Taboo Ⅴ 「修行」
「いってらっしゃーい」
町の奥へと歩いていくカルスさんのうしろで、私とレインさん、ヴァルさん、ガイトさん、フィトムさんは手を振
って見送った。
時は昼過ぎ。私たちはフェークタウンの宿に泊まっていた。
朝ごはん中の会議によって決まった今日の日程は、カルスさんは町の酒場などで情報収集、私たちはフィトムさんに鍛えてもらうということになった。
フィトムさんが教えてくれることは良くわかんないけど、カルスさんの友人ということで期待することにした。
「なぁ、裏事情だが俺様すっかり忘れられてないか?」
「は?誰だお前」
「ぶ っ 殺 す ぞ」
横ではガイトさんと・・・・・・・・・ヴ・・・ヴァルさんが喧嘩を始めている。
忘れたわけではありませんよ。えぇ。
ド忘れってヤツです。え?忘れているじゃないかって?はははそんなの気にしないでください。
まぁ、そんなことはさておき、レインさんが二人を止めたところでフィトムさんが話を始めた。
「んで、今日は俺が鍛えてやるからなー」
フィトムさんは頭を掻いて、しばらく考えてから再度話を続ける。
「場所は、俺の自宅だ。じゃあ行くぞー」
フィトムさんの自宅というと・・・まぁグラードンだしゴッツゴツしたイメージがあるけど・・・
でも性格優しいしマント被ってるし・・・え?マントは関係ないって?イメージですよイメージ。
何はともあれ気になる。すこしどきどきしながら私はフィトムさんについていった。
と、ここでヴァルさんが口を開く。
「ん?そういえばフィトムの家があるのに何でわざわざ宿を・・・?」
「忘れてた」
オイオイ
はい徒歩一分。近っ!
しかし本当の衝撃は中に入ってからでした。
期待はずれといっちゃ、まぁそうなんですけど。
まさかモノクロカラーで統一された綺麗な落ち着いた部屋だとは誰も思わないんじゃないでしょうか?
だって、グラードンがですよ!?伝説では溶岩の中で寝泊りするというあのグラードンですよ!?さすがのレインさんたち三人も驚いてるし。
「寝るときは暖房つけるからそこんとこは大丈夫だ」
わーお心読まれた。
てか暖房でOKなんですね。
「さて、今日教えることはこれから旅を続ける上で、知っておかなければならないことだ。まぁ大体戦闘のことだな」
「戦闘・・・」
戦闘、という言葉を聞いたとたん私は前の決意を思い出した。
絶対に足手まといにならない。そう決めた。
その言葉を頭に刻み込み、フィトムさんに向き合った。
「何を教えるんですか?」
私の言葉を聞いて、フィトムさんが少し近づいてきた。
「ラフィ、PPって知ってるか?」
「なにそれ」
私の言葉の直後、妙な沈黙が流れた。
そしてため息をつきつつフィトムさんが呟く。
「・・・これでよく戦えたな」
え?何?私そんなに戦いに不向きですか?
「まぁ、ラフィはあまり技使ってなかったしね」
レインさんが言った。どうやら「ぴーぴー」っていうのは技に関係のあるものらしい。
放送禁止用語だと思った。
「ガイト、レイン、ヴァル、お前らは分かるよな?」
フィトムさんの言葉に、三人がコクリと頷く。そしてレインさんが説明をしだした。完全に私のほうに向かって。
私しか知らないというのが分かっていても、こんな状況ではなんだか私が惨めに思えてくる・・・なんか悔しい。
「PPっていうのはね、技をつかう上で必要なエネルギーなんだ。タイプごとにそれぞれあって、それぞれのタイプの技を使うごとにPPが削られていくってゆーね。そしてPPがなくなるとそのタイプの技も使えなくなる。空気がないと火もつかないでしょ?」
さすがレインさん。分かりやすいたとえだ。
ようするに、炎には炎のエネルギーが、水には水の、電気には電気の、ノーマルにはノーマルのって具合に、タイプそれぞれにそのタイプの技を放つためのエネルギーがあって、それをPPと呼ぶ。って感じかな?
で、PPが切れるとそのタイプの技が使えなくなる・・・と。
「質問して良いですか?」
「え?良いけど?」
ここで疑問に思ったことをひとつ。
「自分のタイプによってからだの中にあるPPの種類は限られるんですか?」
レインさんの説明だと、技のタイプごとにPPがあるってことは、使えない技のPPは体内に存在しないということになる。ようするに自分のタイプと同じじゃない技が覚えられないのは、そのタイプのPPが存在しないということになる。
しかし、それだと水のポッチャマが「つつく」を使えるのに説明がつかない。
「あぁ、PPは基本的に全種類体内にあるよ」
レインさんがあっさり言った。
「え!?でも使えない技とかあるし・・・」
「えーっとね、PPは自分のタイプによって使い方が難しくなったり簡単になったりするんだ」
「どういうことですか?」
「んーっと」
レインさんが頭を掻いて続けた。
「自身のタイプごとに使いやすいPPが決まるの。僕は地面タイプだけどノーマルも使える。でも出しやすいのは地面の技ってな具合にね」
ふむ・・・なんとなく理解できたような気がする・・・
PPは、全種類体内に存在するが、“簡単に”引き出せるPPは限られるって事かな?
