ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第五十二話 探検隊大集合! 訓練という名のバトル大会! 中編
北側フィールドでは、試合を終えたみんなが二人のバトルを観戦しようと待ち構えていた。
しかしいつまでたっても二人が現れないので、観客も審判のカクレオンもやきもきしていた。
開始時刻まで30秒を切って、ようやくソウイチとソウヤが会場に滑り込んできた。
仲間達はほっと胸をなでおろしたが、全力で走ってきたせいか、二人とも息が上がっていた。
「あいつら大丈夫なんかいな・・・?」
「いったい今まで何やってたんだろう・・・。」
胸をなでおろしたのもつかの間、また不安の種が芽生え始めた。
そして笛が鳴って、いよいよ兄弟対決の幕開けとなった。
「さあかかってこい!」
「本気で行くよ!」
二人の目は真剣そのもの、これからどういうバトルが展開するのだろうか。
両者動くタイミングを見計らっていたが、ほぼ同時に動き出し、ソウイチはばくれつパンチ、ソウヤはアイアンテールで攻撃した。
しっぽと腕が激しくぶつかり、二人はしばらくその場にとどまった。
ソウイチはソウヤより若干早く身を引くと、かえんほうしゃを球状にし始めた。
ソウヤはそこを狙って、でんこうせっかでソウイチにどんどんダメージを与える。
ソウイチはじっと攻撃に耐え、球がある程度の大きさになるのを待った。
そして、ソウヤがでんこうせっかで突っ込んできたところを狙ってフレイムボールを放った。
ソウヤはそのままラインぎりぎりまで押されたが、球の勢いから抜け出し、何とかフィールドアウトしなくてすんだ。
「はあ・・・、はあ・・・。」
しかし、球状にしたかえんほうしゃは威力が圧縮されて高かったのか、ソウヤは結構苦しそうだ。
「どうだ?降参するか?」
ソウイチは余裕たっぷりだ。
「ま・・・、まだまだ負けるもんか!!」
ソウヤは十万ボルトを放つと、連続してソウイチの周りにでんげきを放った。
しかもその間隔はほとんど皆無、気がつくと、ソウヤの体からは無数のでんげきがほとばしっていた。
でんきショックからほうでんへ技が進化したようだ。
「こ、ここにきて技覚えるのかよ!!」
ソウイチはあわててでんげきをよけまくったが、全部をすり抜けられるはずもなく、そのうちの一本に当たり真っ黒焦げになった。
「そっちこそ降参したほうがいいんじゃないの?」
今度はソウヤが余裕ぶる番だった。
「冗談だろ?これぐらいでへたばってられるかっての!」
そして、お互いにたいあたりとでんこうせっかで勝負をかけたが・・・。
ピィィィィィィィ!!!
あっという間に五分たってしまい、勝負はそこで終了となった。
ところが、いざ判定を下そうとすると、どっちが勝ったのか意見が対立してしまった。
話し合いは収まる様子がなく、議論がしばらく続いた。
それほど二人の勝負は伯仲していたということだろう。
「いったいいつまでもめてんだ?」
「どっちが勝ったんだろう・・・。」
二人ともいらいらしながら判定を待っていた。
そして観客席からは催促の野次が次々と飛んだ。
会場のイライラが絶頂に達したそのとき・・・。
「お待たせしました!判定結果が出たのでお知らせします!」
カクレオンのアナウンスが聞こえてきた。
ようやくはっきりしたようだ。
「判定の結果、フィールドアウトになりかけたソウヤ選手を負けとし、ソウイチ選手を勝者とします!」
会場はいっせいにどよめき、ソウイチの勝ちを祝うものや、ソウヤの負けに納得がいかずブーイングするものいた。
「おいおい!それは明らかに関係ねえだろ!ぎりぎりで外に出なかったんだ!今のはどう考えたって引き分けだろ!それか、ほうでんを避けきれなかったオレの負けだ!」
ソウイチはカクレオンに詰め寄った。
カクレオンはどうしていいか分からずうろたえた。
「そんなことないよ。ソウイチのほうが、僕より強かったから僕は負けたんだ。」
ソウヤは穏やかにソウイチに言った。
しかし、その声は力強く、会場は静まり返った。
「だけど、オレは納得がいかねえ!!明らかにお前のほうが技の威力は強かった・・・。それなのに・・・。」
「ううん、そんなことないよ。それに、ソウイチはシリウスと戦って絶対に勝つって約束したんでしょ?だったらなおさら先に進まなきゃ。僕のことはいいからさ。」
