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Taboo Ⅵ 予想外

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Taboo Ⅵ 予想外




「探せ!島の隅から隅まで!絶対に逃がすな!」

基地の中には叫び声と、それに答える部下たちの短い返事が響き渡っていた。

天井裏から俺はその光景を見下ろしつつ、隣にいる人に話しかける。

「ここまで騒ぎを起こしやがって・・・逃げづれェじゃねぇか・・・まったく」
「う・・・ごめん・・・」
そういってそいつは頭を垂れた。


「・・・まぁいい。どっちみち俺の力でここから逃げ出すなどたやすいからな、どいていろ」

そいつが身にまとっている白衣を引っ張り、口を大きく開け、叫んだ。


「ハイドロポンプッ!!」
技名とともに勢い良く放出された水は、天井の壁をたやすく貫通し、部屋自体を真っ二つに切り裂く。
そこに生じた隙に突っ込み、体制を整えて技の準備をした。
「しっかりつかまってろ!」
「わ・・・わかってるよ!」

そいつの手が俺の手にしっかりつかまっていることを確認して、技を繰り出す。



「穴を掘るッ!!」













夜 会議時間 フィトム宅にて



「ニンゲン・・・ねぇ・・・」

カルスさんが酒場から持ち帰ってきた情報は、自分たちが明らかに不利だということを裏付けるような情報だった。


ニンゲン・・・フィトムさんとの修行で頭からそのことをはじき出されていたとはいえ、完全に忘れることは無く、こんなことはいつか起きると予想はしていた。しかし早すぎるというのが問題である。

今この状況でニンゲンと真っ向勝負を仕掛けても明らかに結果は見えている。私たちの負けだ。
それに、恐らくニンゲンは一人ではなく、何百、何千という軍隊で攻めてくるであろうから、たとえ知識が豊富だとしても、負けるのは目に見えているというか・・・
まぁ何千とニンゲンがいることによってメリットもすこし湧き出てきたわけだけど・・・


それは時間の猶予というものだ。


あんな生物を一度完成させたからって、0.5秒後に「2体目完成!(中略)1000体そろったー!よし行こーう」見たいな事にはならないだろうし・・・なってたまるか!

さすがに6ヶ月ほどはかかると予想はしている。



「で、だな」
と、ここでカルスさんが話を切り替える。

「最近変な噂が立っているんだと」
「噂?」

レインさんが即座に聞き返す。得意分野の領域ということで毎回会議では一番カルスさんと議論を交わしている
が、とくに噂などの空を漂うような情報には興味があるらしい。


と、いうことを今日発見した。

だって修行の休憩時間で町の噂を延々と聞かせてくれたんですもん。
良くあたるスロットの場所とか・・・世界一安い品物がこの町にあるとか・・・

あ、あと“片目の男の正体はカイオーガ”ってやつ。真逆ですね。

「あぁ、その噂が『ボーマンダと、仲間のフライゴンとドラピオンを探し回っている怪しい二人組み』がいろいろな町を転々としているそうだ」
「!!・・・そのボーマンダと仲間って・・・」
レインさんが驚いたように言うと、カルスさんは頷いて言った。



「あぁ・・・俺達だ」
「!!」

その言葉に全員が驚愕した。そこで私がカルスさんに問いかける。

「じゃ・・・じゃあその怪しい二人組みは・・・」
「おそらく“例の団体”から来た追っ手だろう。しかも二人組みということからして恐らくエリート二人組みといったものだろう・・・多分」
いよいよ本格的に消しに来たのだろうか・・・とりあえずこれから気をつけないといけないのかもしれない。

「・・・さて、今日の会議はこれで終了。明日は主に情報と旅の食料を集めに行くぞ」
カルスさんが会議を閉めると、皆それぞれに分かれていった。
フィトムさんの家に泊まっても良いらしいので、今回は宿じゃなくてフィトムさんの家に泊まることにした。


そして約1時間後、皆が眠りにつき、家は静寂に包まれた。










「んぅ~・・・何というか・・・暇」


ヴァルさんが退屈そうに欠伸をしながら呟く。私は心底その言葉に同意した。

朝の会議で言い渡された言葉は、「グループに分かれてできるだけ多くの情報を集めること」と「例の二人組に見つからないようにすること」だ。

ということで、私はヴァルさんと組むことになったのだが・・・

ガイトさんとレインさん、カルスさんとフィトムさんならまだしも、ヴァルさんが情報収集のような細かいことをやっている様子を見たことがまったくない。

ぶっちゃけると不安です。

まぁ予想通り事は運ばれ、現在のようなスーパー暇人モードへと直行したわけですが・・・
いくらなんでもなにか収穫がないと失礼だ。そう思って私は周りを見渡し、情報がありそうな場所などを探した。

