ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第二十話 日照り石の謎
翌朝、空には澄み切った青空が広がっていた。
朝ご飯を食べ終えるとさっそく調査が開始された。
森へ行く途中で、ソウイチは考え事をしながら歩いていた。
「(俺たち兄弟は、なぜかこの場所を知ってる・・・。そして、記憶を消す力があるっていうユクシーってポケモンの伝説・・・。この二つは偶然なのか?もしかしたら・・・、記憶をなくす前に俺たちはここに来たことがあって、それで、ユクシーにあって記憶を消された・・・。そう考えられるんじゃねえか・・・?)」
「ソウイチ・・・?ソウイチ!」
モリゾーが肩を叩いて呼びかけた。
「・・・へ?な、何か用か?」
「何か用か?じゃないよ!どうしたのさ?ぼ~っとして。ソウイチらしくないよ?」
モリゾーはソウイチの眼を覗き込んだ。
「な、なんでもねえよ・・・。ちょっと考え事してただけだ。」
ソウイチはとっさにごまかした。
モリゾーはどこか納得いかないようだったが、それ以上は聞かなかった。
「(とにかく、俺たちの記憶を解くカギがここにはあるのかもな・・・。霧の湖に行けば、何か分かるかもしれねえな・・・。)」
「あれ?ソウイチ、あれ見て。」
「へ?」
ソウイチはまたしても突然話しかけられたので何のことやらわからなかった。
「あれだよ。あの石みたいなやつ。」
モリゾーの指さすほうを見ると、確かに赤い石のようなものがあった。
「なんやろ、あれ・・・?」
「わかんない・・・。」
カメキチとライナも首をかしげる。
「もしかして宝石か!?」
シリウスはダッシュしてその石のようなものを手に取ったが・・・。
「あっちいいいいい!!!」
手に取るや否や、あまりの熱さに石を放り投げた。
「わわわわわ!!」
石はゴロスケのほうに飛んでいき、ゴロスケは何とか石をキャッチした。
「あれ・・・?これ熱くないよ?どっちかっていうと、あったかい感じかな。」
ゴロスケはそこまで熱いとは感じなかった。
「そんなはずはねえよ!!だったら他のやつも触ってみろよ!!」
シリウスは石を乱暴に取ると、みんなに触らせた。
熱がらないのはゴロスケとカメキチだけで、ほかのみんなはなぜかかなり熱がった。
水タイプだから耐性があるのだろうか?
「じゃあ、その石はゴロスケが持っててよ。この先役に立つかもしれないしね。」
ソウヤはゴロスケに石を預けることにした。
そして、一行は霧に包まれた濃霧の森へと足を踏み入れた。
それから数時間後、ようやく一行は森を受けることができた。
本当はもう少し早く抜ける予定だったが、霧があまりにも深いので道に迷ってしまい、おまけに3連続でモンスターハウスに入ってしまったので、みんなくたくただった。
「はあ、はあ・・・。危なかったね~・・・。」
ソウヤはため息をついた。
「ったく、ついてないぜ。なんでこんなにも敵が出てくるんだ?」
ソウマもかなり疲れているようだった。
「見通しはきかねえわ、敵はわさわさでてくるわ・・・。どうなってんだよ!!」
シリウスはいらついて怒りをぶちまけた。
「怒っても仕方ないですよ・・・。森は抜けたんだからいいじゃないですか。」
コンがやさしくなだめる。
シリウスがさらに何か言おうとした時、大きな音が聞こえてきた。
「なんだ・・・?この音は・・・?」
みんなは音の聞こえてくるほうに耳をすませた。
「滝みたいな音だな・・・。行ってみようぜ。」
