ポケモン小説wiki

じゃすとふぃっと

大会は終了しました。このプラグインは外してくださって構いません。
ご参加ありがとうございました。

エントリー作品一覧

作者:sunset(ヒマナッツ）　作者ページ？気が向いたら

陽炎の立ち昇るアスファルトの車道を車で走りながら目的地の家電量販店を視認する。1階は駐車スペースとなっており雨の日でも体や商品を濡らさずに出入りが出来る。
その駐車スペースに入り停められそうな所を探しながら駐車場を回る。暑い屋外に長く居たくはないため店の入口に近い方から回ってみるが皆考えていることは同じようで近場は全て埋まっているようだ。
仕方がないので遠い方まで回り適当なところに車を停めエンジンを切る。冷房の効いた車内のドアを開けると茹だる様な暑い風が薄着の肌を撫でた。
外に出ずにこのまま帰ろうかとも考えたが駐車場に屋根があるだけ他の屋外駐車場の他の店よりはマシだと思い直し車から降り急ぎ足で店内へと向かった。
自動ドアが開き店内へ入ると外よりは幾分かマシな温度に安堵する。だが車から店内までの短距離でかいた汗はまだ引いてくれない。
入口すぐの階段を上りながらこの不快感に因る苛立ちを適当なことを思案して紛らわすことにした。最近は地球温暖化だ電気代節約だなどと空調の温度を風潮があるが国が決めた室内温度は28度は暑いし不快だ。
なにより快適に過ごすためにエアコンをつけるのに不便を押し付けられるというのは理不尽に感じる。職場でも贅沢は敵だと言って常に熱源のあるところでも設定温度を低くしていたりともっと人間というのは自由でなんとやら。

「っとあったあった、冷蔵庫」

思案しているうちに目的の売り場にたどり着いていたようだ。最近エアコンが壊れ新調したばかりだというのに冷蔵庫まで壊れるとは家電が連鎖して壊れるというジンクスは本当なのかも知れない。
あいつと俺のためにも大きめなやつを選ばないとなと考えながら通路近くの手頃なものから順繰りと冷蔵庫のプライスを眺めてみる。

「400Lで10万前後……。今より大きいサイズだとこの前買ったエアコンより高くなるか」

一人暮らしする時に譲り受けた冷蔵庫のサイズだと現状かなりきつい。作り置きしている食材でもうスペースが全くない。
あいつ細身の癖かなり食うし……。一体あの体の何処に入っていくのか。それに考えている使い方を想定するともう少し大きいものにした方がいいかもしれない。

「冷蔵庫のお買い換えですか」

ふと悩んでいるところに声を掛けられる。横に視線を移すと笑顔の似合う販売員さんが立っていた。

「そうなんです。一人暮らしするときに譲って貰った冷蔵庫が壊れてしまって買いに来たんです」
「そうでしたか。何年程お使いになっていたんですか」

たしか友人が大学卒業した折に譲って貰ってそれから6年使っていたはずだから。

「私が使い始めて6年で前の持ち主が4年使っていたはずなので10年になりますね」
「長く大事にお使いになられていたんですね」
「ありがとうございます。ただ料理や調味料を作り置きしていると前の200L冷蔵庫では容量が足りなくて。それにちょっと特殊な使い方も考えていて」
「特殊な使い方ですか。因みに使い方を聞かせて頂いてもいいですか」

販売員さんが小首を傾げながら聞いてくる。もともと相談するつもりだったので丁度いいと思い話し始める。

「勿論です。ポケモンを冷蔵庫に入れようかと思ってまして」
「ポケモンを冷蔵庫に……ですか」

あ、これじゃあ説明が足りないか。明らかに怪訝な顔をしている。

「すいません言葉が足りませんでした。夏場の暑い時間帯だけ避暑のために入れようと……」
「避暑のためでしたらエアコンで対処などは出来ないでしょうか」

もっともな意見だ。思考を巡らし弁明を考える。

「エアコンもここ一ヶ月試していたのですが電気料金が馬鹿に出来ない料金を請求されてしまってエアコン買ったばかりで新調はまだ早くて」
「えーと、すいません一度その考えに至った経緯を初めから教えて頂いてもよろしいですか」

