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LIFE/DEATH under the sun

/LIFE/DEATH under the sun

LIFE/DEATH under the sun

writer ソライロ




森の中。
陽気が心地よい日向に一匹のリーフィアが居た。

「はぁーあ……」

青い空を眺めながらため息をつく。
なぜかと言うと、とても下らないが、
好きなポケモンの事を考えていたからだ。
もちろん、告白しているのならまだこんなため息はつかない。
つまるところ、絶賛片思い中というわけだ。
何とか、告白したいと考えるも、中々それが実行に移せず、
また、やはり叶うものではないのかと考えたりもする。
別に、そのポケモンに彼女が居るとかそういうのではない。
何が問題かと言うと、『時間』であった。
私は主に昼間に活動するし、日が暮れれば眠る。
多くの仲間もそう言った生活を送るものが多い。
しかし、世には夜に活動する者もいる。
昼間は洞窟やうろで眠り、日が沈むと活動をする。
私が想っているポケモン、
ブラッキーもそうした夜の住人だった。
そんなわけで、ちょうど会える時と言えば
日が落ちたその後の少しの時間。
私が眠る前、ブラッキーが起きた後。
そのわずかな時間にしか出会えない。
昔、私も、ブラッキーもイーブイだったころは、
昼間に一緒に遊んだりしていたが、
進化してしまった途端に、
住む世界が変わってしまった。
偶然にも先日、再会したときに
恋心を抱いてしまったわけなのだが、
進化して以来、数年もの間会えなかった彼に、
果たしてもう一度会うにはどうしたらいいのか
そういうことを長々と考えていた。
「どうしたらいいんだろ……
結局、考えるだけでも始まらないしなあ」
柔らかな草に寝転がる。
目を閉じると、かすかに吹く風が草木を揺らす音が聞こえる。
周りには誰もいない。
心地の良い陽気につい油断してしまう。
つい、ウトウトしてしまい、
気が付いたときにはすでに日が暮れかけていた。

昼寝が過ぎて、たまにこうなってしまうことがあるが、
今日は珍しく長く眠ってしまった。
そういえば、彼に再会した時も、
こんな風についうたたねをしてしまった時の
帰り道だったなと、呟く。

