ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第三十七話 ジュプトルをつかまえろ!きたのさばくの謎 前編
みんなが全速力でギルドに駆け込むと、すでにみんな集まっていた。
「おせえぞお前ら!!」
早速シリウスが怒鳴った。
「うっせえ!先に帰ってるお前に言われたかねえよ!!」
ソウイチも負けじと怒鳴り返す。
「そんなことやってる場合じゃないでしょ!!」
ソウヤが二人の仲裁に入って一応口げんかは収まった。
「だけど、いったい何があったの?」
モリゾーが聞いた。
「ときのはぐるまが・・・、また盗まれたのだ・・・。」
ぺラップは重々しく言った。
みんなは飛び上がって驚いた。
「ええ~!?ま、またでゲスか!?」
ビッパも驚きを隠せないようだ。
「で、今度のはどこの歯車が盗まれたんだよ?」
ソウイチが聞いた。
「そ・・・、それが・・・。」
ぺラップはそこまで言うと口をつぐんだ。
かなり言いにくいようだ。
「どうしたの・・・?」
「何か言いにくいことでもあるの・・・?」
ゴロスケとソウヤがたずねても、ぺラップはなんとも言わない。
「ま、まさか・・・。嘘だろ・・・?」
ソウイチはどうやら、ぺラップの表情から感じ取ったようだ。
「・・・そう。そのまさかですわ・・・。今回盗まれたのは・・・、きりのみずうみの・・・、ときのはぐるまですわ・・・。」
キマワリが言いにくそうに言った。
「えええええ!?」
話を聞いていなかったソウイチ達はさらに驚いた。
「な、なんでなの!?ときのはぐるまのことはオイラ達だけの秘密だったはずだよね・・・?なのにどうしてなの!?」
モリゾーは衝撃の事実を聞かされてかなりあたふたしていた。
ぺラップのほうを見ても、ぺラップが答える様子はない。
「んなもん、誰かがしゃべる意外に情報が漏れるはずがねえだろうが!!」
「おい!誰だよしゃべったのは!!」
ソウイチとシリウスがみんなをにらみつける。
「そ、そんなわけないだろうが!!」
「仲間が信用できないのかよ!!ヘイヘイ!!」
みんなからいっせいにブーイングが飛んだ。
「ソウイチ!!シリウス!!いくらなんでも言っていいことと悪いことがあるよ!!」
「そうだよ!みんなに謝りなよ!!」
ソウヤとゴロスケが二人を責める。
当然のことである。
「じゃあなんであのことが他のやつに漏れてんだよ!!ああ!?」
「誰かがしゃべったとしか思えねえよ!!」
二人は考えを変える気はなさそうだ。
「でもそんなのありえないでしょ!?この中の誰かが秘密をしゃべっちゃうなんて!!」
「よく考えたら分かることですよ!!」
モリゾーとコンも二人を責める。
ここまで言われるとさすがの二人も言葉がなかった。
「まあ、でもそう思うのも仕方のないですわ。私たちが遠征に行った直後にこうなったわけですし。」
キマワリが見かねて助け舟を出した。
「ちょ、ちょっと待ってください!私、よく分からないんですが・・・。きりのみずうみにときのはぐるまがあるなんて・・・、私はじめて聞きました。そもそも今回のギルドの遠征は・・・、きりのみずうみへの遠征は失敗したんじゃなかったのですか?」
と言ったのは一人蚊帳の外だったヨノワール。
事情を知らないから当然と言えるだろう。
「ごめんね、ヨノワールさん。実はある約束があってヨノワールさんには言えなかったんだよ・・・。」
プクリンはすまなそうに謝った。
「ともかく、きりのみずうみに来た侵入者は、ユクシーを倒し、ときのはぐるまを盗んでいった。」
ぺラップが言った。
「ゆ、ユクシーは!?ユクシーは大丈夫なの!?」
思い出したようにソウヤが聞いた。
倒されたとあっては気が気ではないだろう。
「大丈夫、無事だ。今はジバコイル達に保護されているよ。心配しないで。」
「ほっ・・・。よかった~・・・。」
ソウヤたちはほっとため息をついた。
「それに、ユクシーの証言からその侵入者の詳細がわかった。」
「ええええ!?そ、それってどんなやつ!?」
ぺラップの言葉にソウイチたちは食いついた。
「すでにお尋ね者としてポスターに張り出されている。お尋ね者ポスターを見るのだ。」
ぺラップのさすほうを見ると、そこには一匹のポケモンが描かれていた。
そう、ジュプトルだった。
「じゅ、ジュプトルっていうポケモンなのか・・・。なんだか凶悪そうな顔だね・・・。」
ゴロスケはつぶやいた。