ソウヤは笑顔でソウイチの肩に手を置いた。
「ソウヤ・・・。」
ソウイチはしばらく、ソウヤの顔を見つめていたが、やがて自分のてを差し出した。
「ありがとな。いい勝負だったぜ。次はとことんバトルしようぜ!」
ソウイチはにっと笑った。
「もちろん!今度こそ、ソウイチに絶対勝ってみせるさ!」
二人は、お互いの健闘をたたえて握手した。
会場はいっせいに沸きあがり、二人を心から賞賛した。
ソウヤも多少は悔しかったものの、全力でバトルできて楽しかったからあんなことを言ったのだ。
結果には後悔していないから言えたのだ。
「二人ともお疲れ様!すごくいいバトルだったよ!」
モリゾーとゴロスケは早速二人をねぎらった。
「お前たちもずいぶん強くなったんだな。さすがオレの弟だ。」
ソウマも二人をほめた。
二人は照れて頭をかいた。
「あれ?そういえば誰か忘れてるような・・・。」
「誰かって誰や?」
カメキチはライナに聞いた。
しかしその答えはすぐに判明した。
「お前らな~・・・!!」
みんなが恐る恐る振り返ると、怒りのあまり電気をビリビリ流しているシリウスが立っていた。
「あ・・・、いや・・・、その・・・。」
「てめえら!!ソウイチとソウヤばっかり応援してオレはほったらかしかよ!!」
そう、なぜかシリウスのほうには誰も応援に行っていなかったのだ。
どうもソウイチとソウヤの兄弟対決というインパクトが強すぎて忘れていたようだ。
「あ~・・・、ごめん・・・。すっかり忘れてて・・・。」
「すっかりじゃねえよ!!しびれさすぞこらあ!!!」
みんなはひたすら謝ったが、シリウスの怒りはおさまる様子を見せない。
「まあまあ・・・。それより、試合のほうは勝ったのか?」
ソウマは怒りをそらそうと話題を変えた。
「勝ったに決まってんだろうが!!応援があろうがなかろうが勝つことに変わりはねえよ!!」
シリウスはまだ怒っていた。
「なら、勝ったんだからいいじゃねえか。」
「は?」
「あろうがなかろうが勝てるんだから、別にいいだろ?」
「ん、まあ、そういわれてみれば・・・。」
うまくソウイチに丸め込まれたようだ。
と思ったが・・・。
「って!それとこれとは話が別だろうが!!こうなったら全員にかみなり落とすしかねえな・・・!!」
シリウスのでんきはさらに激しくなった。
「あわわわわ・・・。」
「まもなく、第二回戦を開始します。参加選手は所定のフィールドへ集合してください。」
ちょうどいいタイミングで召集のアナウンスが流れた。
「ほ、ほら!早いとこいかねえと失格になるぜ!!」
ソウイチの言葉でみんなは全速力で走り出した。
「あ!こら!!逃げるなあああああ!!」
怒るシリウスを尻目にみんなは会場へ向かった。
そして二回戦がスタート。
Aブロックは、コンVSポニータ戦はコンの優勢勝ち、ソウマVSゴロスケはソウマの判定勝ちだった。
コンはずつきとスピードスターのコンボで、ソウマは柔道などの通常攻撃とバーニングストームで勝利を決めた。
ゴロスケもうずしおとれいとうビームコンボでソウマを閉じ込めるところまではいったものの、バーニングストームで氷をとかされ、蒸発した水分から分離した塩が粉のように降りかかり、目に入ってしまった。
みずでっぽうで目を洗っているうちに、攻撃されてフィールドアウトしてしまったのだ。
「まさかうずしおが海水だったとはな・・・。ごめんな、ゴロスケ・・・。めつぶしするつもりはなかったんだ・・・。」
試合の後、ソウマはゴロスケに謝った。
「気にしなくていいよ。僕だって知らなかったんだし、それに全力で勝負できたからいいよ。やっぱりソウマは強いや!」
ゴロスケは笑いながら言った。
何が起こるかわからないのがバトル、そして、全力を出し切ってこそバトルなのだ。
Bブロックはすでに準々決勝、参加人数が少ないので、予選は一回のみ。
ローチ、チェリー、ミナトは勝ち上がったものの、ルルは負けてしまった。
相手のマグマラシが想像以上に強かったのだ。
年齢ではルルのほうが上だが、このマグマラシはルルより実践で経験をつんでいるようだった。
そしてAブロックの二試合目では大番狂わせが起こっていた。
フレイムはポチエナに圧勝したものの、ライナのほうがかなり苦戦していたのだ。
ライナと戦っているバクフーンはソウマかそれ以上の力がある。
