ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第二十八話 ライナの里帰り 前編
シリウスたちを見送ってから部屋に帰る途中、ライナはふとある考えを思いついた。
ソウマを呼び止め、その考えを話した。
「ねえソウマ、里帰りしてもいい?」
「え?里帰り?」
ソウマは一瞬何のことか分からなかった。
「そうよ。最近両親に会ってないから、久しぶりに里帰りしようかな~と思って。」
「ああ~、なるほどな。そういやオレも長い間あってないよな~。」
ライナが両親に会うのは、ソウマと探検隊を結成して、家を出て以来なのだ。
「ってことは、もう6年にもなるのか・・・・。」
ソウマは昔のことを思い出していた。
あれはもう6年ぐらい前、森で気を失っているソウマを、ライナが家まで運び手当てをしたのだ。
そのとき、家にはライナの両親もいて、ソウマも話をしたことがあったのだ。
そのあと、ライナは決心を固め、心配する両親を説き伏せ、ソウマと探検隊を始めたのだった。
「お父さん達、元気でやってるかしら・・・・・。」
ちょっと心配気味なライナ。
6年もあっていなければそう思うのも当然だろう。
「それを確認するための里帰りだろ?たまには親子水入らずの時を過ごすのもいいんじゃねえのか?」
ソウマも賛成のようだ。
「ありがとう、ソウマ。いっしょに来てくれる?」
「もちろんいいぜ。オレも挨拶しておかねえとな。あ、でも休日の申請やらないといけねえんだ・・・。まあ、三日ぐらいは大丈夫だと思うけどな。」
というのも、ギルドには何回かに一回、休日をとることができる。
しかしかなりまれで、期間もそこまで長くはないのだ。
ソウマは早速ぺラップのところへ申請に行った。
「里帰り?」
「ああ。たまってた休日を使おうと思ってな。もう5年も仕事休んでないんだ。1ヶ月分ぐらいはあるんじゃないのか?」
「では、調べてくるからちょっと待っててくれ。」
ぺラップはそう言うと、プクリンの部屋へ入りしばらく出てこなかった。
10分ぐらいたって、ソウマが少しいらいらしているとようやく出てきた。
「待たせたな。調べた結果、お前たちが取れる休日は8日だ。」
「8日!?そんなバカな!!5年分でたったそれだけか!?」
ソウマはぺラップの言うことが信じられなかった。
「ソウイチ達が加わったから、その分休日が減ったんだ。あの4人は入ったばっかりだから、本当は休日は取れないんだよ。一緒に取れるだけでもありがたいと思いな。」
ぺラップのいうことは若干カチンと来たが、間違っている部分はどこもなかった。
「仕方ねえな・・・。じゃあそれで頼む。」
少しがっかりしたが日帰りよりはましだと思い、ソウマは休日を申請した。
そして、部屋に戻ってみんなにこのことを話した。
「里帰り?仕事休んで大丈夫なのか?」
早速疑問を投げかけたのはソウイチだ。
「話はさっきつけてきた。とりあえず休めるのは8日間、その間にライナの故郷へ里帰りしようと思う。どうだ?」
ソウマはみんなに聞いた。
「オレは別にええで?ライナのオトンとオカンにもおうてみたいしな。」
カメキチは賛成のようだ。
「ボクもいいですよ。」
ドンペイも右に同じ。
結局全員賛成で、明日の朝出かけることになった。
翌朝、みんなは準備を整えて基地を出発した。
ライナの故郷の森まではかなりの距離があり、2日もかかってしまった。
そして3日目、ようやく森の入り口にたどり着いた。
「ここが入り口ですか~・・・。」
ドンペイは背の高い木々を見上げて言った。
「この奥が私の住んでいたところよ。道案内するから、みんな私についてきて。」
ライナが先陣を切って歩き出した。みんなもそれに続く。
行く先々には草が生い茂り、それをいちいちかき分けて進まなければならなかった。
しばらくかき分けていくと、突然上から石が降ってきた。それも何個も。
「いたたたた!!な、なんなんだよ!!」
ソウイチが上を見上げると、ピカチュウが木に座っていた。
年齢はソウヤよりちょっと下ぐらいだろうか。
「ちょっと!!危ないじゃないか!!」
ソウヤが怒った。
「黙れ侵入者!!村を荒らすやつは僕がやっつけてやる!!」
ピカチュウが言った。
「ちょっと待ってくれ!俺達はただ・・・。」