きっと漫画とかなら頭の上でアチャモが回って混乱している表現が入るだろうな。それぐらい思考がぐちゃぐちゃになっていた。
焦ると思考が纏まらなくなるのは直さないとと思いつつ販売員さんの提案に感謝し冷蔵庫の購入を考えたきっかけから経緯を話すことにした。

「実は飼っていたイーブイが去年の冬にグレイシアに進化したんですが先月の急な猛暑の時に熱中症で倒れてしまったんです。
仕事からたまたま早く帰れたおかげもあって一命をとりとめて女医さんにもこっ酷く叱られました。
炎タイプの子ならまだしも氷タイプの子を猛暑の部屋の中に水だけで放置するなんて何を考えているんですかと」

今まではイーブイの適応力の高さもあって何とか水だけで夏を越せていたがそれに慣れてしまっていて対策を怠っていたとは言い訳にもならない。
ひとつの命を預かるポケモントレーナーとして失格だ。

「その反省もあって毎朝天気予報を確認して危険な日はエアコンを必ずつけるようにしたんですが
氷タイプの適正温度の23度で設定していたら電気代が1ヶ月で1万を超えてしまいまして」

前にこの店で買ったエアコンは兎に角安いものをと選んだ結果旧モデルの性能低いもので23度まで下げるのにかなりパワーを使っているようだった。

「1ヶ月で1万かかるのが続くのはどうしようかと悩んでいたら冷蔵庫も突然壊れてしまって
途方に暮れていたところ唐突に冷蔵庫の1スペースを専用にして暑い時は自分から入って貰おうと思いついたんです」
「なるほどある程度事情は理解できました」

先ほどよりはいくらか納得したようで先程のような顔から不信感は感じられない。取り合えず一安心だ。

「こちらの冷蔵庫はいかがでしょうか。今回の用途にぴったりなものだと思います」
「かなり大きいですね」
「容量615Lの6人用ですからね。冷凍室が2つあるので一つをポケモン用にしても上段の冷凍室がフリーになります」
「なるほど。冷凍庫は使えなくなると覚悟していたのでそれは有難いですね」

冷凍食品は買わないが食材を冷凍して保存はするのであればとても助かる

「そして電動引き出しを採用している商品なので重くなってもご老人やポケモンでも開閉が可能です」
「なるほど。テレビでも料理するポケモンって話題になってましたね」

ジュカインとウソッキーが料理対決をしているのを取り上げた番組がかなり話題となっていた。

「ええ、その番組の影響でポケモンに料理を仕込もうと電動引き出し機能の付いた冷蔵庫をお買い求めの方も増えているんです。
折角なのでポケモンでも開けられるかと冷凍室に入れるか試して見ますか」
「ああ、すいません。うちの子モンスターボールに入れようとすると全力拒否するのでいつも置いてくるようにしているんです」

普段家に置いてきている理由だ。ボール持ってるだけでも噛みついてくるからねアイス。
ボールは普段目に届かないところに保管してポケモンセンターや無理矢理連れ出すときにしか出さないようにしている。
まあモンスターボールに入れて最初に連れて行ったのが予防注射だったのが悪かった。
モンスターボール＝注射というイメージと注射のトラウマのせいでまともにボールに戻せない。

「そうでしたか。では体格の近い私のサンダースで試して見ますか」

といい販売員さんがモンスターボールを投げるとサンダースが出てきて軽く伸びをする。軽く電気を纏っているのかパチパチと音がしている。

「サンダース、いつものお願いするよ」

販売員さんがサンダースの頭を撫でながらブラッシングをする。すると体毛の逆立っているのが治まってきた。どうやら逆立った体毛で商品を傷つけないための放電ブラシのようだ。
サンダースも初めに頭を撫でられていた時は不機嫌な顔をしていたがブラッシングで販売員さんが放電させる方に集中し始めると顔が綻び始め短い尻尾もわずかに揺れている。
頭撫でられるよりブラッシングの方が好きなのだろうか。そんな疑問を抱きながら眺めていたがブラッシングが終わったようでブラシをしまうとサンダースが冷蔵庫へと向かい慣れた動作で二足で立ち上がりドアの左上部分をタッチする。
すると冷蔵庫から音が鳴りサンダースが前から避けた後ドアが開いた。

