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stick and carrot

/stick and carrot

Lem


この作品にはBL表現、お子様に優しくない表現等が含まれます。
見ちゃダメだと自覚がある人はgo back.



 簡潔に一言を添えるならば、そこは宵闇よりも昏く、夜風よりも濃く、星空よりも煌びやかに、されど常夜には似つかわぬ喧騒さに塗れていた。
 この空間内において寝静まるべき対象は醜悪なる欲望をひた隠す人々のそれにあり、外された表の(かお)を踏み砕く音を(ベース)に、あらゆる本性を剥き出しにした獣の慟哭が舞台上の彼女達を躍らせる。
 女の数が星の数程在る様に、鏡面球(ミラーボール)に映る星光は宛ら客層の情欲を遍く照らし、尽きる事の無い欲を吐いては呑み、飢えを満たして貪り喰らう。
 実にこの上無い醜悪なる世界へ、モニターカメラを通してそれ等を見下す壮年の男が心の中で自虐を呟く。
「全く以って人は罪深い生物だ。女のみでは飽き足らず、人ならざるモノへも歯牙を剥くのだからな。尤もそうなる様に仕向けたのが誰であるのか、誰が一番罪深いのか……神にでも問うしか答はあるまいな」
 右手で十字を切る男の素振りに張り付く冷笑には、端から神など信じていないと思わせる程に冷たい。仮に天啓が訪れたとしても、彼はそれを神とは呼ばず、悪魔の声だと断定するだろう。
 そもそもの話、彼自身が悪魔そのもので在るとさえ言えた。
 見よ。天啓は空から降りてこず、彼の胸中へと打ち震える。燕尾服の内側から彼の耳に流れるそれへ、無機質に彼は早口で応対した。
「御苦労、××××様を例の席へ通せ。直ぐに私もそちらへ向かう。それとマルティーニをウォッカだ……メニューに無い? では今から追加しろ。出来ないならばここへ来なくていい。私の店に無能は不要だ……結構。ではやれ。客を待たすな」
 彼の耳から燕尾服の内側へと流れる一連の動作は逆再生をしても同じ様に見える程滑らかで、彼自身が氷塊で周りが水の様でもある。
 止まる事無く流れ続ける彼の動作が停止するのは、彼自身が停止するまでを意味するのかも知れぬ。
 再びモニターへ視線を戻すが何かを探すという風でも無く、コンソールの上で滑る指がディスプレイを切り替える。
「ラビィ、客だ。何時までへたっている。直ぐに舞台上へ上げる。さっさと切り替えろ」
 モニターの奥へ向ける声も又冷たく、反論すら許さぬ口調でそれだけを告げると彼もその部屋を後にする。
 YesかNoでは無い。完全なるYesしか赦されない。
 何故ならばそこは楽園だからだ。
 彼は悪魔そのものであるとともに、神そのものでもあるのだから。



