ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第二十一話 熱水の洞窟 ソウマの相談事 前編
その頃ソウイチ達は、熱水の洞窟を目指して歩いていた。
そこが、霧の湖への入り口なのだ。
「あ、あった!あそこじゃない?」
モリゾーが指さす方を見ると、確かに入口らしきものがそこにはあった。
そしてなんと、そこにはシリウスとコンがいるではないか。
「お、お前ら!なんでここに!?」
ソウイチはびっくりした。
てっきりソウマ達と一緒に先へ行っているかと思っていたのだ。
それはほかのみんなも同じだった。
「お前たちだけじゃ頼りなさそうだからな。俺たちもサポートしてやるよ!」
シリウスはかっこつけていった。
「よくいいますよ。本当はただ一緒に行きたいだけでしょう?」
コンはズバリシリウスの本音を見破った。
「ぐ・・・。」
図星のようだ。
「ったく、かっこつけんじゃねえよこのお!」
ソウイチはシリウスの頭を小突いた。
「ってえ~・・・。」
シリウスは頭をさすり、そこでみんな笑った。
小突かれたシリウスでさえも笑っていた。
「よ~し!じゃあさっそく行くとするか!!」
「おお~!!」
ソウイチの掛け声に、みんなは手を空に掲げた。
そして、意気揚々と、水蒸気の吹きあげる洞窟の中へと入って行った。
モリゾーとゴロスケは内心不安を抱いていたものの、ソウイチとソウヤの様子を見て、不安を心の隅に置いた。
それと同時に、ものすごくわくわくしてきたのだった。
そして、そのころグラードン像の前では・・・。
「(アニキ~、どうしたんですか?こうしてもうにらめっこしてかなりたちますよ?)」
「(はやいとこ毒ガススペシャルコンボかまして片付けちゃいましょうよ。)」
ズバットとドガースはスカタンクにささやいた。
「(う、うるさい!)」
スカタンク自身も早く片付けたかったが、なぜか動けないのだ。
「どうしたの?友達♪さっきから怖い顔して。」
プクリンは全然動揺するどころかむしろ楽しそうだった。
「(うむむ・・・コイツ・・・できる!!)」
スカタンクはショックを受けていた。
いったい何がショックなのかはさっぱりだが。
「あっ!わかった♪ボクとにらめっこしたいんだね♪それならボク負けないよ♪」
そう言うなり、プクリンは次々と顔芸を披露した。
誰が見てもこれは吹き出すだろう。
「(ううっ、アニキ~・・・。オレもうこの状況に耐えられねえ・・・!)」
ドガースは吹き出しそうなのを必死にこらえていた。
ズバットも同じだった。
「(くっ!しかたがない!)おいプクリン!」
スカタンクはとうとうしびれを切らした。
「どぅわあぬぃ?(なあに?)」
相変わらず変顔のまま、プクリンは答えた。
「悪いが・・・、きさまにはここでくたばってもらう!!食らえ!オレ様とドガースの、毒ガススペシャルコンボ!!」
二人はいっせいに毒ガスを吐き出した。
そのころ、ソウイチ達はソウマ達に追いつこうと湖を目指していた。
そして、道が3つに分かれているところにたどり着いた。
「おいおい・・・。どれが正解なんだ?」
ソウイチは3つの道を見渡した。
「そんなの分かるかよ!こうなったらひとつひとつたどるしかねえだろ!」
シリウスはもっともらしいことをいった。
「でも、それじゃあ時間がかかりすぎるよ。ここは3組に分かれて進んだほうがいいんじゃない?」
モリゾーがみんなに提案した。
「私もそのほうがいいと思います。どれかが正解なら、わざわざ戻ってくる手間も省けますし。」
コンは賛成のようだ。
「ボクもそのほうがいいと思うよ。」
ソウヤも賛成した。
そして、シリウスも納得の上で、いつものメンバーで行動することにした。
ソウイチはモリゾー、ソウヤはゴロスケ、シリウスはコンとそれぞれ道を探索することにした。
ソウイチ組は左側、ソウヤ組は右側、シリウス組は真ん中を行くことに決めた。
ソウイチ達の選んだ道は、なぜか敵ポケモンがほとんどいなかった。
そのおかげで、かなり楽に進むことができた。
「な~んだ、結構楽勝じゃねえか♪」
ソウイチはすっかり浮かれていた。
それに対して、モリゾーはかなり慎重だった。
「油断しないほうがいいよ。いつどこから敵が一斉に出てくるか分からないもの。」
モリゾーは常に注意を払っていた。
「こんだけ少ないんだから平気だって。一気に突っ走るぞ!」
そう言ってソウイチは走り出した。
「あ、待って!!その先には・・・。」
ズドーン!!