「あっ……」

立ち止まる。

「そっか、今日ももしかしたら、
探せば会えるかもしれない」

ちょうど日が落ち、暗くなってきたころだった。
私は来た道を戻り、
その先のよくポケモンたちが集まる広場へと
足を運んだ。

広場につくと、ちょうど間の時間と言うこともあり、
ポケモンはあまりいなかった。

「あれ、珍しいな。君なんかがこんな時間にいるなんて」

横から声がし、目を向けるとふわふわとヨマワルが浮いていた。

「久しぶり。まさかヨマワルと会えるなんて」

ヨマワルとはブラッキーと昔遊んでた頃にたまに会っていた。
夕暮れ時に会えるだけだったが、それなりに仲は良かったと思う。

「それで、リーフィアさん、こんな時間にいったいどうしたの」

「あ、いや、ブラッキーをね、探してるの」

気持ちが表情に出ないように気を付けながら言う。

「ん? もしかしてよく一緒にいた彼の事かな?」

「うん、そうそう」

「彼なら、これから、と言うか毎晩会ってるけど」

「えっ……そうなんですか」

もしかすると、
この前に会った時も、ヨマワルに会うために
此処へ向かっていた途中だったのかもしれない。

「彼に会いたいならここで待ってるといいよ、
もう少しで来るだろうから」

そう言ったとき、前方から誰かが来た。

「どうした?」

前から来たポケモンは呼びかける。

「あっ、ブラッキー」

ヨマワルはなれなれしい様子で、そのポケモンに声をかける。

「あ、こ、コンバンワ」

私は少し遅れて挨拶をした。

「あれ、リーフィアじゃない、なんでこんな時間に……?」

「ブラッキーに会いに来たんだって」

私が答えるよりも早くヨマワルが答える。

「えっ、俺に? そりゃまた、どういう風の吹き回しだ」

ブラッキーが意外そうな表情で尋ねてくる。

「あ、いや、この前会ってさ、また会いたいなーって」

「そうか。でも、こんな時間によく来たな」

特に理由も咎められることもなかった。
まさか、こんなにうまくいくとは思っていなかったが、
会えて本当に良かった。

「リーフィア、悪いんだけど、
これから俺は夜警に行かなきゃいけないんだ」

「へ……夜警?」

「そう。ここら辺一帯を一定の期間で交代しながら夜警につくんだ。
この近辺のエリアは一か月前くらいに当番になったかな」

「じゃあ、他のところにも?」

「ああ。ここ数年で、あちこちを転々としてたよ」

なるほど。
私はこの近辺でしか生活していないから、
他のところで夜警についていたブラッキーには
会えるはずもなかったわけだ。

「これは、ボランティアみたいなもんだしな。
リーフィアは早く帰って寝たほうがいいよ。
じゃあ、ごめんな、そろそろ行くから」

ブラッキーはそう言って行ってしまった。
会えたはよかったものの、何も話すことができなかった。
一人、ポケモンが増えてきた広場に取り残され、
しばらくボーっとしていたが、我に戻ると、
今日のところはさっさと帰ることにした。



どうしたら、何とかしばらく話ができるだろう。
正直あの感じでは、夜警前とかに話すのは無理そうだ。
帰り道を一人歩きながら考える。
やっぱり、夜中じゅう起きていないと、
話をするチャンスはない。
ねぐらの直前でそう結論する。
そうはいっても、ねぐらにしている洞窟に潜り込むと、
激しい睡魔が襲う。
根本的に、昼夜を逆転させない限り、難しいだろう。

「そっか、なら、いっそ逆転させちゃえばいいんだ」

単純だが、意外と思いつきにくかった。
この思い付きは眠気を吹き飛ばすにはちょうどよかった。
そうと決まれば、早速夜更かしの準備を始めよう。
一人でぶつぶつつぶやきながら、
手探りで暗いねぐらの中をあさる。
外に出るのは怖いし、何より外に出たところで何もない。
道端で眠ってしまうのも困るので
ねぐらの中で矯正することにした。

「うーん、何もないなあ……あっ、はっかのみだ」

普段何も食べることがないので、とっておきが残っていた。
昔々にはあったという木の実で、
今となってはもう見かけることの無い
かなりマニアックな木の実だ。
母から独り立ちの選別として、貰ったが、
今日まで使うことなく半ばほこりをかぶっていた。

「大丈夫なのかなこれ……まあ、食べてみよう」

恐る恐る口へ入れるが、どうやら腐ってはいないようだ。
木の実の保存の良さにはつくづく感心する。
これで一時的ではあるが眠気を抑えることはできそうだ。
とは言ったものの、
これからの長い長い夜はどうやって過ごそう。
夜にする事なんて、特に何もない。
暗いねぐらの中ではほとんど何もできないに等しい。
夜に活動するポケモンたちは
基本的に暗いところでも物が見えるらしいが、
そこらへんが根本的に私は夜には活動できない所以だろう。
そんなことはどうだっていいけど……



「はぁ……はぁ……」

結局、暗い中でもできることと言えば、
これしか思いつかなかった。
自分の身一つでコト足り、非常に有意義でもあるだろう。

「ふぅー、疲れちゃったな」

はっかのみは一時的な効果しかない上に、
疲れて横になっていると再び睡魔に襲われる。
あまり急に変えるのは大変なわけだし、今日はもういいかな。
そう気を抜いた後には、もう意識はなかった。



目を覚ましても暗い洞窟の中。
一応外に出てみると、太陽はもう真上を過ぎようとしていた。
しかし、あまり眠った気がしない。
昨日、あまりに何もすることがないからって、
筋トレなんかしたのは間違いだったなと今更後悔する。
欠伸をしながらまた洞窟に戻る。
そのまま寝床に戻ると、無理やり目を閉じて休んだ。
一度起きてしまうと中々眠れないもので、
うだうだと過ごすが、しばらく横になっていると自然に眠れた。



