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アドバンズ物語第四十八話

/アドバンズ物語第四十八話

ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第四十八話 大発明! 空飛ぶソウヤ


ある日の朝礼の後、ソウヤは部屋で発明品を作っていた。
しきりに薬やいろいろなものを混ぜ合わせている。

「とりあえず本体はこれでよし・・・と。あとはこの薬を吹きかけて・・・。」
いったい何を作っているのだろう。
今はみんな出払っていて、発明品を作るのにはちょうどよかった。

「できた~!!これで完成だ~!!」
どうやらついに完成したようだ。
しかし、その正体はまだ分からない。

すると、ソウイチがぶつぶつ文句を言いながら入ってきた。
またペラップに小言を言われたようだ。

「は~あ・・・。こうも眠くちゃたまんねえぜ・・・。」
どうやらさっきの居眠りを注意されたようだ。
本当にどこでも眠れるものだ。
そして、ようやくソウヤがいるのに気付いた。

「ん?ソウヤ、何やってんだ?」

「あ、ソウイチ。実は発明品作ったんだ~。」
ソウヤはニコニコしながら言った。

「発明品?」

「そう!みてみて!」
ソウヤがソウイチの目の前に出したのは、何かの布のようだった。

「なんだそれ?」

「みてわからない?マントだよ、マント!」
そう言ってソウヤはマントを羽織った。

「アニキから作り方教えてもらって、自分で作ったんだ。どう?」
ソウヤはソウイチに自慢した。

「どうって・・・。」
ソウイチはソウヤのマントを眺めた。
基本的にはソウマと同じだが、裏側はオレンジではなく、ソウヤのハチマキと同じ緑だった。
ソウヤの好みで色を変えたのだろう。

「なんだよ・・・。ほぼアニキのパクりじゃねえか・・・。」
ソウイチはしらけた口調で言った。

「パクりじゃないよ!!このマントはアニキのにはない特別な力があるんだ!」
ソウヤはソウイチをきっとにらんだ。

「特別の力って何だ?」

「いい?見てて!」
すると、ソウヤはその場でジャンプした。
ソウイチが驚いたのはそこから先だった。

「な・・・、なにいいい!?」
ソウイチは目を見張った。
なんと、ソウヤが宙に浮かんで・・・、いや、飛んでいるのだ。
ソウイチは自分の顔をつねったが、すぐに夢でないことを理解した。

「どう?これでもアニキのパクりだっていえる?」
ソウヤは自信満々だ。

「おおおお前!!な、何したんだよ!?」
ソウイチはソウヤを指差した。
自分でも腕が震えているのが分かった。

「知りたい?まあ、特別なことじゃないけどね。」
ソウヤは降りてくると、空を飛んだ理由をソウイチに説明した。
ソウヤが飛べるのは、マントに吹き付けた薬のおかげだそうだ。
薬は、ソウヤが独自に調合したほかに、カクレオンの店にあった、珍しい木の実を分けてもらってそれを混ぜて作ったのだ。
そして、水に溶いて霧吹きで吹き付ければ、空飛ぶマントの完成というわけだ。

「へえ~・・・。お前たまにはまともなもん作るんだな~。」

「たまにはは余計!」
ソウヤはぷいっと顔をそらした。
それが面白かったのか、ソウイチはおもはず吹き出した。

「何がおかしいのさ?」
ソウヤはソウイチをにらみつけた。

「いや、別に。だけど、何で急にそんなの作る気になったんだ?」
ソウイチは笑いをこらえて言った。

「前々から作りたいと思ってたんだ。風を感じて青空の中を飛ぶって気持ちがいいでしょ?」

「なるほどな~・・・。まあ、風が気持ちいいっていうのはオレも同感だな。」
ソウイチはうなずいた。

「そうだ!ソウイチの分も作ろうか?」

「え?い、いや・・・。オレはいいよ・・・。」
ソウイチは顔を背けた。

「なんで?」

「なんでって・・・、それは・・・。」
照れくさいとは口が裂けてもいえなかった。
本当に素直になれないやつだ。

「お~いお前ら、なにやっとんや?」
突然背後から声が聞こえてきた。
二人が振り返るとカメキチとソウマがいた。

「そろそろ依頼に出かけるぜ。準備しろよ。」
ソウマは二人に言った。
二人はは~いと返事をすると、早速出かける準備を始めた。
上に上がると、すでにみんなは二人を待っていた。

