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てきびしいしうち

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作者:オレ
エログロちゅーい。苦手な要素がある方は「適」切に対応お願いします。



「言いたいことしかないんだけど……とりあえずなんで自分の布団でおねしょしているの?」
 無残にも大きく染みを作っている布団を背に、ヒトカゲの少年は同い年くらいのリオルを壁に追い詰めている。尻尾の炎は音を立てて燃え上がっており、感情的な部分は既に止められなくなっているのが伺える。リオルはヒトカゲの顔の前に両手を掲げて苦笑し、宥めてこの場をやり過ごそうとしているようだが……。
「おねしょで濡れた僕の布団を片付けたけど寝足りなくてさ。イクトーが気持ち良さそうに寝てたから、一緒に寝れば気持ちいいかなって」
「おねしょした直後の体で布団に入られるこっちの身にもなってよ! こっちはちっとも気持ち良くないよ!」
 イクトーと呼ばれたヒトカゲがリオルの胸ぐらをつかんで壁に押し付けると、リオルは表情を歪めて「いてて」と声を漏らす。最初のおねしょで自分の股の毛並みにしみ込んだ尿をどの程度落としたのかはわからないが、その汚れが残っている状態で布団に入ると言われたら起きていたなら全力で拒否していただろう。
「大体、おむつはどうしたの? ティオのおねしょはほとんど毎日なんだから、しなきゃ駄目って言ってるよね?」
「だって、おちんちんに当たる感触が嫌なんだもん。つけてたら眠れなくて……」
 ティオと呼ばれたリオルが言った瞬間、イクトーの尻尾の炎の音は更に激しさを増す。窓の外にはおねしょで汚れたティオの布団が干されており、イクトーの布団もしみ込んだ尿で濃いにおいを放っている。こんなことを繰り返されたらむしろイクトーの方こそ夜もおちおち寝ていられない。
「もういっそのこと、感触に慣れるために昼間もつけていたら? 昨日だってダンジョン内でお漏らししていたし、どっちにしても必要だよね?」
「無理だってば。おちんちんに当たるもの着けてちゃ、いざという時に素早く動けないよ」
 ああ言えばこう言うとばかりに言い訳をして、とにかくティオはおむつをはくのは拒否したいらしい。だがイクトーも今回は許せないのか、首を締め上げる力は非常に強い。口の中からも炎が出かかり、何が何でもおむつをはくようにしないと納得しない勢いだ。そんな中部屋の扉が開き。
「なんだ、朝から騒がしい……あー、ついにイクトーもやっちまったのか」
「センパイ! 違いますって! これはティオが自分の布団に入ってきてやったやつで……!」
 顔をのぞかせたブイゼルがイクトーの布団の惨状を見て、一発で誤解してしまった。ティオのおもらし癖は既に仲間内では広がり切った話であるが、イクトーはいつもいつもその話が自分に飛び火しないか気が気でなかった。今回はおねしょの布団が二つ並ぶ事態となるので、話を隠すのは難しいだろうが。
「あー……とりあえずイクトー、ティオの奴言うそばから漏らしてるぞ」
「え? ええ?」
 ブイゼルに言われてその瞬間、足先に当たる感触に気付く。ぼたぼたと音を立てて雫を垂らすティオ。ブイゼルが入ってきたのに驚いて振り向いた瞬間手元がずれて、イクトーの手がティオの喉元に食い込むように入ってしまったのだ。ティオは白目を剥いた状態で、本日三度目の失禁をしてしまったのである。どこにこれだけの尿をため込んでいるのだろうか。イクトーもこれには唖然とするばかりで、ティオの尿に浸っていく自分の足を引っ込められもせず眺めるだけであった。



 嘆かわしいほどに慌ただしい朝の始末を終え、イクトーとティオはブイゼルを伴いダンジョンへと潜入している。荒々しい地肌が露出する岩タイプと鋼タイプのポケモンが多いダンジョンということでブイゼルをメンバーに抜擢したのだが……。
「センパイ、水ちょうだい?」
