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アドバンズ物語第六十一話

/アドバンズ物語第六十一話

ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第六十一話 ヨノワールの裏切り!アドバンズ未来世界へ! 後編


洞窟の中へ足を踏み入れたソウイチ達は、ひたすら出口を目指して歩いた。
中はもっと暗く、ほとんどといっていいほど見通しがきかない。
最終進化系の強い敵も多く、今までのダンジョンとは一味も二味も違うものだった。
そして何よりもソウイチ達を悩ませたのは、部屋のいたるとことに仕掛けられている罠だった。
多めに入っていた道具類も、くっつきスイッチやじばくスイッチ、ベトベタスイッチなどのせいであっという間に半分が使えなくなってしまった。

「おいおいマジかよ・・・。あれだけたくさんあったのに、今使えるのがオレン、モモン各二個と、リンゴ一個・・・。」
ソウイチはバッグの中を覗き込んでため息をついた。

「おまけにふういんスイッチで技が使えなくなるし・・・。想像以上に厳しいよ・・・。」
ソウヤも言った。
四人とも一つずつ技が使えなくなり、だいもんじ、十万ボルト、ギガドレイン、たいあたりがそれぞれ封印されてしまっていた。
技を回復できるPPマックスはすでに消費済みで、なすすべもなかった。
拾おうにも、このダンジョンには極端なほど道具がない。
やはりこれも星の停止の影響だろうか。

「早いうちにここから・・・。!!ソウヤ!!危ない!!」
突然モリゾーが叫んだ。
ソウヤが振り返ると、イワークのしっぽが襲い掛かってくるところだった。
とっさにソウヤはしゃがんだが、イワークは地面ごとソウヤをなぎ払った。

「うわあああああああ!!!」
ソウヤはそのまま壁にたたきつけられてしまった。
すさまじい破壊力だ。

「そ、ソウヤ!!」
ゴロスケはあわててソウヤに駆け寄ろうとしたが、急に体が言うことをきかなくなった。
なぜなら、ゴロスケの体は中に浮かんでいたのだ。
何事かと思って見ると、ブーピッグがサイコキネシスでゴロスケを浮かせていたのだ。
ブーピッグは、ゴロスケをソウイチのほうへすっ飛ばし、二人もろとも岩壁にたたきつけた。

「ゴロスケ!ソウイチ!」
モリゾーが二人のほうを振り返った瞬間、今度はエアームドによるはがねのつばさがクリーンヒット。
あっという間に岩壁にたたきつけられた。
やはり敵のレベルは尋常ではない。

「うう・・・。くそお・・・!」
ゴロスケはよろめきながら立ち上がった。
ほかのみんなは打ち所が悪かったのか、なかなか立ち上がれずにいる。
そこへ容赦なくイワークのアイアンテールが襲い掛かり、ゴロスケを弾き飛ばす。

「野郎!!やりやがったな!!」
ソウイチは猛ダッシュすると、ジャンプしてイワークの頭にばくれつパンチを浴びせた。
イワークはそのまま体勢を崩して横倒しになったが、まだまだ体力は残っていた。
効果抜群の技を打ち込んでも、一発で倒せるほどの相手ではない。
そこへ、今度はモリゾーがタネマシンガンを打ち込んでイワークの視界を奪い、ゴロスケのれいとうビームと、ソウヤのアイアンテールで一気に畳み掛けた。
さすがにこれには参ったのか、イワークはうめき声をあげて動かなくなった。

「よっしゃあ!」
ソウイチはその場でガッツポーズをした。

「そんなことやってる場合じゃないよ!ほら、くるよ!」
ソウヤはソウイチに向って叫んだ。
今度はエアームドがエアスラッシュを放ってくるところだった。
空気の刃が音を立てて襲い掛かり、地面に数本の亀裂を作った。
少々かすったものの、たいしたダメージには至らなかった。

「いつまでもやられてると思ったら大間違いだよ!」
ソウヤはいつの間にかエアームドの背中に飛び乗っており、最大パワーでかみなりをお見舞いした。
ひこうタイプにはこたえたのか、エアームドはソウヤを乗せたまま突き出した岩に衝突し、くちばしが突き刺さったまま伸びていた。
ソウヤはぶつかる直前で飛び降りなんともなかった。
残るは厄介なサイコキネシスを使うブーピッグのみ。

