムが気がかりだったのだ。
他のみんなも、ソウヤの言葉を聞いて顔色を変えた。
「大丈夫です。ソウヤさん達に比べれば、ダメージもそんなに受けなかったようで・・・。先ほど気がついて、今はギルドにいらっしゃいますよ。」
チリーンはにこっと笑って言った。
「ほんと!?よかった~・・・。」
みんなは安心してため息をついた。
「みなさんも無事で本当によかったです!ギルドのみんなにも知らせましょう。」
するとチリーンは鈴を鳴らした。
「みなさ~ん!四人とも起きましたよ~!」
その声を聞きつけて、みんなはソウイチ達の周りに集まってきた。
みんな口々によかったよかったといい、ビッパは嬉し涙まで流していた。
大げさとは思ったが、四人はそれが嬉しかった。
ここまで心配され、大事に思ってくれたことが嬉しかったのだ。
「あ、そうだ!僕みんなに話したいことが・・・。」
突然ゴロスケが思い出したように言った。
中央の部屋に移動すると、ゴロスケはみんなに、リーフとヨノワールの会話の内容を話した。
「ええ!?なんだって!?ヨノワールさんはリーフを、実は前から知ってたんじゃないかって!?」
みんなは飛び上がって驚いた。
「うん・・・。二人が戦うときにそんな話をしてた。」
「それで・・・、ヨノワールさんは今どうしているのだ?」
ダグトリオがたずねた。
「リーフが逃げたから、多分その後を追って行ったと思うけど・・・。」
ソウヤがそういった瞬間、急にけたたましい音が鳴り響いた。
「な、何だこの音は!?」
ソウイチはいきなりの音にびっくりした。
「緊急のサイレンだ!」
ドゴームが言った。
「おいディグダ!どうしたのだ?」
ダグトリオがたずねる。
「コイルさんからです。ジバコイル保安官より至急の連絡だそうです。コイルさん、見張り穴からお話してください。どうぞ。」
ディグダはみんなに説明すると、コイルにかわった。
「エー、キコエマスカ?ジバコイルホアンカンヨリデンゴンデス。イマカラスグニ、ミナトレジャータウンノ ヒロバニアツマッテホシイトノコトデス。ソコデジュウヨウナオハナシガアルソウデス。ギルドダケデナク、シュウヘンニスム、スベテノポケモンタチニモアツマルヨウ、コエガカケラレテマス。イジョウ、ヨロシクオネガイシマス。デハ。」
コイルは伝言を伝えると、広場のほうへ戻っていった。
「何かあったのか?」
ソウイチは首をかしげた。
「とにかく、行ってみようよ!」
ソウヤはみんなに呼びかけた。
みんなもうなずくと、広場のほうへ走っていった。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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