ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第三十九話 ジュプトルをつかまえろ!きたのさばくの謎 後編
翌朝、ソウイチはいつもより早く目が覚めた。
やはり昨日考えていたことのせいだろうか。
まだ多少時間が早いのか、他のみんなはぐっすり眠っていた。
とりあえずやることもないので、ソウイチはギルドの外へ出て暇をつぶしに行った。
「さすがにこの時間は誰も起きてねえか。静かだな~。」
そんなことを思いながら階段を降り、交差点の近くまで来た。
ソウイチは最近この近くにお気に入りの場所を見つけていたのだ。
海岸に行く道沿いに一本だけ大きな木が生えており、かなり上まで登れる構造になっているのだ。
もちろんソウヤ達には内緒である。
「ふう~・・・。いい風だ~・・・。」
ソウイチは木のてっぺんに登って心地よい風に吹かれていた。
この辺は気持ちのいい風が吹くのだ。
しばらく吹かれていると、急にあたりが明るくなり始めた。
そろそろ日の出のようだ。
「おお~・・・。やっぱきれいだな~・・・。」
ソウイチは気持ちよさそうに日の光を浴びた。
それが風と調和して、さらにいい気分になった。
「・・・やっぱり、話してみるか。昨日感じたことも・・・、モリゾーの親父のことも。隠してるのって、なんかすっきりしねえ。」
ソウイチはそうつぶやくと、木を飛び降り、足早にギルドへ帰っていった。
ヨノワールのことは隠し事に入らないんだろうか?
「こまけえことはいいんだよ!!!」
「え~・・・。というわけで、今私とヨノワールさんで新しい作戦を考え中だ。なので新しい作戦ができるまでは、みんなは各自自由にときのはぐるまを探索してくれ。以上だ。」
そしてみんなは気合をいれ、それぞれの思う場所を探索に行った。
「今日は自由に探索してくれってことだけど、どこに行こうか?」
ゴロスケが聞いた。
「それなんだけど、きたのさばくに行くっていうのは?」
「え・・・?」
ソウイチとソウヤは顔を見合わせた。
二人の言ったことが完璧に同じだったのだ。
「なんだ。お前もあの場所が気になってたのか?」
「そういうソウイチもでしょ?」
「まあな。あそこでなんとなくだけど何かを感じるんだよな。」
こういうところが兄弟というべきだろうか。
やはり気になっていたのは二人とも同じだったのだ。
「あの場所、流砂で何にもないように見えるけど、あの辺にはまだなんか残ってそうだぜ。」
ソウイチは言った。
「う~ん・・・。」
二人はしばらく悩んでいたが・・・。
「わかった!ソウイチとソウヤがそう言うならオイラは信じるよ!」
「僕も信じる!行こう!流砂の地に!」
ちょっととまどっていたものの、二人はうなずきあうと言った。
「よっしゃ!それじゃあ早速出発だぜ!!」
「おお~!!」
そして四人は再び、流砂の地へと出発した。
歩くこと数時間、すなあらし地帯を通り抜け、ようやく流砂の場所までたどり着いた。
「またきたけど・・・。やっぱりここにあるのは、広がるように続いている白い砂漠と、あとは流砂しかないよね・・・。」
モリゾーが言った。
「いったいどんな謎が隠されてるんだろう・・・。う~ん・・・。」
ゴロスケは首をひねって考え始めた。
「(やっぱり・・・、なんか感じる・・・。)」