ソウマが説明しようとしたが、向こうは聞く耳を持たずどんどん石を落としてくる。
「いててて!!やめえやこら!!」
「痛いです~・・・。」
「わあああ!!いてっ!!」
みんなあたりを逃げ回った。
「まいったか!!けがしないうちにさっさと・・・。」
ピカチュウのことばが途中で途切れたかと思うと、木の上からころがり落ちてきた。
ライナがアイアンテールで木を思いっきりゆすったのだ。
「いたたたた・・・。」
ピカチュウはぶつけたところをさすっていた。
「いい加減にしなさい!!本当にケガでもしたらどうするつもりなの!!」
ライナはものすごく怒った。
年下だということが分かっているからだろうか。
「うるさい!!侵入者のくせ・・・、え?」
ピカチュウが突然黙った。そしてその後に出てきたのは・・・。
「ね、姉ちゃん・・・?」
「え?」
ライナは一瞬意味が分からなかったが、ピカチュウの顔をまじまじとみつめると・・・。
「まさか、ヒカル・・・?」
「えええええええええええええ!?」
みんなびっくりだ。ライナに兄弟がいるとは思ってもみなかったのだ。
でも一番びっくりしていたのはライナだった。
「ヒカル!!どうしてここにいるの!?」
「姉ちゃんこそなんでいるの!?もしかして探検隊やめたの?」
「ばかねえ。やめるわけないでしょ?里帰りよ、里帰り。」
「な~んだ~、そうだったのか~・・・。姉ちゃん、お帰り!!」
そういってヒカルはライナに抱きついた。
「全く甘えんぼなんだから・・・。ただいま、ヒカル。」
すこしあきれてはいたものの、ライナは自然と笑顔になった。
そして、ヒカルの頭をやさしくなでた。
「あの~、話が見えないんだけど・・・。」
とうとうゴロスケが口を開いた。
「あ、ごめんごめん。この子はヒカル。私の弟なの。」
ライナがヒカルを紹介した。
「さっきは石を投げてごめんなさい・・・。てっきり怪しいやつだと思って・・・。最近この辺に怪しいやつがいるって聞いたから、それで・・・。」
ヒカルはすまなさそうに謝った。
「もう、いくら怪しいからって石を投げるのは良くないわよ?それに、もしそれが本当に怪しい人だったら大変なことになるんだからね?」
ライナが注意した。まるでお母さんみたいだ。
「は~い・・・。ごめんなさい・・・。」
「ったく、何が不審者だよ・・・。」
ソウイチはなおもぶつぶつと文句を言っていた。
モリゾーが落ち着かせようとしたものの、なかなか機嫌は直らなかった。
「ヒカル、オレのことも覚えてるか?」
ソウマはヒカルに聞いた。
「え~っと、誰?」
ヒカルは心当たりが全然なかった。
「オレだよ。ソウマだ。」
「え?でも、ソウマは確かマグマラシじゃ・・・。」
ヒカルは少し混乱していた。
「あの後進化したのさ。6年もたったら進化するのも当たり前だろ?」
ソウマは笑顔で言った。
「そういえば、その頭の星型・・・。やっぱりソウマだ!ソウマ、久しぶり!」
ヒカルは今度はソウマにも抱きついた。
「ハハハハ!元気そうで何よりだぜ。」
ソウマもうれしそうだ。
「ったく、アニキになれなれしくしやがって・・・。」
ソウイチは面白くなかった。
そして、ライナとヒカルの案内の元、一行はライナの故郷にたどりついた。
ヒカルは真っ先に家に駆け込むと、両親にライナが帰ってきたことを伝えた。
ライナの両親、父のデンジロウと母のライカが温かくみんなを歓迎した。
二人ともライナが帰ってきてとてもうれしそうだった。
そして、ソウマや仲間達に会えたこともとても喜んでいた。
その夜は、ライナの帰郷を祝って盛大な宴会が開かれた。
「いろいろ、娘のことを面倒見てくれて本当にありがとう。」
デンジロウはソウマに礼を言った。
「いやいや、ライナがいたからこそ探検隊をやろうってことになったんです。感謝するのはオレのほうですよ。」
ソウマは謙遜した。
「まあ、今日はめでたい日だ!ぐぐっとやってくれ!!」
「あ、いえ!オレまだ未成年だから酒は・・・・・。」
「少しの年の差くらい気にしちゃいかん!さあ一杯やってくれ!!」
「いや、それに、オレ酒に弱いんですよ・・・。」
「ちょっとぐらい大丈夫だろう。さあ。」
強引にお酒を勧められてかなり戸惑っているソウマ。
二度あることは三度あるとはこのことだ。
「本当によく帰ってきてくれたわ。何年ぶりぐらいかしら?」
