ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第九話 たきつぼのどうくつの謎! 後編
洞窟の中は滝の裏側ということもあってか、水たまりがいたるところにあり、中には湧き水が出ているところもあった。
「はあ~、いい気持ちだぜ~・・・。」
相変わらず水につかるのが好きなソウイチ。
すごく癒された表情をしている。
「もう!これじゃあ水遊びに来たんだか探検しに来たんだかわかんないでしょ!!」
ソウヤがしびれを切らして怒鳴った。
「わ~ったよ!ったくうるせ・・・。」
ソウイチの言葉は途中でとぎれた。
アメタマがみずでっぽうを撃ってきたのだ。
「へばあ!!」
ソウイチはもろに食らい、水たまりの中にひっくり返ってしまった。
「やろお・・・。やりやがったな!!たいあた・・・。」
「十万ボルト~!!」
ソウイチが技を出す前にソウヤが技を放った。
アメタマはあっけなく倒れた。
「ソウヤ!横取りすんじゃねえよ!!」
ソウイチはソウヤに文句を言った。
「そっちが遅かっただけでしょ?誰が技出したってとにかく倒せればいいんだから。」
ソウヤの言うことはもっともだった。
だが、攻撃を仕掛けられた相手を他のメンバーに倒されたのが、ソウイチには我慢できなかった。
そして、落ちている道具を拾いつつ、先へ先へと進んでいると今度はドジョッチが現れた。
「よ~し!今度も決めてやる!!」
ソウヤは意気込んでいた。
「(ん?確かドジョッチは水以外にタイプがあったような・・・。)」
ソウイチが考えを巡らせてるうちにソウヤは十万ボルトを放った。
しかし、ドジョッチは全然平気な顔をしていた。
まったくダメージを受けていなかったのだ。
「な、なんで平気なの・・・?」
ソウヤは呆然としていた。
「ドジョッチはみず以外にじめんタイプも持ってるんだよ!」
ゴロスケが後ろで叫んだ。
「(そうだ!じめんタイプも持ってたんだ!!)」
ソウイチはようやく合点がいった。
「でんきタイプのお前になんか負けるもんか!!」
ドジョッチはどろかけを繰り出してきた。
「うわあああ!!」
ソウヤはよけることができずに正面から泥をかぶってしまった。
全身泥だらけだった。
「ぺっぺっ!!口の中にまで入っちゃったよ・・・。」
ソウヤが顔を拭いていると・・・。
「今だ!!くらええええ!!」
ドジョッチが体当たりをしてきたが、ソウヤは顔を拭いていて反応が遅れた。
「ソウヤ!よけて!!」
ゴロスケが叫んだがもう距離はあとわずか、とてもよけられない。
すると・・・。
「おらああああ!!!」
ドスッ!!
ソウイチが体当たりでドジョッチを吹き飛ばした。
ドジョッチはそのまま壁にぶつかるかと思ったが、体勢を立て直しまた攻撃しようとした。
しかし、モリゾーが間髪をいれずタネマシンガンをお見舞い。
みずとじめんで威力は四倍になり、ドジョッチはひとたまりもなかった。
「ふう~・・・。危なかった~・・・。」
モリゾーはやれやれとため息をついた。
「ぼけっとすんなよ。敵はいつ何やってくるかわかんねえんだぞ?」
ソウイチはソウヤに言った。
「ごめん・・・。それと、ありがとう・・・、ソウイチ。」
ソウヤは謝ると、照れくさそうにソウイチに礼を言った。
「気にすんなよ。それより先はまだまだ長いぜ。大丈夫か?」
「もちろん!まだまだいけるよ!」
みんな元気に返事をした。
「よ~し!この勢いでがんがん行くぜ~!!」
ソウイチのその言葉通り、みんなは出てくる敵を連係プレーで次々と倒し順調に進んだ。
しかし、もうあとちょっとというところで回復の道具が無くなってしまった。
「なんでこんな時に底つくんだよ!!」
ソウイチはいらいらしながら怒鳴った。
「なんだよ!?僕のせいだって言いたいの!?」
ゴロスケはソウイチをにらんだ。
「誰もそんなこと言ってねえだろうが!!」
ソウイチは焦りと怒りで半分切れかかっていた。
「けんかしてる場合じゃないでしょ!!今はこの敵を倒すことが先決じゃないの!?」
ソウヤが二人に怒った。