「あれ?ソウヤ、なんでマント羽織ってるの?」

「そうそう。なんかソウマみたい。」
モリゾーとゴロスケが言った。

「これはね、僕の発明品なんだ。」
するとソウヤは、さっきのようにまた飛び上がった。
ソウイチ以外は口をあんぐりあけてそれをみていた。
ソウヤは自慢げに空を飛びまわり、ようやく降りてきた。

「す、すっげえ!!」

「すごいよソウヤ!!どうやったの!?」
シリウスはもちろん、みんな興味津々だ。

「お前も昔から発明が好きだったからな~。いっぱい失敗した分、ようやく努力が実ったわけだ。」
ソウマはソウヤの頭をなでた。
ソウヤは人間のときからものづくりに興味があり、いろいろなものをベースに改良したり、新しく作ったりと発明のようなことをしていたのだ。
しかし、その中で成功したのはおおよそ三つか四つ、そのほかはほとんど失敗してしまった。
それでも、ソウヤはめげずにいろいろなものを作り続けたのだ。

「ねえ、どうやったの?」
ゴロスケが目を輝かせて聞いた。

「あのね、それは・・・。」
ソウヤは誇らしげにみんな理由を説明した。

「へえ~!すごいねソウヤ!」
ゴロスケは憧れのまなざしでソウヤを見た。

「空を飛べれば、かなりの範囲を短時間で移動できるしな。」
シリウスも言った。

「今回の依頼は楽勝だな!じゃ、早速行こうぜ!」
ソウイチは軽い足取りで駆け出した。


今回の依頼はみつりんちたい。
背の高い木が生い茂っており、見通しが効く場所はかなり少なく、せいぜい通り道の間に木がないくらいだ。
しかし、ところどころには木のないぽっかり空いた場所もある。
そのせいか、このエリアはとりポケモンが多い。
今日は、シリウスとコンは救助の依頼があり、そっちのほうへ出かけていき、今回は純粋にアドバンズだけだ。

「とりあえず、オレ達は北側、アニキ達は南側を頼む。」
ソウイチはソウマ達に言った。

「ああ、わかった。それはいいけど、結構道が入り組んでるから、迷わないように注意しろよ。もし迷ったら、そのままバッジを使ってギルドへ戻ってろ。いいな?」
ソウマは四人に言った。