「よ~し!後一匹!」

「油断すんなよ!」
最後とはいえ気の抜けない相手だ。
みんなはつかまらないように距離をとりつつ、交互に技を当てる。
だが、向こうも黙ってはいない。
あやしいひかりを使い、ソウイチとゴロスケを混乱させる。

「ほにゃ~・・・。」
混乱した二人はところかまわず技を乱射し、ソウヤとモリゾーはあわててよけた。
さらに混乱しているところへサイコキネシスを使い、二人は上へ下へとたたきつけられる。

「二人を放せ!!」
ソウヤはかみなりを放ったが、ブーピッグはよける気配がない。
ヒットすると思ったそのとき、ブーピッグはもう一方の手でかみなりの軌道を変え、モリゾーのもとへと跳ね返した。

「うわあああああああああ!!!」
モリゾーはかみなりの威力で吹っ飛び地面に転がった。
ソウヤは駆け寄ろうとしたが、ブーピッグはそうはさせなかった。
すぐさまソウヤをサイケこうせんで吹き飛ばし、吹っ飛んだところへサイコキネシスで岩を落とし動けなくした。
モリゾーが起き上がったときには、ほかの三人はとても戦える状態ではなかった。

「どうだ?お前一人じゃとても勝ち目はない。いい加減降参したらどうだ?」
ブーピッグはそう言うと、しねんのずつきでモリゾーを壁際まで追いやった。
残りの体力はわずか、あと2~3回技を食らえば確実に全滅してしまう。

「冗談じゃない・・・。どれだけピンチに追いやられたとしても・・・、オイラは最後まで勝負を捨てない!」
モリゾーはふらつきながらも立ち上がった。
その目は、ブーピッグを真っ向から捉えていた。

「なにい!?そんなぼろぼろの体で、まだ立ち上がれるのか!?」
ブーピッグはかなり驚いていた。
そして、モリゾーの体の周りに、どこからともなく緑の木の葉が現れ、モリゾーの周りをぐるぐると回り始めた。

「オイラは、お前には絶対に負けない!!いけえ、リーフストーーーーム!!!」
木の葉は回転速度を増し、一斉にブーピッグに襲い掛かった。
ブーピッグはサイコキネシスで回避しようとしたが、木の葉の数はブーピッグの制御できる数を上回っていた。

「くそ!!コントロールが・・・!!ぎゃああああああああああああ!!!」
ブーピッグは葉の嵐に飲み込まれ、回転が止まるころには力尽きていた。

「か、勝った・・・。」
モリゾーは急に力が抜けてその場に座り込んだ。

「ほにゃらかほ・・・。・・・ん?」

「あれ・・・?」
ソウイチとゴロスケははたと動きを止めた。
こんらんがようやく解けたのだ。

「オレ、今まで何やってたんだ・・・?」

「あ!モリゾー!!」
二人はモリゾーのそばに駆け寄った。

「モリゾー!大丈夫?」
ゴロスケは心配そうに言った。

「うん。ブーピッグはやっつけたから心配いらないよ。」
モリゾーは倒れたブーピッグを指差した。

「すげえな~・・・。あの念力野郎を倒すなんて・・・。」
ソウイチはうなった。

「ちょっと~!!早く僕を助けてよ~!!」
三人が声のするほうを見ると、ソウヤが必死で岩のしたから這い出ようとしていた。
みんなはあわてて岩をどかすのを手伝い、ソウヤは何とか脱出できた。
ソウヤはみんなにぶつぶつ文句を言ったが、モリゾーがなだめて何とか怒りを鎮めた。

「とりあえず、次にいつ敵が出てくるかわかんねえ。今のうちに回復しておこうぜ。」
ソウイチはオレンを四つに分けるとみんなに配った。
最初から全回復してしまうと、次に必要なときが来たときが大変だからだ。
そしてみんなは、いたるところに仕掛けてあるわなや、威力の高い技を使うポケモンに悪戦苦闘しながらようやく洞窟を抜けることができた。

