ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第四十話 残された可能性 すいしょうのどうくつのパズル! 前編
ギルドに帰ってから、ソウイチ達はみんなに事の次第を伝えた。
もちろん、モリゾーとリーフの関係は伏せてある。
モリゾーはずっと押し黙ったまま、何もしゃべらなかった。
「オタズネモノノソウサアリガトウゴザイマス。エムリットハ、ワレワレガブジホゴイタシマシタノデ、ゴアンシンクダサイ。リーフハ、ワレワレモゼンリョクヲアゲテツイセキシマス。コンゴモナニカテガカリガアリマシタラ、オシラセクダサイ。オタガイキョウリョクシテガンバリマショウ。デハ。」
ジバコイルは相変わらずの片言で言うと、ギルドを後にした。
「いや~!ほんとにもうびっくり!なんと!きたのさばくの地下に湖があって、そこにときのはぐるまがあったとは!」
ペラップはソウイチ達の報告を聞いて驚いた。
「うん。でも、そのときのはぐるまはリーフに取られちゃったわけだし・・・、つかまえることすらできなかった・・・。結局何もできなかったのと同じだよ・・・。」
ソウヤは悔しそうに手に力を込めた。
「そ、そんなことはないでゲスよ?四人ともよく頑張ったでゲスよ!」
「ヘイ!確かにおいらもアドバンズはすごく頑張ったと思うぜ!」
ビッパとペラップは四人をなぐさめた。
「だけどよ・・・、残念なのは、次につながる手がかりが残ってないんだよな・・・。ちょっとでも何か残っていればよかったんだけどよう!ヘイヘイ!」
ヘイガニは悔しそうに言った。
「確かに。リーフが次、どこに現れるのかまったくわからんしなあ・・・。」
「しっぽをつかみかけたものの、これでまたふりだしですわね・・・。」
ダグトリオとキマワリも肩を落とした。
「いや、そうでもないですよ。」
場の空気を変えたのはヨノワールだった。
「よ、ヨノワールさん!」
「手がかりはあります。まず、きりのみずうみでは、ユクシーがときのはぐるまを守っていたそうですね?そしてちていのみずうみでは、エムリットがときのはぐるまを守っていた・・・。」
その言葉に、ゴロスケははっとした。
「そ、そういえば!エムリットが言ってたんだ!エムリットは、きりのみずうみのときのはぐるまが盗まれたことをユクシーからテレパシーで聞いたんだって。」
ゴロスケの言ったことにみんなは驚愕した。
「やはり・・・。」
ヨノワールはつぶやいた。
「これはある言い伝えにあったものなのですが・・・、それによると、ユクシーは知識の神、そしてエムリットは感情の神と呼ばれ、三匹で精神界のバランスを保っているとされています。」
ヨノワールは言った。
「さ・・・、三匹?それは、ユクシーとエムリット以外にもう一匹いるってこと?」
ゴロスケが聞いた。
「そうです。残るはアグノム。意思の神と呼ばれています。ユクシー、エムリットはときのはぐるまを守っていた・・・。ならばアグノムもまた、ときのはぐるまを守っているのではないかと。」
ヨノワールの意見にみんなは沸き立った。
「そっか!アグノムのいる場所を探し出せれば、そこにときのはぐるまがあるかもしれないし、そこにリーフも現れる可能性も高いということですね!」
かなり察しがいいチリーン。ヨノワールもうなずく。
「ユクシー、エムリット、アグノムの三匹は、それぞれ湖に住むといわれています。現に、ユクシーとエムリットは湖にいました。ですので、アグノムもまた、どこかの湖にいると思われます。ただし、ユクシーのいた湖は高台の頂上に、そしてエムリットの湖は砂漠の地底深くというように、それぞれ普通ではない場所に湖がありました。ですので、アグノムのいる湖も、常識を超えた場所にあるのではないかと思われます。」
ヨノワールの言うことにみんなはうなずいた。
それと同時に頭の回転の良さに驚いた。
「いやいやいやいやいやいや♪ヨノワールさんはやっぱりすごい!改めて尊敬しちゃいましたよ~♪」
ぺラップはヨノワールをべた褒めした。
「そんなあ・・・。照れますよ・・・。」
ヨノワールはまんざらでもなさそうな顔だ。
「いや、私たちも尊敬しちゃってるぞ。」
ダグトリオが言った。
「もともときたのさばくを調査してくれって言ったのもヨノワールさんだ。実際砂漠の地下にときのはぐるまがあったわけだから、ヨノワールさんの判断は正しかったことになる。」
「そっか!じゃあ、私たちが調べたひがしのもりやすいしょうのどうくつにも、もしかしたら、まだなぞが残ってるかもしれませんわ!」
ダグトリオの言葉にキマワリが反応した。
「そうだ!ビッパさん。」
不意にヨノワールがビッパを呼んだ。
「へ?あっしでゲスか?あっしに何か・・・?」
ビッパはいきなり呼ばれたので少しびっくりした。
「ひとつお願いがあります。以前あなたが拾ってきた水晶なんですが、ちょっと貸していただけないでしょうか?」
