ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第十四話 ライバルは救助隊!? マスタースパーク登場!
翌朝、いつものごとく朝礼を済ませると、ペラップはみんなをその場にとどめた。
「え~、仕事に入る前に、新しい仲間を紹介するよ♪お~い、こっちに来てくれ。」
ペラップが言うと、階段からイーブイとピカチュウが入ってきた。
「紹介するよ。遠くの地方から来てくれた・・・。」
ペラップが二人を紹介しようとすると、二人は自分から自己紹介をした。
「私はイーブイのコンといいます。皆さんどうぞよろしくです。」
イーブイの方はコンという名前で、女の子のようだ。
首にオレンジのスカーフを巻いている。
「オレはシリウスだ。みんなよろしくな!」
ピカチュウの方はシリウス。
頭には赤いバンダナを巻いており、かなり元気いっぱいのようだ。
「そして、もう一組。」
すると、ものすごいにおいが辺り一面に漂った。
みんな鼻が曲がるかと思った。
そして降りてきた奴らを見て、ソウイチたちはびっくりした。
「あ、あいつらは!?」
そう、あの時ソウイチたちをはり倒したドクローズだったのだ。
三人は軽く自己紹介をすると、ソウイチたちの方を見やった。
「覚えていてもらおうか。特にお前たちにはな。」
スカタンクは嫌な笑いを浮かべると、にやりと笑った。
「なんだ。顔見知りなのか?それなら話は早い早い♪この二匹と三匹は弟子ではなく、今回遠征するための助っ人として参加してもらうことになったのだ。」
「えええ~っ!?」
みんなびっくりした。
何しろ、こんな悪党どもが遠征に加わるとは思わなかったのだ。
きっとあの後で何か作戦を実行したのだろう。
「なんでそんなに驚くんだ?」
ペラップが四人に聞いた。
「ペラップさん、あいつらはいちいち大げさなんですよ。ククククッ。」
スカタンクがまた根も葉もないことを吹き込む。
「あの野郎・・・!調子に乗りやがって!!」
ソウイチは今にも殴りかからんばかりの勢いだ。
「・・・まあいい。とにかく、今回親方様は、遠征にはこの5匹がいてくれた方が戦力になると判断された。ただいきなり一緒に行動してもチームワークはとれない。なので遠征までの数日間、共に生活してもらうことになったのだ。短い間だが、みんな仲良くしてやってくれ♪」
「(ったく、誰がこんな最低な奴らと生活できるかってんだ。いつか問題起こすぞ・・・。)」
ソウイチは心の中であっかんべーをしていた。
「さあ、今日も仕事にかかるよ!」
ペラップはかけ声を出したが、いつもよりみんなの元気がない。
朝からあんなにおいをかがされたのでは元気が出るはずもない。
みんながそのことに対して言い訳しようとすると、突然あたりがぐらぐらと揺れだした。
みんな何事かと辺りを見回す。
「タァ・・・。タァァァァァ・・・。」
プクリンが顔をゆがませて何か言っているのだった。
「いかん!親方様のいつもの怒りが・・・。親方様を怒らしてはとんでもないことに!!みんな無理にでも元気出すんだよ!!」
無茶苦茶にもほどがあるところだが、みんなは無理矢理元気を出し、プクリンの怒りはなんとかおさまった。
しかし、みんなの顔には明らかに不満の色が浮かび上がっていた。
「クククッ、これからよろしくな。」
そういうと、あの三匹は上へ行ってしまった。
「はあ・・・。なんでよりによってあいつらが・・・。」
ソウヤは深いため息をついた。
他のみんなもものすごく気分がふさいだ。
「アニキがいたらぶっ飛ばしてくれそうなんだけどな~・・・。」
ソウイチは遠くを見るような目でつぶやいた。
ソウマ達は遠くの依頼に出かけ、まだ帰ってきてないのだ。
だからあいつらのことは知るわけがなかった。
「絶対あいつら怪しいよ。何企んでるか分かったもんじゃない・・・。」
モリゾーもゴロスケも不安の色を隠せなかった。
そして四人は、依頼を受けるため上の階へと行った。
「シリウス、あの4匹・・・。」
「なかなかおもしろそうだな。ちょっとついて行こうぜ。」