「(おいおい・・・。モリゾーだって進化したらジュプトルになるんだけどな~・・・。)」
ソウイチは心の中で突っ込みを入れる。
「(こいつが騒動を起こしてる張本人か・・・。こいつが、盗賊・・・。)」
ソウヤはそんなことを考えていた。
「このお尋ねものポスターは、ユクシーの証言から先ほどいっせいに指名手配されたものだ。」
ぺラップが言った。
「なるほど~。ペリッパーがたくさん飛んでいたのはそれを伝えるためだったんでゲスね。」
ビッパもさっきの異常な光景に納得したようだ。
「ジバコイルたちもこれ以上放っておくことはできないらしい。今度のジュプトルには多額の報奨金をかけたようだ。」
ぺラップが話している間、モリゾーはじっとそのポスターを見ていた。
そしてあることを考えていたのだ。
「(このジュプトル・・・、どこかで見たことある・・・。オイラの、身近にいたような・・・。それに、この頭の葉っぱの形、父さんにすごく似てる・・・。まさか・・・。)」
なぜだかわからないが、モリゾーはこのジュプトルがグラスであるような気がした。
しかし、父は立派な探検家、窃盗などするはずがない。
他人の空似ということもあるが、頭の葉っぱの形があまりにも似すぎているのだ。
「俺たち・・・、ユクシーと約束したのによお・・・。秘密は絶対守るって・・・。なのにこんなことになるなんて・・・。」
「俺たちが秘密を漏らしてないにせよ、あいつには顔向けできねえぜ・・・。」
ソウイチとシリウスは悔しそうに顔をゆがめた。
「ヘイ!あんなきれいな景色が壊されるなんて絶対に許せねえよ!ヘイヘイ!」
ヘイガニも怒りをにじませている。
「ううう・・・。ううううううう・・・。」
突然プクリンがうなりだした。
「あ、親方様・・・。」
チリーンはプクリンの変化に気がついた。
「ううう・・・。ううううううう・・・。」
うなりはとまる気配がない。
「お、親方様!?」
ぺラップが声をかけたとたん・・・。
「たあーーーーーーーーーっ!!」
「ひゃあああああああ!!」
「どわあああああああ!!」
みんなプクリンがいきなり大声を出したのでびっくりした。
「みんな!ジュプトルを捕まえるよ!プクリンのギルドの名にかけて、絶対捕まえるよ!!」
どうやらさっきのは怒りと決意のうなりだったようだ。
「ぺラップ!!」
「は、はい!!みんな!今からすべての仕事をジュプトル捕獲にシフトする!ジュプトルを捕まえるために全力を尽くしてくれ!!」
ぺラップはみんなに言った。
「んなもん言われなくたってわかってるぜ!!」
「これ以上盗まれてたまるかってんだよ!!」
ソウイチとシリウスは燃えていた。
「ユクシーのためにも、絶対に捕まえてやる!」
ソウヤとゴロスケもやる気満々だ。
しかし、そのなかでやはり、モリゾーだけは気が乗らなかった。
さっきの考えが頭に残って仕方ないのだ。
「プクリンさん、大体の事情はわかりました。ジュプトルの捕獲、私もお手伝いしましょう!」
ヨノワールのその言葉を聴いて、みんなは感激した。
これほど心強い助っ人はいないと思ったからだ。
「では、これから私と親方様で、ジュプトルを探す段取りを決める。みんなはその間に探索の準備を整えておいてくれ。各自準備ができたらここに集まること。」
そこでぺラップはいったん言葉を切り・・・。
「ではみんな!がんばっていくよ!」
「おお~!!!」
毎度おなじみ気合入れのターンとなった。
そしてみんなは準備のためその場を後にした。
「それじゃあ、俺たちもいくとしますか。」
「そうですね。はやいとこ準備を終わらせましょう。」
シリウスとコンは先に駆け出した。
「あ、待ってよ~!!」
ソウヤとゴロスケも後を追いかけ、ソウイチも行こうとしたとき、モリゾーが後ろから呼び止めた。
「ソウイチ、ちょっと話があるんだ。」
「ん?話って何だよ?」
モリゾーはさっきの考えをソウイチに話した。
それにあわせて、自分の過去のことも話した。
「へえ~・・・。だけど、ほんとなのかそれ?」
「わかんない・・・。根拠はないけど、なんとなくそんな気がするんだ・・・。」
「なるほどな・・・。でも、お前の親父はお前らを守って生き埋めになったんだろ?だったら、どう考えても他人じゃねえの?」
「でも、頭の葉っぱの形があまりにも似てるんだ・・・。父さんとしか思えない・・・。ときのはぐるまを盗んでるのは、もしかしたら・・・。」
モリゾーはそこで言葉を切った。
「もしかしたら?」