いくら十万ボルトやアイアンテールをはなっても表情一つ変えないのだ。
逆にライナのほうはどんどんと体力が削られていた。
そして極めつけは、バクフーンの放ったソーラービーム。
技の意外性にライナはなすすべもなくフィールドアウト、そのまま気絶してしまった。
「ら、ライナ!!」
ソウマとカメキチは観客席を飛び降りてライナの元へ駆け寄った。
「おいライナ!しっかりしろ!」
「大丈夫か?おい!」
二人はライナをゆすった。
しかし目を覚ますそぶりはない。
「なんちゅ~やつや・・・。ここまで徹底的にやりおって・・・。」
カメキチはバクフーンをにらんだ。
バトルに情け容赦はいらないが、ここまでする必要はないと思ったのだ。
しかし、ソウマの反応は違った。
あのバクフーンに見覚えがあるのだ。
「(あいつ・・・、前にどっかで会わなかったか?)」
その疑問が解決しないうちに、バクフーンは姿を消していた。
二人はライナを観客席の裏側まで運んで介抱した。
みんなが心配そうに見つめる中、ライナはようやく息を吹き返した。
「お、気がついたか!よかった~・・・。」
二人はほっとため息をついた。
「うう・・・。ごめんなさい・・・、負けちゃった・・・。」
ライナは悲しそうに謝った。
「仕方ないわ。ライナもよう頑張ったわ。あのバクフーンは、オレが相手でも結構手え焼きそうやのに。」
カメキチはライナを慰めた。
「また今度勝てばいいのさ。今回は負けたけど、次も負けるってことはないだろ?」
ソウマはライナの目を見ていった。
「そうよね・・・。二人ともありがとう。励ましてくれて。」
ライナはしばらくうつむいていたが、すぐに笑顔になって二人に礼を言った。
「ハハハ。気にすんなや。」
「そうそう。お前はやっぱり笑ってるのが一番いいぜ。」
二人は嬉しそうに言った。
心なしか、二人とも照れて赤くなっていた。
「あれ?そういえば、カメキチってそろそろ試合じゃないの?いかなくて大丈夫?」
ライナはふと思い出したように言った。
「へ・・・?あああ!!!やばっ!忘れとったあああああ!!」
カメキチはあわてて試合会場に駆け出していった。
すっかり自分の試合のことを忘れていたのだ。
「ちょ、ちょっと~!!」
「置いてくなって!!」
ソウマとライナもあわてて後を追いかける。
第三試合はカメキチVSダグトリオ、ドンペイVSリングマだった。
カメキチのほうは、得意のなみのりでダグトリオを翻弄、ダグトリオが掘った穴に水を流し込んでものの2分ほどで勝負がついてしまった。
じめんタイプだから勝てたといえばそれまでだが、誰が見ても、なみのりの威力は高かったと言えるだろう。
ライナにお疲れ様と言われたカメキチはすごく照れまくっていた。
ドンペイのほうは、身長が3倍ほどありそうなリングマ相手に果敢に戦いを挑んでいた。
メタルクローでリングマのきりさくと応戦し、かえんほうしゃで何とかダメージを与えている。
しかし体力の差は歴然、半分ほど過ぎると疲れが見え始め、力で押すリングマに歯が立たなくなっていった。
最後まであきらめずに戦ったものの、結果はリングマの優勢勝ち、結構な大差をつけられてしまった。
「すみません・・・。負けちゃいました・・・。」
ドンペイはうなだれていた。
「気にすんなよ。あのリングマ相手に結構互角の戦いしてたじゃねえか。」
ソウマはドンペイを慰めた。
「負けを気にすることはない。普通ならBブロックで戦うところを、Aブロックに挑戦したんだ。その勇気は本物だ。今は負けても、お前ならそのうち強くなれる。」
フレイムはドンペイの頭をなでた。
それでドンペイも、ようやく踏ん切りをつけることができた。
「へっへっへ~!いよいよオレの時代が来たぜ!」
「な~に言ってんだよ!次のメインはオレの試合だろうが!」
ソウイチとシリウスは試合前に相変わらず小競り合いをしている。
「言っとくけど、オレとぶち当たるまで負けんじゃねえぞ!」
「そっちこそ、フィールドアウトで無様な姿さらすなよ!」
お互いに皮肉ともエールともつかない言葉を残して、二人は早速会場へ向かった。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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