コンとシリウスの二人は、ソウイチたちの後をついて行くことにした。
まるでストーカーだ。
「ああ!?誰がストーカーだ!?十万ボルト浴びせるぞ!!」
「シリウス・・・?誰に向かってはなしてるんですか?」
コンはものすごく不思議そうな目でシリウスを見た。
「あ・・・。な、なんでもねえよ・・・。行こうぜ。」
シリウスはとっさにごまかした。
そして掲示板の前では、ちょうど四人が依頼を選んでいるところだった。
「今日はトゲトゲやまの依頼が多いみたいだね。」
ソウヤは依頼の数を数えながら言った。
「どうするんだ?別の場所でもいいぜ?」
ソウイチはみんなの意見を聞こうと思った。
前よりは自分勝手ではなくなってきているようだ。
「オイラはいいと思うよ。ランクもそこそこだし。」
モリゾーは賛成のようだ。
「僕もいいと思う。」
ゴロスケも同じ意見だった。
「じゃあそこにするか。とりあえずいろいろ準備をしてから行こうぜ。」
ソウイチの提案で、みんなは道具などを買いそろえることにした。
しかし、後ろからあの二匹がついてきていることは知らなかった。
お金や道具を預けた後、みんなはパッチールのカフェで飲み物を飲んでいた。
「ぷはあ~!やっぱりうめえ~!!」
ソウイチはできたドリンクを勢いよく飲み干すと叫んだ。
「なんかおっさんみたいだね。」
ソウヤがくすくす笑った。
「うまいんだからいいだろ!」
ソウイチはソウヤをにらみつけた。
「まあまあ、二人ともけんかしないで・・・。」
ゴロスケが二人をなだめていると・・・。
「おい、おまえら。」
みんなが入り口を見ると、そこには見慣れない二人組みがいた。
「ん?なんだおまえら?」
「オレはシリウス。こっちはコンだ。お前ら、見たとこまあまあ実力がありそうだな。」
生意気な口をきくシリウス。
もちろんソウイチはすぐに反応した。
「なんか腹の立つ野郎だな。オレ達にいったい何のようだ?」
ソウイチはシリウスを真っ向から見据えた。
「オレ達を、お前たちの仲間に加えてくれねえか?」
シリウスは含み笑いをしながら言った。
「仲間に・・・?」
「そうだ。探検隊の実力がどの程度のものなのか見てみたいからな。」
「実力って・・・、君たちが探検隊じゃないみたいだけど・・・。」
ソウヤはおずおずと聞いた。
「はい。私たちは探検隊じゃなくて、救助隊なんです。」
コンが言った。
「きゅ、救助隊!?」
みんなびっくりだ。
探検隊以外にそんな組織があるとは思ってもみなかったのだ。
「オレ達のいた地域では、自然災害が多発して困ってるポケモンが大勢いた。だから救助隊が結成されたのさ。オレ達もその一部ってわけだ。」
シリウスは簡単に説明した。
「でも、シリウスの活躍で今では災害もだいぶ収まってきてるんです。」
コンは意外なことを口にした。
「か、活躍・・・?」
みんな何が何だか分からない。
「シリウスが、てんくうのとうで隕石の衝突を防いでくれたんです。その後は使命を終えて、人間の世界へ帰る予定だったんですが、シリウスの強い気持ちで、この世界にとどまることになったんです。」
さらに意外な事実が発覚した。
「に、人間!?」
みんな飛び上がって驚いた。
「なんでそんなに驚くんだよ?人間がポケモンやってたら悪いか?」
シリウスは不快感をあらわにした。
「いや、そういうわけじゃねえけど・・・。」
「ただ意外だっただけだよ・・・。」
みんな口々に言った。
「まあいいさ。とにかく、要するにどっちの実力が上か勝負しようってことさ。」
「勝負だあ?じゃあ仲間になるってのはどういうことだ?」
ソウイチは不審な目でシリウスを見た。
「それはダンジョンに行くまでの話。入ってからは別行動だ。」
「なるほど・・・。いいぜ。救助隊とやらの実力、オレ達が試してやるぜ!」
ソウイチは乗り気になった。
他のみんなも何も言わなかったが、ソウイチの意見には賛成のようだ。
「決まったようだな。じゃあ、出発しようぜ!」
「ああ!どっちが上か証明してやるぜ!」
明らかに経験の差がありそうな気はするが、そこは黙っていよう。
二人のにらみ合った目からは火花が散っているように見えた。
