ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第三十八話 ジュプトルをつかまえろ!きたのさばくの謎 中編
ギルドを出発して数時間、ソウイチ達はようやく砂漠の入り口近くに到着した。
それまでは多少の緑があったものの、そこから先は砂だけの無機質な世界だった。
「ここから先がきたのさばくだね・・・。ここにはぐるまがあれば、ジュプトルも必ずやってくる・・・。」
ソウヤは砂漠の先を見つめていた。
「ソウヤ!頑張ってはぐるま探そうね!」
「うん!頑張ろう!」
ソウヤとゴロスケはすごく張り切っていた。
悪者は許せないという気持ちが大きいのだろう。
それに対して、ソウイチとモリゾーはいつもより控えめのテンションだった。
やはりモリゾーの言ったことがあるからだろう。
「(モリゾー、あいつらの前ではできるだけ普通にしてろ。じゃないと、隠し事がばれるかもしれねえ。)」
「(分かってるよ。ソウイチもばれないようにね。)」
二人はソウヤ達に聞こえないようにこそこそと話した。
「よ~し!!じゃあしゅっぱ~つ!!」
ソウヤは先陣を切って歩き出す。
いつもならソウイチが先だが、今日に限ってはソウヤが先頭。
テンションの違いでこうも変わるものだろうか。
しかし先に進むにつれ、砂嵐がひどくなってきた。
最初は視界もはっきりしていたが、奥に行くにつれてどんどんと激しくなる一方だ。
すなあらしは、いわ、じめん、はがねタイプ意外はダメージを受けてしまうためかなり厄介だ。
それにじめん系列が苦手なソウイチとソウヤはなおさらだ。
「くそお!!目に砂が入ってしょうがねえ!!」
ソウイチは目をうっすらとしか開けられなかった。
他のみんなも腕で目に砂が入らないようにしているが、そのせいで先が全く見えない。
「こんなに激しいなんて思わなかったよ・・・!メガネでもあれば・・・。」
「バカ!そう都合よくメガネがあるわけねえだろうが!!」
ソウヤのつぶやきにソウイチが突っ込む。
「でも、そんなのでもないと前が見えないよ・・・。」
モリゾーも言う。
「ここはできるだけ敵と戦わずに行きたいね・・・。砂嵐のダメージもあるのに、敵と戦ったりしたら力尽きちゃうよ・・・。」
「といっても敵の位置が分かるわけじゃないしな~・・・。ああああ!!もうどうすりゃいいんだよ!!」
ソウイチはいらいらして地面を蹴った。
しかし舞い上がった砂はかぜで跳ね返ってきて、みんなに降りかかった。
「げほげほ!!ソウイチ!!なにしてるの!!」
みんなはソウイチに文句を言った。
「だあああ!!もううるせ・・・。ん・・・?」
ソウイチは怒鳴ろうとしたが、みんなの後ろ側に何かを見つけた。
拾ってみると、何かのメガネのようだった。
「なんだこれ?水中メガネみたいだな・・・。」
ソウイチはためしにメガネをかけてみた。
しかし何の変化もない。
「これってただのメガネか?すなあらし対策にはもってこいだけど、なんかつまんねえな~・・・。デザインもいまいちだし・・・。」
ソウイチはソウヤにメガネを投げた。
いきなり投げられたソウヤは何とかキャッチした。
「いらねえからしまっといてくれ。」
「それぐらい自分でもってなよ!!もう・・・。」
ソウヤは改めてメガネを見てみた。
レンズは四角で、形からしてもソウヤ好みだった。
それに、ダンジョンにあるからにはきっとなんかしらの効果があるに違いないと思い、ソウヤはいろいろ調べてみた。
「う~ん・・・。ちょっとかけてみようかな。」
ソウヤはためしにメガネをかけてみた。
すると、上のほうに赤い点や青い点が表示されていた。
何かあると思い、ソウヤは青い点のほうに向かって歩き出した。
「あ!ソウヤ!どこ行くんだよ!!」
あわてて後を追いかけるソウイチ達。
しばらくソウヤの後ろをついていくと、不意にソウヤが立ち止まった。