「またかよ……」
 先程からティオは、調査団の先輩であるブイゼルを完全に水筒扱いしている。ブイゼルは仕方なしに差し出された水筒に水を注ぐが、その後はため息を一つ。先頭に立っているイクトーが背中で語り掛けてくるものが聞こえているかのように。
「ティオ、今日もまた飲み過ぎてるんじゃないかな?」
「だって喉が渇いたんだもん」
 穏やかな口調で顔はこちらに向けることなく語り掛けるイクトー。それは前方を警戒するためよりも、怒りの本気度合いが高いからである。例によって尻尾の炎は勢いを増して音を立てており、先程など野生のココドラが恐怖に駆られて逃げ出したほどだ。朝方昨日もダンジョン内でお漏らしをしたという話が出たが、その時も直前に水を飲み過ぎるという同じパターンを繰り返していたのだ。
「目的地ももうそう遠くねえんだし、これで最後にしておけよ。昨日も同じことして漏らしてただろ?」
「でもでも、喉が渇いていて気分が悪くちゃ上手く動けなさそうで……」
 その瞬間、金属を打ち砕く鈍い音が部屋中に響き渡る。この部屋を出て次の部屋の通路に入ろうとした一行の前に、今の今までいなかったはずの野生のボスゴドラの姿があった。相手は頑強な巨体であるにもかかわらず、イクトーは「炎のパンチ」の一撃でその胸を粉砕していた。肩から腰のあたりまで、無数の亀裂が入った肌からは一滴の血もこぼれておらず、代わりに立ち昇るのは煙に鉄と肉の焼けるような香り。打撃力も凄まじいのだが、傷口を一瞬で焦げて固まらせるほどの熱量を帯びているのも恐ろしい。
「イクトー? このボスゴドラ、さっきまでいなかったよな?」
「知りませんね」
 戦慄するばかりのブイゼルの問いに、イクトーの答えはなっていない。まるで「聞き苦しいティオの言い訳を打ち切りにするべく、目の前で潰すために呼び出した」という答えに聞こえてきそうだった。タイプ相性的に炎に耐性のあるブイゼルでさえこれには恐怖するばかりである。
「あはは……そんなに仲間を脅さないでよ」
「そんなことよりティオ?」
 その瞬間、イクトーはようやくこちらを振り向いた。表情からは一切の力が抜け切り、非常に穏やかに見える。それは燃え上がる殺意をいつでも行動にできるようにという裏返しだ。表情他余計な力をすべて省き、行動のみに備えているのだ。そんな心も封殺しそうな顔と声を向けられ、ティオは平静でいられるはずもなく。
「ひゃっ! イクトー、なんか……怖すぎる!」
「情けない声を上げないでよ。そんなんじゃまたお漏らししちゃうよ? ちなみに次やったら……」
 その瞬間何も知らない哀れなゴローンが、これから入ろうとしていた通路からふらふらと入り込んできた。イクトーはティオに顔を向けており、その様子に気付いてはいないようにも見える。絶好の隙を見つけたとばかりにイクトーの背後に忍び寄るゴローン。
「次、どうなるのかな……?」
「こうなる」
 背後から振り下ろされるゴローンの拳を受け止め、イクトーはそのまま相手を仰向けに倒す。いきなりのことに驚愕するゴローンの、お留守になった両脚を持ち上げて左右に開き。露わになった股に向かって、吐き出される業火。
「え……っと?」
 その猛烈な熱に包まれて耐えきれなくなり、ゴローンの体は大きく亀裂が入る。現実が見えているようで理解できず、ティオは呆然とただゴローンの哀れな最期を眺めるだけであった。
「これから一生分のお漏らしを、先取りして乾かすんだ。ブラストバーン二回くらいでしばらく分にはなるでしょ?」
 そして戻ってきたぶれることもない穏やかな表情。優しい口調で告げる言葉は、優しさなど欠片もなく。しかし反論しようにも燃え上がる尻尾の炎と握りしめられた拳で威圧されるばかり。ティオもブイゼルも何を言うこともできなかった。イクトーの方は一通り言い終えて少しだけ気が晴れたかのように、悠々と通路を進み始める。だがついていく二匹の足取りは重い。
「とりあえず、この階層はもうこの先にしか部屋は無さそうだからね。階段も多分そこだろうね」
