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アドバンズ物語第二十四話

/アドバンズ物語第二十四話

ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第二十四話 カメキチの初恋 本気で相手を好きになるということ 


「ライナ、足はまだ痛むか?」

「ううん、さっきより痛みはひいたわ。ありがとう、ソウマ。」
ライナは笑顔でお礼を言った。
その顔は少し赤くなっていた。

「気にすんなよ。けがしたやつをほっとくわけにはいかねえからな。」
ソウマは照れているのか、少し赤くなっていた。
なんだか二人の中が急接近したようだ。

「何かすっごくいい感じだよな。あの二人。」

「だよね。もう完全に恋人同士って感じだよ。」
ソウイチとソウヤは二人の様子を見てうなずいた。
そして、カメキチはそんな二人をじっと見つめていた。

「あれ・・・?カメキチ先輩、どうかしたんですか?」
ドンペイが聞いた。

「へ?」

「さっきからず~っとソウマ先輩とライナ先輩のこと見てますけど、何か気になることでもあるんですか?」

「いや、べつになんもないけど・・・。」
カメキチはあわてて否定したが、みんなにはバレバレだった。

「はは~ん、さてはアニキとライナの仲がうらやましいんだろ?」
ソウイチはニヤニヤしながら言った。

「あ、アホ!!んなわけないやろうが!!」
カメキチは真っ赤になって真っ向から否定した。

「い~や、明らかに嫉妬してるな。アニキにライナ取られたのが悔しいんだろ。」
ソウイチはさらに挑発した。

「てめえ!!いいかげんにしとかんかったらハイドロポンプおみまいしたるぞ!!」
カメキチは完全に怒った。
ここまで挑発されたら誰だって怒るだろう。

「ソウイチ、いいかげんにしなよ!」
モリゾーがたしなめた。

「アハハハ・・・。冗談冗談。」
ハイドロポンプを食らわされてはたまらないと思ったソウイチは慌ててごまかした。

「まあ、あいつのこと好きやったんは事実やけどな・・・。」
カメキチは恥ずかしそうに言った。

「えええええ!?」
ソウイチ以外はびっくりした。
ソウイチは、ソウマだけでなく、カメキチのライナを気遣う様子を見ていたからだ。

「実はな、オレ、ライナに出おうた時に一目ぼれしてもうたんや・・・。」
カメキチは顔を赤くして言った。

「えええ!?ほんとかよ!?」
今度はさすがのソウイチもびっくりした。

「あれは、もうかなり前になるんかな~・・・。」
カメキチはみんなに昔のことを話し始めた。

それは、ソウマがまだマグマラシで、ライナと探検隊を結成したばかりの頃の話だった。
ソウマとライナは、近くの海岸へ泳ぎに来ていた。
もちろんさぼりではなく、正式に休日をもらって遊びに来ていたのだ。
ソウマは泳ぎがうまいほうだったかが、マグマラシのためか、今とは違ってあまり長時間は泳げなかった。
体が冷えて動けなくなるからだ。
このときは、ライナは沖で泳いでおり、ソウマはぬれた体を乾かしていた。

「お~い、ライナ~!!そろそろ上がって休憩しろよ~!!」
ソウマはライナに向かって叫んだ。

「え~!?まだ大丈夫よ~!!もうちょっと泳ぎたいわ!」
ライナはふくれっ面をした。

「そんなこと言ってると大変な目にあうぞ!いいから早く・・・。」
ソウマが最後まで言いきらないうちに、ライナの体がふっと水中へ沈んだ。

「!!!ら、ライナ!!!」
ライナの足がつってしまい、泳いでいることができなくなり沈んでしまったのだ。

「くそおっ!!今助けに行ったらオレも途中で力尽きちまうぞ・・・。あああ!!どうすりゃいいんだよ!!」
ソウマがあたふたしていると、水面に甲羅らしきものが浮かび、だんだん浜辺に近づいてきた。

「ん?あれは・・・・。」

浜辺に上がってきた甲羅の正体は、ライナを両腕に抱いたカメールだった。

「ライナ!!」
ソウマはライナに駆け寄った。
幸い命に別状はなく、気絶しているだけだった。

「危ないとこやったわ~。もう少し遅かったら助からんかったで。」
ライナを寝かせると、カメールは珍しい言葉遣いでしゃべった。

「ありがとな、ライナを助けてくれて。お前、名前は何て言うんだ?」
ソウマは礼を言うと、カメールに名前を聞いた。

「オレはカメキチ。そこの岩場に住んどんや。」
カメールは岩場のほうを指さして言った。
確かに、そこには家のような洞くつがあった。

「オレはソウマだ。よろしくな。今度、近いうちに礼をさせてくれねえか?」

「べつに気にせんでええって。人助けするんは当然のことやろ?」
カメキチはやんわりと断った。

「いや、このままじゃオレの気が済まねえんだ。何か礼をさせてくれ。」
ソウマは食い下がった。

「う~ん、そうやな~・・・。じゃあ、今度オレん家に遊びにこいや。お前ら二人でな。」
カメキチは笑顔で言った。

「わかった。じゃあその時にあらためて礼をさせてもらうよ。」
ソウマも笑顔で言った。

「ん・・・ううう・・・。」

「あ、ライナ!気がついたか!よかった~・・・。」
ソウマはほっとした。

「わたし・・・、いったい・・・。」
気絶したせいか、何があったのか覚えていないようだ。

「だから言っただろ!こういうことになるから早く上がって来いって言ったんだ!!もう少しで死ぬところだったんだぞ!?」
ほっとしたのもつかの間、ソウマの心配が怒りに変わった。

