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アドバンズ物語第五十一話

/アドバンズ物語第五十一話

ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第五十一話 探検隊大集合! 訓練という名のバトル大会! 前編


翌朝、ソウイチ達が中央の部屋へ行くと、みんなざわざわとしていた。
妙に落ち着きがない。

「ねえ、いったいどうしたの?」
ゴロスケがヘイガニに聞いた。

「ヘイ、なんでも、合同訓練があるらしいぜ。ヘイヘイ!」

「合同訓練?」
ソウイチ達は首をかしげた。
しかし、ソウマ達は心当たりがあるようだ。

「どうやら今年もやるみたいやな~。」

「ああ。腕を磨くのにはちょうどいい。」
ソウマとカメキチは言葉を交わした。

「なあ、合同訓練って何やるんだ?」
シリウスとソウイチは二人に聞いたが、二人が答えるより先にペラップとプクリンがやってきた。

「え~、みんな静粛に!今日は大事なお知らせがある。」
その一言でみんなは静かになった。

「え~、みんなも知っていると思うが、明日はギルドを挙げて合同訓練を行う!」

「ねえ、合同訓練てなんなの?」
モリゾーがペラップに聞いた。

「ああ。お前たちは確か初めてだったな。合同訓練といっても、その中身はバトルの大会だ。」

「バトルの大会!?」
バトルという言葉を聞いてソウイチとシリウスの顔が輝いた。

「そこでは、ブロックごとのトーナメント戦を行う。15歳以上のものはAブロック、それ以下のものはBブロックで戦ってもらう。なお、Bブロックの中で、Aブロックでチャレンジしたいというものがいれば、Aブロックで参加することができる。ギルドメンバーの全員参加はもちろん、付近の探検隊や一般住民からも参加を受け付ける。各ブロックで優勝したものは、優勝者同士での最終決戦もある。みんな気を抜かないよう、しっかりがんばってほしい。以上だ。なお、BブロックからAブロックへの参加者は今日中に申し出るように。」
そして朝礼は終わった。
しかし、みんなはバトル大会のことで持ちきりで、なかなかその場を動こうとしなかった。

「すげえぜ!よ~し!オレ絶対優勝して見せるぜ!」
ソウイチはものすごく張り切っていた。

「何言ってんだか。優勝するのはオレだろ?」
シリウスはニヤニヤしながらソウイチを見た。

「ま、決勝まで残れたらの話だけどな~。」
ソウイチもニヤニヤしながらシリウスを見るが、次の瞬間にはどっちが勝つかの口げんかが始まった。
本当に子供である。

「モリゾー、僕達もがんばろうね!」

「うん!出るからには勝たないとね!」
ゴロスケとモリゾーもやる気満々だ。

「だけど、組み合わせはどうやって決めるのかな?」
ソウヤはソウマに聞いた。

「組み合わせはほぼくじ引きだな。仲間といきなり当たることもあれば、自分以外に仲間がいない時だってある。」
ソウマは言った。
要するに運しだいなところもあるわけだ。

「そのときになってみないと分からないわけか。まあ、どんなことになっても、オレは勝ち上がってみせるぜ!」
ソウイチは自信満々に言った。

「オレだって勝ち上がるぜ!お前と当たったときは、容赦しねえぜ?」

「こっちも本気でいかせてもらうからそのつもりでな!」
ソウイチとシリウスはお互いに腕を組んだ。
普段は仲間でも、こういう大会ではライバル同士。
そしてソウイチ達は、待機している仲間に参加の意思をきくために交差点に来ていた。
メインメンバーは全員出場なのだが、仲間の参加は自由なのだ。

「つ~わけで、みんなにも大会に参加してほしいんだけど、どうだ?」
ソウイチはみんなの顔を見回しながら聞いた。

「もちろん出ますよ!自分の実力を見極めるいい機会です!」
ローチはうれしそうに言った。

「私も出ます!実戦で自分の弱点を克服できるようにがんばります!」
チェリーもやる気満々だ。
ところが・・・。

「僕は出ませんよ。なんでそんな面倒なことしなくちゃいけないんですか。」
ヌマオはつまらなそうな顔で言った。

「あのなあ・・・。面倒とかそういう問題じゃないだろ!!」
ソウイチは怒った。
毎度毎度こういう理由にはうんざりしているのだ。

「とにかく、僕はそういう騒がしい大会に出るのは嫌です。自由なんだったら、別に出なくてもいいんでしょ?」
ヌマオはソウイチの怒りなど意に介さない様子だ。
マイペースというか、自分勝手というか。