そして起きたのは夕方頃だった。
洞窟から這い出てみると、日が沈もうとし、
辺りがオレンジに染まっていた。

「ふあぁ……」

欠伸を一つし、洞窟に戻る。
何もすることがないし、昨日のようにはっかのみもない。
今夜くらいで何とか昼夜を完全に逆転させたいところだ。

「うーん、ホントに何もすることがなくなったなあ」

筋トレなんてもう嫌だし、どうしようかとひたすら悩む。
何もしていないと、時の流れがとても緩やかに感じる。
前足を地につき、座り込む。
のどを鳴らして唾液を飲み込む。
前足を恐る恐る動かそうとしてためらう。
そのまま前にだし、立ち上がり、洞窟から出る。
月が昇っていた。

「ブラッキーは、今日も夜警してるのかな」

ポツリ、月に向かって呟く。
しっぽの葉をゆらゆら揺らしながら、
宙に浮かぶ星や、月に照らされて流れる雲を眺める。
目の前から始まる森は暗い口をぽっかり開けているが、
後ろの岩場は月明りで幾分かは私でも視認できそうだ。
足場をうまくわたりながら、洞窟の上に広がる小高い丘に登る。
さらさらと、風が草をかき分けて走っていく。

「気持ちいい……」

頭の葉っぱがなびく。
幾分かふらつくが、気のせいだろうか。
そうして、月が過ぎ去っていくのを寝転がってみていた。



身体を少し捻ると草とこすれてかわいた音がする。
起き上がり、洞窟の入り口まで飛び降りる。
東の空を見ると、すでにうっすらと明るくなりかけていた。
洞窟の中に入る。
まだ眠るには少し早いかなと思いつつ座り込む。
だいぶん眠くなってきているが、
それ以上に今日にでもブラッキーに
会いに行こうという思いが私を興奮させている。

「やっと、ブラッキーに会える……何て言えばいいかなあ」

そんな風にいろいろ考え、眠ることがなかなかできない。
何とか他の事を考えようと、いろいろ考えるうちに、
洞窟の入り口の方が明るくなっていく。
結局、いつ眠ったのかは定かではないが、
起きたのは夕方頃だった。



「んぅ……はっ」

急いで起き上がると外に出る。
日が傾き、夕焼けに染まり始めていた。
私はすぐに駆け出す。
目的地はもちろん、あの森の広場。
寝起きのせいか、体が鉛のように重い。
息切れをすぐしてしまうが、それでも、何とか広場にたどり着く。

「あれ、リーフィアさん」

この前と同じように、ヨマワルがいた。

「こんばんは、また来ました」

頭を下げる。

「また、彼ですか? 彼ならまあ、すぐに着きますよ」

「なんだ、またリーフィア来たのか」

なんというグッドタイミング。

「はい、今日は私も夜警に参加したくて」

ブラッキーが渋い顔をする。

「そんなこと言ったって、夜中ずっとだぞ」

「大丈夫、昼間寝てきたから」

「……本当か?」

「もちろん」

「どこで」

「ねぐらの洞窟でだけど」

ブラッキーの顔色が険しくなる。

「それなら、なおさらだめだ」

「ど、どうして」

そのためにわざわざ眠ってきたのに、
ダメなんて意味がわからない。

「第一おまえ、顔色が悪いぞ」

「へっ……?」

そういえば、来る途中からずっとふらつく。
我慢はしているが、あまりいいとは言えなかった。

「だめだ、すぐに帰って、ちゃんと昼間に活動しろ」

「嫌、私も行きたいの」

ついに折れたのか、ブラッキーからの反論がなくなる。
言い負かせる気などはなかったが、まあいい。

「ブラッキー、そろそろ時間が」

ヨマワルが急がせる。

「わかった、仕方がない、今日だけだぞ」

「やったー!」

なんとか、一緒に夜警に行くことだけは承諾してくれた。
そしてすぐに、私達は夜警へと出発した。



「しっかし、何もないな」

「いや、ブラッキー、平和なのが一番だって」

そんなこんなで、
私はヨマワルとブラッキーの後からついて行っている。
何時間も森の中を歩き、
正直立っているのも厳しいが、そんなことは言えない。
我慢してついていく。