「だああああああ!!!」
モリゾーが言うよりも先に、ソウイチは落とし穴に落ちてしまったのだ。
「もう!だから気をつけないとっていったじゃないか・・・。」
モリゾーはため息をついた。
「バカ!落とし穴があるんならもっと早く言え!!」
ソウイチは怒った。
「そんなこと言ったって・・・。」
モリゾーはまたため息をついた。
自分勝手な行動をしておいて、まさに自業自得である。
「誰が自業自得だ!?」
「え?誰と話してるの・・・?」
モリゾーは不思議そうな顔をした。
「な、なんでもねえよ!それより早く引っ張りあげてくれ!」
ソウイチは手を上に掲げた。
「自力で出れないの?」
「すべるんだよ!!さっさと引っ張りあげてくれ!!」
ソウイチはいらいらして怒鳴った。
「世話が焼けるな~・・・。」
そういいつつも手を差し伸べるモリゾー。
「お、重い・・・。」
モリゾーは顔を真っ赤にしてソウイチを引っ張りあげた。
しかしあと少しのところで、ソウイチは穴のそこへごろごろと転がり落ちてしまった。
「あだだだ・・・。何しやがんだよ!!」
ソウイチはさらに怒った。
「ごめん・・・。重くて力が抜けちゃって・・・。」
モリゾーは頭をかきながら謝った。
「ったく・・・。」
そして、今度は滑り落ちることもなく、何とかうまくいった。
「ってか重いってなんだよ重いって!!いっとくけどな、体重は軽い方なんだぞ!?何で重いんだよ!!」
ソウイチはかんかんに怒っていた。
重いといわれるのがかなり頭にくるようだ。
「そ、そんなこと言われても・・・。本当に重かったんだもの・・・。」
モリゾーは返す言葉がなかった。
「だいたいヒノアラシの体重は8kgぐらいじゃなかったか!?それが重いとかどんだけだよ!!」
ソウイチの怒りはさらにエスカレート。
とうとうモリゾーもがまんできなくなった。
「重いものは重いんだよ!!そこまで言わなくたっていいじゃないか!!」
「だったらもう少し力つけろ!!」
「無茶言わないでよ!!大体そっちが落ちるのが悪いんでしょ!!注意しないからそんなことになるんだよ!!」
「なにお!?教えないほうが悪いだろうが!!」
「勝手に先先行くのに教えてる暇なんかないよ!!」
もうこうなったら売り言葉に買い言葉、どんどん大喧嘩へと発展してしまった。
そして二人はおでこをつき合わせてじ~っとにらみ合った。
「もう勝手にしろ!!お前と一緒にいると気分が悪い!!」
ソウイチは言ってはいけない事を言った。
「それはこっちのセリフだよ!!ソウイチがいない方が探索がはかどるよ!!」
モリゾーも負けじと言い返した。
「お、言ったな!?その言葉忘れんなよ!!」
ソウイチは思いっきりモリゾーをにらみつけた。
「そっちこそ!!」
モリゾーも思いっきりにらみ返した。
そして二人は別の道を進み、けんか別れになってしまった。
そのころソウヤとゴロスケは、レベルが低いながらも敵が大勢いるので苦戦していた。
「はあ、はあ・・・。いくらなんでも多すぎるよ・・・!」
ソウヤは息が上がっていた。
なにしろいままでで数十匹くらいは倒しているのだ。
「とにかく、こつこつ倒すしか進む方法はないよ・・・。」
ゴロスケも疲れていたが、弱気にはなっていなかった。
「だね。がんばるしかないか!」
ソウヤもやる気を奮い起こし、先へと進んで行った。
「だけど、こんなに多いとモンスターハウスみたいだね・・・。」
ソウヤがぽつりと言った。
「縁起でもないこと言わないでよ!もしこの部屋がそうだったとしたら・・・。」
