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Taboo Ⅲ 友人

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Taboo Ⅲ 「友人」

この小説には、戦闘シーンが含まれております。












「はぐれちまったみたいだな・・・なんか」

何かというか、実際そうなんだろうけど、その言葉が自然と口をついて出た。
俺がいる場所はあたり一面輝く銀世界。標高も高そうなそこはようするに雪山というやつだ。

どーすっかな・・・と俺は頭をかく。


寝込みを襲われ、きっちり2分割されてしまったところを見て、ラフィを追っかけているヤツの仕業ということは大体気がついた。しかし、何故?
あそこまでひっそりと町の端っこにたたずんでいた場所について、わざわざ調べることも無いだろうに・・・現に小屋の中が荒らされていたということは無かった。
何故この計画がばれてしまったのか。それだけが疑問に残る。


それよりも、今はこの状況を何とかするのが先決。ドラゴンタイプの俺にとってはこの状況は最悪。今襲われるとどうなるかも分からない。そう思って頭に残っていた疑問を首を振って退けた。

おそらくカルス側はヴァンもいることだし、易々と抜け出しているはずだ。となると、町に集合みたいなことになるだろうと思う。


地図は無いから・・・とりあえず山を降りることにしよう。
「・・・で、レイン、いつまで寝てるつもりだお前は」
「う・・・うーん、ガイト?」
マジで気絶かよ。俺はそう思って今考えた計画を話す。レインはほかに手が無いと思ったのか、それに同意した。



「ところで、レイン」
「え?何?」
下山途中、夕方の会議で小耳にはさんだことを、俺はレインに聞くことにした。
「今日の会議で言っていた・・・『片目の男』っていったい何なんだ?」
あぁ、それか、と言って、レインは記憶の中から情報を取り出すかのように、数秒うなって、説明しだした。

「片目の男って言うのは、フェークタウンで一番強い人でさ、町を救ったことで有名な人だよ。
左目に深い傷があるんだって」
「町を救った?」
俺の言葉にレインはうん、と言って続けた。


下山する足を止めずに、俺は歩きながらレインの話を聞いていた。

「一昔前・・・5年ほど前かな?そのときに町は炎タイプの盗賊に襲われたんだ」
「盗賊か・・・」
「うん、そして教われたフェークタウンは一夜にして半焼し、残ったところでは盗賊たちが支配したところしかなかったって」


一夜にして半焼・・・その盗賊はだいぶ数が多かったのか、それとも力が強かったのか、どっちにしろ強い力を持っていたことには変わりないだろう。

戦いが嫌いな俺には会いたくない状況だな・・・

「で、旅の途中偶然よりかかった『片目の男』は、その光景を見て盗賊を倒すことを決めたらしいんだ。そのときはまだ傷は無かったよ」
「へぇ、いい人」
「600万P貰う代わりに、という条件で」




「金取るのかよ」
さらりと俺はそこに突っ込んだ。しかしレインは華麗にスルーし、話を続ける。

「・・・でも村長はそれを信じなくて、お金は払わなかったんだ。だけどそれでもかまわずに盗賊のところに一人で乗り込んでいったらしい・・・そして、次の日」

俺は思わずそこで足を止めた。コレを聞くときに足を止めずにはいられないだろう。
「彼は盗賊を一人残らず追い出したらしいんだ。自分の片目を犠牲にして」
「ほう・・・いい話だな」
満足げに俺が微笑んでいると、レインが話を続けた。
「で、まぁ村長はそれを聞いて600万Pを差し上げたんだ」
「そしたらそれを受け取らずにうんたらかんたら、だろ?」
こういう話でよくある結末をあげて見る。このタイプだとそのかわりしばらく町に住まわせてくれって話だろうな・・・




そう思った直後




「ううん。お金はちゃっかり貰ったんだって」
「貰うのかよ」
はっきり言ってそれでいいのか、改めて世の中思い通りには行かないことを知らされたような気がした。それとともにのしかかる少しばかりの絶望感。最後くらい綺麗にまとめろっつーの・・・