「Mr.××××。ようこそお越し下さいました」
「ふん、相変わらず恭しい奴だ」
「御客様ですから」
「まぁいい。それより聞いたぞ? 何やら好からぬ事を企んでるそうじゃあないか。え?」
「おやおや。耳の早い事で……いえね、この店も少々賑いとしては申し分無いとはいえ、やや物足りなさに欠けています。そこで余興を興じようかと思いましてね」
「ほう……?」
「是非気に入ると思いますよ。恐らく貴方好みの子でしょうから」
「そいつは嬉しいね。で? 何処にいるんだそのワシ好みって子は」
「もう間も無くですよ。さぁマルティーニを手に舞台上(ステージ)をご覧下さいませ」
 誘導する様に舞台上へと視線を向け、舞台裏から彼の様子を伺っている黒服へ指示を促すと、それまで舞台上を照らしていた四つのライトアップが目まぐるしく回転し、掻き消え、音楽が止まり、静謐な夜の帳が全てを包んだ。
 唐突な転換へ観客はうろたえる暇も無く、音楽と同時に照らされたライトアップへ視線が集まる。
 だがその先には何も無く、それまでの踊り子達も元の場を動かずに観客同様に静止していた。
 どよめく観客の声を他所に、やがて何がしかの異音が響く。同時に地響きも。
 舞台の構成上客層側からはその正体に気付かない。ただ二人だけを除いて。否、覗くとも言うべきか。
 地より出づるそれは初めに直線上に伸びる細長い棒を映し、ライトアップと共に天板まで伸びると固定用の装置に嵌ったのだろう異音が重々しく響く。
 見上げるギャラリーの視線を下ろそうとライトアップが降下していき、床を舐める。第二のどよめきが、歓声が沸き上がった。
 そこには先まで居た踊り子とは別の子が、月光を受けて様々な方向に反射する透明の支柱に繋がれていた。
 その姿の何たる扇情的な情景か。娘は両手を拘束されているだけでなく、際どいラインを強調する様に屈み、観客の前へ羞恥を晒していた。
 嗚呼、見よ。しとどに濡れる娘の恥部を。
 食入る様に観客が舞台上の彼女を舐め回す折、片手にマルティーニではなくオペラグラスを携える肥満が傍らの悪魔に問い掛けた。
「兎に兎衣装(バニースーツ)とは、な。なかなか滑稽だな、ん? そればかりか目隠しに口枷と随分と手が込んでるじゃあないか。だが注釈する処はそこじゃないな」
「流石Mr. お気づきになられましたか」
「ふん、ワシが男と女の違いも分からぬ耄碌爺だとでも思ったか」
「いえいえまさか」
「で、どういうつもりだこれは?」
「おや、そこまではお分かりになられませんでしたか? もう一度御覧下さい。彼女と、それを取り巻く彼女達を」
 何時の間にか舞台上の端から集まってきた四匹の兎達が中央へと集まっている。若干濃度の異なる褐色の被毛が様々に入り乱れ、その中で一際目立つ桃花色の兎が黒の兎衣装に身を包んでいる。
 身動きの取れぬ娘へ栗兎達は馳走でも貪るかの如く、花を摘み始める。
 耳。頬。腋。二の腕。横腹。臍。太腿。
「姉妹か」
「御名答にござります」
「何故今の今まで隠していた?」
「隠していただなんてそんな人聞きの悪い。単に時期で無かっただけの事にござりますよ」
「本来ならば貴様の皮を剥ぎ、肉を削ぎ、骨を砕き、肉屋に売らせてやりたい処だったがな」
「あの娘も愛して頂けますでしょう? お気に入りの貴方様の姉妹なのですから」
「当然だとも。あの様に弟の身繕いを、心の底から愛しむ姉妹達の肉体ならば、ワシの可愛い子供等と何ら変わりはせん」
「ありがたき御言葉、痛み入ります。ですが、彼女につきましてはもうしばらく御時間を頂きたい」
「ほう?」
「まだ新人ですからね。今日が初舞台なのですよ。それ故に粗相を呈する事があっては私の面目が立ちません。一月程と言いたい処ですが、一週間。それまでに仕上げてみせましょう」
「ふん、お前の腕の良さは誰よりもワシが知り尽くしておる。あの姉妹は我が子も同然だが、お前も違った意味でワシの子なのだぞ。子のお願いを聞けぬ親が何処にいる?」
「Merci Beaucoup. 今日の所は如何なされますか」
「一週間後に又来る。たまには我慢をするのも健康の秘訣だからな。あの子等にも休暇をくれてやれ」
「それはそれは。何から何まで痛み入ります」
 脂ぎった指でオリーブを直接摘み、垂れる露が赤黒く滑る舌で絡み取られ、指ごと彼の咥内へと吸い込まれる。次にその手で羽織っている上着の胸ポケットからドル束を取り出し、テーブル上へ放り投げた。
 だがそれではまだ終わらず、その指は燕尾服の男の頬へ、下卑た笑みと共に彼をぺちぺちと叩く。
 相当な不快感が男の背筋を這い回るであろう局面(シチュエーション)を、それでも男は笑みを崩さず、眼前の肥満の男へ愛想を振りまくのだった。
 その忠実さが真か偽かは兎も角、肥満の男が満足そうに店を後にするのを見届けてから、彼は階下の観客達を一望する。
 観客は階上の我々の事情なぞお構いなしとでも言う風に、未だに目前の兎達の狂演に熱中していた。
 塵芥を見る様な軽蔑の眼差しを彼が向けている事も、観客は気付かないのだろう。恐らく一生涯に。
 彼が再び舞台裏の黒服に指示を促す。ライトアップが舞台上から階上の彼へ移動し、観客の視線も自然とそこへ集まる。
「本日は当店へ御覧頂きありがとうございます。縁も酣ではございますが、正午を過ぎた時点で店仕舞いとさせて頂きます。御客様には興醒めの御言葉や御迷惑をお掛けすると共に、お詫びとしまして当店で最高のシャンパンを皆様にお開け致します。どうぞ、残された時間をごゆるりとお楽しみ下さい」
 三度のどよめきと歓声が店内に響き渡った。其の中に混じる不満も、これから催される最高のおもてなしによる感動に掻き消され、誰もが事態の異変に疑問を持たなかった。
 その場に少しでも疑わしいと疑念を持ち続けている者が居たならば、きっと階上の彼の姿が見えた事であろう。
 塵芥を見る様な冷たい氷の微笑と眼差しを向け、ドル束に口付けをする男の姿を。