「記憶をなくして、誰かに利用されてるだけかも・・・。だって、父さんは結構有名だったんだよ?ゴロスケのおじさんと一緒にいろいろなところを探検してさ。父さんがわけもなく窃盗なんかするはずないよ。」
「それだったらなおさら他のやつらが気付くんじゃねえか?ゴロスケの親父さんとか、プクリンとか。なのに誰もそのことを言わないってことは、別人じゃねえか?お前の考えすぎだよ。」
ソウイチはどうもモリゾーの言うことを信じれなかった。
生き埋めになって命を落としたグラスが、今も生きているというのはありえないと思ったのだ。
「でも、可能性は0じゃない。あの時父さんの遺体はどこからも見つからなかった・・・。万が一ってことだってある。だから、オイラはあのジュプトルが父さんだと思う。そんな気がする。」
モリゾーはソウイチの目を見ていった。
その目に迷いはなかった。
「そうか・・・。ならお前の好きにしろよ。だけど、みんなには言わないほうがいいぜ。絶対混乱するからな。ソウヤやゴロスケにも黙ってたほうがいい。」
「そうだね・・・。あのことだって内緒にしてるし。」
「だな。おっと、そろそろいかねえとソウヤの小言が飛んできそうだぜ。行くぞ。」
「あ、うん!」
ソウイチとモリゾーはソウヤ達の後を追いかけた。
準備を終えた後、みんなは再び一堂に集まった。
ソウヤたちはソウイチとモリゾーが何の話をしていたのか聞いたが、二人はうまくごまかした。
「みんな集まったようだな♪まず、これは当たり前のことなのだが・・・。」
みんなが集まったのを見計らってペラップが話し始めた。
「ジュプトルはときのはぐるまがある場所に現れる。ただそのときのはぐるまがどこにあるのか・・・、私たちには分からないのだ。そこで、ヨノワールさんに協力してもらって、ときのはぐるまがありそうな場所のめぼしをいくつかつけた。みんなはグループに分かれて、それぞれそこを調査してくれ。」
そう言うと、ペラップはチームわけをした。
ドゴーム、ヘイガニはひがしのもり、ビッパ、ダグトリオ、キマワリはすいしょうのどうくつ、アドバンズにはきたのさばくが割り当てられた。
「んで、きたのさばくってどこだ?」
ソウイチが聞いた。
「ふしぎなちずを取り出してくれ。」
「え~と・・・、地図地図・・・。」
ソウイチがいろいろ探し回っていると・・・。
「もう出してるよ!」
ソウヤは目の前に地図を突きつけた。
「お、気が利くじゃん!」
嫌味ということに気付かずソウイチは早速地図を広げる。
「ほら、この場所だ。地図では雲に覆われていて分かりにくいが、ちょうどこの周辺から乾燥地帯が始まっていることから、きっとこの先は広大な砂漠が続いているのではないかといわれている。この砂漠の奥にもしかしたら、ときのはぐるまがあるかもしれないので探してみてくれ。」
ペラップは地図を指し示すと四人に言った。
「うん!わかった!」
ソウヤとゴロスケは快く返事をした。
「シリウスとコンは、そっちの仕事の都合もあるだろうから向こうの地域でときのはぐるまがありそうなところを探してみてくれ。」
ペラップは二人の都合をできるだけ優先した。
「わりいな。結構救助の依頼もたまってるし、そろそろこなさねえとな。」
遠くの依頼がかなりあり、そろそろ行かないといけないのだ。
さすがにずっと仕事をおいておくわけにもいかない。
「あの~・・・、僕は・・・?」
そう言ったのはディグダ。
まだ役割をいわれていなかったのだ。
「ディグダはギルドでお留守番だ。見張り番までいなくなるのはさすがにまずいからな。」
ペラップは言った。
そしてチリーンやグレッグルも留守番だ。
「それではみんな!ときのはぐるまを探すよ!たあーーーーーーーーーっ!!」
「おおーーーーーーっ!!」
みんなはまた気合をいれ、それぞれの目的地に向かって出発した。
「じゃあ、いったんここでお別れだな。」
「なんか情報入ったら、依頼が終わったら伝えに来るぜ。お前らも頑張れよ。」
ソウイチとシリウスは握手を交わした。
「モリゾーさん、がんばってくださいね!」
「コンも救助頑張ってね!」
モリゾーとコンもお互いに握手する。
そして、ソウイチ達はきたのさばく、シリウスたちは救助基地を目指して旅立って行った。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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