「えええ!?あの水晶でゲスか!?」
ヨノワールの申し出にビッパは驚いた。
「い、いやでゲス!あれはあっしの大事な宝物でゲス・・・。」
ビッパは水晶を出すことをものすごく嫌がった。
とられるとでも思っているのだろうか。
「い、いや・・・、別にとったりしないですからご安心ください。」
ヨノワールはビッパを安心させると、不意にソウイチの方を向いた。
「ソウイチさん。あなたに、ビッパさんの水晶を触ってみてほしいのです。」
「ええ!?オレが・・・?」
ソウイチはいきなりそんなことを言われてびっくりした。
「もしすいしょうのどうくつに謎が残されているならば、ソウイチさんが水晶に触れたとき・・・、じくうのさけびが発動し何か見えるかもしれません。」
「ははあ~・・・。そういうことか。」
ソウイチはそれを聞いて納得した。
「じくうのさけび?なんだいそれは?」
ドゴームが聞いた。
「ソウイチが持ってる能力なんだ。ソウイチは物に触れると、たまにそこの過去や未来に起こった出来事が見えるんだ。」
ソウヤが言った。
「ええええ!?そんな能力が!?」
みんなは驚いた。
「ですで、ぜひ水晶をお借りしたいのです。どうでしょうか?」
ヨノワールはもう一度ビッパにお願いした。
「うう・・・。そういうことなら仕方がないでゲスね・・・。」
ビッパはまだ不安だったが、ソウイチに水晶を手渡した。
「(この水晶から、いったい何が見えるってんだ・・・?)」
ソウイチは水晶をじっと見つめた。
そして、みんなの目線が自分に集中していることに気付いた。
「なんだよ?何じろじろ見てんだ?」
ソウイチのやることにみんなすごく興味があるのだろう。
「(チッ・・・。まあいいや。見えるかどうかわかんねえけど、集中してみるか・・・。)」
ソウイチは焦点を水晶に絞った。
そして、辺りを静寂が包んだ。
「どう?ソウイチ。」
ゴロスケが聞いた。
そして、ソウイチをあたりが揺らぐような感覚が襲った。
「(うおっ!!きやがった・・・!めまいが始まった・・・!!)」
そして、映像と音声が映し出された。
「うぐぐっ・・・。うおっ・・・!!」
見えたのはアグノムとリーフ。
アグノムが地面に突っ伏してる様子から、リーフがアグノムを倒したようだ。
「もらっていくぞ、ときのはぐるまを。」
リーフはアグノムの横を通ってときのはぐるまの方へ歩いていった。
「だめだ・・・、あれをとっては・・・。絶対・・・に・・・。」
アグノムは必死でリーフのほうへ手を伸ばすが、もう力尽きて動く体力はなかった。
そこで映像が途切れた。
「(今のは・・・。リーフがときのはぐるまを盗もうとしてた・・・。もう一匹いたやつ、あれがアグノムか・・・?どっちにせよ、この水晶からさっきの映像が見えたってことは・・・。間違いねえ・・・!!)」
「ソウイチ?ソウイチ!!」
ソウイチはゴロスケの呼びかけで我に返った。
「ソウイチ、もしかして何か見えたの!?」
ソウヤが聞いた。
「ああ・・・。かなりやべえぞ・・・!」
ソウイチは見えたものをみんなに話した。
みんなはその話を聞いて大騒ぎ。
すごいだの大変だの収拾がつかない。
しかし、そこでヘイガニとチリーンから質問が寄せられた。
「ヘイ!ソウイチ!その見知らぬポケモンが、アグノムかどうかはわからなかったんだよな?ヘイヘイ!」
「あ、ああ・・・。」
ソウイチはあいまいな返事をした。
「それに・・・、ソウイチさんが見えたものは過去のものだったんでしょうか?それとも未来の光景だったのでしょうか?」
チリーンの質問にソウイチははっとなった。
確かに、どっちがどっちなのかはいつも分からなかった。
「それは・・・、オレにもわからねえ・・・。」
ソウイチはうつむいた。
「そうですか・・・。どっちかわからないんですか・・・。」
チリーンは残念そうに言った。
「なるほど・・・。見えた出来事が過去のものか未来のものかわからないということは、ソウイチが見た光景は過去のものということもありえる。その場合はつまり・・・、もうすでに盗まれた後のことかもしれんな・・・。」
ダグトリオが言った。
「えええええ!?それじゃあ・・・、もう手遅れってこと!?」
ぺラップはへなへなとその場に座り込んでしまった。
「みなさん!ちょっと待ってください!」
突然ヨノワールが叫んだ。
みんなは一斉のその方を向く。
「確かに過去が見えたのかもしれませんが、未来が見えた可能性だってあります。ソウヤさん、エムリットが言ったことを思い出してほしいんですが・・・。エムリットに、ときのはぐるまが盗まれたことをテレパシーで教えたのはユクシーだと、そうおっしゃったんですよね?」
ヨノワールはソウヤに聞いた。
「え~と・・・。確か・・・。」
ソウヤはエムリットが言ったことを必死で思い出していた。
[とぼけるな!!私はユクシーからテレパシーで聞いてるんだよ!きりのみずうみのときのはぐるまが盗まれたことを!]