これならポッチャマが「つつく」を覚えられるはずだ。
「じゃあ頑張ればレインさんが「ハイドロカノン」を覚える可能性も?」
「それは無理」
「でしょうね」
「でも、PPについては未だ解明されて無い部分が多くて・・・例として、タイプ的に逆な岩、虫タイプのアノプスが水鉄砲覚えてたりね・・・まぁここら辺は詳しく覚えなくても良いよ」
レインさんの一言で、私は考えるのを中断した。今のまま考えていたら頭がオーバーヒートしそう・・・これはまさか私に炎タイプのPPの可能性が・・・・・・無いですねそうですね。
「で、この話はおいといて、PPが切れそうになったらある程度の疲労感がずっしりくると思うからすぐ分かるよ」
「へぇ~・・・PPを回復する手段は?」
戦闘中にPPが切れるなどということになったら大変だ。なにか回復手段があるなら知っておきたい。
「ヒメリの実っていう木の実を使えば半分くらいは回復できるんじゃないかな?まぁPPが切れるような『無駄な』戦いしなければすむことだけど」
「・・・頑張ります」
レインさんの少しブラックな笑顔に思わず頭が下がった。
「で、さらに言うと技ごとに削られるPPも決まってるから、技使うときはそれなりに考えて使わないといけないからね。主に上位の技になると多くなってくるから。中には一発で全部消費するのとかあるし」
なるほどー。レインさんは難しい言葉をいれないから説明が分かりやすい。
いろいろな情報を知っている人なだけはあるのですねー。やっぱり。
「・・・説明有難うレイン。さて、では本格的に鍛えるのはこれからだ」
そういってフィトムさんが部屋の隅のほうにあったドアを開けた。
そのドアのむこうには、恐らく地下へとつながっている階段があり、ついて来いとフィトムさんが手振りで示しながらその階段を下っていった。
それに続いて私たちも階段を下りていく。
階段の通路は、周りがコンクリートで覆われていて、とても冷たい感じがした。
そしてしばらく下り続けると、広い部屋にたどり着いた。
「うわー・・・広い」
そこはむき出しのコンクリートで作られていて、とても広い空間だった。
恐らく天井から私たちを見ると点にしか見えないであろう。
町の地下半分くらいはこれが占めているんじゃないだろうか?
「じゃ、今回は技などを鍛えるとしよう」
「あ、はい!」
私が返事をした後、フィトムさんが笑って頷いた。
「よし、じゃあ修行開始!」
同時刻
「新しい生物?」
フィトムがラフィたちを鍛えている間に酒場で情報を集めていた俺は、とあるディグダから妙な話を聞いた。
「うん。トンネルつくりの途中に偶然なにかの建物の下に出ちゃったんだけど、そのときに話し声が聞こえて・・・たしか『ようやく出来上がった・・・最強の生き物が・・・!』って言ってたの。生き物の名前は・・・ニ・・・・・・“「ニ」なんとか”だったはず」
おそらくその施設とやらはラフィを追いかけ、“「ニ」ンゲン”を再生させようとしている奴等のアジトだろう。
「そこは?どこだったんだ?」
「えーっと・・・地下だから良くわかんないけど・・・」
まぁともかくニンゲンが出来上がってしまったということは分かった。
おそらくラフィたちはまだフィトムの家にいるだろうから・・・とりあえず報告をしなければならない。
「有難う。助かったよ」
俺はディグダに金を渡してから、駆け足でフィトムの家にむかった。
あとがき
5話達成です!10話の半分!まぁ目標は20話なんですけどね。
今回は大分時間が空いてすいませんでした。いろいろなトラブルが重なってしまって・・・
首も治りましたー!
今回はちょっとギャグ的な要素も含めようとしたんですけど、ラフィが見事に変な子になりました。
そしてラストでちょっと触れた例の組織のこと。ついに完成してしまったニンゲンですが、いったいカルスたちはどのように立ち向かっていくのでしょうか!だなんて期待してくれてたら幸いです。
とりあえず5話という区切りのいい(?)ところまで来ました!続けて呼んでくれた方はどうもありがとうございます!
これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いします。
ちなみに作者はヴァルの設定を綺麗に忘れておりました(笑)