「ああ。わかってるさ。」

「それに、もし迷ったときは僕が空を飛んで道を探すよ。」
二人は自信たっぷりにうなずいた。

「よし!それじゃあ早速行くか!」
ソウマはみんな促した。

「おお~!!」

ソウイチ達の受けた四件の依頼は、すべて探してくださいのみ。
かなり迷うポケモンが多いようだ。
道なりに進んでいくが、なかなか依頼者は見つからない。

「くっそお~・・・どこだ~・・・?」
ソウイチは目を皿のようにして辺りを見回した。
目に映るのは一本の道と木ばかり。

「これは探すのが大変そうだね・・・。僕らまで迷いそうだよ・・・。」
ゴロスケが言った。

「心配しなくてもいいよ。僕が空を飛んで探してみるから。」
ソウヤはみんなに言った。

「そっか!ソウヤは空が飛べるんだったね!」
ゴロスケは思い出したように言った。
ソウヤはジャンプすると、あっという間に木の上の高さまで飛んだ。

「すごいな~・・・。」
二人はマントをなびかせて飛ぶソウヤを憧れのまなざしで見つめていた。

「(いいな~・・・。オレもできることなら飛んでみたいぜ・・・。)」
ソウイチは少しうらやましかった。

「みんなは道沿いを探して!依頼者を見つけたらすぐにみんなのところへ行くから!」
ソウヤはみんなに向かって叫ぶと、そのまま飛んでいった。

「あいつに負けてらんねえな。行こうぜ!」
ソウイチもソウヤに負けまいと後を追って走り出した。
モリゾーとゴロスケも後に続く。

そのころ、ソウヤは依頼者を探しつつ、空を飛ぶことを楽しんでいた。
風を感じて高いところを飛ぶのはすごく気持ちがよかった。

「いい眺めだな~・・・。飛行機からしかみたことなかったけど、実際に飛んでみると本当に気持ちがいいな。」
ソウヤは目を閉じた。
目を閉じると、風の音、木の葉の音、いろいろな自然の音が水のように流れ込んできた。
しかし油断は禁物、目を開けると、すぐ目の前に大木が迫っていた。

「わああああ!!」

ゴツン!!

ソウヤは顔面を顔にぶつけて、そのままずるずると下まで落ちてしまった。
目を閉じたまま飛ぶのは自殺行為に等しいといえるだろう。

「いてててて・・・。さすがに目を閉じて飛ぶのは無理があったな・・・。」
ソウヤはおでこをさすった。
しかし一難さってまた一難、今度はその木をねぐらにしていたとりポケモンが襲ってきた。
大木のせいか、数十匹単位という膨大な数だ。

「やれやれ・・・。」
ソウヤはため息をついたが、こうなったら戦うしかない。

「みんなかかれえええ!!!」
オニスズメの合図でとりポケモンたちは一斉に襲い掛かってきた。
ソウヤはぎりぎりまでひきつけてから、空に飛び上がった。
みんな目を見開いてその光景を見ていた。

「な、なぜピカチュウが空を飛べるんだ!?」

「追え!逃がすな!!」
みんないっせいにソウヤを追いかけた。
しかし、地上ではとりポケモンよりすばやさが劣るにせよ、他のポケモンよりすばやさは高い。
それに空を飛ぶ能力が加われば、とりポケモンに劣らないすばやさになる。
ソウヤは敵を引き離すと不意にその場に止まり、向かってくる敵を見つめた。

「(まだだ・・・。あとちょっと・・・。)」
敵との距離はぐんぐん縮まる。
そして・・・。

「光れ閃光!とどろけ雷鳴!十万ボルトおおおおおお!!」
ソウヤは最大パワーで電気を放った。
もちろん猛スピードで突っ込んできた敵はよけられるはずもなく、みんなビリビリしびれて墜落した。
すっかりじめんでのびている。

「ふう~・・・。危なかった~・・・。」
ソウヤはゆっくり地面に降りた。
やっぱりずっと飛んでいるのは疲れるようだ。

「あの~・・・。」
不意にソウヤの後ろで声がした。
振り返ると、依頼者のサニーゴだった。

「もしかして探検隊の方ですか?」
サニーゴは恐る恐る聞いた。

「そうだよ。君を探しに来たんだ。見つかってよかった。」
ソウヤは笑顔になった。
サニーゴもほっとしたようだ。

「じゃあ、仲間のところへ連れて行くから僕の背中に乗って。」
ソウヤはしゃがむと、サニーゴを背中に乗せた。
バッジは二個あるが、ソウイチのところへ置いてきてしまったため、連れて行かないとギルドへ戻れないのだ。
重さはそれほどでもないので、ソウヤは簡単に背負うことができた。

「それじゃあ、しっかりつかまっててね。」
サニーゴはソウヤの肩にしっかりつかまった。
ソウヤはそれを確認し、ジャンプして飛び上がった。
サニーゴはソウヤが空を飛べることにびっくりしたが、やがて空からの眺めに目を奪われていた。
しばらく道の上を飛んでいると、ソウイチ達が向こうからやってくるのが見えた。