みんなはドジョッチとアメタマの軍団に囲まれていたのだ。
「んなこといったってどうするんだよ!!モリゾーのタネマシンガンはPP切れ、ノーマル技以外は効果はいまひとつだぞ!?」
ソウイチはソウヤに怒鳴った。
「チャンスだ!!みんなかかれえええ!!」
アメタマの号令で軍団は一斉に襲い掛かってきた。
打つ手なし、やられると思ったそのとき、モリゾーがバッグから青色の玉を取り出した。
その瞬間、敵の姿は消えていた。
「お、お前いったい何やったんだ?超能力か?」
ソウイチはモリゾーに聞いた。
「エスパータイプでもないのにできるわけないでしょ・・・。これだよこれだよ。」
モリゾーはさっきの玉を見せた。
真ん中に穴が開いていた。
「これははらいのけだま。敵ポケモンを他の場所にワープさせることができるんだ。」
モリゾーはみんなに説明した。
「もう~、それがあるなら早く言ってよ~・・・。やられるかと思ったじゃないか!」
ソウヤはモリゾーに怒った。
「ごめんごめん。オイラもさっき気がついたんだ。」
モリゾーは頭をかきながら謝った。
「ま、とにかくこれで危険は回避・・・ん?」
ソウイチがソウヤたちの後ろを見ると、なんと、ドジョッチがまだ一匹残っているではないか。
「お、お前ら!!後ろ後ろ!!」
「え?」
三人が振り返ると、確かにドジョッチがいた。
みんなはあわてて攻撃態勢に入ったが、ドジョッチは襲ってくる気配がない。
「あれ・・・?どうしたんだろ・・・?」
ゴロスケは首をかしげた。
「あのう・・・。お願いがあるんです。僕を仲間にしてもらえませんか?」
ドジョッチは意外な一言を言った。
「な、仲間!?」
みんなびっくりだ。
なにしろこんな経験は初めてだった。
「そういえば、今朝チリーンに友情のベルを鳴らしてもらったんだっけ・・・。」
ゴロスケが思い出したように言った。
「ああ~、そうだったな~。確か仲間ができるって言ってたっけ。」
ソウイチも納得したようだ。
「それで、仲間にしてもらえますか?」
ドジョッチは遠慮がちに聞いた。
「ああ、いいぜ!仲間は多いほうがいいさ。」
ソウイチは二つ返事で承知した。
「あ、ありがとうございます!僕、ドジョッチのローチといいます。よろしくお願いします!」
ローチは丁寧に頭を下げた。
「こちらこそよろしく!」
みんなはローチと握手を交わした。
そして、みんなは順調に奥へ奥へと進み、ようやく最深部へと到達した。
「わあ~、見てよソウイチ、ソウヤ!宝石がきらきら光ってるよ!」
そこにはルビーやエメラルド、ダイヤモンドなどがごろごろしていた。
「うひゃ~、すげえな!!これだけあったら俺オレ達大富豪だぜ!!」
ソウイチは興奮して叫んだ。
「すごいな~・・・。こんなにいっぱいあるのは見たことないよ。」
ソウヤも興味津々だ。
「あ!あそこに大きな宝石があるよ!」
ゴロスケが指さす方を見ると、そこにはなんと周りにある宝石の何十倍、いや、何百倍もの大きさのルビーがあったのだ。
「でかっ!!こんなの今まで見たことねえぞ!!」
ソウイチはものすごく興奮していた。
「でも、よくこんな大きな宝石ができあがったよね・・・。ふつうじゃ考えられない大きさだよ・・・。」
ソウヤもただただ目を見張るばかり。
「これを持って帰ったらみんなびっくりするよ!」
モリゾーはもううれしさ全開だ。
そして、宝石を引き抜こうとした。
「う~ん、う~~~~~ん!!」
しかし、宝石はよほど深く刺さっているのか全然抜けない。
「はあ、はあ・・・。ダメだ、全然抜けないや・・・。」
モリゾーはがっかりした。
「じゃあ、今度は僕がやってみるよ。」
そういってゴロスケも挑戦したが・・・。
「それえええ!!やああああああ!!」
いっこうに抜ける気配がない。
「相当硬いよこれ・・・。」
とうとうゴロスケもあきらめてしまった。
「ったく、しょうがねえなあ・・・。オレが引っこ抜いてやるよ。」
そう言ってソウイチも挑戦したが・・・。
「おりゃあああああああああ!!!ぎぎぎぎぎぎ!!!!」
まったく抜ける気配がない。
「(くそお!!なんでこんなに硬いんだよ!!)」
