ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第二十五話 絶景!霧の湖 時の歯車の存在
一行がユクシーについていくと、すでに日が暮れていた。
太陽は沈み、真っ暗な闇が辺りを包んでいた。
そして、とうとう霧の湖に到着した。
「ご覧ください。これが霧の湖です。」
ユクシーのさすほうを見て、みんなは心を奪われた。
「うわ~!!すっげ~!!」
「すごくきれい~!」
「こんな絶景見たことないわ!」
ソウイチ4人組とシリウス、カメキチは、目の前に映し出された絶景に感動していた。
「こんな高台に、こんなにもでかい湖があるとはな・・・。」
ソウマは驚きつつも、その光景に感動しいていた。
「バルビートやイルミーゼが飛んでて、ものすごく幻想的だわ・・・。」
「そうですね・・・。」
コンとライナ、ドンペイも、目の前に映し出される光の演出に心を奪われていた。
「ここは、地下から絶えず水が湧き出ることで、大きな湖になっているのです。湖の中央に、光っているものが見えますでしょうか?」
ユクシーの言うほうを見ると、確かに、何かが明るい光を放っていた。
「あの、湖の底からのびている青緑色の光のこと?」
モリゾーが聞いた。
「前に行って、よく見てください。」
みんなはぎりぎりまで近づいて光を見た。
「(なんだ?あれ・・・。なんでかわかんねえけど、あれを見てるとすっげえどきどきする!)」
「(なんだろう?この胸騒ぎ・・・。何でこんなにどきどきするんだろう・・・。)」
ソウイチとソウヤは同じことを思っていた。
ソウマも、その光をただじっと見ていた。
「うわ~、きれいやな~。」
カメキチが感嘆の声を上げた。
「でも、あれってなんなんでしょう・・・。すごく不思議な感じがします・・・。」
ドンペイも、あの光に何かを感じていた。
「あれは・・・、時の歯車です。」
「ええええええ!?あ、あれが時の歯車!?」
ユクシーの言葉を聞いてみんなびっくりした。
時の歯車といえば、前にも大問題になったいわくつきのもの。
驚かないはずがなかった。
「そうです。あの時の歯車を守るために、私はここにいるのです。これまでにも、ここに進入してきた者がいましたが、そのたびにグラードンの幻影で追い払ってきたのです。」
「そ、そうだ!あのでかぶつはいったいなんだったんだ?」
突然思い出したようにシリウスが聞いた。
「あれは、私の念力で生み出したものです。このように・・・。」
すると、またあのグラードンが目の前に現れた。
「わあああああ!!」
「ひいいいいい!!」
「ちょちょちょちょちょ!!」
みんなびっくりして3mほど下がった。
「驚くことはありません。先ほども申しましたが、これは私が作り出した幻なのです。あなた達は幻と戦っていたのです。」
「えええ~!?ってことは、あれ本物じゃなかったの~・・・?」
必死に戦った相手が幻とわかっては、気が抜けるのも無理はないだろう。
「そして、あなた達のように幻影に打ち勝ち、ここに到達するものもいましたが・・・、そういったもの達には、今度は私が記憶を消すことによって、私はここを守り続けてきたのです。」
「記憶を・・・、消す・・・。」
その言葉を聞いて、モリゾーとゴロスケは大事なことを思い出した。
「そうだ!ユクシーに聞きたいことが・・・。ここにいるのは、ソウイチとソウヤって言うんだけど、もともとは人間なんだって。」
モリゾーが説明した。
「え?人間?」
「そうだ。ちなみに、オレも元人間で、この二人はオレの兄弟だ。」
ソウマも言った。
「だけど、人間のときの記憶がほとんどないんだ・・・。だから、前に俺達はここでお前にあって、記憶を消されたのかもしれないって思ったのさ。」
ソウマはユクシーに説明した。