「たぶん、6年ぶりぐらいね。やっぱり帰ってきてよかった。」
親子水入らずの時を過ごしているライナ。とてもうれしそうだ。
「姉ちゃん、冒険とかいっぱいした?」
ヒカルが聞いた。
「ええ、いろんなところを探検したわ。たまには危険なこともあったけど、ソウマやみんながいてくれたから頑張って乗りきることができたのよ。」
ライナは昔を思い出すようにいろいろなことを話した。
初めてソウマと一緒に探検したダンジョンのこと、カメキチやドンペイという仲間ができたこと、そしてソウイチ達という兄弟がいたこと、ライナの話が尽きることはなかった。
そしてその話を、二人とも飽きることなく楽しそうに聞いていたのだ。
「ソウマ君はあなたにとってとっても大切な人なのね。」
ライカが言った。
「ええ。かけがえのないパートナーだもの。」
「でもさあ、それだけじゃないんじゃない?姉ちゃんもしかしてソウマのこと好きなんじゃないの?」
ヒカルがニヤニヤしながら聞いた。
「ちょ、ちょっと!!何バカなこと言ってるのよ!!」
ライナは顔を真っ赤にして言った。
図星なのは見え見えだ。
「あ~、赤くなった~!やっぱり好きなんだ~!!」
「いい加減にしないと本気で怒るわよ!!」
「うわあ!逃げろ~!!」
「こらあ!!待ちなさいヒカル!!!」
ダッシュで逃げるヒカルを追いかけていくライナ。
「暗いから森の奥まで行っちゃだめよ!!」
ライカが遠くから声をかけた。
「はあ、はあ、はあ・・・。姉ちゃんも冗談が分かんないんだから~・・・。何であそこまで本気にするかな~・・・。」
ヒカルはライナに見つからないように木の陰に隠れていた。
本気にするのは、もちろん本人がそう思っているからなのだが。
「だけどあの調子だと、絶対ソウマのこと好きだよね。なんで思いきって告白しないのかな~・・・。」
ガサガサ・・・。突然近くで音がした。
「うわ・・・。見つかったかな・・・?」
しかし、それはライナではなかった。
この辺をたまり場にしているごろつきども、例の怪しいやつらだった。
「う・・・、うわああああああああああ!!!!」
「い、今の声は・・・、まさか!!!」
ライナは叫び声を聞いて、ヒカルだと直感した。
そして、声のする方向へ全速力で駆けだした。
「おいてめえ!なにうろちょろしてんだよ!ああ!?」
親玉のザングースは、ヒカルの耳をつかんで持ち上げるとすごんだ。
ヒカルはあまりの恐さに何も言うことができなくなっていた。
「まさか、俺達をここから追い出しにきたのか?」
ザングースは表情を変えずに聞いた。
「ち、違うよ!僕はただ・・・。」
「とにかく、俺たちのことを知られたからには黙って返すわけにはいかねえ。ここで消えてもらうしかねえな。」
ザングースは鋭い爪を上にかざした。
「(もうだめだ・・・。助けて・・・。姉ちゃん・・・!!)
「あんたたち、何やってるの!!!」
間一髪でライナは間に合った。
「ん~?なんだこのアマは?」
「姉ちゃん!!!」
「弟に手を出したら承知しないわよ!!!」
「ほう~、威勢のいい女だな。だが、この数を相手にただですむと思ってるのか?」
ザングースの周りにはストライクやニューラなどがいて、とてもライナ一人で戦える相手ではなかった。
しかし、ライナはひるまなかった。
「上等よ!!弟に手を出すやつは私が許さないわ!!」
「いいだろう!かかってこい!!」
「ライナ~、ライナ~!!どこいったんだ・・・?」
そのころ、酒攻めを免れたソウマはライナを探していた。
「ソウマ君~!」
振り返ると、ライカがいた。
「あ、ライカさん。ライナを探してるんだけど、どこに行ったか知りませんか?」
「それが、ヒカルを追いかけて森のほうへ行ったっきり帰ってこないの・・・。」
「なんだって!?」
「なかなか戻ってこないから、私心配で・・・。」
ライカはおろおろしていた。
さっきヒカルが言っていた、怪しいやつという言葉がソウマの頭をよぎった。
「オレ、ライナを探してきます!」
そう言ってソウマは森のほうへと駆け出した。
「あ、ちょっとソウマ君!!」
ライカがとめるまもなく、ソウマは森の奥へ走り出した。
「きゃあああああ!!!」
「ハハハハ!!こいつ口では偉そうなこと言ってるけどちっともたいした事ねえじゃねえか!!」