あきらめずに引っ張り続けると、とうとう手がすべってひっくり返ってしまった。
「いてててて・・・。」
ソウイチはぶつけたところをさすった。
「ソウイチでもダメか~・・・。やっぱり無理かな~・・・。」
モリゾーはあきらめ半分だった。
「ソウヤはやらねえのか?」
ソウイチが聞いた。
「これ以上ひっぱたって無理だよ。三人もやってるのに。」
ソウヤはいたって冷静だった。
「次こそはいけるかもしれねえじゃねえかよ。あきらめたらそこで終わりだろうが。」
ソウイチが反論した。
「でも、これだけやったのに無理だよ。」
ソウヤは完全にあきらめていた。
「いや、そんなこと無いよ。ソウイチの言うとおり、あきらめたらそこで終わりだもの。オイラ、もう一回やってみる!」
そう言うと、モリゾーはまた宝石を引き抜こうとした。
「う~~~~~ん、う~~~~~~~~~~ん!!!」
さっきよりももっと力を込めて引き抜こうとした。
「しっかし全然抜ける気配がねえなあ・・・。どうなってんだ?」
ソウイチがつぶやいたそのとき、またあのめまいが始まった。
「(ま、またかよ・・・。今度はいったい何なんだ・・・?)」
今度の映像は、滝に飛び込む前に見たのと同じポケモンが、宝石を前に押すと右から水が流れてきて、押し流されていったのだ。
「(い、今のは・・・。)」
ソウイチはあっけにとられていた。
「う~~~~~ん!!う~~~~~~ん!!!だ、だめだ・・・。やっぱり抜けない・・・。」
モリゾーは疲れて引っ張るのをやめた。
「ん?これは・・・。」
モリゾーは宝石を前に押してみた。
「ああああ!!そ、それは・・・!!」
ソウイチは叫んだが、もう手遅れだった。
突然、ゴゴゴゴという不気味な音があたりに響き渡った。
「おや?どうしたんだろう・・・。」
みんな不思議がっていたが、ふと横を見ると・・・。
なんと、大量の水がこっちに向かって流れてきたのだ。
「でえええええええ!!!」
「うわあああああ!!!水だああああああああ!!!」
「逃げろおおおおおお!!!」
みんな一斉に走り出したが、水の速さに勝てるわけもなみんな流されてしまった。
「わああああああ!!」
「どこまで流されるんだよ~!!」
そして、穴のようなところから噴水のように吹き上げられ、そのまま空高くを飛んでいってしまった。
「・・・あれれ・・・?ここはいったい・・・。」
気がつくと、みんなはいつの間にか別の場所にいた。
「君たち大丈夫?君たち上から落ちてきたのよ?もうびっくりしたわよ!」
そう言ったのは、トレジャータウンにいたヒメグマだった。
他にも、多数トレジャータウンにいたメンバーがいた。
みんなは辺りを見回した。
下を見ると、なんだか暖かかった。
足下にお湯がはってあったのだ。
「ここは・・・どこ?」
ソウヤが聞いた。
「ここは温泉よ。」
ヒメグマが言った。
「お、温泉~!?」
みんなびっくりした。
何しろさっきまで洞窟にいたのだから。
「道理で下が暖かいわけだぜ~・・・。」
ソウイチは納得した。
「よくピンポイントでここに落ちたよね~・・・。」
ソウヤもただただ驚いていた。
「そう。温泉じゃ。ここの温泉は肩こりに効くんで、多くのポケモンが訪れるんじゃよ。」
そう言って出てきたのはコータス、ここの長老だった。
「おぬし、地図はもっとるかの?」
コータスは聞いた。
「ああ、あるぜ。(今度こそは間違えねえぞ・・・。)」
心の中で思いながら、ソウイチは地図を取り出した。
「広げてみなされ。」
ソウイチは地図を広げた。
「ほれ、ここじゃ。ここが温泉の場所じゃよ。」
コータスは湯気の立っている水面のマークを指さして言った。
「ふ~ん、そっかあ。滝の場所がここだから・・・。」
みんなは地図を目で追っていった。
「わっ!見てよ!僕たちここまで流れて来ちゃったんだ・・・。」
ゴロスケはかなり驚いた。
「変なところに落ちなくて助かったぜ・・・。」
「ほんとだね・・・。お湯の上でよかったよ。」
ソウイチもソウヤもほっとした。