お互いをライバル視しているのだろう。
何しろどちらも元は人間、何か共通するものがあるのだろうか。
そして一向は、トゲトゲやまを目指して出発した。
数十分ほど歩き、一向はようやくトゲトゲやまに到着した。
「ここがトゲトゲやまか・・・。対決にはうってつけの場所だな。」
シリウスは頂上を見上げて言った。
「じゃあさっさと始めようぜ。ルールは?」
ソウイチはシリウスに聞いた。
「とりあえず、お前らは依頼を解決しつつ、山の頂上でオレ達にバトルで勝てれば勝ちだな。」
シリウスはにやっと笑った。
「なにい!?お前らの方が有利じゃねえか!!」
「卑怯だぞ!正々堂々勝負しろ!!」
ソウイチ達はシリウスにくってかかった。
「おいおい、何か勘違いしてねえか?お前らは探検隊、オレ達は救助隊なんだぜ?探検隊の仕事は探検隊のすることだろ?」
「うぐ・・・。」
確かにそのとおりだった。
探検隊の管轄はあくまでも探検隊の管轄、救助隊が仕事をするべきではないといいたいのだろう。
「勝負しないのかじゃあ、オレ達の勝ちだな。」
シリウスはニヤニヤしながら言った。
「ふ、ふざけんじゃねえ!!よ~し受けてやらあ!!お前らぶったおして完全勝利してやる!!」
「いいぜ!全力でかかってこい!」
シリウスを見つめるソウイチの目は怒りとやる気に満ちていた。
完全にシリウスを敵としてみていた。
「シリウス、あんまりやりすぎちゃだめですよ。」
コンはこっそり釘を刺した。
「わかってるさ。別に勝ちたいから勝負する訳じゃねえからよ。」
シリウスは意味ありげな笑いを浮かべた。
いったい何を考えているのだろうか。
「それじゃあ行くぜ!レディ・・・?GO!!」
シリウスは一気にかけ出した。
コンもそれについて行く。
「あ!抜け駆けすんな!!お前ら、行くぞ!!」
ソウイチも猛スピードで後を追いかけた。
「わああ!ちょっと待ってったら~!!」
みんなもあわてて追いかける。
それから数十分後、シリウスはソウイチたちを大きく引き離していた。
「シリウス、なんであんな挑発みたいなことをしたんですか?」
コンはシリウスの意図がまったくつかめなかった。
わざわざけんかを売る意味などないと思っていたからだ。
「まあ、オレの性分ていうかな・・・。ああいう奴らを見るとなんか勝負したくなるんだよな。それに、お前のためにも、こっちに知り合いがいねえと何かと不便だろ?あいつらの実力がオレ達より下なのは比べなくても分かる。」
シリウスはまじめな顔で言った。
「じゃあ、なんでこんなことを?」
「あいつらを見たとき、何か感じるものがあったのさ。それを確かめるためだよ。もしかしたら、あのソウイチってやつは・・・。いや、なんでもない。」
シリウスは言いかけたことを途中で飲み込んだ。
「なんにしても、私はシリウスについて行きます。お父さんとお母さんを捜す手伝いだってしてもらってますし。」
いったいこの二人にはどんな秘密が隠されているのだろうか。
それが明らかになるのは、もう少し後になりそうだ。
その頃ソウイチ達は・・・。
「どこだ!?ニョロモはどこだ!?」
合流したサニーゴをつれて、ソウイチたちは必死にニョロモを探していた。
「あんな野郎に負けるわけにはいかねえ!!」
ソウイチは奥歯をぎりりとかみしめた。
完全に敵意むき出しの状態だった。
「対抗心燃やすのはいいけど、依頼者のこともちゃんと考えないとダメだよ?」
モリゾーは念を押した。
依頼者が倒れてしまっては元も子もない。
連れて行く依頼は、敵や依頼者、いろいろな配慮が必要な高度な依頼でもある。
それと同じく、おたずねものもレベルが高いので、倒すのにはかなりの時間を要する。
文字通り、実力と判断力が試される。
「んなことはわかってるよ!!とにかくあいつらに勝たねえとオレの気がすまねえんだよ!!」
「それは僕だって同じだよ。あんなことまで言われたら負けるわけにはいかないよ!」
ソウヤも絶対に負けたくない気持ちは同じだった。
「救助隊だかなんだか知らないけど、オイラ達の本気を見せてやろうよ!」