「どうだ?なんか、覚えてることとかねえか?」
ソウイチも聞いた。
「・・・いえ。残念ながら、人間が来たことは一度もないです。それに、私が記憶を消すのは、この霧の湖に来た記憶のみです。」
「記憶を全部消す力はないってか・・・。」
ソウマはため息をついた。
「はい。ですから、あなた方三人が記憶をなくされ、ポケモンになってしまったのは、また別の原因ではないでしょうか。」
「そっか~・・・。なんか手がかりがあると思ったのにな~・・・。」
ソウイチは残念そうに言った。
「(でも、妙だな・・・。ソウイチ達は、オレのことや基本的なこと以外は全て記憶がない。オレは、ここに来る前の記憶はだいぶはっきりしてる。分からないのは、家を出てからここに来るまでの間の記憶と、なぜここへ来たのか、その目的が思い出せない・・・。いったい、何でオレはここへ来たんだ・・・?)」
ソウマはあれこれと考え事をしていた。
「そっか~・・・。どうやら二人はここにきてないみたいだね・・・。」
「ユクシーに聞けば何か分かると思ったんだけどな~・・・。」
モリゾーとゴロスケは残念そうに言った。
「時の歯車かあ♪残念♪時の歯車はさすがに持って帰っちゃだめだもんね♪」
聞き覚えのある声がしたのでみんなが振り返ると、そこにはなんとプクリンがいた。
「プ、プクリン!!」
みんながびっくりするのも無理はない。
なぜなら、プクリンはグラードンの像の近くでソウイチ達を見送ったからだ。
なぜここにいるのか、それは、ソウイチ達が霧の湖を目指しているときのことだった。
ドクローズの毒ガススペシャルコンボにやられたかのように思えたプクリンだったが、なんと、全くにおいを感じなかったのだ。
これはさすがのスカタンクも大慌て。
別の攻撃を仕掛けようとするが、プクリンの目つきが突然真剣なものに変わり、目にもとまらぬ速さでドクローズをこてんぱんにやっつけてしまったのだ。
ドクローズは今も、石像の近くで気を失っていることだろう。
その後、プクリンはソウイチ達を追いかけてここまで来たのだ。
「この方は・・・?」
プクリンのいきなりの登場で、ユクシーは困惑していた。
「俺達のギルドの親方だ。悪いやつじゃねえから安心しな。」
ソウイチが説明すると、ユクシーも納得したようだ。
プクリンは、ユクシーに挨拶したり、グラードンの幻影をぐるぐる周って眺めたりと、かなりハイテンションだった。
「それにしてもすばらしい景色だよね~♪きてよかったよ~♪ルンルン♪」
親方とは思えないほど無邪気な喜び方だった。
ソウイチ達はその様子を、ただ呆然と見ているだけだった。
一方そのころ、ギルドメンバー達は霧の湖を目指して進み、ようやく到着したところだった。
「ふうっ。やっとついたですわ。」
キマワリがほっと一息ついた。
「一息なんてついてなんかいられないぞ。急ぐのだ!」
ダグトリオがせかす。
「ヘイ!あっちにだれかいるみたいだぜ!」
「行ってみよう!」
みんながぺラップを先頭についていくと、目の前に現れたのはグラードンの幻影だった。
しかし、それを知らないみんなは大いに驚いた。
「ぎょええええええええええええ!?」
「グ・・・グ・・・グ・・・グウウウ・・・。」
「ハッキリ言ってよ!グラードンって!!」
「キャアアアアアアア!!」
「ヘ、ヘイ!おいら食べてもまずいぞ!食わないでくれえええええ!!」
みんな大騒ぎの大慌て。
そんな中に響き渡るのんきな声。
「やあみんな♪どうしたの?」
声をかけたのはプクリンだった。
「お、お、親方様~!?」
みんなプクリンがいることでさらにびっくり。
「そんなことより、みんな見てごらんよ♪今丁度噴き出し始めたんだ♪」
「へっ・・・?」
みんなが湖の方を見ると、湖の真ん中から噴水のように水が噴き出していたのだ。