「(やっぱり、僕はここを知ってる・・・。)」
ソウイチとソウヤはまた同じ感覚を覚えた。
「だけど、やっぱりあるのは流砂ばっかりだね。流砂と砂漠だけ。」
ソウヤはつぶやいた。
「流砂と砂漠だけか~・・・。流砂と砂漠・・・、ん?待てよ・・・?そうか!!」
ソウイチは突然叫んだ。
「わわっ!!きゅ、急にどうしたの・・・?」
いきなり大声を出したので三人はびっくりした。
「そうか~・・・。そういうことか!」
ソウイチは一人で勝手に納得している。
みんなはわけが分からないままぽかんとしている。
「え・・・?そういうことかってどういうこと?」
モリゾーはソウイチに聞いた。
「目の前には流砂しかねえ。だったら、あそこに飛び込むしかねえだろ!」
「ええええええ!?」
みんなはさらにびっくり。
飛び込むなどという言葉が出てくるとは微塵も考えなかった。
「ちょ、ちょっと!何考えてるのさ!!」
「ソウイチ!本気なの!?」
みんなは口々に言った。
「当たり前だろ!それ以外に道はねえよ。」
ソウイチは自信満々に言い切った。
「冗談じゃないよ!!もしあり地獄みたいに底なしだったらどうするのさ!?僕たち生き埋めになっちゃうよ!!」
ゴロスケは言った。
「そうだよ!そんなの僕は嫌だ!」
ソウヤも反対した。
「んなもん、やってみなきゃわかんねえよ。滝の時だってそうだったじゃねえか。一見何もない滝の裏側に道はあった。今回だって、一見何もない流砂の中に道があるかもしれねえだろ?」
確かにソウイチの言うとおりだった。
あの時も、意を決して滝に飛び込んだおかげで先に進むことができたのだ。
「本気なの?ソウイチ。」
モリゾーはソウイチの目を見て言った。
「ああ。一か八か、やってみようぜ。」
ソウイチの目は本気だった。
そして、どこか信じられるものがあった。
「わかった・・・。オイラ、ソウイチを信じる!」
モリゾーも決意を固めた。
「も、モリゾー!!」
ゴロスケはあわてたが、モリゾーは決意を固めていた。
「あの時だって、ソウイチのことを信じたから・・・、ソウイチがいてくれたから勇気を出して先に進むことができたんだ。その思いは今も変わらない。やってみなければわかんない、その通りだよ。」
モリゾーは言った。
その言葉には、何かしら二人を納得させるものがあった。
「・・・だよね・・・。あのときだって、すごく不安だったけど、チャレンジしてみてよかったと思う。僕も、ソウイチのことを信じる!」
ゴロスケはまだ不安そうだったが、言葉ははっきりしていた。
「たま~にしか当てにならないこともあるけど、こういうときにソウイチの言うことは役に立つからね。」
ソウヤは少しからかい半分で言った。
「るせえ!たまには余計だ!!」
ソウイチはむっとして言い返したが、ソウヤがソウイチのことを信じているのは分かっていた。
「それじゃあ、行くよ!」
「おう!」
「うん!」
みんなは互いにうなずきあった。
「1・・・。」
「2・・・。」
「3・・・!!それっ!!」
みんなはいっせいに流砂の中へ飛び込んだ。
「うわああ!うわああああああ!!!」
みんなはずぶずぶと流砂の仲へと消えていった。
その後に残ったのは静寂と白い砂だけだった。
「うわあああああ!!!」
みんなはいつの間にかすごい速さで下へと落ちていた。
ドシーーーン!!