「はあ・・・、はあ・・・。やっと抜けたみたいだね・・・。」
モリゾーはあえぎながら言った。

「だいぶヤミラミたちを引き離したかな・・・?」
ソウヤは後ろを振り返った。
今のところはまだ追ってきていないようだった。

「ううう・・・。」

「ゴロスケ、大丈夫か?」
ソウイチはゴロスケに聞いた。

「う、うん・・・。」

「まだ大丈夫じゃねえな。しばらく休んでろよ。」
ソウイチは声の調子で、ゴロスケがまだ本調子でないことがわかった。
というのも、ダンジョンを抜ける直前、ゴロスケはうっかりどくばりスイッチ踏んでしまい、どく状態になっていたのだ。
モモンを食べて毒はなくなったものの、気分のほうがよくなるまでにはまだ時間がかかった。
それで、ここまでソウイチが背負ってきたというわけだ。

「よ~し、ちょっとこの辺で休もうぜ。」
ソウイチはみんなに言った。

「そうだね・・・。」
みんなはその場にぺたんと腰を下ろした。
結構疲れがたまっているようだ。
ソウイチもゴロスケを寝かせると、その場に腰を下ろして体を伸ばした。

「あ!見て!あそこに水があるよ!」
突然モリゾーが叫んだ。
そのほうを見ると、確かに滝のような部分から水が流れ出ていた。
ちょうどのども渇いていたので、みんなは水を飲もうと滝に近づいた。
しかし、その滝にはどこか違和感が感じられた。

「あ、あれ・・・?この滝、よく見ると水の流れが止まってる・・・。」
ソウヤは言った。

「ほんとだ・・・。なんだか妙な感じだね・・・。水しぶきも跳ねたまま固まってるし・・・。」
止まった水を触ってゴロスケも言った。

「やっぱりリーフの言うとおり、未来では時が止まってるのかな・・・。」
モリゾーはつぶやいた。

「ヨノワールさんは、何で僕達を連れこんだんだろう・・・。あんなに親切だったヨノワールさんが・・・。」
ゴロスケは疑問を口にした。

「僕、もう何を信じていいのかわかんないよ・・・。せめて、真実を解く手がかりがあれば・・・。」
ソウヤはすごく悲しそうな顔になった。
尊敬していたヨノワールにあんなことをされれば、傷つくのも当然だろう。
だが、悪人は悪人、いまさらそんなことをぼやいてもしょうがないとソウイチは思っていた。

「そうだ!ソウイチ、真実を突き止める方法があるよ!」
モリゾーは唐突に大きな声を出した。

「へ・・・?あ、そう言うことか!」
ソウイチはぽんと手を打った。
ソウヤとゴロスケは何のことかさっぱりだ。

「ほら!じくうのさけびだよ!この水しぶきに触れば何か見えるかもしれないよ?」

「ああ!そうか!」
モリゾーの言うことを聞いて二人も納得したようだ。

「のんびりしてるとヤミラミ達が来ちゃうよ。早くやろう!」
モリゾーはソウイチをせかした。
ソウイチは水しぶきに触れてみたが、いつものようなめまいがくる気配はなかった。

「だめだ・・・。何にも見えねえ・・・。」
ソウイチは落胆した。

「だめか~・・・。」
みんなもしょんぼりした。

「残念だな~・・・。少しでも何かわかることがあれば安心できたんだけど・・・。」

「結局何もわからないままか~・・・。」
ソウヤとゴロスケはかなり落ち込んでいた。

「それより、急がねえとあいつらがおいついてくるぞ!早く行こうぜ!」
ソウイチは思い出したように言った。

「ちょ、ちょっと待って!その前に道具を整理しないとやられちゃうよ!」
ソウヤは駆け出そうとするソウイチを呼び止めた。
ちょうど、滝の横にガルーラ像があるのでいろいろそろえておこうというのだ。
使えなくなった道具をいろいろ処分し、さっきみたいなことにならないように、最初より多めに道具を入れておくことにした。
そしてみんなはその場を後にし、くらやみのおかへと足を踏み入れていった。