ザングースはなおも傷ついたライナをいたぶっていた。
いくらライナが経験をつんでいるからといっても、こう数が多くてはとても全員を倒すことはできなかった。
「姉ちゃん!!」
ヒカルは助けに行こうとしたが、ニューラががっちりとつかんでいて身動きが取れない。
「く、くそお・・・。」
もうライナの体はボロボロだった。これ以上はとても戦える状態ではなかった。
「これで終わりだ!!」
ザングースが攻撃をしようとしたその時・・・。
後ろから火炎放射が飛んできた。
「!!!!!」
ザングースはかろうじてよけた。
「だ、誰だ!!!」
「てめえ・・・、オレの仲間に何やってんだ・・・?」
ソウマが間一髪かけつけたのだった。
「そ、ソウマ・・・!!」
「なんだてめえは!?お前ら、やっちまえ!!!」
ザングースの命令で、ほかのごろつきが一斉に攻撃を仕掛けたが、ソウマのだいもんじで粉砕された。
「オレの仲間をひどい目にあわしたらどうなるか、わかってんだろうな・・・?」
ソウマの目は怒りに燃えていた。グラードン戦の、あのときの目だった。
「オレの仲間を痛めつける奴らは、絶対に許さねえ!!!」
ソウマはごろつきどもにとびかかり、片手で次々と投げ飛ばしていった。
木に向かって投げ飛ばしたので、ごろつきはみんな目を回していた。
そして、ソウマは呆然としているザングースにつかつかと歩み寄り、首根っこを押さえて腹にげんこつを叩き込んだ。
あまりの衝撃に、ザングースは気絶してしまった。
ライナとヒカルは、ただ呆然とその様子を見ていた。
「ライナ、大丈夫か?」
ソウマはライナ達のもとへ駆け寄った。
「ええ、これぐらいなら・・・。」
とはいえ、ライナの体には無数の傷跡があった。
かなりひどいことをされたのだろう。
痛みを我慢しているのは、ソウマには分かっていた。
「無理すんな。今無理をしたら余計悪くなる。」
そう言うと、ソウマはライナにマントを掛け、背中に背負うとそのままもとに場所へ帰り始めた。
「ちょ、ちょっとソウマ!!大げさなことしないでよ!私ちゃんと歩けるから!それにヒカルも見てるのに・・・。」
ライナはものすごく恥ずかしそうだ。
何しろ背負われるのは今回で二度目なのだから。
「いいから。しばらく休んでな。」
「う、うん・・・。ソウマ・・・、迷惑かけちゃってごめんね。」
ライナは申し訳なさそうに謝った。
「気にすんなよ。それに、ヒカルのことを助けようとしたのは、すごく立派だと思うぜ。」
ソウマは優しく言った。
「ありがとう・・・。でも、本当にごめんね・・・。前も背負ってもらったのに、今日まで背負ってもらうなんて・・・。」
ライナは少し嬉しかったが、それでも、ソウマに迷惑をかけているという気持ちは残っていた。
「だいぶ気温も下がってきたからな。このほうがあったかいだろ?」
「うん・・・。ありがとう・・・、ソウマ・・・。」
ライナはソウマの背中に顔をうずめた。
気温はだんだん下がってきていたが、ライナは心も体もすごくあたたかかった。
「(やっぱり二人ってお互いのこと好きなんじゃないかな~・・・。)」
声には出さないが、二人の様子を見てひそかに思うヒカルだった。
家に帰ってくるとみんなが心配していた。
騒ぎの原因を作ったヒカルは両親にこっぴどく怒られたが、ソウマが仲裁してなんとか許してもらった。
ライナのほうは、ソウマの持ってきた特効薬を飲んで奥の部屋で寝かされた。
「うちの子供達が迷惑をかけて本当に申し訳ない・・・。せっかくの宴会が台無しになってしまったな・・・。」
デンジロウはすまなそうに謝った。
「いえいえ、謝ることないですよ。最悪の事態は回避できたし、ライナも薬を飲んだからきっと元気になりますよ。」
「本当にありがとうね、ソウマ君。あなたみたいな人と出会えて、ライナも本当に幸せだわ。」
「いや~、オレみたいなやつで幸せだなんて言ってもらえるとはな~・・・。」
ソウマは少し照れた。
ソウイチがニヤニヤしていたのは言うまでもない。
そして、みんなもそれぞれ寝床につき、帰郷第一日目の夜は更けていった。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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