「こんな感じで教えればポケモンでも開けられますし、ポケモンが怪我しないようドア前から避けるまで開かないようになっています」
「なるほどいいですね。因みに閉めるときは」
「閉めるときは軽く押せば閉まるようになっていますので頭で押すだけでも閉まります。それにポケモンも……ちょっと失礼」

そう言いつつ販売員さんが足元でお座りをして待っていたいたサンダースを抱える。驚いたのかサンダースが軽く暴れるが慣れているのか意に介さずゆっくりと冷凍室に降ろす。

「このようにサンダースでも余裕のあるスペースなのでグレイシアでも問題なく入れるはずです」

なるほど、今は冷凍室に立ってるが丸まれば充分収まるサイズだ。確かにぴったりな商品だ。

「このサイズの冷蔵庫は40万近くするのに何故この冷蔵庫は20万まで下がっているんですか」
「在庫処分品というのもありますが実はこの冷蔵庫、ポリゴンを導入することで疑似AIとして利用することができるんです。
ただ最近はポリゴンの世話の必要なこの商品より気軽に導入できるアプリ連携やより学習能力の高いAIの方が人気なので相対的に価値が落ちているためです」

説明を聞く限りポリゴン冷蔵庫である必要はあるのか

「此方よりもAI搭載機の方が良い気がしますが」
「冷蔵庫を避暑地とする素晴らしいアイディアですがひとつ問題点がございまして冷蔵庫は保冷するという性質上密封性が高くもし生物を中に入れた場合酸欠の危険性があります」
「そうか保冷のために換気が出来ないんですね」
「そうです。換気用の穴を作っても温度が下がってしまうのと上がった温度を下げるために電力を大きく使ってしまいます。
そのため冷蔵庫に酸素センサーを取り付けてそれを検知しポリゴンに命令を冷蔵庫から送ることで換気の役割を担ってもらう方法で消費電力を最小で済ませるようにします」

なるほど換気をポリゴンに任せるのか。それなら酸欠で倒れる心配もない。

「ポリゴンの強みとして進化電子機器であればどんな機械にも対応できる柔軟性があります。ポリゴンの時点では決められた動作までしか出来ませんがアップグレードを使いポリゴン2に進化させれば性能も容量も格段に上がりあらゆる電化製品の制御を任せることができます。
そしてポリゴンの価格が廉価になったというのがあります。ポリゴンはいままである会社が独占していたのですがポリゴンのソースをオープンソース化して公開されたお陰でポリゴンの導入が楽になったためこれからアップグレードの価格も下がってくる見込みです」

これからの性能アップも楽になってくると今が買いだと思えてくる。

「冷蔵庫が故障して火急の要件でしょうし今日ご成約で酸素センサーをサービスで取り付けをサービス致します。
最終的にお値段は冷蔵庫は前回エアコンをご購入されたということで一割値引きさせて頂きまして180,000円とポリゴンとポリゴン関連の設定で＋20,000円で200,000円となります。
如何でしょうか」
「よし買います」
「ありがとうございます。ではお会計に移らせて頂きますので此方のカードを持ってレジまでお願いします」

カードを受け取りレジへと向かう。レジに向かう途中横目で説明中放置されていたサンダースを伺う。
サンダースは暇だったのか冷凍庫で丸まっていたが説明を終わったのをみると立ち上がり鳴いて販売員さんを呼ぶ。
それに気づいた販売員さんが声を掛け組み付いてきたサンダースを抱える。遠目で良く見えないが頬が染まっているような気がした。

冷蔵庫を購入した1週間後、これから冷蔵庫の設置に向かうと午前中一番に連絡を受けた。
搬入と暑さから避難させるためグレイシアをモンスターボールに入れるため30分間の久々の格闘し無事ボールに収めることに成功し休憩しているとインターホンが鳴り無事冷蔵庫とポリゴンが届いた。
業者さんに設置と設定をして貰い終わった頃には昼近くになっていた。