「もうすぐ広場だな、今日はそれで終わり」

ブラッキーがやれやれと息をつく。
獣道を進み、いくつか分かれ道を通り過ぎると、
開けた場所に出る。

「よし、着いた。今日はこれで終わりだな」

「お疲れ様だね」

ヨマワルとブラッキーが一息つく。
私は、ついにチャンスが訪れた。

「あ、あのさ……ブラッキー」

一歩、ブラッキーに歩み寄ろうとする。
しかし、後が続かない。
限界を超え、関節は力なくまがり、
私の体は地面に倒れ伏す。

「お、おい、リーフィア!」

ブラッキーが必死に呼びかけている気がするが、
ぼんやりとした意識の中に掻き消えていく。
私、死んじゃうのかな……



「……フィ……さん」

「んん……」

「リーフィアさん」

「何……」

目を覚ますと、そこにはヨマワルが居た。
気分はとてもいい。

「大丈夫ですか?」

「うん、まあ、何とか」

それはよかった、とは言うが、無表情では何とも言えない。

「あれ、ブラッキーは?」

「これから追いかけます、ついてきてください」

言われるがままについていく。
まだ太陽は出ていないのに、森の中は暗いのに、
私はしっかりと辺りを見ることができた。
何だか変な感じだが、困ることはないし、
むしろ利点なので特に気にも留めない。

「ねえ、私ってどのくらい寝てたの?」

「え、うーん、そんなに眠ってはなかったね」

「ブラッキーはどこに行ったの?」

「森から出たところだよ」

よくわからないけど、
言った通りについていけば会えるだろう。

「少し急ごうか、夜明けには着きたい」

「う、うん」

少し走り気味に森の道を行く。

「ねえ、リーフィアさん、
なんでブラッキーが来て欲しくなかったかわかる?」

唐突にヨマワルは言う。

「いや……わからない」

分かれば、苦労はしていない。

「草タイプ、特にリーフィアさんみたいな
タイプのポケモンって、
昼間はしっかり太陽を浴びないといけないんだよ」

「……どういうこと?」

「リーフィアさんって、食べ物をほとんど口にしないでしょ?」

確かに、進化してからこの方、
食べ物を口に運んだことはほとんどない。

「それと、何が関係あるんですか?」

「あんまり知ってるポケモンは少ないんだけどね、
草タイプは、太陽の光がご飯になるんだよ」

言っていることがよくわからない。
これはいわゆる、エスパータイプのよく言う
知識と言うやつだろうか。

「難しい話は抜きにするけど、光合成っていうのがあって、
それで、草タイプは特に食べ物を食べなくてもいいんだよ」

「は、はあ……なるほど」

なるほどと言っているが、正直この時点でよくわからない。
ヨマワルはそのあとに何やら呪文めいたものを唱えていたが、
残念ながら私の体を通過していった。

「まあ、そういうわけで、
リーフィアさんが洞窟の中で眠ってたって言ってたから、
ブラッキーはリーフィアさんに
あまり無茶をさせたくなかったんだろうね」

要するに、ご飯も食べずに来るなってことだろうか。

「まあ、ポケモンは動く分、
木なんかよりよっぽどエネルギー使うし、
リーフィアさんはエネルギー不足で倒れたんだよ」

「え、えねるぎー?」

「体を動かしたり、生きていくのに必要な栄養だと思って」

「あ、な、ルホド」

ヨマワルって、いったい何者なんだろうと思いつつ、
何とか頭で理解しようとする。
そうすると、一つ引っかかることが。

「生きるための栄養って、まさか、
私死んだとか……あはは、そんな訳」

「そのとおりですよ」

「ですよ……ええと、えっ」

「今あなたは魂だけですよ」

「ちょ、ちょっと待って、そんな、
まさか、ブラッキーを追いかけるって」

「ばれたなら仕方有りませんねえ、
私はあなたの御迎えに来たんですよ……」

ヨマワルの目が不気味に光る。
私は立ち止まって身構える。

「おやおや、早く来ないのですか?」

「い、いやだ、私はまだ死にたくないよ」

「そんなこと言ったって、
ちゃんとお天道様の元で
生きなかったあなたが悪いのですよ」

たしかにそうだけど、でも、知らなかったわけだし。
でも、今更死んで魂だけになった後、
そんなのは関係ないのかなあ。
それに、まだ私には未練しかないし

「どうします? 今ならまだ天国に行けますよ?」

「そ、そんなの嫌だよお……」

その場で泣き崩れる。

「ではでは、このまま成仏せずに、悪……」

「それも嫌だけど……どうにかならないの……」

ヨマワルが恐ろしい手を肩にかける。
あまりの恐怖にすごい勢いで後ろに跳び退く。

「ほら、素直に来てください」

ヨマワルは相変わらず丁寧な口調だが、
かえってそれがおぞましさを増長させる。
目を光らせながら、こちらに少しずつ近づいてくるのは、
洒落ではなく、この世のものではないほど怖い。
地面にへたり込んでしまい、もう後ずさることができない。
普通なら、あまりの恐怖に気を失ているかもしれないが、
死んでいるためなのか、そんなこともなく、
恐怖を味わい続ける。