ソウマに促され、みんなは音のするほうを目指した。
すると、いたるところから、水が滝のように流れているのだ。
「うわ~!すごいな~・・・。でも、どのあたりなんだろう・・・。ここが森の一番奥なのかなあ・・・。」
モリゾーとゴロスケはあたりをきょろきょろと見回した。
「あかんな・・・。霧が深すぎて何も見えんわ・・・。こっから先はどう進んだらええんやろ・・・。」
カメキチが首をひねっていると・・・。
「ヘイヘ~~イ!!」
何か聞き覚えのあるフレーズ。
みんなが振り返ると、ヘイガニがこちらにやってくるのが見えた。
「ヘイヘ~イ!何か手掛かりとかあったかい?」
「いや、何にも見つからねえ・・・。」
ソウイチは残念そうに首を振った。
「ヘイガニの方はどう?」
ライナが聞いた。
「おいらもさっぱりだぜ。ヘイヘ~イ・・・。」
ヘイガニは悲しそうな顔になった。
「でも・・・、ちょっと気になるものがあってよ・・・。」
「気になるもの?なんですかそれ?」
コンが聞いた。
「あれを見てくれよ。」
ヘイガニの指さす方へ行くと、そこには何かの像が置いてあった。
「な、なんだこりゃ!?」
みんなびっくりだった。
こんなものは見たことがなかった。
「おいらもよくわかんねえ。なんかポケモンの石像みたいなんだけど・・・。こんなポケモン見た事ねえよ・・・。」
ヘイガニもよくは知らないようだった。
「しかしこれ何て名前なんだろうな~・・・。ん?ここになんか書いてあるぜ。」
ソウイチが何かに気づいたようだ。
みんなが見てみると、プレートになにやら見たことのないような文字が描かれていた。
「なんなの・・・?これ・・・。」
ソウヤは全く見当がつかなかった。
「これは・・・、足形文字やな・・・。ちょっと読んでみるわ。え~と・・・、『グラードンの命灯しき時、空は日照り、宝の道は開くなり。』って・・・。」
「ええええええ!?」
みんな仰天、そこにはものすごく重要なヒントがかかれてあったのだ。
「(そっか~・・・。なんか見たことあると思ったらグラードンか~・・・。)」
シリウスは納得した。
なぜ知っているのかといえば、シリウスはもとは人間、ゲームで名前は知っていたのだ。
「この宝ってのは、霧の湖にある宝のことだな。道が開くってことはもしかしたら・・・。」
ソウマは像をじっくりと覗き込んだ。
「霧の湖へ行く謎が、ここに隠されてるかもしれねえな・・・。」
ソウマの言葉に、みんなは興奮した。
「よっしゃあ~!!これで先へ進めるぜ~!!」
シリウスとソウイチは大喜びだ。
しかし、みんなが喜ぶ中でソウマはまだ考え込んでいた。
「この、『グラードンの命』ってのは何だ・・・?う~ん・・・。」
ソウマはうなった。
「命を灯すってどうすればいいのかな・・・。う~ん・・・。」
悩んでいたモリゾーはある考えを思いついた。
「そうだ!ソウイチがこの石像に触れば何か見えるかもしれないよ!?」
モリゾーは、ソウイチの夢を見る能力のことを言っているのだ。
「そっか!その手があったか!!」
ソウイチは早速石像に触れてみた。
「どう?ソウイチ。」
みんなが見守る中、あのめまいがやってきた。
「(きやがった・・・。あのめまいだ・・・!)」
今回の夢は2連続で来た。
そうか!
ここに!!
ここに・・・があるのか!!
なるほど・・・。
グラードンの心臓に日照り石をはめる・・・。
それで霧は晴れるのか!!
さすがだな!やっぱりオレのパートナーだ!