「出てこいグレイシア」

冷房を効かせた後ボールを投げグレイシアを開放してやると恨めしげな顔をして此方を睨んでいた。しゃがんで目線を合わせ謝る。

「ボールに入れてごめん。冷蔵庫の搬入で大窓開けっ放しにしないといけなくて冷房付けられないから仕方なかったんだ」

良く見てみると震えているようだったので安心させるため頭を撫でてやる。頭を胸に押し付けて顔を埋めてきたのでそのまま頭を抱き落ち着くまで背中を撫でてやった。

落ち着いたところでさっそくポリゴンをボールから出しグレイシアに紹介する。グレイシアが興味を持ちポリゴンにちょっかいをかける。ポリゴンは意に介さず浮いている。
二匹が親睦を深めている間にで食材を買いに出掛けるとしよう。一週間料理をせずにコンビニ弁当で済ませていたから料理欲求が溜まってるし大量に買い込んでご馳走を作るとしよう。
そう思い車を近場のスーパーまで走らせた。

夏も盛り連日猛暑日が続くようになり良くグレイシアも冷凍室を良く利用するようになっていた。
最近はポリゴンの角ばった体を階段に見立てて冷凍室に入る術を身に着け上手いこと避暑地を堪能していた。
その様子がタラップから飛行機に載り込む様子に似ていたのと冷凍庫の中がクッション込みで丁度良い狭さなのか今まで見たことのない笑顔でくつろいでいるので
その様子を動画に撮りいつもは趣味の料理写真を上げているSNSに『#我が家のVIP客』とハッシュタグをつけて上げると一日後にはものすごい拡散され反応が返ってきていた。

『これは間違いなくVIP』
『グレイシアちゃんきゃわわ』
『ポリゴンそこ変われ』
『おまえのツイートめっちゃ伸びてるじゃんwwwwもう有名人だなwwwww』

これはあの流れか、まさか自分がこの慣習をする日が来るとは思わなかったな。
この後に最近のグレイシアがポリゴンの可動域無限の首を面白がって猫パンチで回し車のように回し続ける動画でも上げるかな等と思いつつグレイシアとポリゴンの写真を恒例の文句と共にSNSにあげた。

『バズったのでうちの子紹介します』

後書き予定地† 

・自己紹介
どうも初投稿のsunsetと申します。（令和では、大会出場では）
初参加の大会で5票頂き3位タイ。投票してくれた皆様ありがとうございます。ここまで頂けるとは正直思っていませんでした。

・制作小話
エントリー日に大会開催を知り最近家電と関わりが深くなっていたのもあり即興でグレイシアin冷蔵庫→SNSアップネタを考えました。このネタを書く上で意識したのはやはりあの方の作品*1と差別化ですね。そもそも冷蔵庫にグレイシアが入れるのか、冷蔵庫の換気はどうするのか等それらのことを考えた結果、最近話題のAI家電をポリゴンで代用することに決めました。グレイシアとポリゴンの描写はもっと入れたかったですが時間の関係で断念。機会があればまた続編でも書こうかな。（書くとは言っていない）

・以下コメント返信
＞冷凍庫をポケモンの居室にする考えはなかなかこう…ｗ
どちらかというと冷凍庫よりも、留守番中の遊び相手が出来たことが一番グレイシアちゃんにとってよかったかもしれないですね (2019/06/13(木) 21:00)

　グレイシアが入れるか入れないかで実物見ながらしばらく悩んでましたｗ
冷蔵庫の値段より価値のあるものをゲットできたと考えればかなりお得なお買い物でした。

＞「これ、大工じゃなくてDAIGO」 (2019/06/15(土) 21:51)

　うぃっしゅ！

＞グレイシア付きの冷蔵庫下さい！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！ (2019/06/15(土) 22:19)

　申し訳ありません。こちらSNS効果により品切れが続いております<(_ _)>

＞氷タイプのポケモンはやはり冷蔵庫に保管されるものなのですね……夏場は冷蔵庫を開けるのが楽しみになりそうです。 (2019/06/15(土) 23:01)

　氷タイプと冷蔵庫はセットでの購入をお勧めします(*^▽^*)
帰ると冷蔵庫から出迎えてくれるグレイシア……。すごく冷えてて抱き心地が良さそう。

＞ポリゴンにちょっかいをかけるグレイシアが物凄く可愛い。 (2019/06/15(土) 23:57)

　回し車ポリゴンは書いてる途中で降りてきました。ポリゴンは戦力としても家電としても玩具としても使える便利な子ですね。

以上、大会企画運営してくれたrootさん、投票してくれた方々ありがとうございました。

コメント欄† 

コメントお待ちしております<(_ _)>