みんなは思いっきりおしりから着地した。
「あだだだ・・・。いってえ~・・・。」
ソウイチはぶつけた部分をさすった。
かなり痛いようだ。
「下が砂で助かったよ・・・。何にもなかったらもっと痛かっただろうね・・・。」
ソウヤもさすりながら言った。
「ここは・・・、どこだろう・・・?どうくつになってるのかな?」
モリゾーは辺りをきょろきょろ見回した。
「僕たち、あそこから落ちてきて・・・。!!ソウイチ!やっぱり流砂の中に秘密があったんだよ!」
ゴロスケは興奮して言った。
「だから言ったろ?やってみなけりゃわかんねえって。」
ソウイチはにっと笑った。
「よ~し!行こうぜ、この先へ!」
ソウイチ達は、さらに奥を目指して出発した。
砂漠と違って、ここはすなあらしがないので比較的進みやすかった。
ソウヤのかけているみとおしメガネのおかげもあり、敵と出会うことはほとんどなかった。
先を急ぐためにできるだけ戦いは避けたかったが、うっかり出会ってしまうこともあった。
そんなときはモリゾーとゴロスケの活躍で比較的簡単に倒すことができ、改めて二人の成長ぶりを感じることができた。
しかし、やっかいなのは後半部分。
なにしろ、すなあらしを発生させるバンギラスがいたるところにいるのだ。
ソウヤのメガネの能力をもってしても、全部を避けるのは困難だった。
レベルも高く、技の威力も高いため倒すのは一苦労だった。
いろいろなタイプを持ち合わせているものも多く、一筋縄ではいかない。
かなりあったオレンの実もあっという間に数が減っていった。
「ぜえ・・・、ぜえ・・・。ま、まだか・・・?」
ソウイチは結構ばてていた。
じめんじめんの連続でソウヤ同様かなり参っているようだ。
「そろそろなんじゃないかな?」
そんなことを言いながら歩いているうちに、とうとう最深部までたどり着いた。
最深部には大きな地底湖が広がっていた。
「す・・・、すごい・・・。地底にこんな湖が広がってるなんて・・・。」
みんなは驚くと同時に、言葉にできない神秘さを感じていた。
「おい!あれ見ろよ!!」
ソウイチが不意に叫んだ。
そのほうを見ると、湖の仲で何かが光を発していた。
「あの光・・・、どこかで見たような・・・。」
モリゾーはしばらく考え、ようやく思い出したようだ。
そう、あれはときのはぐるまの輝きだったのだ。
「ソウイチ、ソウヤ!もっと近くに行ってみよう!」
ゴロスケに促され、みんなは湖に近づこうとした。
そのとき、急にあたりが暗くなった。
「わわっ!!な、なんだ!?」
みんなは突然のことに動揺した。
「待て!何なのお前たちは!?」
突然どこからか声が聞こえてきた。
「・・・ここへ、ここへ何しに来た!!」
謎の声がまた言う。
「何しにって、俺達はときのはぐるまを探しに・・・。」
ソウイチは説明しようとしたが、謎の声は途中でさえぎった。
「ときのはぐるまに近づいてはならない!ときのはぐるまに近づくものは・・・、許さない!!」
そして、目の前に一匹のポケモンが姿を現した。
「き、君は!?」
「私はエムリット!深きちていのみずうみでときのはぐるまを守るもの!」
そのポケモンは言った。
「ときのはぐるまを守る者だって!?」
「ときのはぐるまを脅かすものは、私が許さない!!行くよっ!!」
エムリットは攻撃の体勢に入った。
「ちょ、ちょっと待てって!!」
「うるさい!!」
ソウイチは何か言おうとしたが、エムリットは問答無用でエナジーボールを放ってきた。
「うおっ!!やりやがったなてめえ!!」
ソウイチは頭にきてかえんほうしゃを浴びせる。
「甘い!!」
エムリットはねんりきでかえんほうしゃを捻じ曲げ、ソウイチ達のほうへ跳ね返した。
「わわわわわわ!!」
ソウイチはあわてて地面に突っ伏したものの、他の三人はもろに食らってしまった。
「あぢぢぢぢ!!ちょっとソウイチ!!」
ソウヤはソウイチをにらみつけた。
「オレのせいじゃねえだろ!!いいからとっとと反撃するぞ!!」
ソウイチは至近距離まで近づき、エムリットにたいあたりをお見舞いする。
エムリットが体制を崩した隙を見て、ソウヤのアイアンテールがヒット。