「で、しばらく止まってその『片目の男』はいったん町を出たんだ。だけど数年後、彼は戻ってきた。理由は良く分からないけど・・・友人がうんたらって事を言ってたらしいよ」
ふーん、と俺は鼻を鳴らして話を聞き終わり、ふっとわいた疑問をぶつけた。


「お前、どこからそんな情報を手に入れた?」

「え?裏から」




どうりで俺が知らないわけだ。その情報、裏の奴等にしか回らねぇっつーの。
今思えば『合成ポケモン』のことについていち早く気づいたのはコイツだっけな。そんな昔のことはもう忘れたが、とりあえず同じ質問と回答を繰り返したことだけは確かに記憶にあった。

「ところで、そんな情報、別に裏でなくとも回らないと思うんだが・・・」
「あぁ、それは友人との『何か』を知られたくなかったからだって」
「なるほど・・・」

それほど大切なことなのか・・・と、今の俺たちとすこし合わさったその事情を、頭に新しく突っ込んでおいた。


「そういえばそいつの種族は?」
会議でも話題にならなかったことを俺は思いついた。
それだけ有名なら種族ぐらい知っててもおかしくない・・・裏だが。
「不明」
「は?」

期待とはまったく別方向の答え。俺はそれに思わず声を上げてしまった。
「えーっと、この人さ、なんだかワケアリで姿を回りにさらしたくないらしく、いつも黒いフード付マントを被ってるらしいから・・・姿見た人は誰一人いないんだって。友人以外。

戦ってるときの姿だって、現場目撃した人は一人も居ないし・・・」
「へぇ・・・なんとも不思議な人だな」
あまりはっきりしないまま、質問は終わった。





で、いままで下山途中、まったく敵は出てこなかった。
となるとそろそろ・・・・・・



「レイン」

「え?何?」
俺はレインを振り向かせると、無言でその頭を地面に押し付けた。
「へぶぉ!」
レインが奇声を上げたと同時に、横にあった岩が動いた。
そのまま俺のところへ転がってくる。

「おでましだな・・・」
転がってきた岩を片手ではじく。そのとたん岩の転がり方が逆回転になり、ブレーキをかけた。
完全に止まった後、それから手足が伸びて、その姿を現した。

「ゴローン・・・ねぇ・・・」

それからふと周りを見渡す。
するとそこには何十、いや、何百ものゴローンが居た。


「うっげ・・・なにこれ気持ち悪い」
不快そうな顔をしてレインがうめく。さすがにこれは俺でも見たくない。
「ユキノオー様の命令の下!彼らを血祭りに上げろ!!」
それを掛け声に、ゴローンが一斉に襲い掛かってくる。

ユキノオー・・・名前も知らされていないまま戦っているところを見てこいつらは下っ端の下っ端ってところか。

しかしここまで大勢で襲われるとさすがにキツイ。これは長期戦になるかもしれない。

おまけに何だよ・・・吹雪まで強くなってきやがって・・・
「竜の波動!」
一回転しながら竜胆色の炎を口から放つ。円状に広がったそれは、ゴローンを蹴散らして行った。

しかし未だ後ろにいたのか、その勢いは衰えなかった。
レインは地面タイプというだけあって、存分な戦い方ができないようだ。
おまけに数匹空中に飛び上がっているため、地面の技はなかなか当たらない。
これはいよいよ危なくなってきたかもしれない・・・そう思ったとき。








「ん?」

吹雪が弱まった。そして上空の雲がすーっと晴れてゆく。
月の光が差し込み、明るく照らした。

「ソーラービーム!!」
背後から大声が聞こえた。その刹那、金色の光がレインと俺の間を縫って突き進み、敵の波を打ち砕いた。
その攻撃にすこし唖然として、はっと後ろを振り向く。

黒いフード付マント・・・傷がついて開いてない片目・・・

間違いない、「片目の男」だ。


しかし、あの種族は・・・・・・

昔話、あるいは本でしか見たことのないあの形。
真っ赤な全身に黒いライン、そしていくつもの棘。
そう、それは


「グラードン・・・?」


地響きを立ててその体が着地する。
正確な全身図を見て、俺はふと気がついた。

・・・小さい。
いや、外見では俺のほうが小さいが、その大きさはリザードン並。
話に聞いていたのとは大分小さかった。

「・・・大丈夫か?」
考え事をしてるとそのグラードンが話しかけてきた。

「あ、あぁ・・・有難う」
「例に及ぶことはねぇさ」
そういいながら再度ソーラービームを放つ。夜でも瞬時に放てるのは特性の「日照り」のおかげだろう。
と、爆発音が鳴りしばらく、ゴローンたちは撤退した。
そしてそのグラードンは天を仰ぎ、目を閉じた。