それが、時の歯車の放つ光と、バルビートやイルミーゼの光と調和して、何とも言えない不思議な光景を放っていた。
「うわ~、きれい・・・。」
「きれいでゲスね~・・・。」
チリーンとビッパはうっとりしていた。
「この湖は、時間によって間欠泉が噴き出すんです。まるで噴水のように。そして水中からは時の歯車が、また、空中からはイルミーゼとバルビート達が噴水をライトアップして、あのような美しい光景になるのです。」
ユクシーの説明を聞いて、みんなはさらに絶景に心を奪われた。
「きっと、霧の湖のお宝って、この景色のことだったんだね。」
モリゾーがうっとりしたように言った。
「ソウイチ、ソウヤ、見てる?」
「ああ。しっかりみてるぜ。」
「もちろん見てるよ。」
二人は答えた。
「本当にきれいだよね。ソウイチ達の過去が分からなかったのは残念だけど・・・。でも、オイラ、ここに来れて、みんなと一緒にこんなきれいなものを見れて、本当にうれしいよ。」
「僕も、遠征に来て良かったって本当に思うよ。」
モリゾーとゴロスケの顔には、穏やかな笑顔が広がっていた。
「まあな・・・。でも、そのうちわかる時が来るさ。」
ソウイチはにっと笑った。
「本当にきれいね・・・。」
「ああ・・・。カメラがあったら、写真に残しておきたいな。」
ソウマとライナはラブラブムード満点だった。
カメキチは邪魔をしないように、少し距離をとっていた。
「(俺たちのことを、ユクシーは知らないって言ってた。でも、それならなんで俺たちはここを知ってたんだ?あの時の歯車を見ると、なんかドキドキする・・・。オレの記憶と関係があるのは、もしかしてこれなのか・・・?)」
「ソウマ・・・?ソウマ!」
「・・・え?」
考え事をしていたので、ソウマはライナの声が聞こえていなかった。
「もうおろしてくれて大丈夫よ。すっかり痛みが消えたわ。」
ライナは痛みがあった足を動かして見せた。
「これならひとまず大丈夫だな。でも、無理はするなよ?また痛くなったらいつでも言えよ。おぶってやるから。」
ソウマはライナの足を見て、ほとんど痛みが引いたと判断した。
「ずっとおんぶしてくれてありがとう。ソウマの背中、あったかかったよ。」
ライナは笑顔でソウマに言った。
「いいってことよ。けがが治ってよかったぜ。」
ソウマは照れているのか、少し顔が赤くなっていた。
周りから見れば、もう立派なカップルといっても過言ではないだろう。
そして、噴水が終わったところで、みんなは引き揚げることにした。
「色々とお騒がせしました♪そしてほんとに楽しかったよ♪ありがと~♪ともだち♪ともだち~♪」
いつもの調子で、プクリンはユクシーに礼を言った。
「私は、あなたたちの記憶は消しません。あなたたちを信頼しているからです。ですので、ここのことは秘密にしていただけないでしょうか?」
ユクシーはおずおず尋ねた。
「うん。ありがとう!わかってるよ♪ここのことは絶対に誰にも言わないよ♪プクリンのギルドの名にかけて。」
この時、いつものプクリンよりはしっかりとした口調のようにソウイチ達は感じた。
「よろしくお願いします。」
ユクシーは深々と頭を下げた。
「それじゃ。僕たちはそろそろおいとまするね♪ペラップ!」
別れのあいさつを言うと、プクリンはペラップに声をかけた。
「はい、親方様~!それではみんな、ギルドに帰るよ~!!」
「おお~!!!」
ペラップの掛け声に、みんな答えた。
こうして、笑いあり、涙あり、感動ありの遠征は幕を閉じたのだった。
それと同時に、シリウスとコンのギルドでの生活も、終わろうとしていた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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