そこは文字通り真っ暗で、ゴーストタイプのポケモンが中心のダンジョンだった。
かくとうとノーマル技は使えないので、個人の得意とする技を中心に攻略していった。
わなのほうは相変わらずで、多少の見分けはつくもののまったく引っかからないというわけではなかった。
それでも、さっきのダンジョンよりは落ちている道具の数が多いため、ねばついたりベトベタ化してもあまり影響はなかった。
それよりもっともやっかいなのが、ゴース系列のポケモンだった。
のろい、うらみ、ゆめくい、みちづれなど、状態異常系を得意とするからだ。
そしてソウイチ達も、そのゴース系列三匹に手を焼いていた。

「ウケケケケケケケ!!」

「くっそお!!」
ソウイチはゲンガーを相手に戦っていたが、のろいをかけられどんどんと体力が減っていた。
オレンを食べても一時しのぎで、すぐさま体力が0に近づいてしまう。

「なんでだよ!?オレンを食べてもなんで体力が回復しねえんだ!!」
のろいは相手を倒さない限り効果が持続してしまうのだ。
普通だとボールに戻すことで効果がなくなるが、ここではそんなものはない。

「オレを倒す前に、お前の体がいつまで持つかな?ケケケケケ!!」
ゲンガーはそういいながらシャドーボールを放ってきた。
ソウイチはフレイムボールで対抗し、相殺するが、のろいのせいかいつもより技に切れがない。
そしてソウヤとモリゾーは、すり抜けられることを武器にしたゴーストを相手にしていた。
技を放ったと思うと壁に逃げ込まれ回避されてしまい、姿を探していると背後から技を当てられてしまい手を焼いていたのだ。

「今度はどこだ!?」

「気をつけて!ソウヤ!」
二人はお互いに背中合わせになった。
ゴース系列は姿を消すことも可能なので、本当に油断ができない。
神経を研ぎ澄ませて相手の出方をうかがう。

「ウヒヒヒヒ・・・。ふいうち・・・。」
ゴースは二人の頭上に現れ、一気に急降下した。
頭上から来るとは考えていなかった二人はよけられるはずもなく、頭を殴られて地面に突っ伏してしまった。

「さいみんじゅつ・・・。あなたはだんだんねむ~くな~る・・・。ねむ~くな~る・・・。」
ゴーストは二人の真正面からさいみんじゅつをかけた。
二人は必死で意識を奮い起こしたが、やはり眠気をこらえることができずに寝てしまった。

「これで仕上げさ・・・。ゆめくい!!」
ゴーストの目が光った瞬間、二人は急にうめき声をあげ始めた。
ゆめくいのせいでダメージを受けているのだ。
ゴーストはその分体力を回復していき、見る見る元気を取り戻していった。
そしてゴロスケは、空中に浮かんでなかなか狙いの定まらないゴースと戦っていた。

「それええええ!!」
ゴロスケはれいとうビームでゴースの動きを封じようと悪戦苦闘していた。
ゴースは軽々とゴロスケの技をかわし、ナイトヘッドでゴロスケを吹き飛ばした。
ゴロスケは体勢を立て直し、すかさずみずでっぽうで攻撃する。

「無駄無駄!お前はオレには勝てないよ!」
ゴースは余裕の表情でひょいひょいっとみずでっぽうをよける。
そして今度は、なんとだいばくはつで捨て身の攻撃に出た。
ゴロスケは爆風に巻き込まれてかなりの距離を吹き飛ばされた。
立ち上がろうとするが、落下したショックで前足をいためたのか動作がぎこちない。

「ううう・・・。まさかだいばくはつするなんて・・・。」
ゴロスケの目線の先には、黒焦げになって目を回しているゴースが倒れていた。
大ダメージを負ったものの、これで残る敵は二人、ゴロスケは痛む体に鞭打ってソウヤとモリゾーのもとへ走った。
ソウヤはすでに目覚めていたが、ゆめくいによるダメージは大きく、すでに体はぼろぼろだった。
ゴーストはシャドーパンチやあくのはどうで一気に畳み掛けるが、ソウヤは攻撃するよりもよけることだけで精一杯だった。