「そうだよ!チームワークは僕たちの方が上さ!」
モリゾーとゴロスケも同じ気持ちだった。
「お前ら・・・。よ~し!絶対勝負に勝ってやろうぜ!!」
ソウイチは手を上に高く上げた。
「おお~!!」
他のみんなもそれにあわせて手を挙げる。
イシツブテの多いこのエリア、ソウイチとソウヤはモリゾーのサポートを受けつつ、サニーゴの護衛をした。
ようやく目的の階にたどり着き、サニーゴは礼を言ってニョロモと帰って行った。
「よし、一つ終わった!!次行くぜ!!」
ソウイチは先陣を切ってみんなを引っ張った。
その後はかなり順調に事が進んだ。
ナマズンはすんなりとみつかり、リリーラもそこまで強くはなかった。
「この調子だとあの二人より早く着けそうだね!」
モリゾーは自信たっぷりだった。
「まだわかんねえけど、このペースなら勝てるぜ!」
みんなはどんどんと山を駆け上っていった。
しかし、思わぬトラブルが待ち受けていた。
そう、品物を盗んだ犯人が見つからないのだ。
依頼にもその詳細が書いていないので、容姿の判断がつかない。
ソウイチたちはかなり焦っていた。
「くそお!どこだ!?どこにいやがる!!」
ソウイチはいらいらして地団駄を踏んでいた。
「落ち着きなよ。いらいらしてたんじゃ、見つかるものも見つからないよ。」
ソウヤがソウイチをなだめた。
「んなことは分かってるよ!!ただあいつらには絶対負けたくねえんだ!あんなのに負けたら、オレのプライドずたずただぜ・・・!」
どんなプライドかよく分からないが、負けたくないという気持ちは確かだった。
「とにかく、もう一度探して・・・。ん?」
ゴロスケが何かを見つけたようだ。
「どうしたの?」
「あれ、見て・・・。」
ゴロスケが指さす方を見ると、なぜか挙動不審なカラナクシがいた。
しかも、このエリアにはいないポケモンだったのだ。
「おい、お前!」
ソウイチはカラナクシに手を置いた。
「わわ!?な、なんですか!?」
カラナクシはすごくびっくりしていた。
「ソウイチ、違ってたらまずいよ・・・。」
モリゾーが止めようとしたが・・・。
「勝負に負けてたまるかあああ!!くたばれえええ!!」
「え、ちょ!?ぎゃあああああああああ!!」
ソウイチは有無を言わさずカラナクシを攻撃した。
そしてカラナクシは、大きなリンゴを落とした。
「やっぱりこいつが盗んでたのか・・・。よし!次だ次!」
ソウイチには、シリウス達を倒すことしか眼中にないようだ。
次のおたずねものも、この辺にいそうにないポケモンを探し、速攻で倒してしまった。
ソウイチの秘めている実力は計り知れないもののようだ。
そして頂上では・・・。
「遅いですね・・・。あの人達・・・。」
コンはソウイチたちのことを心配していた。
「途中でやられたら、所詮それだけのやつらさ。オレの見込み違いだったってわけだ。」
「さっき言いかけたことってなんなんですか?」
コンはそれが気になってしょうがなかった。
「ああ、あれか。オレは人間界に帰るとき、すこし記憶を取り戻した。その記憶の中に、ソウイチという名前のやつがいた。」
「もしかして、さっきのヒノアラシ・・・。」
「ああ。でも、オレの知ってるソウイチなら、まず途中でくたばったりはしないだろうな。あいつの底力はオレがよく分かってる。何しろ、オレとあいつは・・・。」
シリウスが先を続けようとすると・・・。
「やっと追いついたぜ!!」
ソウイチたちが息を切らせて追いついたのだ。
「やっと来たか。待ちくたびれたぜ。」
シリウスは岩の上から飛び降りると、ソウイチの方へと歩いていった。
「勝負はオレとお前の1対1。リーダー同士の真剣勝負だ。」
さっきまでとは表情が一変して、シリウスの目つきは真剣そのものだった。
「さっさと終わらせてやるぜ!お前みたいなやつは徹底的に叩きのめしてやる!!」
ソウイチはやる気満々だった。
しかし、両者はにらみ合ったまま一向に動く気配が無い。
相手の隙をうかがっているのだ。
「ソウイチ、大丈夫かな・・・。」
ソウヤは不安だった。
見る限りで、シリウスのほうが強そうに見えたのだ。
