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Taboo Ⅰ 始まり

/Taboo Ⅰ 始まり

第一話「始まり」








「はぁ・・・はぁ・・・」
暗く染まった森の中を、私は飛び回っていた。
激しく降る雪を月が怪しく光らせるその季節は冬。ドラゴンタイプの私にとっては一番キツイ季節だった。そのおかげで翼の根元がずきずきと痛む。もう飛んでいられない、でも飛ばないと私は殺される・・・


あの計画を知ってしまったから・・・



それについては、今日の夕方までさかのぼる必要がある。


「ふんふふんふふ~ん♪」
私は、近くの森に木の実集めに来ていた。
ここの森には頻繁に来ているため、森の構造は脳内に完全に入っていた。もし少しでも変化があったならば、それを見逃すことは無い。
だから、この異変にもすぐに気がついた。
「木が・・・・・・少ない?」
明らかに少ない。普通の人から見たら何が変化しているか分からないだろうが、私にとっては一目瞭然。ある一箇所だけ緑が薄くなっていた。
草を掻き分けながらそこへと進んでいく。するとそこには見たことも無い建物が建っていた。
黒く、夕焼けの光で輝いていた。
「何・・・これ」
好奇心が抑えられずに、私はその建物の中へ入ってしまった。

そして、そこで聞いたのだった。




「~~!~~~~」
人の話し声が耳に入る。よく聞こえないので私は壁越しに耳をつけた。
「よし!上手くいきそうだ!」
「これならあと少しで完成だな」
「あぁ、ボスの願いがようやく叶いそうだ」
雄のような二つの声が聞こえる。ボスとはいったいなんだろうか・・・よく聞こうとさらに耳を押し付けた。
「そうだ、あと少しだ。あと少しで・・・」

「人間が・・・復活する。そして俺たちが人間を操り、世界を支配する・・・!」




人間・・・!?
私は耳を疑った。
人間というと、当の昔に自ら招いた災害により絶滅してしまった生物のことだ。
おじいちゃんの話では史上最強の生き物とも言われ、伝説のポケモンですら虐げられてしまうような奴ららしい。
その人間が復活し、世界を・・・?
私はその場で硬直した。
(戻って・・・知らせなきゃ・・・そうしないと・・・世界が・・・)
そっと音を立てないように通路を走る。と、何か足に硬いものがぶつかった。

ガランガランとテンポよく鳴り響くバケツの音。その音の元が自分の蹴ったバケツだと分かるのに数秒かかった。
「誰だッ!!」
怒鳴り声ではっと我に返る。しまった、気づかれた!
龍の息吹で壁に穴を開ける。その瞬間入り込んできた雪に一瞬ひるんだが、かまわず飛び出した。追手はピジョットとムクホーク。空が飛べるやつでも捕まえられるようにだろう。
飛ぶ力を最小限にするために低い位置で飛行する。高く飛ぶと冷たい空気に体力を奪われ、飛行ポケモンの追手に追いつかれてしまうからだ。
それから何時間か飛び続け、今に至る。
もう何時間も飛び続けただろうか、意識が朦朧として、目がかすみ、翼の動きが遅くなっていく。
その瞬間、頭に激痛が走った。どうやら木にぶつかったらしく、上から大量の雪が落ちてきた。
雪から抜け出そうと、もがく。しかしそれは雪をすこし動かしただけに過ぎず、状況は何も変わらなかった。
白い雪で覆われてる分、追手には見つからないが、このままでも凍死してしまう。
まぁでも追手に殺されるよりはましかな・・・