「ウヒヒヒヒ・・・。いつまで逃げているつもりだ・・・?」
ゴーストは手を緩めることなく技を連射する。

「はあ・・・、はあ・・・。これじゃきりがないよ・・・。」
ソウヤはゴーストを見て言った。

「ふいうち!」

「!?うわあああああああ!!」
ソウヤはつい気が緩んでしまい、ゴーストの攻撃を背後から受けてしまった。
立ち上がろうとするが、腕にまったく力が入らない。

「さあ・・・。これで最後だ・・・!!」
ゴーストは腕の中でシャドーボールを増殖させ、通常の5倍ほどの大きさにまでしてしまった。
ソウヤに向って放たれようとしたそのとき、ゴーストの頭上から滝のように水が落ちてきた。

「ぐおおおお!!な、なんだ!?」
ゴーストはびっくりしてシャドーボールを引っ込めた。

「お前の相手はソウヤとモリゾーだけじゃないぞ!!いけえ!れいとうビーーーーーム!!!」
ゴロスケは水がゴーストにかかる瞬間を見計らってれいとうビームを発射した。
ゴーストは水に気をとられてれいとうビームに気付かず、そのまま氷漬けになってしまった。

「ソウヤ!いまのうちだよ!!」

「ありがとう!ゴロスケ!!」
ソウヤは力を振り絞って立ち上がり、渾身の力でアイアンテールをぶちかました。
氷は粉々に砕け散り、あたり一面を白い冷気が包んだ。
だんだんと視界がはっきりしてくると、氷のあった場所には気を失ったゴーストが突っ伏していた。

「や、やった・・・!ついに倒したぞ!」
すると、敵を倒して安心したのか、ソウヤはその場に座り込んでしまった。

「やったね、ソウヤ!」
ゴロスケはソウヤのそばに駆け寄った。
ソウヤは親指を立ててにっと笑った。

「そうだ!モリゾーを起こさなくちゃ!ソウヤはモリゾーを起こして!僕はソウイチの援護に回るから!」

「わかった!気をつけてね!」
そして、ソウヤはモリゾーを起こしに、ゴロスケはソウイチの援護に行った。
そのころソウイチは、めもうつろ、息遣いも荒い倒れる寸前の状況で踏ん張っていた。
のろいの効果で体力が限界まで削られ、本当なら倒れてもいいはずなのだが、かろうじて気力で戦っているのだ。

「ぜえ・・・、ぜえ・・・。」

「ケケケケケ!しぶとい野郎だ!これでもくらえ!!」
ゲンガーは鬼のごとくギガインパクトを放った。

「ぐああああああああああ!!!」
ソウイチは強力な光線で吹き飛ばされ、岩にめり込んで動けなくなってしまった。

「ケケケケケ!こいつはいいや!もっともっといたぶってやるぜ!」
ゲンガーはわざとシャドーボールやシャドーパンチの威力を弱めて、気絶しない程度にソウイチを傷つけた。
ソウイチは岩にめり込んだ挙句、反撃する体力も残っていなかったので、ゲンガーのなすままになっていた。
しばらくそうやっていると、ゲンガーも飽きたのかいよいよとどめをさそうとした。

「これで終わりだ!!」
ゲンガーがギガインパクトを放とうとしたそのとき、ゲンガーの背後からみずてっぼうが飛んできた。
振り返ると、ゴロスケが怒りに満ちた目でゲンガーをにらんでいた。
ソウイチは痛めつけられ、相当頭にきていたのだ。

「ほう。どうやらあの二匹を倒したようだな。だが、そのぼろぼろの体でオレを倒せるか?」
ゲンガーは余裕の笑みを浮かべていた。

「たとえぼろぼろでも、仲間を傷つけるやつは絶対に許さない!!お前は、僕が倒してやる!!」
ゴロスケは激怒していたが、恐ろしく冷静に物事を考えていた。
そして、ゴロスケの周辺には水色のオーラが漂っていた。
そのオーラはゲンガーの目にもはっきりと見えた。

「な、なんだ!?」
ゲンガーの顔から笑みが消え、真剣な顔つきになった。

「ソウイチは、僕が守る!!いっけえええええええ!!!」
ゴロスケはみずでっぽうを放った。
しかしそのみずでっぽうはさっきとは桁違いの威力を発揮していた。
そう、みずでっぽうがハイドロポンプへとグレードアップしたのだ。