「なんと!おぬしたちそんなところから流されてきたのか!?それは大変じゃったのう。温泉でゆっくり疲れを取ってから帰りなされ。」
コータスは笑顔を浮かべていった。
「うん!そうするよ!みんなありがとう!」
モリゾーとゴロスケはみんなにお礼を言った。
「よ~し、温泉といえばこれをやらなきゃな。」
ソウイチが言った。
「え?これって?」
ゴロスケが言い終わらないうちに、ソウイチは温泉のお湯をゴロスケの顔にかけた。
「わわわ!!」
ゴロスケは突然のことでびっくり。
「温泉と言えばかけあいっこだろ!!それそれ~!!」
ソウイチは他のメンバーにもお湯をかけた。
「うわああ!やったな~!」
「こっちも反撃だあ!」
四人は探検のことなんかすっかり忘れ、お湯の掛け合い合戦を始めた。
他のみんなは笑いながらそれを見ていた。
そして、四人は温泉を堪能した後、ギルドに帰ってこのことをペラップに報告した。
「フムフム・・・、なるほど。つまり、滝の裏側には本当は洞窟があって、そこの奥には大きな宝石があり、そこを押すと仕掛けが動いて、なんと温泉まで流された・・・、ということ?」
ペラップはみんなに確認した。
「ああ。間違いないぜ。」
ソウイチは言った。しかしあまり元気がなかった。
「残念ながら、宝石は取って来れなかったけどね・・・。」
モリゾーは顔を曇らせた。
「いやいやいやいや!!そんなことないよ!これは大発見だよ!!」
ペラップは笑顔で言った。
「ほ、ほんと!?」
モリゾー達の顔が輝いた。
「ホントだよ♪だってあそこの滝の裏が洞くつになってるなんて今まで誰も知らなかったわけだし♪」
ペラップはさらに続けて言った。
「そっかあ!発見かあ!」
モリゾーとゴロスケはすっかりうれしくなっていた。
もう笑顔があふれんばかりだ。
「よかったね、二人とも。」
ソウヤも自然と笑顔になった。
しかし、ソウイチだけは腑に落ちないような顔をしていた。
そう、あのめまいのことが気になっていたのだ。
「(あのめまいの時、あの時見たポケモンの影・・・。あのシルエット、アレには見覚えがある・・・。アレは、間違いない・・・、プクリンだ!!)」
「この発見はすごい!早く親方様に知らせなくては♪」
ペラップの浮き足だった言葉で、ソウイチは我に返った。
「あ!ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
「え?ソウイチ、どうしたの?」
モリゾーが聞いた。
「何かあるのかい?」
ペラップも聞いた。
「あのさあ、実は・・・。」
ソウイチは気になっていたことをみんなに話した。
「えええっ!?あの滝には、実は昔プクリンが行ったことがあるんじゃないかって!?」
みんなびっくりした。
あの滝はまだだれも行ったことがないと思っていたのだ。
「いやいやいやいや!!それはあり得ないよ!それだったら、親方様はあそこを調べてこいなんて言わないはずだよ?」
ペラップも驚きを隠せなかった。
「でも、一応確認してみてくれよ。万が一って事もあるからさあ。」
ソウイチはペラップに頼んだ。
「う~ん、そこまで言うなら親方様に確認してみるけど・・・。」
ぺラップはソウイチ達のほうに背を向けた。
「(しかし、せっかくの自分の手柄だというのに、変なやつだなあ。今更だけど、また妙なやつを弟子にしちゃったなぁ・・・。)」
ペラップは心の中で思った。
「どうしたの?」
モリゾーが聞いた。
その言葉でペラップは我に返った。
「いやいやいやいや!!とにかく!今から親方様のところに行って確認してくるから、そこで待ってるんだぞ。」
ペラップはそう言うと部屋の中に入っていった。
そして数十分後、ソウイチがいらいらしながら待っていると、ペラップが部屋から出てきた。
「それで、どうだったの?」
ゴロスケが聞いた。
「親方様に聞いたらしばらく悩んで・・・、その後『思い出♪思い出♪たあーーーーーーっ!!』とかやって、それで、『ああ!!よく考えたらボク行ったことあるかも!』と、おっしゃった。」
ペラップはそのときの様子を忠実に再現した。
他のみんなはすっかり硬直していた。