「ああそうかよ!!じゃあ勝手にしな!!」

「勝手にさせてもらいます。」
本当に中の悪い二人だ。
結局、ヌマオ以外は全員参加することが決定した。
ソウイチはなかなか怒りが収まらなかったが、ヌマオのことに関して起こるのも癪だったので、どうにかこうにか気分を落ち着けた。

そのあとで、ソウイチはペラップにブロックの申請に行った。
ペラップは、ソウイチ達四人とドンペイがAブロックに参加すると聞いて驚いた。
過去に15歳以下でAブロックを申請したチームはいくらかあるが、メインメンバー全員がAブロック挑戦というのは前例がなかったからだ。

「大丈夫なのか?ソウイチ達はともかく、ドンペイは無理があるんじゃないのか?」
ペラップは心配そうに聞いた。

「大丈夫です。僕だってしっかり戦えます!先輩やお父さんみたいになるために、常に上のレベルに挑戦して、自分の実力を高めていきたいんです!」
ドンペイは真剣な目つきでペラップに言った。
その決意は立派なものだった。

「わかった。そこまで言うのなら許可しよう。出るからにはしっかり頑張るんだぞ。」
ペラップは願いを聞き入れ、ドンペイを励ました。

「オレ達はともかくって何だよ・・・。」
ソウイチは不満そうにつぶやいた。

「無鉄砲なお前たちならAブロックに参加したいのも納得がいくってことだ。」
ペラップはさらっと言うとそのまま歩き出した。

「んだとお!?もういっぺん言ってみろ!!」
シリウスはかっとなってペラップにつかみかかろうとした。

「落ち着いてください!」
コンは必死でシリウスをおしとどめた。

「見てろよ!絶対優勝してやるからな!!!」
シリウスはペラップの背中に向かって怒鳴った。
ペラップは気にも留めずスタスタといってしまった。

「あのやろう・・・!」
シリウスはまだ怒りが収まらない。

「怒るより目に物見せたほうが早いんじゃねえか?」

「うっせえ!んなことは百も承知だ!!」
ソウイチはお手上げといった感じで首を振った。
こうなったらほっとく以外にあるまい。


そして翌日、近くの林に設けられたバトルフィールドではトーナメントの組み合わせが発表されていた。
参加者は、Aブロックは32人、Bブロックは16人だった。
どうやら定員がちょうどのようだった。
しかし、そのトーナメント表を見てソウイチとソウヤは驚いた。
なんと、ソウイチとソウヤは一回戦で対戦し、順調に勝ち上がれば、モリゾーとコンは準々決勝で対戦、それ以外に、みんな結構仲間と対戦しなくてはならないようだ。

「おいおい・・・、こんなにウチのメンバーと対戦しなきゃいけねえのかよ・・・。」
ソウイチはぼやいた。

「しかもいきなりソウイチだなんて・・・。」
ソウヤも思わずつぶやいた。

「なんだよ?オレに負けるのがこわいのか?」
ソウイチはソウヤを茶化した。

「そっちこそ、僕に負けるのがこわいんじゃないの?」
ソウヤは余裕たっぷりにソウイチを見返した。
顔は笑っていたが、目はお互いをしっかりにらんでいた。

「勝つのはオレだ!!」

「いいや!絶対僕が勝ち上がるんだ!!」
二人はとうとう言い合いを始めた。
収まる気配はいっこうにない。

「お前ら!試合前からけんかするんじゃねえ!!」
ソウマはソウヤの耳とソウイチの鼻をつかんで持ち上げた。

「いだだだだだ!!!わかった!わかったって!!」

「もうけんかしないからおろして~!!痛い痛い痛い!!」
二人は痛みで体をよじった。
急所は確定のようだ。

「もう・・・、二人とも・・・。」
モリゾーとゴロスケは呆れ顔だ。
すると、スピーカーを通じて放送が流れた。

「まもなく、開会式を行います。参加するメンバーは中央広場へ集合してください!」
この声はペラップのようだ。
マイクからでもよく声が通っている。
中央広場というのは、設置された四つのフィールドの真ん中に位置する大きな広場だ。
トーナメント表は確認したので、みんなは広場に向かった。
広場はすでにポケモンであふれかえっており、観客席もすっかり埋まっていた。