何も考えず歩いていたので、ソウイチは鼻を思いっきりぶつけてしまった。
「いてててて・・・。なんだよもう!!」
後ろからのぞき込むと、ソウヤの前にあったのはオレンの実だった。
「(あの青い点は、道具を示していたのか・・・。となると・・・、赤い点は敵なのかな・・・?)」
ソウヤは、ソウイチがオレンを拾う様子を見ながらそんなことを考えていた。
実は、ソウヤの拾ったメガネは、みとおしメガネというかなり珍しい道具だったのだ。
落ちていることはほとんどないはずだが、どうやら誰かが落として、そのまま気付かず行ってしまったのだろう。
「みんな、これからは僕の後をついてきてほしいんだ。」
ソウヤは唐突にみんなに言った。
「は?何でお前の後をついていかなきゃならねえんだよ?」
ソウイチは嫌そうな顔をした。
「このメガネ、敵や道具の位置が分かるんだ。」
「えええええええ!?」
ソウヤの言葉を聞いてみんなびっくり。
ソウイチがかけたときは何の効果もなかったのに、ソウヤがかけたとたん効果を発揮したのだ。
驚くのも当然だろう。
「な、何でそんなことが分かるんだよ!?」
「だって、青い点のところに、さっきソウイチが拾ったオレンの実があったんだ。青い点が道具だとしたら、赤い点は多分敵の位置だと思う。このメガネの情報どおりに進めば、きっと無駄な戦いは回避できると思うよ。」
ソウヤは自分の推理した考えをみんなに言った。
「なるほど~・・・。でも、何でソウヤだけしか効果がないのかな?ソウイチがかけたときはそんな点は見えなかったんでしょ?」
モリゾーは素直に疑問を口にした。
「そ、そうだよ!!何でオレがだめでソウヤならいいんだよ!!」
ソウイチはそれが納得行かないのか腹を立てている。
「それはよくわかんないけど・・・、ソウイチに適性がなかったってことじゃない?道具にも相性があるんだと思うよ。」
ソウヤの言うとおり、このメガネはリーダーがつけることで威力を発揮するのだが、なぜかリーダーではないソウヤが適合している。
やはり適性があるのだろう。
「ちぇっ!!なんだよまったく!!」
ソウイチは適性がないといわれさらに腹を立てたが、これは事実なのでどうしようもなかった。
納得したくはなかったが、ソウヤの指示通りに動くしかなかった。
ソウヤの指示は的確で、道具を拾いつつ敵に出会わないように進んでいくことができた。
たまにどうしても出会ってしまうこともあったが、メガネがないときに比べて確率は大幅に減った。
4時間ぐらいたってようやくすなあらしを抜けさばくの一番奥に到達した。
「ここがさばくの一番奥かな・・・?」
モリゾーが言った。
少し先まで進んでみると、そこには巨大な流砂があった。
「うお!!でけえ!!」
「砂がところどころ下に吸い込まれてる・・・。下手したら僕たちまで吸い込まれそうだね・・・。」
みんな流砂に驚きつつ、辺りを見回した。
しかしときのはぐるまらしきものはどこにも見当たらなかった。
あるのは流砂とさばくの砂ばかり。
「もしかしたらここには何もないのかもね・・・。・・・あれ?」
モリゾーはそうつぶやいて隣を見ると、ソウイチが流砂を見つめたまま考え込んでいるのに気付いた。
ソウヤも同じように考え込んでいた。
「(この感覚・・・、前にきりのみずうみで感じたのとおんなじやつだ・・・。オレは、ここを知ってる・・・!)」
「(知ってるだけなのか・・・、それとも実際にここへ来たことがあるのか・・・。それは分からないけど、とにかく僕はここを知ってる・・・。)」
二人とも感じていることはそっくり同じだ。
「ねえ!ソウイチ!ソウヤ!」
ゴロスケの呼びかけで二人は我に返った。
「どうしたの?ずっとぼーっとしてたみたいだけど?」
モリゾーは二人を心配そうな顔で見た。
「な、なんでもねえよ。」
