ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第十三話 ソウマの鬼指導! かなづちソウヤの猛特訓!
「おりゃああああ!!」
「ちょっと、冷たいよソウイチ!」
「こっちも反撃だあああ!!!」
ここはギルドの近くの海岸。
アドバンズはみんなで海水浴に来ていた。
みんな海で遊んだり砂浜でのんびりしたりしていた。
「お~い、あんまりはしゃぎすぎてけがするなよ~。」
ソウマは海で遊んでいるソウイチ達に声をかけた。
「んなことわかってるよ!!」
「すきあり!!」
「ぶはああ!!!やったなゴロスケ!こっちも仕返し~!!」
ソウイチ、モリゾー、ゴロスケは子供のようにはしゃいでいた。
まあ、年齢からいえば子供なのだが。
ところが・・・。
「なあソウヤ、なんでお前海で泳がへんの?みんな楽しそうやで?」
カメキチはソウヤに聞いた。
しかしソウヤはむすっとして答えない。
「ソウヤ、お前まさか・・・。」
ソウマがソウヤに理由を聞こうとしたときに・・・。
「ソウヤ~!なんでこっち来ねえんだ~?楽しいぞ~!!」
ソウイチが楽しげに声をかけた。
すると、ソウヤは何も言わずに岩場のほうへと歩いて行ってしまった。
「なんだよあいつ・・・。変なやつだな~・・・。」
ソウイチがつぶやいていると・・・。
「それえ!!」
「おわっ!不意打ちはずるいぞ!!」
再び水のかけ合いを始める三人。
「いったいどうしたのかしら・・・。」
「ソウイチに何も言い返さんのは珍しいな・・・。」
カメキチもライナも、いつもとは違うソウヤの様子が心配になった。
「(間違いない・・・。あいつきっとまだ・・・。)オレ、ちょっと行ってくる。」
ソウマはソウヤの後を追った。
「なんだよアニキまで・・・。あいつなんかほっとけばいいのに・・・。」
ソウイチは冷たいことを言った。。
「そういう言い方はないでしょ?なんにも言い返さずに岩場のほうへ行っちゃったら、何かあるんじゃないかって普通心配するわよ。」
ライナは少しきつい言い方をしてソウイチをたしなめた。
「う・・・。わ、悪かったよ・・・。」
ソウイチは不満そうだったが、素直に謝った。
そしてソウヤはというと、岩場の陰に一人座りこんで、キラキラ光る水面を見つめていた。
「はあ・・・。」
ソウヤは深いため息をつくと、悲しそうな顔になった。
「やっぱりまだ水が怖かったんだな。」
急に背後から声がした。
ソウヤがびっくりして振り返ると、そこにはソウマが立っていた。
「ほ、ほっといてよ・・・。どうせ僕はかなづちだよ・・・。」
ソウヤは顔をそむけた。
「今は怖いかもしれねえけど、前はお前だって泳げてたんだぜ?」
「でも、あの事故以来体が水を拒絶するんだ・・・。あれから何度も泳ごうとしてけど、体が固まって水に入れないんだよ・・・!」
あの事故とは、ソウヤがまだ人間の世界にいたころ、プールに友達と泳ぎに行っていて、おぼれ死にそうになったことがあったのだ。
原因は、ふざけた友達が間違ってソウヤを押して、何の準備もないまま水の中に落ちてしまったからだった。
それ以来、恐怖心からソウヤは泳げなくなってしまったのだ。
「なるほどな・・・。」
ソウマはソウヤのほうを見つめると、何を思ったのかソウヤを突然抱えあげた。
「ちょ、ちょっとアニキ!いったい何を・・・。」
ソウヤが最後まで言い終わらないうちに、ソウマはソウヤを水の中へ投げ込んだ。
「ゴボガバゴバ・・・!!!」
ソウヤはものすごくびっくりした。
そして必死でもがいて岩場に上がろうとした。
しかしソウマは、ソウヤが上がろうとすると、そのたびにソウヤを抱えあげて海へ投げ飛ばしたのだ。
「(このままじゃ死んじゃう・・・!)」
ソウヤはそう思って必死で泳いだ。
ソウマのいないところに向かって必死で泳ぎ、何とか岩場に上がることができた。
すると、そこにはすでにソウマが立っていた。
「アニキ!!いったい何を考えてるのさ!!もうちょっとでおぼれるところだったじゃないか!!」
ソウヤは激しい怒りをあらわにした。
今にもソウマに飛びかからんばかりの勢いだ。
「ソウヤ、もう一回海に入ってみろ。」
ソウマはソウヤの目をまっすぐ見つめていた。
その目つきは真剣だった。
「なんでもう一回入らなくちゃいけないのさ!!さっきだっておぼれそうに・・・。」
「いいから入れ!!」
ソウマはソウヤの言うことをさえぎって怒鳴った。
その顔からは威圧感があふれていた。
「わ、わかったよ・・・。」
ソウヤは渋々海に入った。
すると・・・。
「あれ・・・?」
なぜか、さっきと感じが少し違った。
そう、水に対する恐怖感が消えていたのだ。
「泳いでみな。」
ソウマの言うとおりにソウヤは泳いでみるた。
すると、さっきまで怖かったのがうそのように上手に泳げるのだ。
岩場に上がると、ソウマは笑顔になっていった。
「ちゃんと泳げるじゃねえか!これでもう大丈夫だな。」
ソウマはいたずらっぽい笑顔を見せた。
そう、ソウマは、ソウヤを海へ投げ込み、必死になることで水への恐怖感を克服させようとしたのだ。
かなりの荒療治だが、この方が手っ取り早く解決できるだろうと思ったのだ。
そしてその作戦は見事に成功した。
ソウヤは、ソウマの笑顔からそれを感じ取った。
「アニキ・・・。」
「ん?」
「ありがとう・・・。」
ソウヤは照れくさそうに礼を言った。
「オレは何もしてねえよ。お前が泳ぐのを少し手伝っただけさ。」
ソウマはにかっと笑った。
そして、二人はみんなのところへ戻ると、一緒に楽しく遊んだ。
「ソウヤのやついったいどうしたんだ?さっきまであんなにむすっとしてたのに・・・。」
ソウイチは何がなんだかわからなかった。
「すきあり~!!」
ソウヤはソウイチに思いっきり水をかけた。
「うおっぷ!てめえ、調子に乗るな!!」
ソウイチも水をかけ返す。
ソウヤはとても楽しそうだった。
「なるほど~、そんないきさつがあったんやな。」
「でも、克服できてよかったわね。」
カメキチもライナも、ソウマから理由を聞いて納得した。
「きっかけさえあれば、恐怖なんて克服できるのさ。思い込みを消してやればな。」
ソウマは、楽しそうに遊ぶソウヤを見て、満足そうな笑みを浮かべていた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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