そこで夢は終わった。
「(今の声は・・・。なんか聞き覚えがあるようなないような・・・。だけど、今回は映像がなくて声しか聞こえなかった・・・。あの声・・・、気になるな・・・。」
「ソウイチ、大丈夫・・・?」
ゴロスケが心配した。
「あ、ああ・・・。」
「もしかして何か見えたの?」
モリゾーが聞いた。
ソウイチはさっきの内容をみんなに話した。
「その日照り石って・・・。」
「ああ、ゴロスケが持ってる石に間違いねえ。それに、ここを見てみろよ。」
ソウイチは石像のくぼみを指差した。
「たぶんここに石がはまってたんだ。ゴロスケ、石をはめてみてくれるか?」
ソウイチはゴロスケに頼んだ。
「うん、わかった。」
ゴロスケは言われた通り、石を石像にはめた。
すると、石造の両眼がひかり、突然地面が揺れ始めた。
「みんな、あぶねえ!離れるぞ!!」
ソウイチの声でみんなは一斉に像から離れた。
そして像から離れた瞬間、あたり一面がまぶしい光に包まれた。
光が元に戻ると、あたり一面に立ち込めていた霧は嘘のようになくなっていた。
「すごい・・・。霧が晴れちゃってます・・・。」
ドンペイはびっくりしていた。
ほかのみんなも口あんぐりだった。
「あ、あれは!!おい、みんな上を見てみろよ!!」
シリウスが突然叫んだ。
みんな上を見て腰を抜かしそうになった。
なぜなら、島のようなものが空に浮かんでいたのだ。
いわゆる天空の城のようなものだ。
「どうりでだれも見つけられないはずだわ・・・。」
「俺らもここでウロウロするしかなかったしな~・・・。」
ライナもカメキチもただただ感心するばかりだった。
「ヘイ!それってさ、まさか霧の湖は、あの上にあるってのかい?ヘイヘ~イ!」
ヘイガニが聞いた。
「オイラはそう思うよ。霧の湖は、きっとあの上にある・・・!!」
モリゾーは島をじっと見つめた。
「ヘイ!こうしちゃいられねえ!おいらギルドのみんなに知らせてくるよ!みんなは頑張って先を目指してくれ!」
そういうなりヘイガニはもうダッシュでベースキャンプへ駆けだした。
「よっしゃ!俺たちも行こうぜ!!」
ソウイチが意気揚々とみんなを促すと・・・。
「待ちな!!」
どこかで聞いたことのあるいやみな声。
「お、お前たちは!!」
ソウイチ達4人はびっくりした。
なんと、ドクローズではないか。
「ごくろうだったな。ククククッ。」
「ケッ、謎さえといてくれればお前たちに用はねえ。」
「へへっ。お宝は俺たちがいただきだぜ!」
いったいなんというやつらであろうか。
「てめえら!!やっぱり最初からこれが目的か!!」
ソウイチは速攻で頭にきた。
今まで味わわされてきた恥の数々、それを思い出しただけで腹が立つのだろう。
「ソウイチ、こいつらは?」
ソウマとスカタンクたちは初めての面識のようだ。
「ドクローズ、前から俺たちの邪魔ばっかりしてきやがる最低な奴らだ!どれだけ頭にきたことか!!」
ソウイチは怒りを吐き出すようにソウマに説明した。
「なるほど・・・。そんなことがあったのか・・・。」
ソウマも合点がいったようだ。
「なんちゅうやつらや!最低にもほどがあるわ!!」
「絶対に許せないです!」
ほかの5人も話を聞いて頭にきた。
「へっ、何をごたごた言ってやがる。」
ドガースがせせら笑った。
「ククククッ。残念だが、お前達にはここでくたばってもらおう。」
スカタンクが言った。
「そ、それはこっちのセリフだ!!」
「お前らを霧の湖になんか行かせるものか!!」
モリゾーとゴロスケは3匹をにらみつけた。
「ククククッ。もう忘れたのか?前の対決を。お前たちは、オレ様とドガースの毒ガススペシャルコンボに敗れていることを!」
スカタンクは、リンゴの森での対決のことを言ってるのだ。
「ああ、確かにあのときは負けたよ。でもなあ、てめえらにいつまでも負けてるわけにはいかねえんだよ!!」
ソウイチは思いっきりスカタンクたちを睨みつけた。
「ほう。というと、またオレ様たちと戦うということだ?」
スカタンクは余裕の笑みを見せた。
「そうだ!今度こそ負けてたまるか!!」
ソウヤもやる気満々だ。
すでにほおには電気がピリピリ流れている。
「それに、今度は俺たちもいる。あくまで3対8でも戦うというのなら、全力で相手をしてやる。オレの大事な弟や仲間たちをひどい目にあわせたことを後悔させてやる。」
ソウマもかなり頭にきているようだ。
