今回は特に注意書きなし。
Taboo Ⅳ 過去話
カルスとも無事合流し、おれたちは森の中を突き進むことにした。
そして道中、俺は山での疑問をぶつけた。
「ところでフィトム、雪山で俺に名前を教えなかったのは何でだ?」
その質問に、ふとフィトムの顔が曇った。
それを見て、俺はあわてて付け足す。
「あ、いや、別にいいや・・・嫌なことだったか?」
俺のその言葉に、フィトムはすこし顔を上げていった。
「あぁ、大丈夫だガイト・・・だがいずれ話さなければならないことだし、今言っておこう」
「・・・あの事か」
カルスの言葉からして、カルスは知っているらしい。しかしほかに知っている人はいないらしく、皆揃って足を止めた。
「・・・じゃあ、話すぞ」
「俺は、種族の中から外されたんだ」
「種族から・・・外された?」
カルス以外、俺も含めていっせいに疑問符を上げる。それを見たカルスが説明をしだした。
「グラードンといっても種族名、同じ奴等が何人いても不思議ではない。おもに伝説として扱われているのは初代の長老のことだそうだ」
「あぁ、カルスの言うとおりだ」
その説明に、なんとなく俺は納得した。
たしかに生き物である以上、種族というグループが存在しないわけが無い。
「で、何で外されたの?」
「あぁ・・・それは・・・・・・」
「近寄るなッ!」
そう怒鳴られて、いつも集落に出歩くのが恐怖になっていた頃を思い出した。
父は旅に出たまま戻って来ず、母は疲労で倒れていたあの頃。
そして俺は
「まったく・・・なんて不気味なんだ」
「これほどまでに体が違うと、種族が違うように見えてくるわ・・・」
「呪われてるんじゃねぇのか?」
周りから刺々しい言葉が降りかかる。まだ12歳だった俺はそれを涙をこらえながら耐えていた。
小さい
それが主な原因だった。
グラードンという種族は、かなり体がでかく、小さくても5mは超えていた。
しかし、俺は1mほど。同年代でも2m以上はこしている。
その他と違う体のせいで、呪われた子だとか、種族の恥だとか、迫害されていた。
それをかばってくれていた母も、このときには疲労で倒れていた。
これまでは良かった。まだ住む場所があったから。
だが、災いとは、まさに突然やってくるものである。
朝。普通ならば貧相な家のベットから起き上がるときだった。
だが
「起きろ」
冷たい声が頭上から降りかかる。そのあまりの冷たさに、恐る恐る上を見上げた。
そこには冷たい目で見る二人の兵士が俺を見下ろしていた。
首をつかまれ、2,3回周りを見渡す。そこはまっさらな草原だった。
「こ・・・ここは」
その声を聞いて、兵士の一人が口を開いた。
「お前を、集落から追放する」
一瞬にして頭の中が真っ白になり、しばらく何も考えられなかった。
これでいよいよ何もなくなってしまった。
兵士はすでにここからいなくなっており、一人だった。
「そんな・・・・・・」
「酷い話だな・・・」
村でも酷い扱いを受け、心を休める場所など無かったというのに、そのうえ住む場所さえもなくしてしまったときの心境は、なんともいえぬような感覚であろう。
その感覚も完全には読み取れなくとも、十分な不快感がその場にいた全員を貫いた。
「まぁ、ここでアイツが来なけりゃあ俺もここには生きて居なかっただろうな」
「アイツ・・・?」
追放されてしばらく。
草原に時折なっている木の実を食べて、俺は飢えをしのいでいた。
しかし、その木の実も尽き果て、わが身の特性で雨も降らず、どんどん自分の体は衰弱していった。
そしてもう駄目かと目を閉じようとしたとき、何か冷たいものが大量に顔にかかった。
「大丈夫!?」
そこにいたのはおそらく同い年のタツベイだった。
降りかかってきたのは水。おそらく彼がかけたのであろう。
それから彼から渡された食べ物を食べ、近くの洞窟に運ばれてからしばらくして会話ができるようにまで回復した
「・・・ありがとう・・・助かった。俺はフィトム。君は・・・?」
お礼を言ってからタツベイに名前を問いかけた。
「俺か?俺はカルスっていうんだ」
「えぇぇぇぇ!?」
カルスと話している本人のフィトム以外が、声をきっちりそろえて叫んだ。
「じゃ・・・じゃあカルスさんってフィトムさんの命を救ったんですか!!」
ラフィが叫ぶ。ものすごい驚いている様子で、その顔がおかしくて俺は少しだけ笑をこらえていた。
「・・・そこまで大層なことじゃない」
すこし照れてカルスが答えた。その答えにフィトムがすこし首を振る。
「いや、現にカルスがいなければ俺はここに生きていなかったんだ。本当にあの時は有難う」
フィトムが微笑み、それを見たカルスが照れくさそうに笑った。
「で、カルスは俺にいろいろなことを教えてくれたんだ」
「これはカイスの実・・・けっこう高価だから取っといたほうが良いかな?」
「へぇ~・・・」
カルスから教わったことは、とても数え切れないほどだった。
目立つこの体を隠す方法や、戦闘術、町のつくりなど、生きていくうえで必要なすべての事を教わった。
そして、ある日。
「じゃあ、これでお別れか」
「あぁ、そうだな」
カルスがコモルーに進化した頃、俺達は二手に分かれることにした。
カルスは困る人々の頼みを聞き入れるため。
俺はいざというときのための「強さ」を蓄える修行のため。
それぞれの目的のためだった。
それと、万が一俺の正体がばれたとして、追放されて死んだと思われている集落の者たちが、カルスに目を向けないようにするためだった。
だからお互い、二人の関係については“二人とも面識のあるもの”にしか話さないという約束を結んだ。
そして、お互いの道に向かって進んでいった。
「いろいろあったんですね・・・」
フィトムが話し終えてから、ラフィが呟いた。
俺も思わずその言葉に心から共感した。
レインはというと、さすがに空気を呼んだのか、途中までメモしていた紙をマッチで燃やし、砂地獄で埋めた。
「まぁな・・・二回目になるが有難う、カルス」
「言いすぎだっつの」
カルスは完全に照れてしまっているようである。ラフィはそれを見て微笑んでいた。
まったく、この幸せ者めが・・・
話も終わったところで再度歩き始める。すると森の木がだんだんと薄くなり、四角い塊が現れた。
そこには文字で「フェークタウン」と刻まれていた。
「さて・・・着いたな」
カルスが呟く。と、目的地に着いた瞬間、疲れが一気に体に押し寄せてきた。
それはフィトムを外して全員同じのようだ。さすがのカルスでも目がまどろんできている。
大きなあくびの後、カルスが締まりの無い声で言った。
「とりあえず・・・今日はもうどこか泊まろう・・・・・・疲れてるし」
それについては、一秒もかからないうちに全員一致で賛成された。
あとがき
グラードンのフィトムの体の小さいことに関する過去話です。今回は。
ちなみに左目の傷は、村を救った時にできた傷なので、今回の話にはあまり関係がありません。
さて、無事フェークタウンに着いたカルスたちは、情報収集のために町に出ます。
一方、ガイト、ラフィ、レインはフィトムに戦いの方法などを教わることに。
次回はとくにカルスは出なさそうですね。ガイトは思う存分ラフィがからかえて嬉しいようですが。
というかいつもより文章が少ない・・・バトって無いからかな?シリアス苦手orz
小説に関する感想や誤字報告などはこちらにどうぞ!