「うん、間違いない!」
ソウヤはうなずいた。
「アグノムの名前は?」
「まだ聞いてないよ。僕、アグノムの名前はヨノワールさんからここで聞いて初めて知ったぐらいだし。」
ヨノワールの問いにゴロスケが答えた。
「それなら!可能性はあります。」
可能性という言葉にみんなが反応した。
「エムリットがアグノムから教えてもらったというのであれば、ソウイチさんが聞いたじくうのさけびは過去のものとして間違いないですが・・・、でも、そうではなかった。エムリットはアグノムの名前を口にしなかった・・・、ということは、未来である可能性はあります!」
ヨノワールの推理にみんながうなずいた。
「それにもうひとつ、確実に言えることがあります。水晶を手にしたとたん、ソウイチさんはじくうのさけびを聞いた・・・。そして、そこにときのはぐるまがあったということは・・・、すいしょうのどうくつのどこかに、ときのはぐるまの場所に通じる道がある、ということじゃないでしょうか?」
みんなは、おお~!と感嘆の声を漏らした。
「確かにもう手遅れかもしれません。でも間に合う可能性だってあるんです!であれば、その可能性にかけてみてもいいんじゃないでしょうか!」
みんなは口々に賛成の声を上げた。
どうやら意見はまとまったようだ。
「ヨノワールさん、これはもうすいしょうのどうくつに行くしか行くしかなさそうですね♪行きましょう♪ギルドをあげて!すいしょうのどうくつへ!」
ぺラップは大いに張り切っている。
そして、プクリンの方を見た。
「親方様、早速号令を!」
しかし、プクリンは何の反応も示さない。
「親方様!・・・親方様・・・?」
ぺラップはプクリンの顔を覗き込んでみるが、何にも反応しない。
「・・・ぐう・・・。」
「へ?」
ぺラップは一瞬ぽかんとした。
「・・・ぐうぐう・・・。」
どうやら毎度のごとく、プクリンは寝ているようだ。
立ったまま、しかも目を開けて。
みんなも気づいているのか、表情を見ればすぐにわかった。
「(いつから寝てたんだ・・・?)」
ソウイチがソウヤに耳打ちする。
「(さあ・・・。もしかして、最初の最初から寝てたのかな・・・?)」
ソウヤもこそこそとソウイチに話す。
「(ま、まずい・・・。このままじゃ親方様が寝てることがみんなにばれちゃうよ・・・。ここは何とか起こさなくては・・・。)」
ぺラップはかなりあせった。
みんなわかっていることには変わりないのだが。
「親方様!親方様~!!!」
ぺラップはできるだけ大きな声を出した。
「・・・・・・はっ・・・。」
どうやら目を覚ましたようだ。
「親方様~!!!!」
念のためもう一度大きな声で呼びかけるぺラップ。
「ぺラップ!!」
どうやらプクリンは完全におきたようだ。
「はっ!親方様!」
寝ていたことを考慮して、ぺラップが最初から事の次第を説明しようとすると・・・。
「みんな!リーフを捕まえるよ!!たあーーーーーーーーーっ!!」
どうやら説明はいらないようだ。
みんなもそれに合わせて気合を入れる。
ところが、モリゾーはそんな中、ずっとうつむいていた。
「モリゾー、どうしたの?さっきからずっと黙ってるけど・・・。」
ゴロスケが心配になって声をかけると、モリゾーは黙って自分の部屋へ走っていってしまった。
「お、おい!どうしたんだよ!!」
ソウイチはあわてて後を追いかける。
「待ってよモリゾー!!」
ソウヤとゴロスケも一緒に後を追いかける。
ほかのみんなは何が起こったのかわからないのできょとんとしていた。
モリゾーは部屋の奥に座り込んでじっとしていた。
「モリゾー、どうしたんだよ?」
ソウイチは心配そうにモリゾーに声をかけた。
「オイラ・・・、行きたくない・・・。」
モリゾーは衝撃的なことを口にした。
「い、行きたくないって、どういうこと!?」
ソウイチが後ろを振り返ると、ソウヤとゴロスケがいた。
今の言葉を聞いていたようだ。
「(そういえば、こいつらに話すって決めてたのに何にも言ってなかった・・・。)」