「うひゃ~・・・、すげえな~・・・。」
シリウスは感嘆の声を漏らした。
合同訓練というからにはもう少し小規模なものかと思っていたが、これはかなりの規模だ。

「こんなに大々的にやるのかよ・・・。」

「すごいね~・・・。」
みんなもただただ圧倒されるだけだった。
選手が全員集まったのを見越して、また放送が入った。

「え~、全員集まったようなので、ただいまより開会式を行う。」
またスピーカーからペラップの声が響いてきた。
開会式は、プクリンの挨拶、審判であるカクレオン兄弟とペラップからの注意、そして開会宣言というものだった。

プクリンは寝ているだけで挨拶と呼べるものではなかった。
みんなは退屈そうだったが、それを態度に見せるとどうなるか分からないので必死にがまんしていた。
カクレオン兄弟の注意は

・バトルでの道具使用は禁止だが、通常攻撃の使用は可能
・回復技の使用は五回のみ
・フィールドの外に出た場合は5秒以内に復帰できなければ失格、空を飛んで外に出た場合も同様、ただし、相手を強制的にフィールド外へ出すことは禁止
・その他、審判の判断により不正行為と認められた場合はその場で失格

というものであった。

ペラップの注意は

・試合は四つの会場で同時に行い、Aブロックは北側と西側のフィールド、Bブロックは南側と東側のフィールドで試合をし、各ブロックの左側の出場者は南北、右側の出場者は東西で試合を行う
・試合時間は予選、準々決勝は5分、準決勝は8分、決勝戦は11分とする
・相手の体力がなくなるか、5秒間フィールドアウトした場合、相手が降参するか、体力を残していても気絶した場合などは勝敗が決定する
・試合は上から順番に行っていくものとし、試合開始前までに準備ができていなければ出場資格を剥奪、相手は不戦勝となる
・自分の番を放送でアナウンスされるまでは、どこの会場で試合を見学してもかまわない
・試合前には、体力やPPなどを回復しておくこと、回復できていない場合でも試合は開始する

という感じだった。
そして、開会宣言を担当したのはソウマだった。
どうやらプクリンの推薦らしい。

「我々は、正々堂々とバトルをすることを誓い、ここに、合同訓練、バトル大会の開催を宣言する!」
その瞬間、あたりからいっせいに歓声が上がった。
いよいよ大会の始まりだ。
第一回戦は、コンVSバクーダ、ソウマVSザングースだった。
ゴロスケ、ライナ、カメキチはソウマの応援、モリゾー、シリウス、ドンペイはコンの応援、そして、ソウイチとソウヤはチェリーとローチの応援だ。

ソウイチはチェリーのいるフィールドへ行った。
すでに準備は終わっており、そろそろ試合が始まるというところだ。

「お、そろそろだな。かぶりつき席確保するか。」
ソウイチは人ごみ、もといポケごみをかき分け最前列へと移動した。
席に座ると、ソウイチはチェリーの対戦相手を確認した。
見ると、チェリーの相手はヒノアラシ、見るからに幼そうだ。
年齢は、およそ五歳か六歳ほどだろうか。

「(あんなやつがチェリーに勝てるのか?)」
ソウイチは内心そう思った。

しかし、試合が始まってから、ソウイチはあんぐりと口をあけていた。
ヒノアラシのすばやさはチェリー並み、攻撃力もそこそこあり、チェリーとなかなかいい勝負だった。
チェリーははっぱカッターとまもるを使って応戦、対するヒノアラシはひのことたいあたりでガンガン攻めてくる。
どことなくソウイチを思わせる攻撃スタイルだ。

「(あいつ小さいのにやるな。チェリーも大分近距離戦に慣れてきたみたいだけど、まだ不完全だな。この勝負、勝てるか?)」
ソウイチは食い入るように試合を見つめていた。
残り時間が1分半を切ると、ヒノアラシに変化が見え始めた。
やはり体力面では幼さが残るのか、時間が経過するにつれてヒノアラシはだんだんと疲労が目に見えてきている。
チェリーの攻撃もかなり命中するようになった。
それでも、ヒノアラシは決して勝負をあきらめるそぶりを見せなかった。

ピィィィィィィィッ!!