 一行が一直線の通路を進むと、ほどなく次の部屋の明かりが見えてきた。それに伴い、ティオの下腹の奥の方が熱のような感覚を帯び始めていた。飲み過ぎた結果の案の定で、催してしまったのだ。瞬く間に下腹の奥が破裂せんばかりに膨らみ、鈍い痛みを帯び始める。これは一旦離れて適当な場所で気付かれないように立小便でもして済まそうか、そう考えた瞬間だった。
「モンスターハウスだっ! 最後の階段を前にか!」
「陳腐だが、避けようがないからうざいな」
 部屋の中で隠れていた野生が瞬く間に飛び出してきて、一斉にこちらを向いて臨戦態勢になる。イクトーは素早く通路内に下がり、ブイゼルを先頭、その次にティオという順番に隊列を整え治す。
「ちょっと、イクトー? これ、どういうつもりなの?」
「いつも通りだよね? ブイゼルセンパイがかまいたちで部屋中の敵を打つ、その後ろから僕の火炎放射とティオの電光石火で援護する」
 言いながらティオは背中を押し、モンスターハウスの方へ向かわせる。技の射程はイクトーの方がティオより長いため、選択としては妥当だろう。だがブイゼルとイクトーの間に挟まれて、これでティオがどさくさに紛れて立小便に離れることはできなくなってしまった。
「あう……うわあっ!」
「どうしたのティオ? そんなに慌てることでもないよね?」
 ティオは白目を剥いて涎をまき散らしながら、必死に電光石火を撃ちまくる。その間にも刻一刻と破裂しそうなものが押し寄せているが、イクトーはそんなことなどつゆ知らず隙間を通して火炎放射を放つ。逃げられない……そのように悟ったティオは、一刻も早くこの場の敵を殲滅するしかないと腹をくくるが。自分の膀胱がそれまで持ってくれるとは考えづらい。だがそれでも持ってもらう他はないのだが……とにかくブイゼルを邪魔されないように敵を打ち込む。
「ん? あれは?」
「どうした? 別の敵か?」
 何度目かの電光石火を撃った戻り際、部屋の片隅に見えるものがあった。白い陶器のようなものが丸い形で地面に口を開けている。トイレだ。ブイゼルが一度目のかまいたちを放ったことで敵が減り、視界が開けたため見えたのだ。もう一度電光石火を撃つ際に目線を送ると、紛うことはない。上にもしっかりトイレのマークがついている。二度目のかまいたちのチャージに入ったブイゼルの横に電光石火で入ると、そのまま隊列に戻らずそちらへと突っ走る。
「お、おい! ティオ!」
「突き進むだけだ!」
 敵の隙間をとんでもない速度でかいくぐり、ティオは一気に便器の前へと飛び込む。そのとんでもない勢いに、イクトーもブイゼルも唖然とする。敵集団もそのとんでもない動きに一瞬は戸惑った様子ではあるが、それでもまずは目の前のブイゼルに向かってくる。その間にもティオは突き進み……。
「届くっ!」
 両手を前に伸ばして滑り込み、便器に四つん這いで覆いかぶさるような位置に飛び込む。ギリギリだったようで、ものの先端はすぐに毛並みの間から飛び出し尿を放ち始めていた。
「はぅうんっ!」
 恍惚と声を漏らすティオ。はちきれんばかりに溜め込んだものが抜けていくのは、強烈な快楽だ。とてもではないが敵のど真ん中にいてする行動ではない。
「オメー何やってるんだよ! 早く戻って来い!」
「ごめんごめん、もう少し……」
 ブイゼルが二度目のかまいたちを放ったことで、敵は粗方仕留められた。あと残っている敵は適当に打ちのめせば片付くだろう。ティオもそれを見て、内外から焦燥を駆り立てるものが消えていくのを感じた。それと同時に思考も回るようになり始めて……。
「あれ? なんでダンジョンにトイレなんてあるんだ?」
 慌てすぎて見えなかった、通常であれば働くべき疑問。気付いた時すでに遅く、便器の中から飛び出したキバニアがティオの雄のものに食らいついていた。何が起きたのかわからずに、慌てて身を引くという反応もできないまま。見慣れた体の一部が消えてなくなり、それを掻っ攫って便器の中の水路に消えていくキバニアの動きがスローモーションで映り。そこから血が噴き出し始めた瞬間にティオの意識は現実に戻り、同時に苛烈なまでの痛みに全身を貫かれる。