「しかしこの森広いね~・・・。ようやく一人目が見つかったけど、ソウヤのほうは大丈夫かな?」
モリゾーはソウヤのことを心配していた。

「今頃、あっちも依頼者見つけてオレ達のこと探してたりしてな。」
ソウイチは冗談めかして言った。

「お~い!!」
ふとどこからか声がした。
みんなが上を見ると、ソウヤがサニーゴを乗せているのが見えた。

「あ、ソウヤ~!」
モリゾーとゴロスケは手をふった。

「(オレの言ったことが本当になりやがった・・・。)」
ソウイチはそんなことを思っていた。
ソウヤは空から降りてくると、サニーゴを背中からおろした。

「お待たせ。これでギルドに帰れるよ。」
ソウヤは笑顔でサニーゴに言った。

「本当にありがとうございました。」
サニーゴも嬉しそうだ。

「じゃあ、転送するぜ。」
ソウイチはバッジをかざし、サニーゴをギルドに転送した。

「これで残りは後二件か・・・。」
モリゾーはつぶやいた。

「だったら、二手に分かれて探さねえか?そのほうが早く済むだろ?」
ソウイチはみんなに提案した。

「そうだね。ソウイチ達は下、僕たちは上を探せばすぐ見つかるよ。」
ソウヤは意見に賛成のようだ。

「え?僕たちって・・・。ソウヤ、僕はソウヤみたいに飛べないよ?」
ゴロスケは不安そうに聞いた。

「大丈夫だよ。ゴロスケが僕の背中に乗れば、一緒に空を飛べるでしょ?」

「でも、重くない?」

「大丈夫大丈夫!ゴロスケと僕はそう重さが変わらないから。」
ソウヤは笑って言った。
それを聞いて、ゴロスケはようやく安心したようだ。

「じゃ、とりあえず集合場所はこの空き地にしようぜ。目印に・・・、石を並べて模様を作っとくか。」
ソウイチは近くに落ちている石を丸く並べて、上からでもはっきり見えるようにした。
そして、四人は二人ずつに分かれ、コラッタとコロボーシを探しに出かけた。

ソウイチとモリゾーは、コラッタを探していた。
コラッタは、空よりじかに探したほうが見つけやすいと思ったのだ。

「モリゾー、どっからとりポケモンが出てくるかわかんねえから注意しろよ。」

「うん。わかってる。」
ソウイチとモリゾーは周囲の木に注意しながら進んだ。
しばらくすすむと、だんだん木が上に覆い重なり暗くなってきた。
いかにも敵が出てきそうな雰囲気だ。
そして、ふいに空気を切り裂くような音がした。
その直後、ソウイチの頭の上に木の葉が舞った。

「どうやらお出ましのようだな。」

「みたいだね・・・!」
さっきの技はどうやらエアスラッシュのようだ。
近くにとりポケモンがいる証拠だ。
モリゾーとソウイチは互いに背中を合わせた。

「ソウイチ、後ろは任せたよ!」

「ああ!油断すんなよ!」
二人は神経を研ぎ澄まして敵の様子をうかがう。
と、今度はでんこうせっかで、複数のムクバードやオニドリルが飛び出してきた。
みんな一直線に向かってくる。

「モリゾー、タイミング合わせろよ・・・!」

「わかった!」
二人は互いに目配せした。

「かかれえええ!!」
とりポケモンは前後から襲いかかり、二人を挟み撃ちにしようとした。
しかし、二人はタイミングを合わせて木に飛び移った。
とりポケモンたちはそのまま大半が激突、その場で気絶してしまった。
他の相手はぎりぎりで旋回し、再び二人に狙いを定めた。
モリゾーはタネマシンガンをひたすら敵に打ち続けた。
効果があまりないことは分かっていたが、これも作戦のうちだった。
敵は進路をモリゾーのほうに変更し、まっしぐらに突っ込む。
モリゾーはタイミングを見計らって次々他の木に飛び移った。
敵もモリゾーの動きにじれて、だんだん焦りとイライラが増してきていた。
そして、最後に飛び移った木で待ち構えていたのは・・・。