ソウイチはとっさにごまかした。
「とにかく、この辺には何もなさそうだし、早くギルドに帰って報告しよう。」
ソウヤは二人を促した。
「だね。なんか残念だな~・・・。」
二人はしょんぼりとした。
「場所が悪かっただけだって。他のやつらはきっと見つけてるさ。」
ソウイチは二人を元気付けた。
そして、ギルドへ報告するためにみんなは砂漠を後にした。
ところが、帰って待っていたのは予想もしない結果だった。
「ええええええ!?じゃ、じゃあ・・・。他のみんなも調査したものの、何もなかったってこと!?」
みんなびっくりだ。まさか調査した場所全てがはずれとは思ってもみなかったのだ。
「ヘイ!ひがしのもりに行ったけど・・・、ほんと森ばかりで何もなかったぜ。ヘイヘイ!」
ヘイガニが言った。
「すいしょうのどうくつも水晶がいっぱいあって、それはそれはきれいな洞窟だったでゲスよ~!」
ビッパは目をきらきらさせながら言った。
「あまりにもきれいだったんで思わず水晶を一つ持ってきちゃったでゲス。」
ビッパは水晶を取り出すとみんなに見せた。
「うわ~・・・。きれいだな~・・・。」
ソウイチとソウヤはこんなきれいな水晶は見たことなかった。
「まあ!いつの間に・・・。一緒にいたのに気付きませんでしたわ。」
キマワリは若干呆れ気味だ。
「おいビッパ。」
ダグトリオがビッパをにらみつけた。
「われわれの目的はときのはぐるまの探索だったはず。それなのに目的を達成するどころか、全く関係のないお土産まで拾ってきて・・・。お前はいったいなんなんだ!?」
とうとう怒りが爆発してビッパを怒鳴りつけた。
「うう・・・。すまんでゲス・・・。あっしの宝物にしたくてつい・・・。」
ビッパはすっかりしょげ返ってしまった。
「(あそこまで怒鳴らなくてもいいのにな~・・・。)」
ソウイチ達は心の中でビッパに同情した。
「ヨノワールさん・・・。残念ながら、どうやら探索はみな空振りに終わったようですね。」
ペラップは残念そうに言った。
「う~ん・・・。困りましたね・・・。調べる場所としてはいい線いってると思ったのですが・・・。私の知識不足ですね。申し訳ないです。」
ヨノワールはすまなそうに頭を下げた。
「と、とんでもない!そんなことないですよ!ヨノワールさんの知識があるからこそ今回の作戦も立てられたんですよ!?」
ペラップはあわてて言った。
「でも失敗だったのは事実です。ただ、まあここでがっかりしてもしかたないですし・・・、明日からまた違う作戦を考えてみましょう!」
ヨノワールは明るく言った。
いつのも調子に戻ったようだ。
「はい!がんばりましょう!よろしくお願いします♪」
ペラップはヨノワールにぺこりと頭を下げた。
「というわけでみんな!今日はもう仕事は終わりだ。また明日に備えてくれ。」
「は~い!」
そして今日の仕事は終わり、待ちに待った晩御飯の時間となった。
「ふわあああ・・・。今日は疲れたな~・・・。明日も早いしもう寝ようよ・・・。」
ソウヤは目をとろんとさせて言った。
「だね・・・。それじゃあ寝ようか・・・。」
ゴロスケもかなり眠そうだ。
これ以上やることもないので、みんなは明日に備えてことにした。
みんながすっかり寝てしまっても、ソウイチはあのことを考えていた。
「(やっぱりオレ、あそこに行ったことあるんじゃねえのか・・・?それとも、調べてあの場所を知ってたか・・・。どっちにせよ、あそこにはまだ見つけてない何かがある・・・。明日、みんなに話してみるかな・・・。)」
ソウイチはそんなことを思っているうちに、いつの間にか眠っていた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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