ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第二十七話 届け コンの想い! さよならマスタースパーク 後編
「はあ、はあ・・・。やった・・・。」
モリゾーのほうも、立っているのがやっとだった。
「モリゾーさん!大丈夫ですか!?」
モリゾーが振り返ると、そこには心配そうにモリゾーを見つめるコンの姿があった。
「コン!う、動いて大丈夫なの!?」
「はい、まだ痛みますけど、もう大丈夫です。それより、さっきの技って・・・。」
「オイラにもわからない・・・。あいつに負けたくない一心で攻撃してたら、あんな技が・・・。」
モリゾーは、なぜリーフストームが使えたのか全く分からなかった。
それに、リーフストームはたまご技で、普通にレベルを上げただけでは覚えない技なのだ。
「あれは、リーフストームっていう特殊な技です。遺伝的にしか覚えられない技のひとつなんです。」
「遺伝的・・・。」
コンの言葉に、モリゾーは心当たりがあった。
モリゾーも一度、その技を見た記憶があるのだ。
それは、父グラスが使っていたのだった。
グラスも祖父からリーフストームを受け継ぎ、モリゾーもまた、グラスからリーフストームを受け継いでいたのだ。
しかし、本人は今までそれを知らなかったため、本気の本気のときにしか技が発動しなかったのだ。
「きっと、モリゾーさんも覚えていたんですね。今まで使ってないだけで。」
「うん・・・。そうだと思う。」
モリゾーは、改めて自分の奥に秘められていた力を感じた。
「私を、守ってくれたんですか?」
コンはモリゾーに聞いた。
「当たり前じゃないか。大事な仲間だもの。」
モリゾーは笑顔で言った。
「ありがとう・・・。モリゾーさん。」
コンは赤くなってお礼を言った。
「あ、そういえば。さっき言いたいことがあるって言ってたけど、なんだったの?」
「え!?あ、ああ・・・。」
コンはいきなりだったのであたふたした。
しかし、深呼吸して落ち着きを取り戻した。
「あの・・・、私・・・、出会ってから・・・、ずっとモリゾーさんのことが・・・。」
コンが言おうとすると・・・。
「あの~・・・。探検隊の方ですか?」
二人が声の主を探していると、岩陰からクヌギダマが出てきた。
「もしかして、探しに来てくれたんですか?」
「うん!よかった~、見つかって。」
「本当にありがとうございました。怖くてずっと隠れてたんです。」
クヌギダマは丁寧にお礼を言った。
「もう心配いらないよ。それじゃあ、ギルドに転送するね。」
モリゾーはバッジで、クヌギダマを転送した。
「これで依頼は解決だね!さ、ソウイチ達を探しに行こうか。」
「は、はい・・・。」
モリゾーはとても嬉しそうだった。
その反面、コンはまたしても告白するチャンスを失ってしまい、すっかり落ち込んでしまった。
その後、ソウイチ達とは無事に合流でき、ソウマ達とも合流しみんなでギルドへと帰っていった。
「どう?気持ちは伝わった?」
ライナは早速コンに聞いてみた。
「だめでした・・・。肝心なところでどうしても・・・。もう、無理なんでしょうか・・・。」
コンはすっかり落ち込んでしまった。
「まだ大丈夫よ。今日が終わったわけじゃないもの。今度こそうまくいくわよ。」
ライナはやさしくコンを慰めた。
コンも、いくらかは気持ちが楽になった。
一行がカフェにつくと、もうすでに準備が終わってみんな待っていた。
そして、一行を見つけるなりペラップが飛んできた。
「いったい主役を連れまわして何をしてたんだい!?みんなまちかねてるんだよ!?」
ものすごく怒っていた。
「だけど、約束の時間より・・・。」
ソウイチが説明しようとすると、ペラップはいつもの調子で話をさえぎった。
「いいわけはどうでもいい!さっさと席についてくれ!」
それだけ言うと、ペラップは自分の席に戻って行った。
みんなは少し頭にきたが、こんな席で怒るのも大人げないので我慢することにした。
「え~、それでは、全員がそろったので、シリウスとコンの送別会を始めようと思う。二人のこれからのさらなる活躍を祝って、そして、遠征に貢献してくれた感謝の気持ちを込めて、乾杯!」
「かんぱ~い!!」
ペラップが開会宣言のようなものをして、送別会が始まった。
といっても、中身は基本宴会のようなもの。
堅苦しいことはなしにして、最後まで楽しい時を過ごそうというプクリンの計らいだった。
「さあソウマ、お前も飲んだ飲んだ!」
酔った勢いでドゴームがソウマに果実酒を勧める。
「いや、オレ未成年だからお酒は・・・。」
「ちょっとぐらい大丈夫だよ!ほら!」
「で、でも・・・。」
なんとかお酒を回避しようとするソウマ。
実際ソウマは19歳、飲めば立派な法律違反である。
「アニキも大変だな~。」
そんなのんきなことをいいながらジュースを飲んでいるのはソウイチ。
飲酒は大変ですまされる問題ではない。
「そんなこと言ってる場合じゃないよ・・・。しょうがないな~・・・」
ソウヤはソウイチののんきさに呆れ、ソウマを呼びに行った。
「ハハハハ。だけど本当にお前も変わらないよな。最後に会ったときのまんまだぜ。」
シリウスは笑いながら言った。