その思考を最後に、私は意識を失った。





「寒すぎる・・・」
白い息を吐きながら俺は空を飛んでいた。
依頼で疲れたというのにこの天気は・・・とか言っても仕方ないか。


俺はボーマンダ族のカルス。雄だ。
このさきにあるレヴェンスタウンで『何でも屋』といわれる団体のリーダーだ。
『何でも屋』、というのはその名のとおり、どんなレベルの低い依頼でも受託し、全力でこなすという団体だ。金は取らないが。
今回はドダイトスさんの引越しの手伝いだった。悪いことが起きないってところでは平和でいいが、ここまで何も無いのは『何でも屋』って要らないんじゃないかと思う。
まぁ好きでやってるんだからいまさらやめるつもりは無いけどな。


「ん?」
ふと下を見ると、雪の中に何かが埋もれてるのが見えた。
雪のせいで見えづらいが、確かに何かがいる。俺はそのそばに着地した。

不自然に積もった雪をやさしく掻き分けていくと、緑色の体が現れた。
「ん?まさか・・・・・・」
とっさに火の粉で雪を溶かす。そこにはいたるところが凍りかけたフライゴンがいた。
「ッおい!大丈夫か!?」
呼びかけてみるが、返事は無い。
だが、かすかな心音と息が残ってるのに気づいた。
今すぐ手当てすれば助かる!
そう思って俺はそのフライゴンをやさしく抱き上げ、地を蹴った。







「う・・・ぅ・・・?」
目が覚めると、視界いっぱいに赤いものが広がっていた。
なんでこんなところに・・・?なかなか思い出せない。
「ここは・・・?」
気がつくと声が出ていた。
「ん?ようやく気がついたか」
赤いものが視界から取り去られ、声の主が顔を出す。
そこにはホッとした表情のボーマンダの顔があった。
ということは先ほどの赤いものは彼の翼だろう。
ふと体を見ると、翼に薬が塗られ、体のいたるところに包帯が巻かれていた。おそらく彼がやったのだろう
「助けてくれてありがとうございます!」
「いや、別に気にしなくていいぞ」
彼は照れた様子で微笑んだ。それにつられて私も微笑んでしまう。
しばらくしてはっと我に返り、首を振って表情を元に戻す。それを見て彼がすこし笑った。

「俺はカルス。ここ『何でも屋』のリーダーだ。君は?」
彼・・・カルスさんが表情を戻して尋ねる。私は・・・確か・・・
「わ・・・私はラフィって言います」
まだ記憶がぼんやりしていたので、名前を思い出すのにすこし時間がかかった。
すこし考えてからカルスさんが口を開いた

「ラフィ、君は何故あんなところで倒れていたんだ?」

「倒・・・れ・・・・・・?」
そのとき今までぼんやりしていた記憶が一瞬ではっきりと蘇った。

森の中・・・謎の建物・・・そして

あの計画・・・・・・

再びあのときの恐怖に血の気がいっせいに引く。
「・・・訳有りか・・・落ち着いてすべて話してみろ」
真剣な顔で、やさしくカルスさんが言った。そのまま私を抱きしめる。
「・・・・・・はい・・・」
私はすこし落ち着いてからカルスさんにすべてを話した。
何故か一つ一つ鮮明に覚えてたので、詳しいことまですべて教えられた。
でも、ひとつの疑問が浮かぶ。

カルスさんは、このことを信じるだろうか?
人間が復活するだなんて、今思えばばかげたことかもしれない。
もし公に公表したとしても「頭のおかしいヤツ」と思われて終わるのが結末だろう。
こうなるのは覚悟したつもりだったが、改めて思うととてつもない絶望感と無力感に襲われた。
世界が支配されてしまう、私はそれを止めることも伝えることもできない、と・・・