カクレオンが笛を吹いて試合は終了、結果は、僅差でチェリーの優勢勝ちとなった。
それでも、チェリーは肩で息をしていた。
あと少し試合が長引けば危なかっただろう。

「(すげえ試合だったな~・・・。チェリーが勝ってよかったけど、あのヒノアラシも負けてほしくなかったな。)」
やはり自分に似通う部分があるせいか、ソウイチはそんなことを思っていた。
中央広場に戻ると、応援に行っていたみんなが集まっていた。
ゴロスケはすでに試合会場へ行ったあとだった。

「どうだった?」
ソウイチは早速みんなに聞いた。

「今のところ負けなし!」
ソウヤは嬉しそうに言った。

「コンも、強力なほのお技に耐えてすごく頑張ったよ!」
モリゾーも嬉しそうだ。

「ソウマもかっこよかったわ。技と通常攻撃をうまく使い分けてて。」
ライナはすごくうっとりした顔になっていた。
ソウマはほめられて照れているのか、赤くなっていた。
まあ分からんでもないが。

「ローチもがんばったよ!みらいよちとマグニチュードのコンボ、すごかったな~。」
ソウヤもローチをほめた。

「チェリーも頑張ったぜ。相手がヒノアラシなのに、近距離戦でいい勝負してたぜ。」
ソウイチもみんなに報告した。

「ええ!?ほのおタイプに勝っちゃったんですか!?」
ドンペイはかなり驚いた。

「ああ。といっても、相手は五歳ぐらいだったしな。スタミナが勝負を分けたってとこだろ。」

「なるほどね~・・・。ってことは、それ以外はほとんど互角だったってこと?」
モリゾーが聞いた。

「そういうことだな。よ~し、じゃあゴロスケの応援に行こうぜ!」

「うん!行こう行こう!」
みんなは早速会場に向かって駆け出した。
試合開始まであまり時間がないのだ。
会場はすでに満員になっており、立って試合を見るしかなかった。

「ひええ~・・・、まさかこんなにぎょうさんおるとはな~・・・。」
カメキチは会場を見回して思わずもらした。

「とりあえず、できるだけ見やすい場所を探そうぜ。」
シリウスは言った。
ちょうど真ん中あたりに見やすい場所があったので、そこで観戦することにした。

「お、いよいよ始まるみたいだな。」
みんなはゴロスケに注目した。

笛が鳴り、試合が始まった。
先手を打ったのはニョロトノ、れいとうビームでゴロスケの動きを鈍らせようという作戦のようだ。
ゴロスケはさっとかわし、みずでっぽうを細かく分けて発射、そこにれいとうビームを加えてつららを作り、ニョロトノに何本か命中させた。
おうふくビンタではじき返したものもあるが、やはり全ては避けきれなかったようだ。

「ゴロスケのやつやるな~。結構技を応用してるぜ。」
ソウイチは感心したように言った。

「あそこまで使いこなせるなんてすごいよ。」
ソウヤもうなずいた。
しかし、ニョロトノも反撃に出た。
バブルこうせんをブラインドにして、ゴロスケの頭上にかわらわりをおみまいした。
ゴロスケは地面に叩きつけられたが、すぐに体制を立て直したいあたりで突っ込む。
みずタイプ同士、なかなかいい勝負だ。

そしてとうとう決定的瞬間が来た。
ニョロトノがかわらわりに失敗してバランスを崩したときに、ゴロスケはうずしおでニョロトノの動きを封じた。
ニョロトノはうずしおから逃れようとしたが、ゴロスケはみずでっぽうで水量を増加させ外に出さない。
さらにニョロトノが水中へ沈んだところを見計らってれいとうビームでうずしおを凍らせた。
きれいな円錐形の氷山が出来上がり、中心あたりではニョロトノが氷漬けになっていた。
ゴロスケは氷山めがけて力いっぱい体当たりし、縦に亀裂が入ったかと思うと、あっという間に氷山は崩壊した。
氷のかけらがきらきら舞う中、ニョロトノはすっかり伸びてしまっていた。
ゴロスケの圧勝だった。