「ピンのごとく吹っ飛びな!!フレイムボール!!!」
ソウイチはかえんほうしゃを球状にして威力をため、巨大にしてから敵に放った。
最近思いついた、かえんほうしゃの応用だった。
モリゾーがタネマシンガンで敵の目を引いたのも、ソウイチのためを完全にするためだった。
最後に飛び移った木にソウイチが上のほうに隠れ、モリゾーが飛び移ったと同時に滑り降りて攻撃する作戦だったのだ。
ムクバード&オニドリル軍団はひとたまりもなく蹴散らされ、そのまま退散していった。
勝ち目がないとあきらめたのだろう。

「やったね!ソウイチ!」

「ああ!サンキューな、モリゾー!」
二人は下に降りて、がっちり腕を組んだ。

そのころ、ソウヤとゴロスケはコロボーシを探していた。
さっきとは打って変わり、空には厚い雲が垂れ込めていた。

「嫌な空だな~・・・。大丈夫かな・・・?」

「とにかく急ごう。早くコロボーシを見つけないと・・・。」
不安そうなゴロスケをなだめたものの、ソウヤ自身も心配だった。
しばらく飛んでいると、近くで雷が大きな音を立てた。

「ひゃあああ!!」
ゴロスケはびくっとからだを縮めた。
本当の雷を受ければ、ただでさえみずタイプのゴロスケはひとたまりもないだろう。

「まずいな・・・。ひとまず降りよう。」
雷が直撃する危険性があったので、ソウヤは安全を考慮して下に下りた。
これ以上空を飛んで探すのはリスクが高かったので、地道に歩いて探すことにした。

「ごめんね、ソウヤ・・・。僕のために・・・。」

「気にしなくていいよ。だってゴロスケが雷に当たったら大変だもの。」
うつむくゴロスケをソウヤは元気付けた。
高いところのものほど雷は当たる可能性が高いのだ。
それから数十分ほどしてコロボーシは見つかった。
しかし、ソウヤはある重大なことに気付いた。
ソウイチから探検隊バッジをもらってくるのを忘れていたのだ。

「(しまった~・・・。あの時もらうのを忘れてた・・・。)」
ソウヤは後悔したが、いまさらどうにもならない。

「ゴロスケ。ちょっとソウイチを探してくるから、コロボーシを頼んだよ。」
ソウヤはゴロスケにコロボーシを任せ、ソウイチ達を探しに飛び立った。
雷はまだごろごろとなっており、さっきより不安定な状態だった。

「(ソウヤ大丈夫かな・・・。)」
ゴロスケは不安げにソウヤの後ろ姿を見送った。

「みつからないな~・・・。ソウイチどこにいるんだろ・・・。」
ソウヤは時々空中で止まりながらソウイチを探した。
日が差さないせいか、目を凝らさないとよく見えない。
すると、ソウヤは背後に気配を感じた。
振り返ると、大勢のとりポケモンがソウヤを追いかけていたのだ。

「くそお・・・!こんなときに!」
ソウヤは戦わずにそのまま進み続けた。
今戦えば、コロボーシを助けるのが余計に遅くなるし、自分自身体力が持たないと思ったのだ。
ソウヤは右へ左へ旋回しながら軍団を振り切ろうとした。
しかし、軍団はなおもしつこくソウヤを追いかけまわす。
そしてとうとう、雨まで降り始めた。

「うわあ!冷たい・・・。」
最初は弱かったが時間が経つにつれて激しくなってきた。
視界も良好とは言えず、ほとんど前が見えなかった。
そして・・・。

ピシャアアアアアアン!!