「うぐおおおおおおおおお!!」
ゲンガーは水圧で一気に壁際に追いやられたが、かろうじて踏みとどまっている。
ハイドロポンプとはいえ、ゴロスケの体力の消耗が激しいからか、技に切れがない。

「こ、この程度じゃオレは倒せねえぜ・・・!ケケケケケ・・・!!」
ゲンガーは再びニヤニヤした笑いを浮かべた。
予想より威力が低いことがわかったのだろう。

「これで終わりだと思ったら大間違いだ!!」

「オイラ達のことを忘れてもらっちゃ困るよ!!」

「な、なにい!?」
ゲンガーは目を見張った。
ゴロスケの両隣には、モリゾーとソウヤがそれぞれ待機していた。

「これが僕達の・・・。」

「本当の力だ!!」
ソウヤは十万ボルトを、モリゾーはリーフストームをそれぞれハイドロポンプに混ぜ込んだ。
三つの技が合わさり、ゲンガーに襲いかかった。

「こんな・・・、こんなことが・・・!!ぎゃああああああああ!!!」
ゲンガーは水に飲み込まれ、姿は掻き消えた。
技が終わると、ゲンガーは生気を失ったようにその場に倒れこんだ。

「はあ・・・、はあ・・・。やった・・・。」
三人はお互いに笑顔になった。
協力して強敵を倒すことができたからだ。
そしてみんなはソウイチを岩から助け出し、オレンの実とリンゴを食べてすっかり元気になった。

「みんな、助けてくれてありがとな。」
ソウイチは素直に礼を言った。

「いいんだよ。僕達は仲間でしょ?」

「そうそう。助け合うのは当然だよ。」
ソウヤとゴロスケはソウイチに笑いかけた。

「よ~し!この調子で一気に抜けるぜ!!」

「おお~!!」
みんなは元気よくソウイチに応え、出口を目指して走り出した。
それから数時間後、みんなはようやくくらやみのおかを抜けることができた。

「はあ・・・、はあ・・・。だいぶ登ってきたみたいだな・・・。」
ソウイチは後ろを振り返ってつぶやいた。

「そうだね。このまま追いつかれないようにがんばらなきゃ。」
モリゾーはそう言うと、ふと山とは反対側を見た。

「うわあ!見てよみんな!」
みんなはモリゾーの言うほうを見た。
そこは切り通しになっており、下には廃墟と化した町並みが広がっていた。
高速道路、鉄道、市街地、すべてにおいて生命の息吹が感じられなかった。
相変わらず真っ暗で、細かい部分がどうなっているのかはほとんどわからない。
中心付近にはところどころ明かりが集まっているが、中には処刑場も含まれているのかもしれない。

「ねえ、ソウイチ・・・。」
ソウヤはぽつりと言った。

「ヨノワールさんは今まで僕達を助けてくれたし、いろいろなことを教えてくれた・・・。だから、僕はヨノワールさんのことをすごく尊敬してたんだ。」
ソウヤは心の中に秘めていた思いを打ち明けた。

「世の中のことをすべて知っているなんて、本当にすごいと思った。僕も、そんな風になれたらいいって思ってたんだ・・・。」
ソウヤはソウイチのほうを向いた。
だが、ソウイチはヨノワールをはなから疑っていたので、どう答えていいかわからなかった。

「でも、ヨノワールさんは僕達のことをだましてたのかな・・・。あんなことするなんて、今でも信じられないよ・・・。」
ソウヤの顔は悲しみに満ちていた。
信じているものに裏切られるのは、それほどつらいことなのだ。