それを見てヴァルさんも体を動かした。

「こんな町の表側探しまくるのもなんだし、裏町にでも回ろうか?」

どうせ探す当ても無いのだから、とりあえずヴァルさんの考えに同意をする。
そして裏町へと続く細い、薄暗い道へと歩を進めていった。









さすが裏町といったところか、そこには冬の日のようなひんやりとし、酷く暗い空気が当たり一面に充満していた。


その空気を吸った瞬間、カルスさんに拾われたときのことを思い出す。

あの時自分の体を取り巻いていた雪の容赦無い冷たさを体が思い出し、すこしずつ雲のような恐怖が私の頭の中に立ち込めていった。

私はその雲を風で吹き飛ばすように、頭を振る。

だけど一度立ち込めた雲をひとかけら残さず吹き飛ばすのが無理なように、一度感じた恐怖は、そう簡単に取り払われてくれなかった。



「・・・大丈夫か?」
ふとヴァルさんに声をかけられる。
心配そうなヴァンさんに私は一言「大丈夫・・・です」と笑って答えた。


「あの時とは違う。俺様も居るんだから安心しろ」
心優しい笑顔を浮かべながらヴァルさんは私の背中を撫でた。
そう。もうあのときのように一人ではない。

そう思うと恐怖という雲が少しずつ晴れていった。




「ッ・・・誰だ?」
と、ヴァルさんの顔から笑顔が消え、真剣な表情へと切り替わる。
私もとっさにヴァルさんと背をあわせ、周りを見渡す。しかし目立った様子も無い。

「ヴァルさん・・・?」

私が何が起こっているか問いかけようとした刹那。
「ほう・・・ここまで気配を消しているというのに見つかるとはな・・・」

「!?」




どこからとも無く聞こえる声。しかし左右上、どこを見ても影は見えない。


左右上・・・?





下は――――?


「ラフィ!空を飛べ!」

ヴァルさんの声に反応して、ヴァルさんをつかんで地を蹴る。
力強く羽ばたき、二人分の体重を何とか支えた。


瞬間、大地を砕く音が響く。


さきほどまでヴァルさんが立っていたところが砕け、中からラグラージが一人出てくる。
それに次いで白衣を着たリザードも出てきた。

敵の位置が見えたので、ある程度距離を置いて着地する。そしてヴァルさんが叫んだ。
「何者だお前ら!!」

ヴァルさんの怒声が空間を揺らして響く。それに先ほどのリザードが驚いて跳ね上がった。
「ごっ・・・ごめんなさい!おおおおどかすつつつもりはななななかったたんでですけどどど」

幾度もかみながらなきそうな顔で謝罪の言葉を並べる。




目には大粒の涙を浮かべながら。




「え・・・?」
私は当然だが、さすがのヴァルさんも予想外だったようだ。
いきなり“穴を掘る”の技を繰り出してきたところあたり、敵だと思っていた。


最初は。


しかしどう見てもリザードの反応は敵には思えない。
いったい何なのだろうか?

と、思った直後、ラグラージが話し始めた。


「俺はウィーク。“元”人間復興計画軍所属の者だ。で、こっちは・・・」


「あ、はい。えと・・・僕はフレイです。“元”人間復興計画軍科学者です」


人間復興計画軍―――それが今まで私たちが“例の組織”と呼んでいた軍の名前らしい。
それはさておき、いまだに私は内容がつかめていなかった。




“元”ということは・・・えと・・・何?


今は軍の者じゃない・・・?





と、いうことは・・・・・・


「・・・どういうこと・・・?」
さっぱり分からない。と思った瞬間、ラグラージことウィークさんがガクッと首を垂れた。

「あーもう単刀直入に言うぞ・・・」
あきれたように呟いた言葉の次に出てきた文は、私たちの想像を超えていた。





「仲間になる。そういったんだ」





「は!?」
思わず声が漏れる。元敵軍の人がわざわざ軍を裏切ってまでコチラに仲間入りだなんて・・・
混乱しながら横目でヴァルさんを見ると、綺麗に口をあけて固まっていた。

えと・・・この場合は・・・


とにかく、カルスさんのところまで行かざるをえなかった。






「はは・・・まさかそんな事があるとはね」

カルスさんも驚いたようすで、顔が微妙にだが引きつっていた。
「まぁ・・・そうですね・・・」
だが、理由を聞いたときはなんとなく安心した。



彼らが軍を抜けた理由は、“人間を復活させて世界を支配する”のに反対だったからだそうだ。




自然のバランスが崩れるということをいくら説明しても分かってくれない軍に嫌気が差し、同じ考えのフレイさんと一緒に軍を抜け出したんだとか。

元々世界征服ということ自体面倒くさいと思っていたらしいけど・・・

そして追っ手から逃げる最中、そのさいに耳にしていた“私たち”の情報を思い出し、協力しようと思ったらしい。


だが、まさか敵軍の中から味方となりうるものが現れるとは思ってもいなかった。
ウィークたちは軍の支部だったが、支部をたどっていけば本部への道も分かるはず。
あと、フレイさんの話では、ニンゲン・・・人間は思ったより量産が上手くいかない上に、失敗も時々出るらしく、早くても一年。という考えが出た。

「じゃ、俺たちは改めて仲間となって良いんだな?」


「あぁ、大歓迎だ。だが、少しフレイに言っておく事があるんだが?」

「え?はい、なんですか?」

フレイさんが首をかしげてカルスさんを見つめる。








「ガイトにいじられないように気をつけな」


その言葉でガイトさんのところへと顔を向けた。と、その瞬間、ガイトさんが意地悪な笑みを返す。


それを見たフレイさんの顔に引きつった笑いが浮かんだ。






あとがき

6話目無事終了なのです。
えー、続けてみてくださっている方は、どうも有り難うございます。感謝感激雨霰です!!
それにしても、今回の更新は大分遅れてしまったような気がします・・・すいません。
でも遅れた分内容は前回よりマシ・・・だといいなぁ(遠い目
とりあえず個人的にフレイみたいな第二のガイトにいじられるキャラが出せて嬉しいというか。

前回忘れられそうだった(?)ヴァルが今回結構存在感強いです。
ヴァルのキャラは個人的にお気に入りッ!

ということで、次回をお楽しみにしててくださいね!(


作品への感想等ございましたら米をどうぞ。


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Last-modified: 2010-09-19 (日) 00:00:00
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