ゴロスケがそう言ったとたん、一斉に岩陰から敵ポケモンが飛び出してきた。
「わあああああ!!」
二人はびっくりしてしりもちをついた。
その数は、10、20、いやもっと多いかもしれない。
「どどどどどうしよう!!」
ゴロスケはすっかり動揺していた。
「と、とにかくやるしかないよ!ちょっとさがってて、ええい!!」
ソウヤはかなりの力で十万ボルトを放った。
すると、半分ぐらいの敵は、しびれて倒れてしまった。
「え・・・?」
二人は唖然とした。
まさかここまで弱いとは思わなかったのだ。
「これなら・・・。」
「いけるかも・・・!」
二人は、できるだけPPの多い技を使いこつこつと敵を倒していった。
「はあ、はあ・・・。」
全ての敵を倒し終えた後は、完全に二人とも疲れきっていた。
「な、何とか倒せたね・・・。でも、体中傷だらけだよ・・・。」
ゴロスケは痛そうに体をさすった。
「そうだ!さっきオレンのみをひろったから、二人で半分こして食べよ!」
ソウヤはオレンのみを半分に割ると、ゴロスケに差し出した。
「ありがとう、ソウヤ!」
ゴロスケは嬉しそうに受け取った。
こういう気遣いも、ソウヤならではである。
そして、オレンを食べ終わるとまた次の敵が現れた。
「PPがなくならないといいけど・・・。」
「こうなったらとことんやるしかないよ!」
二人は新たな敵に挑んでいった。
そしてシリウスとコンは、同じ道をぐるぐるぐるぐるといったり来たりしていた。
「だあああああ!!いつになったら出られるんだよ!!」
シリウスは頭をがりがりかいた。
「落ち着かなきゃだめですよ。冷静になって・・・。」
コンがなだめようとするが、シリウスはそれをさえぎった。
「落ち着いてる場合か!!これで10回目だぞ!?10回目!!」
シリウスはもう発狂寸前だ。
地団太を踏んでいる。
「怒ってもヒントは見つかりませんよ。でもどうしてここまで出口が見つからないんでしょう・・・。」
「知るかよ!!あ~あ、嫌になるぜ!まったく!」
シリウスは壁を思いっきりけつった。
すると、壁の奥でけつった音がこだました。
「なんですか?今の音・・・。」
「さあ・・・。もしかしたら・・・、この裏が通路になってるんじゃねえのか?」
シリウスは壁の周りを調べたが、入り口らしきものは見つからなかった。
「ねえなあ~・・・。どうやったらいけるんだ・・・?」
シリウスは頭を抱えた。
この裏に通路があるとすでに決め付けていた。
「でも、単に音が響いているだけで、何もないのかもしれないですよ?」
コンが言った。
「んなわけあるか!これだけ行ったりきたりして進めねえんだぞ?どう考えてもここが通路だよ!」
シリウスは自分の考えを捨て切れなかった。
もっとも、捨てる気はさらさらないのだが。
「こうなったらアイアンテールでぶちぬくか・・・?」
シリウスは早速アイアンテールの準備を始めた。
「ちょ、ちょっとまってください!そんなことして壁が崩れたらどうするんですか!!」
コンは必死になってとめた。
「じゃあどうすりゃいいんだよ!!くそお!」
シリウスは嫌になって、近くの岩の上にどかっと腰を下ろした。
すると、岩ががくっとさがり、シリウスはその上から転げ落ちた。
そして、目の前の岩壁がスライドして、隠し通路が現れた。
「こ、これは・・・!」
「どうやら、あの岩がスイッチになってたようですね。」
「さ、最初から分かってたぜ!これがスイッチだって事ぐらい。」
見え見えのうそである。
「うふふ。さ、いきましょうか。」