「やった~!!」

「よっしゃああ!!」
ソウイチ達はゴロスケの勝利を心から喜んだ。
コンテストのように技を魅せながら戦うさまは実に華麗だった。

「ゴロスケ、お疲れ様!」

「お前なかなかやるじゃねえか!」
みんなはゴロスケのところへ行って、口々にゴロスケをたたえた。

「そんなあ、自分でもうまくいくかどうかわからなかったし、運がよかったんだよ。」
ゴロスケはすっかり照れていた。
勝ててうれしいのはまんざらでもないようだ。

「よ~し、次は先輩の試合やな。」

「そうでしたね。行きましょうか。」
第三回戦はフレイムVSガラガラの試合。
ルルとミナトの試合もそろそろ始まる時間だ。
フレイムのほうはソウマ達四人、ルルはソウイチ、シリウス、ゴロスケ、ミナトはソウヤ、モリゾー、コンが応援に行くことになった。
まだ多少時間にゆとりがあったので、ソウイチはシリウスとゴロスケを先に行かせて、出店でリンゴを二、三個ほど買った。
かなりおなかがすいていたのだ。

「ん~、うめえ~。」
ソウイチはシャリシャリとリンゴをほおばっていた。
ちょうど人気のない場所を見つけて、そこでのんびりと食べていたのだ。
すきっ腹にリンゴのエネルギーが染み入るようだった。

「ふわぁぁぁぁ・・・。」
全部食べ終わると急に眠気が襲ってきて、ソウイチはそのまま寝てしまった。
試合に応援に行くことなんかすっかり忘れて。

「・・・ソウイチ・・・。ソウイチ!!」

「・・・ほにゃ・・・?」
ソウイチは誰かに思いっきりゆすられて起きた。
見上げると、ソウヤがこっちをじっとにらんでいた。

「なんだ・・・、ソウヤか・・・。せっかく気持ちよく寝てたのに・・・。」
ソウイチはあくびをしながら言った。

「気持ちよく寝てる場合じゃないでしょ!!早くしないと失格になっちゃうよ!?」

「はあ?失格?」
ソウイチは事情が飲み込めなかった。

「もう!いったいどれだけ寝てたと思ってるの!!とっくに一回戦の最終試合だよ!!」

「な、なにい!?」
ようやくソウイチもことの重大さが分かったようだ。
このまま開始時刻に間に合わなければ両方とも失格になってしまうのだ。
ソウイチを放っておいて不戦勝で勝ち上がることもできたが、ソウヤはそんなことをしてまで勝ちたくなかった。
だから、自分も失格になるリスクを負ってソウイチを探していたのだ。

「やべえぞ!!このままじゃ俺達そろって失格だぜ!!」

「だから早く会場に行かないと!!ほら!!」
ソウヤはソウイチが駆け出すよりも早く、ソウイチの手を引っ張って会場まで猛ダッシュした。

「ところで、今までの試合の結果はどうなったんだよ?」
ソウイチは引っ張られながらソウヤに聞いた。

「Aブロックは、モリゾーが負けちゃって、後はみんな一回戦突破だよ。」
ソウヤは振り返らずに言った。

「ええ~?モリゾー負けたのか?しょうがねえなあ・・・。」
ソウイチはため息をついた。

「仕方ないよ。なかなかいい線いってたけど、フィールドアウトしちゃったんだ。あくのはどうが予想以上に強力で、木にたたきつけられちゃったから・・・。」

「まあ、しょうがねえか。誰だって負けるときはあるし、次がんばりゃいいさ。」
いつもならいらいらするところだが、今日はいつになくモリゾーを思いやるソウイチだった。

「で、Bブロックのほうはどうだった?」
ソウイチはまたソウヤに聞いた。

「今のところはみんな勝ち上がったよ。これからがどうなるかってところだね。ほら、話してたら遅れちゃうよ!急いで急いで!!」
ソウヤは前よりも力を込めてソウイチを引っ張った。


アドバンズ物語第五十二話



ここまで読んでくださってありがとうございました。
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Last-modified: 2011-05-06 (金) 00:00:00
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