「つまりは、ソウイチの思ったとおり、たきつぼのどうくつにはすでに行ってたみたいだな。
「はあ~、そっかあ。ガッカリ・・・。せっかく新しい場所を発見したと思ったのに・・・。」
モリゾーは肩を落とした。
「こんな事だったらプクリンも最初から言ってくれればよかったのに・・・。」
ゴロスケの顔にも落胆の色が浮かんでいた。
「親方様は妖精のようなお方だからな・・・。ワタシにも何を考えているのかイマイチよく分からないのだ。まあ、今回は残念だったな。明日からまたがんばってくれ♪」
ペラップはそう言って話を締めくくった。
「ううっ・・・。」
それでも、モリゾーとゴロスケは元気を出すことができなかった。
「あ~あ、ソウイチが余計なこと言うから・・・。二人ともへこんじゃったじゃないか。」
ソウヤがソウイチをにらんだ。
「んなこと言われたって、事実なんだからしょうがねえだろ?今回がダメでも、またきっと次があるさ。」
ソウイチはあくまでも前向きの考えのようだ。
その言葉を聞いて、モリゾーとゴロスケもすこし元気が出たように見えた。
そして、みんなは食事を終え部屋へと帰ってきた。
「はあ~・・・。今日はなんか疲れたぜ~・・・。」
ソウイチがため息をついた。
「はあ~・・・。」
モリゾーはまだすこしがっかりしているようだった。
「モリゾー、ごめんな・・・。オレ、余計なこと言わない方がよかったか?」
ソウイチはやはりさっきのことを気にしているようだ。
「ううん、ソウイチは悪くないよ。プクリンが言ってたことは事実だもの。やっぱり新発見じゃなかったのは残念だけど、オイラすごく楽しかったよ!」
モリゾーは笑顔になった。
「僕も楽しかった!そりゃあ、確かにがっかりはしたよ・・・。でも、今回の初めての探検で、もうわくわくドキドキだったんだ。やっぱり僕、探検隊になってよかったって思うよ。」
ゴロスケも言った。
「そしていつかはこのいせきのかけらの秘密を解く。それがオイラの夢なんだ。もし本当に夢が叶ったら、オイラうれしすぎて死んじゃうかもね!」
モリゾーは笑いながら言った。
「さすがにそれはねえよ。」
ソウイチも笑いながら言った。
気がつくと、みんなが笑っていた。
「でも・・・、ありがとう。」
「へ・・・?」
「こうして探検ができるのも、ソウイチのおかげだもの。あのとき、弱虫なオイラでも勇気がもてたのは、ソウイチがいたからだよ。ソウイチ、本当にありがとう。」
モリゾーはソウイチに丁寧に礼を述べた。
「ボクもソウヤのおかげで勇気が出たんだ。僕とパートナーを組んでくれて本当にありがとう。」
ゴロスケもソウヤに礼を述べた。
「よ、よせよ・・・。照れるじゃねえかよ・・・。」
「僕のおかげだなんて、そんなあ・・・。」
二人とも顔を赤くして照れた。
「あ、そういえば!オイラふと思ったんだけど、ソウイチのめまいが起こる時って、いつも何かをさわったときに起きてない?」
モリゾーが聞いた。
「そういえば・・・、確かにそうだよな。ルリリの叫びを聞いたときも、今回の冒険でも、何かをさわって起きてるよな・・・。」
ソウイチは難しい顔をした。
「何かさわることで、それに関係するものが見えるのかな?」
ソウヤが聞いた。
「さあ・・・、オレにも詳しいことはわからねえよ。」
ソウイチは首を振った。
「あと、ルリリを助けたときは未来が見えたけど、今回は洞窟に行ったプクリンが見えたんでしょ?」
ゴロスケが聞いた。
「ああ。」
ソウイチはうなずいた。
「ということは・・・、今回は過去に起こったことが見えたんだよ!」
モリゾーは興奮して叫んだ。
「つまり、ソウイチは何かさわることでその過去や未来が見える・・・。そう言う特殊能力を持ってるんだよ!!これってもしかしたらとてもすごい事かもしれないよ!!」
ゴロスケも言った。
「そんなにすごいことか?」
ソウイチはあまり実感がわかないようだった。
「すごいに決まってるよ。だって、そうすれば昔のことが分かったり、未来に起こる出来事を予測できるんだから。」
ソウヤが感心したように言った。