するとうっすらと天に雲がかかり、先ほどではないが雪が降ってきた。
どうやらこの特性は自由に調節が効くらしい。まぁ自然界に害が及ぶ可能性のある特性だからな。



しばらく間をおいて、グラードンが話し始めた。
「お前、なんて名前だ?」
「えーっと、俺はガイト。こっちは友人・・・まぁ、レインだ」
すっかり最初のソーラービームで気絶しているレインの首根っこを持ち上げて、俺は言った。

「ふむ・・・何してたんだ?お前ら」
「あぁ・・・・・・ちょっと友人のところに・・・フェークタウンにいるんだけど」
これは言っていいことなのか、とりあえずおれたちの作戦に関することは伏せて答えた。

「そうか、ちょうど俺の友人もフェークタウンにいるしな・・・ここは一緒に行くとしようか」

「あ・・・あぁ、助かるよ、えーっと・・・」
俺はここで初めて名前を聞いてないのに気づく。片目の男だと分かっても名前で呼ぶほうが俺は好きだ。
「そういえば名乗ってなかったな・・・俺は裏では『片目の男』で通っているらしい。本名は教えない。これもちょっとした理由があってな」
少々俯き気味でグラードンが呟いた。じゃぁ片目の男と呼ぶことにする。

「・・・なんかすまない」
とりあえず謝っとく。それを聞いたグラードンもとい片目の男は、笑って言った。
「いや、別にいい。それより今はこの山を降りよう」
俺はそれに同意して、再び下山を再開した。








私たちがいるのは、前と変わらず森の前。とりあえず全員ここに揃うだろうから待っておくことにするってカルスさんが言っていた。
合流できなかったら朝になってから出るそうな。


それにしても、レインさんたち早く来ないかなー・・・そう思っていたとき、



「カルスー!!」


向こう側から声がした。その声に私は遠くを見つめる。
紛れも無く、それはガイトさんだった。腕に抱えられているのはおそらくレインさん。
それを確認した私は、大きく手を振ってそれに答える。隣を見ると、カルスさんやヴァンさんも安心した様子でため息をつき、微笑んでいた。

しかし、ガイトさんの横にいる大きい人は何だろう・・・?
フード付マントを被っていて良く見えないけど、赤い体をしている。




「合流完了っと!」
ガイトさんが元気良く言った。この調子であれば怪我もなさそうだ。
と、隣のフード被った人が姿を現した。
それを見て私は硬直した。

「グラードン?」

おまけに片目に傷。おそらくこの人が『片目の男』だろうか・・・



「・・・カルス、お前の仲間か」

え?
ナチュラルにカルスさんに話しかける片目の男を見て、私は疑問符を浮かべた。
「あぁ、そうだよ。それにしても久しぶりだな・・・・・・フィトム」



「え?」







綺麗にガイトさんと被った。フィトムというと、えー、会議で言っていたカルスさんの友人でありまして・・・ということは・・・

「フィトム・・・さん?」
「ん?あぁ、そうだ。俺はフィトム。カルスの友人だ。よろしく」
混乱して固まっている私たちをみて、微笑みながら片目の男もといフィトムさんが言った。





あとがき?
三話目終了です。
キーボードの調子がヤヴァイことになっていたため、あとがきを書くことが出来ませんでした。
フィトムとの合流。さらにこれから作戦を再び立て、カルスたちは旅を再開します。多分。
ちなみに内容は作者の気まぐれでコロコロ変わるから、次回予告なんて無意味なんですがねー;
で、ここで出てきた「ユキノオー」というのは、種族名であって、名前ではありません。
この団体の一番下は、上の人の名前を知ってはならないという決まりがある・・・ということで。



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Last-modified: 2010-07-15 (木) 00:00:00
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