「大丈夫だよソウヤ!きっとソウイチなら勝ってくれるさ。」
モリゾーはソウイチの勝利を信じていた。
口には出さなかったが、ゴロスケも同じだった。
「(シリウス、くれぐれも無茶はしないでくださいね。)」
心の中でコンはつぶやいた。
言いたいけど、言っては気を悪くするだけだと知っていたからだ。
そしてにらみ合ったまま数分が経過、最初に動いたのはソウイチだった。
先手必勝、ものすごい勢いでシリウスとの間合いを詰める。
しかし、向こうもただではやられない。
「な、なにい!?」
そう、シリウスはかげぶんしんにこうそくいどうをプラスして、ものすごい数の分身を作ったのだ。
こんな数の分身は、今まで見たことがなかった。
「さあ、どれが本物か分かるか!?」
シリウスは余裕たっぷりだ。
「くそお・・・。どれが本物なんだよ!?」
ソウイチはぐるぐる回って本物を探した。
しかし、そんなので見つかるわけもなく、ソウイチは目を回して倒れてしまった。
「ああ!何やってんだよソウイチ!!」
みんなは気が気ではなかった。
当然、シリウスはそのチャンスを逃さなかった。
「(やっぱりこいつはオレの知っているソウイチじゃなかったのか・・・。)これでとどめだ!!」
シリウスのアイアンテールが間近まで迫ったとき、ソウイチはかっと目を見開いた。
ソウイチは目を回したフリをして、シリウスを近くにおびき寄せたのだ。
「終わるのはてめえのほうだ!!いっけえ~!!」
ソウイチの背中から激しく炎が噴き出した。
そして、そのままの勢いでぐるぐる回り始めた。
「なに!?かえんぐるま!?ぐあああああ!!」
さすがのシリウスもこれはよけられず、そのままの勢いで岩壁に叩きつけられてしまった。
しかし、いつの間にソウイチは五個目の技を覚えていたのだろうか?
普通は四個までが限界だが、限界を超えて五個目を覚えてしまった。
これも人間だった影響なのだろうか。
「へっ!どうだ!」
「これぐらいで調子に乗るな!!オレの本気はこんなもんじゃねえぜ!!」
シリウスはまたしても高速かげぶんしんを繰り出した。
「めんどくせえ!全部焼き払ってやらあ!!」
ソウイチは最大パワーでかえんほうしゃを出すと、分身を片っ端から焼き払っていった。
しかし、全部焼き払ったはずが、本体の姿はどこにもなかった。
「ど、どこに隠れやがった!?」
ソウイチは辺りを見回したが、どこにもいない。
すると、突然地面からシリウスが姿を現した。
「う、うそだろ!?がはああああ!!」
予想外の攻撃にソウイチはたじろぎ、おまけに急所に当たってしまった。
じめん技で急所に当たれば、そのダメージは計り知れない。
「う・・・、ぐ・・・、くそお・・・。」
ソウイチは起き上がろうとしたが、足にダメージを受けてしまい起き上がることができなかった。
それに体力もかなり削られてしまった。
「どうやらもう起き上がれないらしいな。そろそろとどめを・・・。」
「バカ言ってんじゃねえ・・・。これぐらい、まだまだいけるぜ・・・!!」
ふらつきながらも、ソウイチは立ち上がった。
「あなをほるを受けてまだ立てるのか!?(こいつはやっぱり、オレの知っているソウイチなのか?)じゃあ、ガンガン行くぜ!十万ボルトおおおお!!」
「だいもんじいいい!!」
両者火花を散らす激しい戦いになった。
どちらも本気になったのか、攻撃中心になり技をあまりよけなくなった。
それにもかかわらず、お互いへたばる様子は全くなかった。
「っつ・・・。」
しかし、足をけがしたはんではソウイチにとって致命傷だった。
いつもの機動力が失われ、接近戦では明らかに不利だった。
「なかなかしぶといな・・・。でも、そろそろ終わりだ!!」
シリウスは渾身の力を込めて、ボルテッカーをくりだしたのだ。
シリウスも、ソウイチと同じく五個の技が使えるようだ。
「ぐわああああああ!!!」
ソウイチはものすごいスピードで岩壁に叩きつけられた。
もうとても戦える状態ではなかった。
しかしシリウスは手を休めなかった。
「これで本当に最後だ!!最大かみなり~!!」
ゴロゴロゴロゴロ!!