「探検だけじゃなくって、困っているポケモンを助けたりもできるし、いろいろのことに役に立つ能力だよ!」
モリゾーはとてもうれしそうだった。
ゴロスケも同じだった。
「まあ、確かにそうだけどよ・・・。でも自由に見れる訳じゃねえからな~・・・。見たいときに見れればもっと役に立つのによ・・・。」
ソウイチは残念そうに言った。
「おい!お前たち!!」
みんなが振り向くと、そこにはペラップがいた。
「親方様がお呼びだ。こっちへきなさい。」
みんなはペラップについて行き、プクリンの部屋に入った。
「親方様。チームアドバンズを連れてきました。」
みんなが部屋に入ると、そこにはソウマ達もいた。
「あ、アニキ!帰ってたのか!?」
ソウイチはとてもびっくりした。
何しろ、夕食の時にも顔を見なかったので、今日は帰ってこないのかと思ったのだ。
それは他のみんなも同じだった。
「ああ、ちょっと予定より長引いちまったがな・・・。おかげで晩飯食いそこねちまったぜ。」
ソウマは照れ笑いを浮かべながら言った。
「なにしろ相手がかなり逃げ足の速いやつだったのよ。いろいろなフロアを追いかけ回してやっと捕まえたのよ。」
ライナが言った。
とても苦労したようだ。
「まあ、細かい話は後にして、親方様の話を先に聞きなさい。」
ペラップが言った。
しかし、プクリンは動く様子がない。
「親方様・・・?」
ペラップがプクリンに近づこうとすると・・・。
「やあっ!君たち今日は大変だったね!」
また突然話しかけられたので、みんな面食らってしまった。
「でも君たちの活躍はちゃんと見てるから安心してね!それで・・・、ここからが本題なんだけど、近々遠征をする予定があるんだよ♪」
プクリンは言った。
「え、遠征??」
モリゾーとゴロスケはなんのことかさっぱり分からないようだ。
「へえ~、また遠征やるんか~。それは楽しみやな~。」
カメキチはうれしそうに言った。
「アニキ、遠征ってなんなの?」
ソウヤが聞いた。
「遠征っていうのは、ギルドをあげて遠くまで探検に行くことさ。当然この近辺を探検するのとは全然勝手が違うから、準備も十分やっておく。ギルドの中からメンバーを選ぶのさ。」
ソウマはみんなに説明した。
「へえ~!」
みんなわくわくした。
「僕はまだ新入りだったから、前回の遠征には参加できませんでしてけど、今回こそはメンバーに入って先輩達といっしょに行きたいです!」
ドンペイは遠征が待ちきれないようだった。
「いつもなら新弟子は遠征メンバーに入れたりしないんだけど、でも君たちすごいがんばってるじゃない!?だから今回は特別に君たちも遠征メンバーの候補に入れることにしたんだよ!」
プクリンは笑顔で言った。
「えっ!?ほ、ほんとに!?」
モリゾーとゴロスケは目を輝かせた。
「すげえなあ、いきなりメンバーに選ばれるなんてよ・・・。」
ソウイチもびっくりしていた。
「こらこら、まだメンバーにすると決まった訳じゃないからな。遠征までにはまだ時間がある。それまでにいい働きをしなければメンバーには選ばれないからな。」
ペラップは念を押した。
「ボクは君たちなら大丈夫だと信じているよ!がんばってね!」
プクリンはソウイチ達を励ました。
「うん!」
モリゾーとゴロスケはもううれしさと興奮で満ちあふれていた。
「ソウイチ、ソウヤ!遠征だって!すごいよね!!なんか急にドキドキしてきたよ!絶対メンバーに選ばれるようにがんばろうね!!」
二人とも目をきらきらと輝かせて言った。
「ああ!もちろんだぜ!!」
「いっしょにがんばろうね!!」
ソウイチとソウヤも笑顔で言った。
「お前らならきっと選ばれるさ。オレ達も応援してるからがんばれよ!」
ソウマもみんなを励ました。
「よっしゃあ!!全員一丸でがんばるぞ~!!」
「おお~!!」
みんなは腕を高く突き上げた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。
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