そこへモリゾーがタネマシンガンをお見舞いし、ゴロスケがみずでっぽうで攻撃。
一気にたたみかけるようだ。
「調子に乗るんじゃないよ!!」
エムリットはサイコキネシスでみんなを宙に浮かせる。
何とか逃れようとしたものの、体の自由が利かず動くことができない。
「それええええ!!」
エムリットは一気にみんなを地面に叩きつける。
「ぐはあっ!!」
「ぎゃうっ!!」
みんなは叩きつけられた衝撃でしばらく息ができなかった。
「これ以上痛い目にあいたくなかったら降参するんだね!!」
エムリットは上からみんなをにらんだ。
「だから違うって言ってるだろうが!!人の話を聞け!!」
「ときのはぐるまを盗もうとするやつの話なんか聞くつもりはないよ!!」
そしてさらにエナジーボールを連射してきた。
「野郎!!もうあったまきた!!」
ソウイチは背中から普段の倍以上の炎を出すと、エムリットに向かって回転しながら突っ込んでいった。
エムリットもサイコキネシスで方向をそらそうとするが、ソウイチは回転することでそれを受け流し、エムリットに突っ込んだ。
「きゃあああああああ!!」
エムリットは体制を崩し、下に落ちた。
かなりダメージを受けたのか、少し苦しそうだ。
「うぐっ・・・。うぐぐぐっ・・・。でも・・・、渡さない・・・。ときのはぐるまだけは・・・。」
エムリットはまだまだ戦う気のようだ。
「だから!オイラ達はときのはぐるまを盗みにきたわけじゃないってば!」
「そうだよ!誤解だよ!!」
モリゾーとソウヤは必死でわけを説明しようとした。
「とぼけるな!!私はユクシーからテレパシーで聞いてるんだよ!きりのみずうみのときのはぐるまが盗まれたことを!」
エムリットは四人をにらみつけた。
「えええ!?ユクシーから!?」
みんなびっくりだ。
テレパシーで話が伝わっているとは思わなかったのだ。
「あれはお前たちの仕業だろう!?」
「だ~か~ら~!!さっきから違うつってんだろうが!!」
ソウイチはイライラが頂点に達して怒鳴った
「じゃあだれだというの!?」
エムリットがそう言ったそのとき・・・。
「それはたぶん、オレのことじゃないかな?」
背後から突然声が聞こえてきた。
ソウイチ達が振り向くと、そこに立っていたのはときの歯車を盗んでいる張本人、ジュプトルだった。
「お、お前は!?」
「じゅ、ジュプトル!!」
エムリット、ソウヤ、ゴロスケの声が重なる。
その中、モリゾーはジュプトルをじっと見つめていた。
「(あの声・・・、聞き覚えがある・・・!それに、頭と腕の葉っぱの形・・・。間違いない、あのジュプトルは・・・、父さんだ!!)」
モリゾーはジュプトルの元へ歩み寄っていった。
「も、モリゾー!!」
「あ、危ないよ!!モリゾー!!」
ゴロスケとソウヤはモリゾーがいきなりお尋ね者のほうへ歩き出したので飛び上がった。
「(これではっきりする・・・。あいつの親父かどうか・・・。そういえば、出かける前にソウヤとゴロスケに話そうと思ってたのに、すっかり忘れてたぜ・・・。)」
ソウイチはモリゾーを見てそんなことを考えていた。
「ん?なんだお前は?」
ジュプトルはモリゾーを見て言った。
「父さん、父さんでしょ?オイラだよ!忘れたの!?」
モリゾーはジュプトルの目を見て言った。
「え・・・?父さん!?」
ゴロスケとソウヤは耳を疑った。
凶悪犯のジュプトルが、モリゾーの親のはずはない、そう思ったのだ。
しかし、ジュプトルの口から出た言葉は、モリゾーの期待を裏切った。
「誰だお前は?オレはお前のことは知らない。」
その言葉を聴いた瞬間、モリゾーは目の前が暗くなるような気がした。
しかし気を取り直してさらに質問を浴びせる。
「グラス父さん!オイラだよ!モリゾーだよ!」
モリゾーの必死の訴えかけにもかかわらず、ジュプトルの態度は変わらなかった。
「人違いじゃないか?オレに息子はいない。それに、オレの名前はグラスじゃない。リーフだ。」
その言葉で、モリゾーの希望は完全に砕け散った。
ショックのあまり、モリゾーはその場に座り込んで動けなくなってしまった。
そして、その後の言葉は、さらにみんなを困惑させた。
「そもそも、オレはこの世界の住人じゃないからな。」