コンに促され、シリウスは通路の中へと入っていった。
そのころ、中間地点にたどり着いたソウマたちは、ソウイチ達が来るのを待っていた。
「遅いですね~・・・。何かあったんでしょうか?」
ドンペイは少し不安だった。
「まさか、やられちゃったんじゃ・・・。」
ライナも不安になった。
「いや、あいつらのことだ。きっと大丈夫だ。そのうち追いついてくるさ。」
二人の不安を解消するかのように、ソウマは自信に満ちた声で言った。
それだけ、ソウイチ達のことを信じているのであろう。
「やけど、シリウスのやつ、何でわざわざ残ったんやろ?」
カメキチはそれが不思議でならなかった。
「たぶん、あいつらがピンチになったら駆けつけようって考えなのかもな。ソウイチがどうとるかはわかんねえけどな。」
実際のところ、バトルは回避でき、シリウスはただソウイチ達と一緒に行きたかっただけなのだが・・・。
「そうだといいけど・・・。わたし、ちょっと道具の整理をしてくる。」
ライナはそう言うと、ガルーラ像の方へ歩き出した。
ドンペイもそれについていく。
「なあ、カメキチ・・・。」
ソウマは、ライナがいなくなるのを見計らってカメキチに話しかけた。
「ん?なんや?」
「ちょっと、相談があるんだけだよお、いいか?」
ソウマは照れくさそうに言った。
「相談?めずらしいな。まあ、オレでよかったら乗ったるがな。」
カメキチは快く引き受けた。
「実は、ライナのことなんだけど・・・。あいつ、オレのことどう思ってるのかな・・・。」
「は?どうって?」
カメキチは意味がつかめなかった。
「だからさあ・・・、こう・・・、オレのこと・・・、好きなのかなって・・・。」
ソウマは顔を赤くして小さな声で言った。
「それは、何でそう思うんや?」
カメキチはあえて聞いてみた。
「実は、オレ、出会ってからあいつのことがなんか気にかかってよ・・・。それが最近になって強くなってきてるんだよ・・・。オレも、あいつの事好きなのかな・・・?」
そう、漠然としてはいたが、ソウマも、ライナに恋心を抱いていたのだ。
ただ、それを表面に出すのが恥ずかしいので、普段は冷静さを装っていたのだ。
「たぶん、好きなんちゃうか?お前絶対あいつに恋しとるわ。」
カメキチはうなずいて言い切った。
「そ、そうか?でも、オレが好きでも、あいつがオレのこと好きじゃなかったら・・・。」
ソウマは暗い顔になった。
「好きかどうかは聞いてみるしかないやろ?」
「で、できねえよ!恥ずかしいって・・・。」
ソウマはさらに顔を真っ赤にした。
そして、ため息をついて再び考え込んでしまった。
「(まあ、あいつの行動からして嫌いなわけがないやろうけどな・・・。しかし驚いたわ・・・。まさか両思いやったとはな~。お互い、恥ずかしいだけなんやろな、気持ちを伝えるんが。)」
カメキチはソウマの様子を見て全て合点がいった。
「カメキチ、このことは、みんなには言わないでくれよ?なんか、照れくさいからさ・・・。」
ソウマは頭をかきながらカメキチに頼んだ。
「いうわけないやろ?ま、オレの口はそうそう秘密をしゃべったりはせんけんな。」
カメキチはドンと胸を叩いた。
「ありがとな・・・。相談に乗ってくれて・・・。」
ソウマはカメキチに礼を言った。
「ええってええって。お互い様やろ?」
カメキチは笑顔で言った。
この、お互い様の意味はもう少しすれば明らかになるだろう。
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