言い方は冷静そのものだが、はっきりと怒りを表現していた。
「あんたたちみたいな最低な奴なんかに負けるもんですか!!」
ライナも頬から電気が流れている。
気合は十分だ。
「俺たちを敵に回したことを後悔させてやるぜ!!」
シリウスは体中から電気が流れていた。
しかし、そこでソウイチは意外なことをいった。
「今回の相手は俺たち4人だ。アニキ達は関係ねえ。」
ソウイチは、ソウマ達の助けを借りたくはなかったのだ。
自分のけじめは自分でつける、やられた時と同じメンバーで勝負しなくては、勝っても意味がないと思ったのだ。
「アニキ達の力に頼らなきゃいけないほど俺たちは弱くねえ。見くびってもらっちゃ困るぜ。」
さっきとは打って変わって冷静な物言いのソウイチ。
完全に本気になった証拠だ。
「いいのか?ソウイチ。」
ソウマは念を押した。
「ああ。アニキ達は先に行っててくれ。俺たちは、こいつらをぼこぼこにしたらすぐに追いつくからよ。」
ソウイチの目は、怒りとやる気、そして、自信に満ちていた。
その目を見て、ソウマはソウイチのいうことを受け入れた。
「わかった。やるからには、絶対負けんなよ!」
シリウスはソウイチの肩をたたいた。
「こっちだって負ける気はさらさらねえぜ。早く行ってくれ!」
ソウマ達はソウイチ達を信じ、一足先に湖を目指した。
「さあ、こっからが本番だ!覚悟しろよてめえら!!」
ソウイチの背中から激しく炎が噴き出した。
いつでもバトルできる体制だ。
「いいだろう。食らうがいい!オレ様とドガースの、毒ガススペシャルコン・・・。」
「あ~ん!まってえ~~~~~!」
スカタンクのいうことをさえぎり、突然誰かの声がした。
「な、なんだ~!?」
みんなびっくりした。
なんとそれは、転がってくるセカイイチをものすごいスピードで追いかけるプクリンだったのだ。
そして、プクリンはようやくセカイイチをキャッチした。
「やっとつかまえたっ♪ボクのセカイイチ♪セカイイチがなくなったらボクは・・・、ボクは・・・、うるうる・・・。」
喜んだかと思うと、突然目がうるみ始めるプクリン。
みんな唖然とした様子でそれを眺めていた。
「お、親方様・・・。ここで何をしているのです・・・?」
最初に口を開いたのはスカタンクだった。
「ん?何って、森を散歩してたらね、セカイイチがボクからコロコロ逃げ出しちゃったの・・・。んで、それを追いかけてたらここに来ちゃったってわけ♪」
プクリンは笑顔で事の次第を話した。
みんなはポカーンとした顔でただただ話を聞いていた。
「そうだ!君たちこんなところでさぼってちゃいけないよ?」
突然思い出したようにプクリンは言った。
「へ?」
みんなまたポカーンとした。
「君たちのお仕事は森の探索でしょ?ほら先へ行って行って♪」
「で、でもよお・・・。」
ソウイチは口ごもった。
なにしろ、ドクローズを倒す気満々でいたのに、プクリンが来たことで調子を狂わされてしまったのだ。
「親方のいうことが聞けないの?プンプン。早く探索♪探索~♪」
プクリンはまったく聞く耳を持たない。
「う、うん・・・。い、行こう、ソウイチ、ソウヤ。」
モリゾーとゴロスケは二人を促した。
二人もそれに従い、その場を後にした。
ドクローズはその場にポツンと取り残された。
「あの~・・・、親方様・・・。」
スカタンクが重そうに口を開いた。
「ん?どうしたの?友達♪」
「我々も探索に出かけようと思うのですが・・・。」
もちろんその腹は、ソウイチ達の後を追って叩きのめそうという魂胆だ。
「ええ~!?いいよう。友達にそんな苦労はさせられないよう。探索はさっきの4人に任せて、ここで一緒に知らせを待ってよ♪」
プクリンは上機嫌で鼻歌を歌いだした。
「(アニキ~。なんか妙な展開になってきやしたね~・・・。」
「(このままじゃアドバンズのやつらに先を越されますぜ。どうするんです?)」
「(仕方がない。プクリンは、ここでオレ様たちが倒す!そしてアドバンズを追いかけるんだ!)」
そして、こっそりプクリンを倒す準備を始めた。
何も知らないプクリンは、のんきに鼻歌をうたっている。
そして、とうとう準備ができた。
「(プクリンは・・・、オレ様たちがここで倒す!探検家として有名なあのプクリンも、ここで終わりだ!!ククククッ。)」
スカタンクは不気味な笑いを浮かべた。
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