「ティオ!」
「うわあああっ!」
 思わず手を突いて便器からは飛び退くも、数歩後ろで仰向けに倒れるティオ。周りに残っていた敵の排除もそこそこに、イクトーとブイゼルはティオの元に駆け寄る。ティオは白目を剥いて涙を零し、股間からだくだくと血を流して気を失っていた。事は一刻を争わないと、まず失血死の心配がある怪我だ。明らかに不自然にダンジョンの中にあるトイレ、それに飛びついたティオ。不用意な行動に「そんなものはない」と手厳しい仕打ちを食らわせる。
「畜生、ここまで来たのに……! イクトー!」
「わかってます! 穴抜けの玉、使います!」
 既にイクトーがバッグから取り出していた、つやのある球体。そこまで硬い物ではないらしく、イクトーは一瞬で握り潰す。即座に淡い光が発生してイクトーたちを包み込み、次の瞬間には彼らもろともその場から消え去っていた。



「そんなことがあるんですか?」
「私も今朝がた得たばかりの情報ですね。明日の朝礼で団員達に知らせないといけません。やれやれですよ」
 机の上に並べられた書類を前に、お茶をすするデンリュウとタブンネ。書類には様々なポケモンの体の図面と、その説明が載せられている。調査団のメンバーのものばかりではなく、周辺の特に数の多い住民の種族のものもある。傷病発生時の対策を話し合うため、タブンネにおだやか村から来てもらったのだ。
「被害はどの程度出ているんですか?」
「皆さん一度は体を欠損するほどの怪我をするそうですが、即座に復活の種が発動するので元通りみたいです。ただ、復活の種が切れた深層で遭遇したら……そうなったら大怪我も考えられるでしょう」
 言いながらデンリュウはもう一度ため息をつくが、その口調は対照的に軽い。まだ被害が大きくないというのもあり、ことに性急さを感じてはいないらしい。深層で復活の種が切れたような状況で、軽はずみな行動をとるような者はそうはいないとも思っているらしい。伝令のデデンネも控えているしそんなに慌てることではないだろうと思った、その瞬間。
「おや? 先生、伏せてください!」
「え? は、はい!」
 何かを感じ取ったデンリュウに言われるがままに、タブンネは机のわきで伏せる。デンリュウも伏せたその瞬間、机の上に閃光が迸る。次の瞬間には着地の衝撃音とともに、見慣れたヒトカゲたちが机の上に降り立っていた。
「やれやれ、穴抜けの玉ですか。イクトー、緊急ですか?」
「ダンチョー! ティオが、ティオが……!」
 デンリュウが訊くのもろくに答えず、イクトーはその腹に泣きすがる。短い産毛が密集したデンリュウの腹は、一瞬でイクトーの涙と鼻水を吸収し濡れそぼつ。
「え……? 血?」
「先生? そう言えば今日は先生が来るって話だったな。先生! ティオがダンジョン内で噛み千切られて、大怪我なんだ!」
 ブイゼルの方も慌てた様子ではあるが、それでも何とか状況を説明する。ポケモンの医療に詳しいタブンネが居合わせたことで安心できる部分はあるが、それでもまだ落ち着くことはできない。この瞬間にも机の上の資料はティオが股間から流す血で染まっていっており、一目でわかる緊急性にタブンネの目つきが変わる。
「そんなところを……。とにかく急いで縫合して癒しの波動を掛けます。鞄を取ってください」
「は、ひゃい!」
 泣きながら呂律の回らない返事をするイクトーだが、行動は早く適切だ。壁際に置いてあったタブンネの鞄に飛びつくと、急いで机の上に乗せる。デンリュウが机の上の資料を突き飛ばすようにどけると、タブンネはボトルの中の消毒液を撒いて消毒する。縫合用の道具を取り出したのを見た次の瞬間には、これ以上は何かできるわけでもないと悟ったイクトーたちは一歩下がる。
「やれやれ。このメンバーで失敗するなんて、随分珍しいですね。何かあったのですか?」
「うん。実は……」