 先までの喧騒は何処へやら。
 幻の如くその場に在った者は消え、そこに残るのは舞台上の子等と、店内を清掃するスタッフと、階上から降りずにバルコニーに座する男と、夜に相応しき静寂さだけだ。
 男の視線は階下の兎達に向けられている。兎達もその視線に気付いてはいるが、命令でもされているのだろうか誰一匹すらも彼の傍へ赴こうとはしない。
 やがて清掃が済んだのだろう、スタッフが彼へ報告をすると、彼は本日から一週間後までの休閑を告げた。突然の事態に慌てふためく者が彼に異を唱えたが、給料はいつもどおり払うとの旨を聞くや胸を撫で下ろす。それでもまだ異を唱える者が彼を問い詰めると、彼は金でそれを黙らせた。
 やがて誰も彼に異を唱える者は居なくなり、以後は開店まで立ち入りを禁じられ、彼と兎等だけが残った。
 再び交錯する視線を切ったのは彼からで、兎等にcomeと命令が下されるや一斉に四匹は軽やかに階下から階上へと身を躍らせる。律儀に階段を上がってくるのもいれば、八艘飛びで直接階上へと上がるのも居た。
 だが四匹に向けられた言葉は労いの言葉でも無ければ感謝の言葉でも無く。
「御前達に休暇をやる。各々自由に過ごして構わん。だが今日より一週間ここには立入禁止だ」
 切り捨てるかの様な命令を、当然兎等も見過ごせるはずが無く、彼の腕や足に縋り付いては甘い声で鳴く。
「私はあいつを仕上げねばならん。御前達と関わってる暇は無い。私が御前達に施してきた様に、御前達の弟も同様に扱ってやらねばならんし、それ以上にあいつのは過酷になるかもしれん。それでも私の手を煩わせるか? 私と弟の崩壊を望むか?」
 その言葉に誰もが反論できなかった。先のスタッフに向けられた彼の態度と兎達への態度に差異は無いが、あるとすればそれは絆とも言える鎖だったかもしれない。
「一週間経ったら御前達の望む日常が始まる。その中には御前達の弟も加わるのだ。これ以上喜ばしい事は無いだろう? さぁ、お別れのキスを」
 苦虫を噛締めた表情や涙を堪える等、愛憎入り乱れる心境を隅に、兎等は彼の左手の甲に口付けをする。順に彼も兎等へ口付けを返す。
 一匹は右頬に。一匹は右首筋に。一匹は右鎖骨に。一匹は右太腿に。
 各々が一番悦ぶ箇所を彼へと捧げ、名残惜しげに店を後にするのを見送ってから、彼は一息をつく。
 そのまま数秒。数十秒程が経過した所で彼は腰を上げ、階下の舞台上へと降りていく。
 残された兎は眠っているかの様に、ぐったりとしている様に見えた。
「起きろ、ラビィ。訓練の時間だ」
 胸ポケットから薄い板状の機器を取り出しながら、彼は目下の兎に辛辣な命令を下す。彼の指が機器に食い込むと、背後から入口が施錠される音が響き、続いて数々の窓枠からシャッターが下りていき、最後には彼と兎を囲む円形の舞台上が緩やかに異音と共に降下していった。
 やがてその場に残されたのは完全なる静寂と、何処までも深い底無しの穴と、充満する酒気に満たされた人々の欲望の残滓だけだった。