ものすごい轟音とともにソウイチの方へ稲妻が走った。
しかし、さすがのシリウスも疲れていたのか、かみなりは的を大きく外れ、山の上のほうへと当たってしまった。
「チッ、はずしたか・・・。でもこんどこそ・・・。」
シリウスが再びかみなりを落とそうとしたそのとき、突然あたりがゆれ始めた。
みんなは何事かと思って辺りを見回すと、なんと山の頂上から大きな岩が崩れ落ちてきているではないか。
しかもそれは、コンのいるところへ向かっていた。
「しまった!!コン!逃げろ!!」
シリウスは叫んだが、コンは恐怖のあまり固まってしまっていた。
「くそ!とんだへまをやらかした!!」
シリウスは全速力で駆け出したが、とても間に合うようなスピードではなかった。
「うおおおおおお!!」
すると、シリウスの横を猛スピードで駆け抜けていくひとつの影があった。
ガラガラガラガラドッガーーーーン!!!!
ものすごい音とともに、あたり一面が砂煙に包まれた。
岩が落下してきた衝撃で、シリウスは派手に転んでしまった。
目の前には、大きな岩が何個も積み重なっていた。
「こ、コーーーーン!!くそお!!」
シリウスは力を振り絞って岩に駆け寄った。
「コーーン!どこだ!!コーーーン!!」
呼べど叫べど返事はない。
自体の急を察したのか、ソウヤたちも探すのに協力した。
「お、お前ら・・・。」
シリウスは意外だった。
あそこまでしておきながら、自分を手伝ってくれるとは思わなかったのだ。
「困ったときはお互い様!敵味方言ってる場合じゃないよ!」
ソウヤはそういいながら必死で岩をどかしていった。
ゴロスケやモリゾーも力を振り絞って岩をどかしている。
「・・・へっ・・・、物好きなやつらだぜ。」
そうは言うものの、シリウスは嬉しかった。
岩をどかし終えると、ようやくコンが見つかった。
なんと、ソウイチがたてになって岩を防いでいたのだ。
おかげで、コンはほとんど無傷だったが、ソウイチの体には無数の傷跡があった。
「なぜ、なぜそこまでして助けたんだ?」
「決まってんだろ?困ってるやつは見過ごせない。それだけさ。救助隊もそれは同じだろ?」
ソウイチはにっと笑った。
「・・・だよな・・・。」
シリウスもふっと笑った。
ソウイチとコンはは岩の中から連れ出され、オレンの実を食べさせられた。
オレンの回復力はすさまじく、二人はすぐに元気になった。
「やっぱオレン最高!さ~て、勝負のほうはどうするんだ?仕切りなおすか?」
「いや、もうする必要はないさ。これではっきりしたからな。」
シリウスは思っても見なかったことを口にした。
「何がはっきりしたんだよ?」
「コン、さっき言いかけたことの続きだ。オレとこいつは、人間のとき親友だったんだ。」
シリウスはとんでもないことを言った。
「えええええええええ!?」
みんな飛び上がってびっくりした。
「う、うそだろ!?」
ソウイチ自身も信じられなかった。
というよりも、人間のときに親友がいるということ自体記憶がないのだ。
「シリウスとソウイチさんが・・・、人間のときの親友・・・?」
コンも意外な事実を聞かされてびっくりだった。
「これ見りゃ思い出すさ。」
そう言うと、シリウスはバンダナを取った。
その頭にはかみなり模様のような傷が浮かび上がっていた。
「そ、それは・・・。」
ソウイチの頭の中に映像が浮かび上がった。
「ふ~、今日も疲れたぜ。」
「だけどソウイチ、お前底力あるよな~。」
「お前だって結構腕力あるじゃねえかよ。一撃で不良ぶっ飛ばせるのはお前ぐらいだぜ。」
「ハハハ。そういうお前だって楽しそうにぶっ飛ばしたたじゃねえか。」
「違いねえ!アハハハ!!」
「じゃあ、オレはこの辺で帰るぜ!じゃあな、ソウイチ!」
「ああ!また明日な、リュウセイ!!」
ソウイチの記憶のかけらが、少しだけ頭にはめられた。
「りゅ、リュウセイ・・・、なのか・・・?」
「思い出してくれたみたいだな。きっかけってのはどこにあるかわからねえもんだ。」
「うおおお!!久しぶりじゃねえか!!」
ソウイチはシリウス、もといリュウセイに抱きついた。
「ちょ、おい!!」
リュウセイはあわてた。
「今までどこに行ってやがったんだよ!え?心配かけやがってこのお!!」
ソウイチは会えたのが嬉しくて嬉しくて、リュウセイの頭を小突き回した。