 イクトーはなおもむせびながら、ブイゼルもげんなりした表情で。ひとまずデンリュウにダンジョンであったことを説明する。トイレを我慢しきれなくなったティオがモンスターハウス内にあったトイレに走り、中から飛び出してきたキバニアに陰部を食いちぎられたことを。そして……。
「自分が脅し過ぎたんだ。ティオがお漏らしを繰り返すのに腹が立って、それで脅しちゃって……。ティオがすっかり怯えて、そのせいであんな風にトイレに飛びついちゃって……」
 もう少し落ち着いた状況であれば、ティオもあんな罠には掛からなかっただろう。そう思えたイクトーは、脅し過ぎたことへの自責を漏らす。その後はまた涙を吹き出し、デンリュウの腹に顔をうずめる。毛並みが濡らされるのはデンリュウも気分がいいものではないが、今は仕方ないと抱き寄せる。
「それにしてもやれやれ……明日の朝礼で説明する予定だった罠にかかるとは、あなたたちも間が悪いですね」
「説明……? なんか情報が来ていたやつだったのか?」
 ブイゼルの言葉に、デンリュウはうなずくと説明を始めた。キバニアは普段それなりに大きな川や海のダンジョンにいる種族で、近くに来た獲物を集団で狩る生態である。だが粗暴な性格が夷狄の中でも目立ち、群れを追放された者が出たのだ。ダンジョンの地下水脈に単身で生活するようになったため、獲物には飢えることになっていた。そこで水脈の出入り口のいくつかを水回りの見た目に作り変え、給水したり手を洗い休憩する探検家を襲うことにしたのだ。中でもキバニアが力が入れたのはトイレであった。排泄時は生殖器という命を繋ぐ大きなエネルギー源を晒すので、それだけでも摘み取れれば栄養として非常に大きいのだ。
「復活の種があれば元通りなんですがね……あれはダンジョン内の空気でしか発動しませんし、時間が経った傷を癒すこともできませんから。この前に大事になっていたらもっと情報も早かったんでしょうけどね……やれやれですよ」
 デンリュウはいつもの口癖とともに、仲間が重傷を負う結果を防げなかったことにため息をつく。考えてみるとこんなトラップに掛かるものがいるとは信じられないのだが、というかこんなトラップを思いつく発想が信じられないのだが。現にティオは掛かってしまった。ティオの方を見ると、縫合は完全に終わっているらしくタブンネの手から放たれる癒しの波動を当てられていた。それも終わり際だったのか、すぐにタブンネは息をついて手を放す。
「終わりました。あとは意識さえ戻れば、命の方は心配ありません」
「先生……先生!」
 言われて涙ながらに駆け寄ったイクトーの頭を、タブンネは軽く撫でる。ティオの傷口をのぞき込むと、なるほどもう血は出ていないが縫合の痕が痛々しい。何よりも癒しの波動でも欠損したそれは復活させることができなかったので、進化してももう生殖能力を持つことはできないだろう。タブンネの「命の方は」という言い回しがイクトーの胸に重くのしかかる。
「それでイクトー、ティオに合うおむつはありますか? 手術後なので体も慣れないでしょうから、今まで以上におむつが必要です」
「……えっ?」
 タブンネが告げた言葉に、イクトーのそんな重い気持ちが弾き飛ばされる。タブンネは必要なことを告げただけだったのだが、イクトーは唖然と。ティオにおむつをはかせること自体はイクトーの望んでいたことではあるが、それはティオの意思ではいた場合の話で。気を失っている現状で理由を付けてはかせるのは何故か悪いような気がして。イクトーはしばし息を飲んだまま立ち尽くしていた。



 それから数日。イクトーとティオは今度はデンリュウを伴い、再びあのダンジョンにいる。
「そんなのに……掛かるのか?」
「やってみないとわからないじゃない」
 一度失敗したことによる再挑戦というのもあるが、あのキバニアを捕まえようというティオの強い意思もあってのことだ。いつもは失敗しても引きずらないティオであるが、今回は流石に気持ちに残るものがあったらしい。キバニアの用意したトイレに釣竿を向けて釣り糸を垂らしているのが現状であるのだが……。