 薄暗い部屋の中、一匹の兎は未だに支柱に繋がれ、荒い息を吐きながら男の命令を聞いている。その態度に反抗の意思は完全になく、服従するかの様に男に心酔していた。
「ラビィ、よく聞け」
 名前を呼ばれる度に兎は全身に熱が篭るのを感じ、感度が昂ぶるのを痛い程に自覚せずにはいられない。
「私は名目上お前の所有権を所持しているが、お前が仕えるべき主は私ではない。お前の姉達が仕えている相手を知っているか。どれも皆同じだ。今日お前は初舞台を上げ、そしてお前の祝すべき披露はそのお方の目に届いた。喜べ、ラビィ。お前も姉達と供にその身を捧げられるのだ」
 ラビィ、ラビィ、ラビィ。
 耳に届く彼の声が脳髄に纏わりつき、彼が話す内容等まるで通らない程、兎の心は侵されていた。甘く、陰惨で、人格をも溶かす程に。
「私にとってお前は道具だ。私はお前を所有するだけだ。それ以上もそれ以下も何も無い……理解したか?」
 彼の声にもっと聞き入ろうと項垂れていた顔を、顎からぐい、と彼に持ち上げられた。
「是よりお前が今後行うべき振る舞いをその身に刻む。姉達には一ヶ月みっちりと刻んできたが、お前は違う。お前は特別なのだ。だからこそお前に残された猶予は少ない。時間を無駄にする事は許されん。そして失敗を犯す事も許されん。そうなればお前の破滅はお前だけでなく、お前の姉達と私にも降りかかる。お前はそれを望むか? 私が望まない事をお前は望むか?」
 実質兎に彼の言葉は届かないばかりか意味すらも届いていない。
 兎は生まれてこの方世界を知らず、見る事も語る事も禁じられてきた。
 兎が世界を理解し、言葉を交わす事が出来るようになるのは、彼が施す儀式を終え、その供物を捧げられるべき主の下へと降ってからの事である。
 しかし兎はそれを知らないし、彼の仕組んだ策とも知らず、ただただ耳に残る始まりの声に従っているだけだった。その声が兎の親だと信じて疑わず、妄信に盲信を重ねていた。
 全ては彼の道具として生きる為である事など――兎は何一つも知らぬのだった。兎の姉達も同様に。
 再び兎の名が呼ばれ、兎はそれに従った。
 彼の織り成す幻想の通りに動き、彼の意の儘に操られる儘、兎は縛られた儘に片足で全身を支える。
 彼に持ち上げられた右太腿に食い込む彼の指や爪が兎に麻薬を注入している様でもあった。
「この体勢を続けられる様にしろ。初めは支えてやるが、次からは支えん。他に教える事も同様にだ」
 指示される儘、兎は拘束されている両手で支柱を掴む。支えていられる内はいいが、彼が手を離した途端に体勢は崩れてしまう。
 時間を無駄にする事を嫌う彼が兎の失態に対して激怒するかと思えば、想定内の事なのか彼は再び胸ポケットから何かを取り出そうとする。
「ラビィ。私はお前を姉達の誰よりも優秀だと思っている。だからこんな失敗をするのもお前が私に褒めて欲しいからこその故意的な振る舞いだと分かっている……飴が欲しいんだろう? お前は甘いのが大好きだからな」
 手に持つ小さな箱から取り出した飴玉を、彼は兎の口枷をずらして舌先にくっつける。
 口枷により大量に溢れた涎が飴の成分を溶かし、脳髄へと甘味を運ぶのは一瞬だった。飴玉を味わう瞬間も又一瞬で、直ぐに口枷が兎の咥内をがちりと嵌めた。
「もっと欲しいか? 欲しければ私の望む様に踊る事だ。残りはこっちにくれてやる」
 兎の顎先に纏わりついた涎を絡め取ってから、彼はそれを兎の尻窄まりの奥へと捻じ込んだ。
 苦痛と違和感と未知の感覚が綯い交ぜに襲い掛かり、兎は堪らずその身を激しく震わせる。彼から見れば、これが兎の初めての反抗であったろう。
 だがそれを許す訳も無く、彼は兎の右太腿を先と同じ様に掴み、上げ、兎に啓発を促す。
「吐き出すんじゃないぞ。折角の馳走を零して台無しにしたくは無いだろう? ちゃんと飲み込めたら今後も飴玉をくれてやる」
 理解したかと問われても兎の表情に余裕さは無い。苦悶に歪み、涙が溢れて毛先を濡らしている。
 ラビィ、と名前が垂れた耳に囁かれる。
 兎はそれが正しいと信じて疑わず、飴玉を確と咥えて離さなかった。
「いいぞ。そうやって下腹部に力を入れろ。時々緩め、又絞めろ。呼吸をする様にな」
 そうして数分が経過した処で、兎の尻窄みから左太腿、左脚へと、腸液により液化した飴が垂れ出した。
「そろそろ次に移るか」
 しかし男は兎の右太腿を未だ離さず、あろうことか小箱から又飴玉を取り出すと、何の躊躇いも無く兎の洞へと再び捻じ込んだ。更に一つ。
 合計二個目を捻じ込んでから男は漸く兎の右太腿を離す。
「支柱の方を向いて屈め。馳走を零すなよ。しっかり咥えてないと直ぐに零れるぞ」
 兎が命令に従うとは解ってはいても、初めは無知である為だろう。エスコートをする様に男は兎の身体を誘導させ、命令通りに習わせていく。
「もっと脚を開け。太腿と踵をくっつけて、爪先立ちで立て。顔は上を見上げろ」
 次から次へと変わる体位へ兎の余裕さ等皆無に等しく、尻窄まりの穴から先端が見え隠れしている。
 それも想定内なのだろう、男が靴先を兎の尻窄みへ蓋をするように食い込んだ。
 全身に走る快楽に兎は身を振るわせつつ口枷を噛むが、男が口枷を外そうとした為、餌に食いついて離れない生物の構図が出来上がる。
 ラビィ、と兎が名に支配され、口を護る物が無くなった。
「次は奉仕の仕方だ。お前が今掴んでいる支柱があるだろう。その支柱を自分が一番愛しいと思うものだと思って愛しめ。決して歯は立てるなよ。この支柱はそれほど耐久性がないからな。噛み痕が付けばすぐ解る」
 説明する儘、男の指が兎の咥内へと捻じ込み、舌や咥内壁を蹂躙する。異物感に兎は思わず歯を立てそうになるが、堪えて感覚の波が過ぎるのを待つ。やがて自ら男の指を舐め、吸い、時には軽く噛みもした。
 男はそれを確認すると人差し指と中指の中腹で舌先を挟み、支柱へと誘導させる。支柱に指を重ね、兎が指を追い、指が離れるまでに、靴先は飴のものか腸液のものかも解らぬ露に塗れていた。
「今日の所はこれでいいだろう。最後の仕上げだ」
 不意に兎の両腕がだらりと落ちていく感覚が肩へと流れた。男が拘束を開錠したのだ。
 一晩中そのままにしておくというつもりは男には無いらしい。
 否、するつもりはあったのかもしれない。その必要が無かったというだけの事で。
「お前から垂れ流れた飴の匂いがするだろう。それを追って、舐めて綺麗にしろ」
 その動作だけは男が誘導せずとも、兎の方から自然と行われた。
 ぴちゃ、ぴちゃり、と。
 淫猥な音だけが二人を包み、それを掻き消す雑音も無く。
 男が抱える初日の仕事が。
 兎が抱える初日の奉仕が。