「な、なによ!?こんな時にそこまで言う!?」
ライナもムッときて、ソウマを正面からにらんだ。

「大体お前は人の言うことそうやって聞かねえから!!」

「ソウマが助けに来てくれないのが悪いんでしょ!!」

「オレが長時間水につかれないのは知ってるだろ!!」

「普通は必死で助けようとするでしょ!?」

「大体お前がさっさと休憩に入ってたらこんなことにはならなかったんだよ!!」

「なんですって~!!!」
「まあまあ、二人とも落ち着けや。」
カメキチがあわてて仲裁に入った。

「ったく・・・。まあ、とにかく無事でよかったよ・・・。これからはちゃんと休憩取れよ。どっか、悪いところはないか?」
さっきとは一転、ソウマはライナを気遣った。

「うん・・・。心配掛けてごめん・・・。悪いところはないわ。」
ライナも素直に謝った。
とりあえずけんかはおさまったようだ。

「いろいろ迷惑かけてすまなかったな・・・。仲裁までさせちまって。」
ソウマはカメキチに頭をかきながら謝った。

「なんもなんも!別に迷惑やなんておもてへんで。」
カメキチは笑いながら言った。

「じゃあ、またこんどな。今日はほんとにありがとな。」

「本当にありがとう!またね。」
ソウマとライナは礼を言うと、一緒に帰って行った。

「おう!またな~。」
カメキチは手を振って見送った。

「あ!あのカメールさんの名前聞くの忘れてた・・・。」
ライナが振り返ると、そこにはもうカメキチはいなかった。
ライナは気絶していたので、名前を聞いていなかったのだ。

「今度遊びに行ったときに聞けばいいさ。」
ソウマは明るく言った。

その頃、泳いで家へ戻るカメキチはライナのことを考えていた。

「(あの、ライナ・・・、やったっけ?かわええやっちゃな~・・・。)」
そう、カメキチはライナを助けたときに一目ぼれしてしまったのだ。
今まで恋というものをしたことのないカメキチだったが、どうやらこれが初恋だったようだ。

「これが、オレとソウマ達の初めての出会いやったって訳や。」
カメキチはいったん話を区切った。

「へえ~、先輩ってライナ先輩に一目惚れしたんですか~。」
ドンペイはカメキチよりもかなり後で仲間になったので、こういういきさつがあったことは知らなかったのだ。

「しかしアニキって、昔はバクフーンじゃなかったんだな。しかも体が濡れると弱るってのも初めて聞いたぜ。」
ソウイチは意外なソウマの過去を知ってちょっとおかしくなった。

「だけど、アニキって昔からライナに気があったんだね。今の様子からしても分かるけど、なんで今まで隠してたのかな~。」
ソウヤはそこが気になってしょうがなかった。

「まあ、その謎はこの後の話で明らかになるやろな。」
カメキチは再び話し始めた。
 
ソウマ達と出会ってから数日後、カメキチは岩場の家で釣り道具の手入れをしていた。

「浮きはこれでええやろ。後はおもりの数やな・・・。」
そんなことを言いながら釣竿をいじくっていると・・・。

「お~い、カメキチ~!いるか~?」
聞き覚えのある声がした。
外を見ると、ソウマとライナが立っていた。

「お~!ようきたな~!狭いけど、とりあえず入れ入れ!」
カメキチは二人を招き入れた。

「この間は本当にありがとう。それで、あなたの名前はなんて言うの?」
あの時名前を聞き忘れたので、ライナは改めて名前を聞いた。

「お、そういや、まだあんさんには名乗ってなかったわな。オレはカメキチ。これからもよろしゅうな。」
カメキチは改めて自己紹介した。
みんなは、しばらくは世間話などをして楽しんでいたが、ソウマがとうとう本題を切り出した。

「で、この間のお礼の件なんだけどよ・・・。」

「ああ、もう気にせんでええっていいよんのに~。」
カメキチは苦笑しながら言った。

「だからオレの気が済まねえんだよ。で、そのお礼なんだけどよ・・・、俺たちの、仲間になってくれねえか?」

「え?」
カメキチは一瞬ぽかんとした。
あまりにも予想しない答えだったからだ。

「頼む!俺たちの仲間になってくれ!」
ソウマは深く頭を下げた。

「わわわわ!!そこまでせんでもええって!とりあえず頭上げ!な?」
カメキチは必死にソウマをなだめた。
やっとのことでソウマは頭をあげた。
しかし、その目は真剣そのもので、引き下がるつもりは全くなかった。
その目を見て、ソウマとならいい友達になれる、カメキチはそう思った。