「うわあああああ!!!」
なんと、ソウヤに雷が直撃してしまった。
いくらでんきタイプとはいえ、本当の雷をじかに受ければただではすまない。
とりポケモン軍団は雷に驚き、その場から一斉に逃げていった。
ソウヤは気を失い、そのまま下に落ちていった。
そこには枝や葉っぱがものすごく生い茂った木があり、その中にソウヤは突っ込んだ。
木の枝やとがった葉っぱが容赦なくソウヤに襲い掛かり、ソウヤはそのまま下へ落ちていった。


そのころ、ソウヤを待っているうちに雨が降り始め、ゴロスケは近くの木の穴へコロボーシと雨宿りしていたのだ。
そして偶然にも、その穴にはモリゾーも避難していた。
ソウイチと別れて依頼者を探していたようだ。
しばらく待っていても、雨はなかなかやまない。
そしてソウヤも帰ってこなかった。

「遅いね・・・。ソウヤ・・・。」
モリゾーはゴロスケに言った。

「うん・・・。いくらなんでも遅すぎるよ・・・。もしかして何かあったのかな・・・?」
ゴロスケがそう言った直後、あたりに轟音がとどろいた。
どうやら雷が落ちたようだ。
それがさらにゴロスケの不安をあおる。

「・・・やっぱり遅すぎるよ!僕、探してくる!」
とうとういてもたってもいられなくなり、ゴロスケはコロボーシをモリゾーに任せて、降りしきる雨の中ソウヤを探しに出かけた。

「ソウヤ~!ソウヤ~!!」
ゴロスケは必死でソウヤを探し回っていた。
雨はいつの間にか上がり、雲の隙間からは青い空がのぞいていた。
どうやら通り雨だったようだ。

「まさか・・・、さっきの雷に・・・。」
一瞬不穏な考えがゴロスケの頭をかすめた。
しかし、ゴロスケはその考えを振り払った。
ソウヤに限ってそんなことはあるはずがないと。
しかし、その不安は現実のものとなった。
ソウヤは、木の下にぐったり横たわっていた。

「そ、ソウヤ!!」
ゴロスケは、ソウヤに駆け寄ると息をのんだ。
ソウヤは体中傷だらけだった。
木の中を落ちてきたせいか、マントは穴が開いたりところどころが破けていてぼろぼろだった。
そして、雨に打たれたせいかぬれていて、泥にまみれていた。

「ソウヤ!しっかりして!ソウヤ!!」
ゴロスケは必死でソウヤをゆすった。
もう気が気ではなかった。

「うう・・・。ご・・・、ゴロスケ・・・。」

「ソウヤ!気がついたんだね!よかった~・・・。」
ゴロスケは安心してその場に座り込んだ。

「でも・・・、どうしてゴロスケがここに・・・?」

「帰りが遅いから心配して探しに来たんだ。それより、けがのほうは大丈夫?」
ゴロスケはソウヤの体を心配した。

「多分大丈・・・、うっ・・・!!」
ソウヤは立とうとしてその場にひざまづいた。

「無理しちゃだめだよ!僕がみんなのところまで運ぶから。」
ゴロスケはソウヤを背中に乗せようとした。
本当はオレンの実を食べるのが一番いいのだが、あいにく持ち合わせがなかった。
すると、ソウヤがいきなり叫んだ。

「危ない!ゴロスケ!!」
ゴロスケが前を見ると、とりポケモンが一斉に襲い掛かってきているところだった。
ゴロスケは間一髪伏せたが、ソウヤはすばやく動けるはずもなく、木に叩きつけられた。

「ソウヤ!!」
ゴロスケはソウヤに駆け寄った。

「ゴロスケ・・・。僕のことはいいから、早く逃げて・・・。」

「そんな!ソウヤを見捨てるなんてできないよ!!」
ゴロスケはソウヤの言ったことが信じられなかった。

「あのとりポケモンたちは・・・、さっき僕を追いかけてきたやつらだ・・・。それに加えて、もっと数が増えてる・・・。」
あのときにやはり戦っておけば・・・、ソウヤはそう思った。