しかし、カルスさんの言葉は、思いもよらない言葉だった。
「成る程・・・な」
「へ?」
意外な言葉に、なんとも間の抜けた声が出る。
「合成ポケモンって知ってるか?」
カルスさんの口から聞きなれない単語が出てくる。
それに対して私が首をかしげたのを見て、説明を始めた。
「それぞれ違うポケモンの遺伝子を組み合わせ、新たな命を人工的に作り出す。それでできたのが合成ポケモンだ。最近裏ルートに回っていてな、処理しようにも規模が大きすぎて処理できないんだ」
「はぁ・・・それがどうしたんですか?」
カルスさんが天を仰いで続けた。
「分からないか?もはや人工的に生物を作り出すことも可能なんだよ」
「・・・!そっか・・・」
人工的に命を作り出す。それは遺伝子さえあればどんな生き物だって作り出すことができる。ということ。
しかも遺伝子をいじくれば自分の思いのままに動く人形にすることも不可能ではない。
「じゃあ・・・なおさら公に公表しなきゃ・・・」
「待てって」
立ち上がろうとした私をカルスさんが翼で制した。
「合成ポケモンは裏のやつらだ。公にしても誰も信じないか、信じてないフリするだろ」
「あ・・・じゃぁどうすれば・・・」

「・・・だから俺らが居るんだ」
「え?」



「全員集合!レイン!、ガイト!、ヴァン!」

カルスさんが急に大声を出した。そしてしばらく、私の後ろにあったらしいドアから三人なだれ込んできた。

「きゃぁっ!?」 
急にカルスさんに翼で抱き上げられる。そしてさっきまで私が居たところに下からサンドパン、ガブリアス、ドラピオンが倒れた。

「痛い!いたたたたたた骨!骨ぇぇ!!」
「ん?何用だカルス」
「ZZZ・・・はっ・・・ここは」
カルスさんがあきれた様子で溜息をついた。
「ラフィ・・・こいつらは下から順番にレイン、ガイト、ヴァンだ。おい、ヴァン!寝るな!!」
カルスさんが・・・ええと、ヴァンさんだっけな?まぁその人を揺さぶる。

「ん?何だ、朝か」
「朝ってお前な・・・」
ヴァンさんの言葉にカルスさんが力なく項垂れた。

「あの・・・カルスさん?」
少々心配になってカルスさんに呼びかけてみた。すると頭をふだんの位置に戻し、「カルスでいいって」と微笑みながら一言言った。でも命の恩人に対して呼び捨ては私が許しません。
私がそういうと、カルスさんは「慣れないなぁ」と照れながら頭をかく。
私はそれに対して不覚にも可愛いと思ってしまったのは事実で、私はすこし顔をそらした。


「おー、なかなかいい雰囲気ですな~」
それを見て両方からはさまれているガイトさんがニヤつきながら言った。
「ちっ・・・ちがいます!!」「ち・・・ちげぇよ!!」






はい。見事にかぶってしまいました。コレじゃあ何言われてもしょうがない・・・

「まぁ、真相は本人にしか分かんないんだろうけどね」
怪しげに微笑んでガイトさんは顔をそらした。

「で、何用なんですか?」
唯一のまともそうな人、レインさんが話を戻してくれた。感謝感激雨あられです本当に。

「そうだ、俺たちの団体はこれから長期任務に就く!」
「え・・・?」
大きく息を吸って、カルスさんが大きな声で言った。




「謎の団体の計画「人間の復活」を阻止するとともに、その団体の撃破!」






「それって・・・」

「・・・・・・その名の通りだ」




「わ・・・私も戦います!」
目に涙を浮かべながら私は言った。
まさかそういうとは思わなかったのか、カルスさんたちは驚いたような顔をする。
「私の・・・私の力で守れるものがあるのなら・・・戦う!」






「出発は一週間後だ。体を直さないと戦えないぞ」
カルスさんはそういって私に微笑みかけた。
よく響く声で、私は返事を返した。







あとがきなんだぜ( 
今回はどうやってまとめるかものすごい迷いました。
そのせいで再びビミョウに・・・ちなみに軽くフラグです。気づいてる人は気づくでしょう。
次回からは町の外に出ます。まだ物語りは始まったに過ぎないのさ!(当たり前
では、次回作がんばりまーす
コメントどぞーw


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Last-modified: 2010-11-23 (火) 00:00:00
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