「そんなんやったらお安いご用やで!!オレで役に立てるかわからへんけど、チームのためやったら一生懸命頑張る覚悟はあるで!!」
カメキチは胸を張って言った。

「そうか!じゃあ、これからはおれたちの仲間だな!よろしくな、カメキチ!!」
ソウマは笑顔で握手した。

「おう!こっちこそよろしく頼むで!」
カメキチも笑顔で握手した。

「よろしく、カメキチ!この間は本当にありがとね。」
ライナも握手した。

「あ、ああ・・・。あんなもん軽い軽い!」
カメキチは少し顔を赤くして言った。
女の子に手を握られたのは初めてだったからだ。

「あれ?どうかしたの?」
カメキチが顔を赤くしたのに気がつくライナ。

「な、なんでもあらへんあらへん!!」
カメキチは顔が赤いのを見られたくなかったのか、必死でごまかした。
明らかに恋心を抱いているのはばればれだった。

そして、それからカメキチは二人と行動を共にし、三人で探検隊をやっていったのであった。
ライナに一目惚れしたカメキチは、ライナの気をひこうといろいろやったが、いつも空回りして、なかなか成功しなかった。
告白しようとも思ったが、なかなか決心がつかず、気持ちを伝えることができなかった。
カメキチが仲間になってから数カ月がたったある日、ちょうどソウマは用事で出かけておらず、近くにはだれもいなかった。
カメキチは、今日こそ告白するチャンスだと思った。

「ら、ライナ・・・。ちょっと話があるんやけど・・・。」
カメキチは詰まりながら話を切り出した。

「え?何?」

「あ~、え~っと、お前ってさあ、誰か好きなやつおるんか・・・?」
カメキチは顔を真っ赤にしながら言った。

「え・・・?」
ダイレクトに聞かれてライナは顔を赤くした。
しばらく間をおいてから、ライナは答えた。

「い、いるわ・・・。」
ライナの顔もかなり赤くなっていた。
好きな人を言うのは、結構勇気がいるのだ。

「(これはもしかしてきたか!?)で、それってだれなんや・・・?」
カメキチは期待して聞いたが、ライナの口から出たのは予想を裏切るものだった。

「実は・・・私・・・、今までずっと言えなかったけど・・・、ずっとソウマのことが好きなの・・・。」
ライナはますます顔を赤くしてうつむいた。

「な・・・。」
カメキチ、初恋にして、初めての失恋だった。

「ソウマのこと好きだけど、気持ちを伝えようとしてもうまく言葉が出てこなくって・・・。」
ライナの顔にはだんだんと悲しみが浮かんできた。

「そ、そうなんや・・・。まあ、あいつに惚れる理由もわからんわけやないけどな。」
カメキチはライナの顔を見て、やりきれなかった思いがだんだんと消えていった。

「心配すんなや。お前の想い、あきらめんかったらぜったい伝わるで。がんばりや!」
本当はお前のことが好きだった、その思いを押し込めて、カメキチは、ソウマとライナの恋を応援しようと思った。
このまま好きだと言っても、ライナがソウマのことを想っていることは変わらない。
それなら、自分から身をひいて、好きだった相手の恋を応援する、それこそが、相手のことを本当に好きなことだとカメキチは思ったのだ。

「いや~、悪い悪い!予想より長くかかっちまった。」
ライナが何か言おうとすると、ちょうどソウマが用事から戻ってきた。

「じゃあ帰るとするか!」
ソウマはそう言って、基地のほうへ歩き出した。
ライナもカメキチもそのあとに続いたが、ライナは突然振り返るとカメキチにだけ聞こえるようにこう言った。

「ありがとう、カメキチ。あなたは、本当に私の恩人だわ。ソウマのことも好きだけど、あなたのことも大好きだからね。」
そう言ってライナはカメキチのほっぺにキスをした。
カメキチは一瞬何が起こったのか分からなかった。
でも、意味がわかったのか、少し照れくさそうにするカメキチだった。
それからは、こういうことで関係が悪化することなく、カメキチは、ソウマともライナとも、いい親友の関係でいるのだ。

「へえ~、いい話じゃねえか。」
ソウイチはカメキチの話を聞いて感動した。

「カメキチって、案外心遣いができるんだな。」
シリウスも感嘆したように言った。

「案外は余計や!!まあ、オレなんかよりは、あいつは、ソウマと一緒におった方がきっと幸せになれる。あいつが幸せになったら、オレはそれだけでええ。」
カメキチは話をする二人の様子を見て、穏やかな笑みを浮かべた。
みんなも、ソウマとライナを見て、カメキチの言うことをさらに深く感じたのだった。


アドバンズ物語第二十五話



ここまで読んでくださってありがとうございました。
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Last-modified: 2011-04-15 (金) 00:00:00
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