「それにしてもこれはシュールな光景ですね」
 デンリュウに言われるまでもなくわかっていることで、呆れ顔のイクトーと渋い表情のティオ。実際トイレに釣り糸を垂らすことなど、普通であればやろうとは思わない。勿論その中にキバニアがいると思えば普通の状況ではないのだが、相手もいくつものダンジョンを巡っているので今ここにいるのかはわからない。イクトーもティオも思わずため息を吐く。
「と、ところで……ティオはあれからずっとおむつはいているな」
「うん。今度は当たるものが無いから、気にならなくなってね」
 異様な雰囲気になりかけていたので話題を逸らそうとしたイクトーだが、ティオの答えに更に気を重くしてしまう。ティオ自身にはイクトーを責めるつもりはなかったのだが、イクトーの方にはティオがそこを食いちぎられた一因には自分の脅し過ぎがあったのだと感じており。今も負い目があったのだ。
「でもおむつをはいているからって、いつまでもおねしょをしてていいわけではないですよ?」
「うん。やっぱり、治さないとだよね」
 デンリュウの言葉にティオも珍しく反省を口にしたことに、イクトーは少し驚く。いつもは失敗してもあまり反省がなく、イクトーが激怒するほどにお漏らしを繰り返していたからである。こうしてキバニアを捕まえに来たこと自体もだが、大事な体の一部を食いちぎられては色々と気持ちに残るものがあったのだろう。
「あっ……」
「ん? 当たり?」
 不意に声を漏らしたティオに、イクトーは竿の先に目を向ける。しかしティオがすぼませた顔を左右に振ったのを見て、それ以上は何も言わなかった。ティオのおむつが見る見るうちに黄ばんでいっているところからは、何となく目を逸らす。
 ティオのお漏らしが治るまで、まだまだ先は長そうだ。




 どうも、去勢と言えば自分になりつつあると思いたかったのですが、今回の大会でも他にも去勢されたポケモンを描いている方がいましたね。でもまあ自分に言わせれば去勢は苦悶や屈辱が無ければ意味はないですからね。既に時間が経っていて痛みや流血、お漏らししやすい体になった屈辱あってこそだと思っているので、わかりやすいとは思います。
 そんなわけで荒唐無稽も知ったものかと趣味に突っ込んでみました。TLの諸兄の処刑のお陰でリオルに対し「失敗を繰り返して反省がない」というイメージが染みついてしまいました。それに対してRTなんかでイラストでもよく流れてくるのですが、リオルはお漏らしも良く映えると感じています。そんなイメージを詰め込んだのがティオでした。ストーリーの方は流れてきたイラストの中に「ダンジョンにトイレなどない」というキャプションと共にお漏らしするケモショタ(非リオル)という作品から生まれたものです。本来そんなものはないはずのダンジョンになぜか鎮座するトイレ、それに慌てて飛び込んだところトラバサミ状のものが飛び出してきてものを食いちぎる。そこまでが一気に浮かび大した長さにはならないと思ったので、前回の「欲望狂い果てて」の前に書いて短編大会用のストックにしていました。今回の「てき」が使いやすいお題で助かりました。ちなみにその段階ではまだ「欲望狂い果てて」は存在していなかったので、去勢された傷口に焼灼止血法を施すというのも考えていました。手厳しい仕打ち、滴、敵地、適切、摘み取る、夷狄。色々な「てき」を用意してみましたがいかがだったでしょうか?



>性癖があふれていた (2018/11/26(月) 12:08)
 ティオには思いっきり性癖を突っ込ませていただきました。唯一の票ではありますがこのレベルが高い大会の中で投票してくださいましてありがとうございます。


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Last-modified: 2018-12-24 (月) 23:04:29
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