「僕・・・、もう何が本当で何が間違ってるのかわかんないよ・・・。頭の中がぐちゃぐちゃだよ・・・。」

「そ、ソウヤ・・・。」
ソウイチは言葉を失った。
ソウヤがそんなことを言ったのをはじめて聞いたからだ。
よほど思いつめていたのだろう。

「僕達・・・、どうすればいいんだろう・・・。どこまで逃げればいいんだろう・・・。」
今度はゴロスケが悲しそうな顔になった。

「元の世界に帰れるのかな・・・。」
ゴロスケはそこで沈黙した。
しばらく辺りを静寂が包んだ。

「ギルドのみんなや、ソウマ達はどうしてるんだろう・・・。僕達がいなくなって、心配してるのかな・・・。」

「みんな、元気にしてるのかな・・・。」
ソウイチとモリゾーが二人を見ると、二人の目にはきらきら光るものが浮かんでいた。

「うう・・・。みんなに・・・、アニキ達に会いたいよ・・・。」

「帰りたいよ・・・。元の世界に帰りたいよ・・・!うう・・・。」
二人はとうとう泣き出してしまった。
無理もない。これまでに起こったことは、二人はおろか、みんなの想像を超えることばかりなのだから。
不安でいっぱいで、裏切られた悲しさでいっぱいで、二人の心は張り裂けそうだった。
ソウイチとモリゾーは、なすすべもなく、二人が涙を流す様子を見ているしかなかった。
その二人の顔も、悲痛な色で満ちていた。

「(ソウヤ・・・、ゴロスケ・・・。相当つらかったんだな・・・。オレはあいつのこと信じてなかったけど、信じてるやつからしたら、すごくショックなんだよな・・・。)」

「(オイラも、正直不安でいっぱいだよ・・・。今だって、正直泣きたい気持ちだし・・・。でも、ここで泣いちゃいけない・・・!オイラまで泣いたら、余計に二人を気落ちさせるだけだ!)」
ソウイチとモリゾーはヨノワールのことを信じてはいなかったが、やはり未来の世界でこれからのことに対する不安がかなり大きかったのだ。
しかし、二人は自分を奮い立たせ、何とか本当の気持ちを心の奥に押しやった。

「(今がんばらねえと、ヤミラミたちにつかまっちまう。)」

「(こんなときだからこそ、オイラが・・・。)」

「(オレが・・・。)」

「(しっかりしなくっちゃ!)」
ふと、二人はお互いの顔を見た。
そこで、お互いに同じことを思っていることがわかった。
二人はソウヤとゴロスケに聞こえないよう小声で話し始めた。

「なんとかして、あいつらを元気付けねえと・・・。」

「そうだね・・・。でも、どうやって?」

「普通にやったら余計落ち込むだけだ。なにか、あいつらを立ち直らせるようなことは・・・。」
ソウイチは目を閉じてしばらく考えた。
そして、あることを思いついた。
ソウイチは二人に近づくと、肩に手を置いた。

「ソウイチ・・・?」
二人は座ったままソウイチを見上げた。

「行くぞ。いつまでもここで落ち込んでたってしょうがねえよ。それよりは、行動あるのみだ。」
ソウイチは少し笑顔を見せた。

「行動あるのみって・・・、これからどうすればいいのさ・・・。」
ソウヤもゴロスケもはすっかり気分が沈みこんでいた。

「やることは一つしかねえよ。今から、リーフを追いかけるんだ!」

「えええええ!?」
ソウヤとゴロスケは思わず立ち上がった。
モリゾーでさえも驚いたような顔をしていた。

「ど、どうして!?あいつは悪者だよ!?」
ゴロスケは信じられないという風にソウイチを見た。

「あいつに、聞きたいことや知りたいことが山ほどあるんだよ。あいつに会って、何が真実なのかはっきりさせる必要がある。」
ソウイチの目は真剣そのものだった。

「真実?」

「いまさらあいつがうそをつくとは考えにくい。唯一話を聞けるのはあいつしかいねえ。それに、あいつだったら・・・。」

「そうか!リーフは未来から僕達の世界に来たんだし、僕達の世界へ行く方法も知ってるかも!」
ソウヤはソウイチの話を聞いてぽんと手をたたいた。

「で、でも!!あいつはときのはぐるまを盗むようなやつなんだよ!?そんなやつを信じろって・・・、無理に決まってるじゃないか!!」
ゴロスケはやはり、リーフを受け入れることができないようだ。