 薄暗く、光も射さぬ部屋で。
 救いの無い道の果てを刻む。

 それは甘くも陰惨で。
 人格も人道も蕩かす印。



 後書

 つ い に ね ん が ん の む と う ひ ょ う を て に い れ た ぞ !

 どうも私です。もう一癖一癖が強烈過ぎて全然個を隠しきれて居ないので自己紹介も不要ですね!
 以前より何故無投票に拘るのか、という質問を他所の場で質問されたのですが、
 あれは今から36万……いや、1万4千年前だったか(中略)

 私を知る人は語らい合えば分かる通り、私が物事を余す事なく分析する癖の持ち主である事が第一印象として伝わるだろうと思います。
 その認識は正しく、主に心理等に用いられますが今回はそっちの話はしていないので割合。
 つまりは何でもかんでも分析し、その物事がはじき出す結果を予測、観測できるという能力が問題でありまして。
 ここをこうすれば大体点数は取れるだろう等、恐らく皆様も一度そういう経験がおありではないかと思います。
 私もそんな自惚れの幻想に惑わされてる一人で、これが悪化していくと点数を取る事に捉われ、その内にトップまで登り詰める事を可能としたとしても、先ずそんなの楽しい訳がありません。
 分かり易く例えるなら点数稼ぎを金銭稼ぎにしたとしましょう。
 一位を取れば賞金が出る様なシステムだったなら?
 金銭欲が絶望的に皆無な私には一位という価値観があまりにも魅力的に見えない訳です。
 何かに熱中するにはその物事を続けられるだけの理由という物が必要で、先程申し上げた金銭欲等が分かりやすい一例です。
 金が欲しいから上を目指し、賞金を狙い、又次の賞金を頂こうと頑張る――
 そういった原動力、理由こそが私には必要で、勿論このwikiには賞金なんて出ませんがそれに近い何がしかを私は感じている。
 しかし分析を止めて一つの作品を書き上げる等も又同じ位に難しく、物心付く頃からずっとそうやってきた私には止めたら死ぬみたいな呪いが掛けられているので、それならば「一位じゃなくて無投票かつ最下位を狙おう!」という結論に行き着きました。どうしてこうなった。

 点数が取れてもおかしくないクオリティを維持しつつ、テーマには沿うけども皆とは真逆のスタイルで私は頑張るよ、という意思表明の拘り。
 YATTA! YATTA! Mu Tohyo!