ソウイチはいまさらながらそのことに気付いた。
「モリゾー!行きたくないってどういうことさ?ちゃんと説明してよ!」
ゴロスケはモリゾーの肩をゆすった。
「落ち着けゴロスケ。それにはわけがあるんだよ。」
「わけ?わけって何?」
ソウイチは、今まで隠していたことを全部二人に話した。
ただし、ヨノワールについてのことは除いてだ。
「ええええ!?リーフが・・・、モリゾーのお父さんのグラスだって!?」
二人とも飛び上がって驚いた。
「で、でもおかしいよ!!だって、おじさんは僕たちをかばって遺跡の下敷きになったんだよ!?それなのに生きてるなんて・・・。」
ゴロスケはモリゾーの言うことを信じられなかった。
あの目ではっきりと、グラスが下敷きになるとこを見たからだ。
「だって、父さんの遺体はどこからも出てこなかったんだよ!?生きている可能性だってあるじゃないか!!」
突然モリゾーが怒鳴った。
その目には、涙が浮かんでいた。
「だって・・・、頭や腕の葉っぱの形や・・・、声まで同じだったんだよ・・・?父さんとしか思えないよ!!」
「おじさんだったらときのはぐるまを盗むはずないじゃないか!!あいつは泥棒だよ!?そんなやつをおじさんだと思うなんて、モリゾーはどうかしてるよ!!」
ゴロスケは怒って言い返した。
お尋ね者をそんな風に言うのがどうにも納得いかないのだ。
「なにい!?」
「だってほんとのことじゃないか!!いい加減に目を覚ましなよ!!おじさんはもういないんだ!!」
ゴロスケはさらにまくし立てた。
「言わせておけば!!もうがまんできない!!」
突然モリゾーはゴロスケの胸倉をつかんだ。
今にも殴りそうな勢いだ。
「おいモリゾー!!落ち着け!!」
「ゴロスケも冷静になって!!」
ソウイチとソウヤは二人を引き離した。
二人ともにらみ合ったまま動かない。
「だって・・・、だって・・・。オイラは・・・、これ以上あんなことをするのを見ていられないんだ・・・。父さんがやってるみたいで、つらいんだ・・・。」
モリゾーはその場に座り込んで、涙を流し始めた。
その様子を見て、ゴロスケも何も言えなくなった。
「ゴロスケ、さっきみたいな言い方はオレもどうかと思うぜ?モリゾーの言うとおり、遺体が見つからなかったなら可能性は0じゃない。モリゾーが、何から何までそっくりなあいつを親父だというのも納得がいくんじゃないか?」
ソウイチはゴロスケの目を見ていった。
ゴロスケは黙ったまま何も言わない。
「それに、遺跡が崩れてきたショックで記憶を失ってる可能性だってある。それだとしたら、モリゾーのこともわからないし、自分が探検家だった記憶もない。違うか?」
ソウイチの言葉にゴロスケははっとなった。
言われてみれば、その考えもありえるのだ。
「僕もソウイチの言うとおりだと思う。記憶を失っているのなら、モリゾーのお父さんの人格だってなくなって、別の人間みたいになっちゃうよ。だから、もし記憶を失っているとしたら、何かがきっかけで記憶が戻るかもしれない。」
ソウヤは言った。
「モリゾー、もう一度あいつに会ってはっきりさせるんだ。どっちにしたって、これ以上罪を重ねさせちゃいけねえ。あいつがはぐるまを盗むのがつらいのはわかる。だけど、今ここであいつを追いかけなかったら、一生後悔することになるぞ!!」
ソウイチはモリゾーの目をしっかり見た。
「すいしょうのどうくつへ行って、あいつを止めるぞ!」
「・・・うん!わかった!」
モリゾーの目に、いつもの輝きが戻ってきた。
「そうこなくっちゃな!それじゃあ、行くぜ!みんな!!」
「おう!!」
みんなは急いですいしょうのどうくつへと出発した。
リーフが何者なのか知るために、そして、ときのはぐるまをこれ以上盗ませないために・・・。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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