「それしか方法はねえんだ。もう善人だ悪人だ言ってる場合じゃねえんだ!」
ソウイチはゴロスケの肩をつかんだ。

「そういう・・・、そういうソウイチはどうなのさ?リーフのこと、信じてるの?」
ゴロスケはソウイチの腕を振り払って言った。
ソウイチはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

「オレは、信じてもいいと思う。なんとなくだけど、あいつが悪人のような気がしねえ。それに、モリゾーの言うことも信じてやりたい。」

「え?」
モリゾーは唐突に自分の名前が出たのでぽかんとした。

「親父のこと一番知ってるモリゾーが、あいつが親父かもしれないって言ってるんだ。だから、オレはあいつを信じる。」

「ソウイチ・・・。」
モリゾーは、ソウイチにはっきりリーフを信じると言われてうれしかった。
自分も、やはり父親である可能性を捨てきれず、リーフのことを信じたいと思っていた。
そして今、ソウイチに言われてはっきり意志が固まった。

「オイラも、リーフのことを信じる。リーフに会って、もう一度話をするんだ。」
モリゾーの目に、もう迷いはなかった。

「僕は・・・、僕は嫌だ!あんなやつを信用するなんて・・・、絶対に!!」
ゴロスケはまだそんなことを言っていた。

「バカ野郎!!いつまでぐだぐだ言ってやがんだ!!そうするしか方法がねえって何度・・・。」
ソウイチは切れてゴロスケを怒鳴りつけたが、その後のゴロスケの言葉を聞いて怒りが収まった。

「嫌だけど・・・、今は、信用するしかないのかもしれない・・・。」

「ゴロスケ・・・。」
ソウヤはゴロスケの顔を見た。

「ヨノワールさんはなぜか僕らを狙ってるし、そうなると、この世界で頼れるのはリーフぐらいだもんね・・・。今は、リーフに頼るしか・・・、方法がないよね・・・。」
ゴロスケもわかっていたのだ。
だが、心のどこかで認めたくない自分がいた。
そのせいで反発していたのだ。

「わかったよ、ソウイチ。リーフを追いかけよう!リーフに会って、元の世界に帰る方法を聞こう!」

「よし!それでこそゴロスケだ!で、ソウヤはどうするんだ?」
ソウイチはゴロスケの肩をバンバンたたくと、不意にソウヤのほうをむいた。

「行かないわけないでしょ。もちろん僕も行くよ。」
ソウヤの迷いも吹っ切れたようだ。

「よっしゃあ!それじゃ早いとこ追いかけようぜ!」
ソウイチは先頭に立って走り出した。
みんなもそれに続く。

「ソウイチ、モリゾー、ありがとう。」
ソウヤとゴロスケは二人に礼を言った。

「僕が元気ないから、心配してくれたんだよね。二人だって不安なはずなのに・・・。ごめんね・・・。」
ソウヤはすまなそうに謝った。

「一番大切な友達が近くにいるのに、僕達は勝手に悩んで、勝手に暗い気持ちになって・・・。本当はわかってたはずなのに・・・。」
ゴロスケもすごく申し訳なさそうな顔だ。

「でも、もうあきらめたりしないよ。ソウイチも、モリゾーも、ソウヤも、みんながいてくれるから勇気がわいてくる。」

「もう大丈夫だよ。一緒にがんばろう!必ず、必ずもとの世界に帰ろうね!」
ゴロスケとソウヤは二人に向かって言った。

「ああ!もちろんだぜ!」

「必ず一緒に帰ろうね!」
ソウイチはソウヤの手を、モリゾーはゴロスケの手をしっかり握った。
そして、みんなはリーフに追いつくべく、ずっと続いている山道を走り出した。 


アドバンズ物語第六十二話



ここまで読んでくださってありがとうございました。
誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ん?なんだ、ただの”神”か
    ――とある名無しの水平思考 ? 2011-05-14 (土) 00:20:19
  • コメントありがとうございます。
    か、神とな!?いえいえ、自分はとても神に及ぶ存在ではないですよ。(笑
    ですが、負けるつもりもありませんので、さらに磨きをかけて一歩でもその領域に近づいていきたいと思います。
    どうぞよろしくです!
    ――火車風 2011-05-14 (土) 00:59:31
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Last-modified: 2011-05-12 (木) 00:00:00
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