 後書なげぇ。以下、解説コーナー。



キャラクター

 兎:ミミロップ(弟、色違い)とミミロップ四姉妹

 兎ってえろいよね。
 初見のミミロップはおっぱいでかい子なのかと思ってたらあれ手だったっていうカルチャーショックを私は一生忘れない。
 まぁおっぱいでかくてもちっぱくても可愛いですが、リアルさを追求するならちっぱいのがいいな。あと複乳。妊婦ならなお好し
 本作でも語られているけどそれぞれ性感帯が違う。
 淫乱桃花色兎は耳もとい声フェチ。

 この作品には登場しないけど、オーナーが唯一背中を許してる相棒の子供達が上記の姉妹達。
 勿論相棒もミミロップ♀。父親は御想像に。

 
 燕尾服の男:オーナー

 日本の感性で見るとオーナーが極悪非道な下衆に見えますが、子供達が嫌いだとか邪魔だとかそんな理由で姉妹達を商品に出して居る訳では無く、プライベートでは普通に仲良く姉妹達に愛情を以って接したりする良識人だったりします。
 そういう風に見えるのはOnOffの切り替えに長けているのと、エピローグで仲良くやってる部分がないから(文字数制限的な意味で)

 モデルは私。
 というか殆どの作品の男モデルは大概私だったりします。理由は後述。


 肥満の男:この辺しきってるマフィアのボス

 この手のタイプは太ってるのがお約束。
 金持ってるからという理由で姉妹達を餌に釣られた醜悪狸。美的の欠片も無い。
 独占欲が強いので、お気に入りの姉妹はおろかオーナーも高く買っている。



舞台裏

 初めにテーマが「甘い」という事でしたが、甘いといってもそれは物理的に甘いのか、シチュ的に甘いのか、人情的に甘いのか、うまいと書いて甘いなのかで色々ありますよね。
 まぁそれも含めてのテーマなのでしょうが、それらからどれかを選んで作品を書くのがコンセプトなのでしょうが、私はこうも思いました。
 どれか選ぶなんて面倒臭ぇ! 全部ぶっこんでやる!
 結果こうなりました。詰め込みすぎィ!

 後、余談なのだけど筆者は非常にスケジュール管理があぁんだらしねぇな、な人です。
 エントリー時刻見てください。前回の仮面大会も。
 何でまたこんなギリギリなのかというと締切日が日曜日だと思ってたからです。
 というか全ての締切日が日曜日だと思ってました。
 皆様はスケジュール管理はしっかりね!

 そうそうモデルの大概は私という件ですが、その理由は時間が無いからでした。
 私という生物は非常に面倒臭がりで執筆も大体3日前にやればいいだろうとかそんなノリです。
 短編小説だともっと短く、前日にやればいいなんて思っている位です。
 罰が当たったのか締め切り今日だよって気付いた時にはまただよ(笑)です。
 ギリギリまで追い込まれないと動かないというそのスタンスは本当日本人の悪い癖で美徳ですね。いえーい。

 そういえば言うの忘れてましたがタイトルの「stick and carrot」は日本語に訳すと「飴と鞭」の事です。
 私が一番好きな言葉です。主に鞭が。

 それでは又も長くなりましたがこの辺でお開きにします。
 主催者様、筆者方々様、読者方々様、無投票に協力してくれた方々様。
 ありがとうございます。お疲れ様でした。また次も遊びましょう。


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  •  今回の大会の作品すべてに感想を送らせていただいております。唐突に失礼します。

     作品で描かれる闇のようなものが鮮烈な作品でした。これで無投票を狙うということの方が意外性として大きかったですが、結果的におめでとうございます。好みとは外れるので自分も入れようとは思わなかった見事に作者さんの思惑どおりでした。文字数制限によるダメージが厳しかったせいか、どうにもキャプションからの乖離を感じられてならなかったのは疑問が残りました。

     今回の刺激的な作品の数々、その一角として楽しませていただきまして、ありがとうございました。
    ――オレ 2012-07-08 (日) 23:00:20
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Last-modified: 2012-07-01 (日) 00:00:00
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