「そういうお前だってちっとも変わってなかったぜ?あの人を挑発する嫌みなところとか、わがままなところとか。」
ソウイチもニヤニヤしながら返す。
「なにを!?・・・ま、いいや。今日でいったんお別れだからな。」
さすがのシリウスも、当分会えなくなると思うと少し寂しいのだった。
こんな風なやりとりができるのも今のうちなのだ。
「向こうでも元気でな。また遊びに来いよ。」
「お~っと、そういう湿っぽい話は今日はなしにしようぜ。別れのあいさつは明日でもいいんだからよ。」
ソウイチの寂しげな言葉を聞いて、シリウスはにっと笑った。
「それもそうだな。」
そんなシリウスの顔を見て、ソウイチも笑顔になる。
「そういや、コンはどこだ?さっきから見かけねえけど・・・。」
「ほんとか?そういやモリゾーもいねえな・・・。どこ行ったんだ?」
二人は辺りをきょろきょろ見回したが、どこにも二人の姿はなかった。
「(コン、しっかりね。)」
ライナには二人のいなくなった理由が分かっていた。
そして、今度こそ成功するようにと心の中でコンを励ました。
騒がしいカフェとは打って変わって、ここは近くの海岸。
コンはとうとうモリゾーを連れだし、告白する最後のチャンスをえたのだ。
「なんどもなんどもすみません・・・。でも、どうして言いたいことがあって・・・。」
「今度は邪魔は入らないと思うから大丈夫だよ。」
モリゾーはもちろん、告白のことを意識していったわけではなかった。
ただ、コンがよっぽど大事な話があると思ったのだ。
「あ・・・、あの・・・。」
コンはなんとか話し出そうとしたが、極度にあがってしまい口がそれ以上開かなかった。
「(がんばれ・・・、がんばるんだ・・・!!)あ、あの・・・!」
「うわ~、きれいだ~。」
「え?」
コンがモリゾーの方を見ると、モリゾーは何かを見ていた。
その視線の先には、きれいな満月がのぼっていた。
「うわ~・・・、ほんとですね~。」
コンも思わず見入ってしまうほど、その満月は美しかった。
そして、コンは改めて決意を固めた。
「あの、モリゾーさん・・・!」
「ん?なあに?」
「私・・・、モリゾーさんのことがずっと・・・、大好きでした!!どうか、つきあってください!!」
とうとうコンは、モリゾーに告白した。
しかし、告白された本人はぽかんとしていた。
「え・・・?今、なんて・・・?」
「だから、私と、お付き合いを・・・。」
さすがに二度言うのは恥ずかしいので、コンの顔は真っ赤になっていた。
「えええ!?お、オイラなんかでいいの!?でも、シリウスは?シリウスはいいの?」
モリゾーは、いつも一緒にいるシリウスのことが気にかかった。
「シリウスは・・・、他に好きな人がいるんです。人間の世界に。」
コンはぽつりと言った。
「人間の世界?」
「はい。今でもその人のことを思い続けているんです。それに、シリウスはどちらかっていうと、私のお兄さんみたいな存在だって思ってます。無鉄砲で自分勝手だけど、独りぼっちだった私のためにいろいろと気を遣ってくれる優しいお兄さんみたいな気がするんです。だから、恋愛的な感情で好きっていうのとは違うんです。」
どこか恋人のような気もするが、コンにはその気はないようだ。
「そうなんだ・・・。でも、オイラなんかでいいの?」
それでもやはり、モリゾーは自分の耳が信じられなかった。
まさか自分が告白されるとは思ってもみなかったのだ。
「やっぱり、だめですか・・・?」
コンはふられたと思ってうなだれた。
「ち、違うよ!そんなのじゃなくて、ただ、告白されるのが初めてだったから動揺して・・・。」
「じゃ、じゃあ・・・。」
「うん。こんなオイラだけど、よろしくね。」
モリゾーは笑顔で言った。
コンの顔にも、うれしさがあふれ出た。
そして、コンはモリゾーの顔にキスをした。
ファーストキスをされたモリゾーはすごく真っ赤になったが、まんざらでもない照れ笑いを浮かべていた。
帰り道、二人は仲良くならんで帰った。
カフェに入ってきた二人を見て、みんなはその様子を別段不思議には思わなかったが、ライナだけは、コンにおめでとうとこっそりつぶやいた。
翌朝、シリウスとコンは早めに出発することにした。
見送りはもちろん、アドバンズだ。
「いよいよお別れか。なんだか寂しくなるな。」
ソウマがしんみり言った。
「またすぐに会えるって!そう悲しい顔すんなよ!」
シリウスは笑顔でソウマに言った。
「向こうでもしっかりやれよ。体にきいつけてな。」
「短い間だったけど、本当に楽しかったよ。また遊びに来てね。」
みんな口々に二人に別れのあいさつをした。
「ああ!きっとまた来るさ!」
「いろいろ、お世話になりました!」
そして、二人は昇ってくる朝日を背に、自分たちの救助基地へ向けて出発した。
みんなは、二人の姿が見えなくなるまで見送った。
「(コン、元気でね。きっとまた、会えるよね。)」
モリゾーは、心の中でつぶやいた。
きっと、またいつか、会えると信じて・・・。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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