「(この世界・・・?どういうことだ・・・?)」
ソウイチは妙にその言葉が気になった。
リーフはモリゾーの横を通り過ぎると、そのままエムリットのほうへ歩き出した。
「悪いが、ときのはぐるまはいただくぞ。」
リーフは目にも留まらぬ速さでソウイチ達をはねのけ、ソウイチ達は反応する暇すらなかった。
「うわあっ!!」
みんなは思わずよろけてしりもちをついた。
「・・・そこをどいてくれ。」
リーフはエムリットの前に立った。
「い、いやよ!!ときのはぐるまは渡さない!!」
エムリットはなおも動こうとしない。
「・・・ならば、仕方がない。」
リーフはエムリットをリーフブレードで弾き飛ばした。
「うぐっ・・・!」
エムリットはうめき声を上げると、そのまま地面に倒れこんだ。
「エムリット!!」
「お前は先ほどの戦いで相当のダメージを負っているはずだ。無理をするな。」
リーフはエムリットの横を通り、ときのはぐるまを取りに行こうとした。
しかしそれを阻止しようとソウイチ達が動いた。
「こっから先は行かせねえぞ!!」
「ときのはぐるまは渡さない!!」
ソウイチとソウヤが対になって立ちはだかる。
「そうか・・・。悪いな。」
リーフはリーフブレードで二人を両サイドに弾き飛ばし、ゴロスケも弾き飛ばした。
「ガフッ!!」
「は、はやい・・・!」
三人はみぞおちにリーフブレードを入れられ、その場から動くことができなかった。
「お前たちにうらみはない。勘弁してくれ。ときのはぐるま、もらって行くぞ!」
そしてリーフは水の中にダイブすると、ときのはぐるまのほうへ近づいていった。
「く、くっそお・・・。」
ソウイチは悔しそうにはぎしりした。
「うう・・・。ときのはぐるまが・・・、とられちゃう・・・。」
ゴロスケがうめいた。
「・・・す、すまない・・・。ユクシーが言ってたのはお前たちでなく、あいつだったんだね・・・。疑って・・・、ごめん・・・。」
エムリットはすまなそうに謝った。
ソウイチ達が何か言おうとすると、突然あたりがゆれ始めた。
「な、なんだなんだ!?」
「い・・・、いけない!!早くここから逃げなきゃ!!」
エムリットが叫んだ。
「ど、どうして!?」
ソウヤは聞いたが、すぐにその答えは分かった。
ソウヤ達の背後から、真っ黒な闇がどんどん迫ってきていたのだ。
湖全体が闇に侵食されているのだ。
「うおっ!!何がどうなってんだよ!?」
ソウイチは混乱した。
「あいつがときのはぐるまを取ったんで、ここら辺一帯の・・・、ちていのみずうみの時間も止まる!!」
「えええええええ!?」
エムリットの言葉にみんなびっくりした。
このままでは自分たちも動けなくなってしまう。
「早く逃げないと!力を振り絞って!さあ早く!」
エムリットの言葉で、みんなは何とか体を動かした。
そして、出せる限りのスピードで走り出した。
ところが、モリゾーはショックから立ち直れていないのか全然動く気配がない。
「バカ!!何やってんだよ!!飲まれちまうぞ!!」
ソウイチが怒鳴るがモリゾーは何の反応も示さない。
「チッ・・・!!世話かけやがって!!」
ソウイチは全力でモリゾーを背負うと、猛ダッシュでソウヤ達の後を追いかけた。
なんとか逃げきれたものの、みずうみの時間は完全に停止した。
「(父さんじゃ・・・、なかった・・・。でも、あまりにも似すぎてる・・・。信じられない・・・。)」
モリゾーはソウイチに背負われながらも、その考えしか頭をめぐっていなかった。
それほど期待が大きかったのだろう。
しかし、それほどリーフとグラスはそっくりなのだ。
声も、容姿も、モリゾーの記憶と一致していた。
モリゾーはショックだったが、どうしてもグラスじゃないと思うことができなかった。
そう、記憶を失って過去のことを忘れている可能性があるからだ。
父なら絶対に悪事を働かない、モリゾーはそう信じていたからだ。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。
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