「だから、ゴロスケは早く逃げて・・・。このままじゃ二人とも・・・。」

「絶対に嫌だ!!!」
ゴロスケはソウヤに怒鳴った。
ソウヤは、自分に対してここまで怒るゴロスケをみたことがなかった。

「僕はソウヤのパートナーで、親友だよ!?一人で逃げるぐらいなら、ここで倒れてもソウヤを守る!!僕だって・・・、僕だって大事な人を守れるんだ!!」
ゴロスケはそれだけ言うと、敵の群れの中に突っ込んでいった。

「無茶だ!!やめてゴロスケ!!」
ソウヤは必死で呼び止めたが、ゴロスケは意に介さず群れに向かってみずでっぽうを噴射。
敵を水でぬらした直後にれいとうビームをお見舞いし、あっという間に氷漬けにしていく。
しかし、敵は減るどころか増えているように思える。
何度も同じ攻撃を続けるうちに技のPPは減り、敵ポケモンも攻撃のパターンを理解してしまった。
何匹かがゴロスケの背後に回り、つばめがえしでゴロスケを吹き飛ばした。
ソウヤは痛む体を必死に動かしてゴロスケを受け止めたが、勢いあまってそのまま転がった。

「ゴロスケ・・・、大丈夫・・・?」

「だ・・・、大丈夫・・・!こんなところで負けるわけにはいかないんだ!!」
ゴロスケは再び敵陣に突っ込んでいった。

「僕が・・・、僕がソウヤを守るんだ!!」
その瞬間、ゴロスケの足元から大量に水が湧き出したかと思うと、その水は渦となり、次々とりポケモンを飲み込んでいった。
ソウヤは驚いたが、一番驚いていたのはゴロスケ本人だった。
そう、ゴロスケはうずしおが使えるようになったのだ。

「よ~し!そのままいけえ!!」
ゴロスケはうずしおにみずでっぽうでさらに水を加えて、巨大な渦を作った。
とりポケモンたちは脱出することもままならず、そのままぐるぐると渦の中を回っていた。
渦がおさまると、そこにあるのは目を回して気を失った無数のとりポケモンだった。

「はあ・・・、はあ・・・。」
ゴロスケは肩で息をしていた。
しかし、何とか大群を倒すことができたのだ。
ゴロスケはすぐさまソウヤのもとに駆け寄る。

「ソウヤ、さっきは受け止めてくれてありがとう。」
ゴロスケは笑顔で言った。

「そんな・・・。お礼を言うのは僕のほうだよ。守ってくれてありがとう。」
ソウヤも笑顔でお礼を言った。
そして、ゴロスケはソウヤを背中に乗せると、さっきモリゾーがいた場所まで走り出した。
木の穴まで戻ると、すでにコロボーシの姿はなく、モリゾーとソウイチが二人を待っていた。
もうギルドに転送した後のようだ。

「そ、ソウヤ!!大丈夫か!?」
ソウイチはソウヤの身なりを見てひどく驚いた。
あまりにも変わり果てた姿だったからだ。

「バッジをもらうのを忘れてて、ソウイチを探しに行こうとしたら雷に打たれちゃって・・・。」
ソウヤは恥ずかしそうに笑った。

「とりあえずオレン食え。話はそれからだ。」
ソウイチはバッグからオレンを取り出し、早速ソウヤに食べさせた。
傷はだいぶ回復したようだが、まだ多少は痛むようだ。
ソウヤはことのあらましを二人に話した。