「いたたた!!やめろソウイチ、分かったからやめろ!!」
そうは言うものの、リュウセイも親友に会えて嬉しそうだった。
「あの~、話が全然分からないんだけど・・・。」
みんなポカーンとした顔をしていた。
「おっと、わりいわりい。実はな・・・。」
ソウイチはみんなにリュウセイのことを話した。
「そうだったんだ~・・・。まさかソウイチの親友までポケモンになってるなんてね。」
みんなソウイチの話を聞いて納得したようだ。
「オレとソウイチはいつも一緒だったな。よく不良とかに絡まれてたけど、二人でいつもぶっ飛ばしてたっけ。」
シリウスはおかしそうに言った。
「そうそう。だけどやられたときはやばかったよな~。二人とも顔ぼこぼこでさ~。」
すると、二人はお互いの顔を見合わせてまた笑った。
「あの~、ひとつ気になることがあるんですけど・・・。ソウイチさんが親友だって分かってたなら、何でシリウス・・・、リュウセイはあんなことしたんですか?」
コンはリュウセイに聞いた。
「シリウスでいいよ。こっちのほうが気に入ってるしな。理由は簡単だ。久々にあいつの本気が見たかったのさ。」
「そ、そんな理由であんな勝負しかけたのか!?」
そんな単純な理由だったとはさすがのソウイチも思わなかったようだ。
「ああ。で、やっぱり本当のソウイチだったってわけだ。オレもここまで強くなってるとは思わなかったぜ。でも、結果的にコンをひどい目にあわせちまったけどな・・・。」
リュウセイはしゅんとなった。
「シリウスのことですから。こんなのはもう慣れっこですよ。」
コンは笑顔で言った。
「おいおい、それじゃあオレがいつも無茶してるみたいだろ。」
「実際そうだろ。ま、オレもおんなじだけどな。」
「似たもの同士だね。」
ソウヤがつっこんむとみんな大笑い。どうやらいざこざは解消したようだ。
「でも、また会えてよかったぜ。これからもよろしくな。リュウセイ。」
ソウイチは手を差し出した。
「シリウスでいいよ。」
ちょっと苦笑いしながらも、リュウセイは手を差し出し、お互いに握手をした。
「おい!!いつまでリュウセイリュウセイ言ってんだ!!シリウスだって言ってるだろうが!!」
突っ込まれなくてもそれは分かる。
いわゆるわざとってやつだ。
「ったく・・・。しっかりしろよ・・・。」
「おい、シリウス・・・。誰に向かって話してんだ?」
ソウイチ達は変なものでも見るような顔をした。
「な、なんでもねえよ!」
シリウスは赤くなった。
「ならいいか。じゃあ、やることもやったし、帰ろうぜ!」
「そうだね。アニキたちも帰ってるかもしれないし。」
「アニキ?」
シリウスが知らないのも当然だ。
まだソウマ達には会っていないのだから。
「帰ったら紹介するよ。さ、行こう!」
ソウヤはみんなを促しギルドに向かって歩き始めた。
こうしてみんなは、シリウスとコンという、新たな友達ができたのだった。
「そういえば、二人は何でこの地域に来たの?」
モリゾーが聞いた。
「私の両親を探すためなんです。私の両親は、私が小さいころに自然災害のせいで生き別れになってしまったんです。それで、いろいろな場所に出かけて探したんです。でも、向こうでは何の情報も得られませんでした・・・。だから、ここにくれば何か情報があるかもと思ったんです。」
コンはみんなに説明した。
「そっかあ・・・。それでここに来たって事か。」
みんな深くうなずいた。
「それで、オレもコンの両親を探す手伝いをしてるってわけさ。もちろん、活動の方だっておろそかにはしてないぜ?」
「とか何とか言って、どっかでさぼってるんじゃねえの?」
ソウイチはニヤニヤしながら言った。
「なんだと!?けんか売ってんのか!」
シリウスは多少気が短いようだ。
しかも、ソウイチより。
「まあまあ。でも、お母さんとお父さん、見つかるといいね。」
二人をなだめると、モリゾーはコンを気遣って優しく言った。
「は、はい。ありがとうございます。」
コンは少し顔を赤くした。
なぜかモリゾーと話すと胸がドキドキしてしまうのだ。
しかし、その微妙な変化には誰も気付かなかった。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。
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