「だけどすごいな。うずしおでとりポケモンをやっつけるなんてさ。」
ソウイチはゴロスケをほめた。
ゴロスケはほめられて顔を赤くした。

「ゴロスケがいなかったら、たぶん僕はやられてたよ。本当にありがとう。」
ソウヤはまたお礼を言った。

「ところで、どうしてソウイチはここにいるの?」
ゴロスケが聞いた。

「ああ。モリゾーと別れてコラッタを探してて、見つけたはいいんだけど、集合場所がわからなくなってさ・・・。雨も降り出したし、雨宿りできる場所を探してたらここにたどり着いたってわけだ。」
いかにもソウイチらしい理由だ。

「とりあえず、これで依頼は全部解決だね。」
モリゾーが言った。

「ああ。アニキ達も待ってるかもしれないから、入り口まで戻ろうぜ!ソウヤ、道案内できるか?」
ソウイチはソウヤに聞いた。

「うん。もちろんできるよ。」
ソウヤはうなずいてジャンプした。
しかし、ソウヤは浮かび上がらずそのまま地面に落ちた。

「いたたた・・・。な、何で飛べないの・・・?」
ソウヤはまったく原因がわからなかった。

「マントがぼろぼろになってるからか?」

「いや・・・。それぐらいじゃ飛べないはずないんだけど・・・。」
ソウヤはソウイチの意見を否定した。

「それとも、もう空を飛ぶ体力が残ってないのかな?」
モリゾーが聞いた。

「それもないよ。体力とは無関係に飛べるはずだし・・・。」
これも違うようだ。

「じゃあ、雨にぬれてマントが重くなったとか?」

「確かに重くなったら飛べないかもしれないけど、もう乾いて・・・。ああ!!」
そこでソウヤはひとつの原因が思い浮かんだ。

「もしかしたら・・・、マントに吹き付けた薬が雨に溶け出して効果がなくなったのかも・・・。あれはたしか、水に溶けやすいものだったから・・・。」
そういうことはソウヤしか知らないが、みんなもそんな気がした。

「てことは、また薬を吹き付けるまでは飛べねえってことか?」
ソウイチは聞いた。

「うん・・・。それに・・・、薬はあれで全部だったから、もう予備がないんだ・・・。ああ~、防水加工しておけばよかった・・・。」
ソウヤはがっかりしてその場に座り込んだ。
ようやくうまくいったと思った発明が、またしても失敗してしまったのだ。
その落ち込み具合は計り知れなかった。

「しょうがねえよ。あと一歩のところまで行ってたんだ。次こそ完璧なものができるって。」
ソウイチはソウヤの肩をたたいてなぐさめた。

「よし。じゃあ、いったんギルドへ帰ろうぜ。」
ソウイチはバッジを取り出し上に掲げた。
その数秒後には、みんなはギルドの前にいた。
それからしばらくして、ソウマ達も帰ってきた。
ソウマはソウイチたちの話を聞いて、ソウヤをなぐさめた。

「この次はきっと成功するさ。ほぼ完璧なところまでいってたんだからな。」
ソウマの言葉を聞いて、ソウヤもようやく元気を取り戻した。

それからソウヤはマントの修理を始め、ようやく元の状態にまで戻すことができた。
次の日には、カクレオンがまたあの珍しい木の実を入荷していたので、ソウヤは早速買ってきて薬を調合した。
もちろん、防水加工も忘れずにやった。
水につけたときの実験もやってみたが、前のように薬が溶け出すということはなかった。
これで、本当に空飛ぶマントが完成したのだ。
ようやく、ソウヤの努力は本当の意味で実を結んだ。
ソウヤはさっそくみんなと海岸に行き、思う存分青空を満喫した。
みんなもソウヤの笑顔を見てうれしくなった。
そのなかで、ソウイチは少しつまらなそうだ。

「(オレも空を飛んでみたいな~・・・。)」
いまだに、貸してくれとソウヤに言い出せないソウイチであった。 


アドバンズ物語第四十九話



ここまで読んでくださってありがとうございました。
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Last-modified: 2011-05-03 (火) 00:00:00
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