「……ぷっ」

……一瞬、ヨマワルガ笑った気がする。

「霊魂になってまで失禁とは、始めて見ます」

笑いをこらえているもはや恐怖のかけらも無いヨマワルを他所に、
私はまだ恐怖のせいで放心している。

「リーフィアさん」

ヨマワルが顔を軽くはたいたところで我に返る。
先ほどとは打って変わって、ヨマワルは穏やかな様子だ。

「流石にやりすぎましたか、でも早く行きますよ」

「い、嫌だ……」

「では、そのことをブラッキーに申しあげましょうか?」

私の下半身を指し言う。

「な、なん……」

絶対に、いまヨマワルは下衆顔をしている。
無表情だが、私にはその確信があった。

「悪いようにはしませんし、もしかすると……」

「もしかすると?」

「それはついてきてからです」

「下衆野郎……」

「リーフィアさん、口が悪いですよ、ブラッキーにその事」

「わわわ、ごめんなさい、ごめんなさい、
ついていきますからそれだけはぁ」

「それでいいんですよ」

ヨマワルは私が立ち上がるのを待つ。
私は恐る恐る立つが、幸い、地面には何も変化がない。
霊魂ではあまりそういう変化を起こすことはできないのだろうか。

「では行きますよ」

仕方なく、ヨマワルについていく。
辺りがよく見えるのは、
今更だが魂だけになったからだろうなと思う。
そして、ヨマワルとは一定の距離を開けながら進み、
ついに森の出口までたどり着く。

「リーフィアさん、もうすぐブラッキーが居ますよ」

今更、なんでそんなこと。
でも、最後に一目見ては行きたい。

「わかった、いくよ」

そのままついて行く。

森を抜けると、小高い丘。
丘陵地帯に囲まれたこの森は、
森から出ると基本的に丘や山があることが多い。
その丘の中ほどにブラッキーが居た。
傍らには、リーフィア、つまり私の体が在った。

「お、ヨマワル、連れてきたか?」

「ここにい居るよ」

私を指すが、ブラッキーには見えていないようで、
そうかと言って、ブラッキーは東の空を見つめる。

「あ、あのどういう……?」

「え、ああ、ごめんごめん。さっきは半分冗談だったんだよ」

「ど、どういうこと」

さっき、あんなに怖い思いをして、それで冗談でしたなんて、
少し腹立たしい。

「まず、リーフィアさんはまだ死んでない、
限りなく植物に近い状態で生きている。
でも、今、生きたまま魂だけが体から出て、生霊となっていた。
とても珍しいことだけどね」

「えっ、じゃあ、私はまだ……」

「でもね、魂が長い間体から離れていたら、
本当に死んでしまう。
それに、生き返るかはわからない」

「そんな……」

「まあ、大丈夫だろうけどね」

何だ脅かすなよ、とは思うが、やはり心配だ。

「太陽が昇って、光合成が始まれば、
きっと復活できる……はずだから」

「わかったよ」

私は白んでいく山の端を見つめながら今か今かと待つ。

「そういえば、なんでブラッキーは私の体をここまで運んだの」

「森の中だと、光があまり強くないから、
それにあまり他人に見られるのも良く無い」

「なるほど」

そしてついに、太陽が少しずつ差す。
山に多少さえぎられる部分があるため、朝焼けは起こらず、
白いひかりが辺りを照らし始める。
暖かな光が、私の体を包み、緑の葉が映える。

「じゃあ、リーフィアさん、そろそろ戻ってみてください」

ヨマワルが言うには、
そのまま体に潜り込むようにすればいいようだ。
教えられたとおり、私は自分の体に正対し、
そっと触れようとする。
しかし、触れることはかなわず、
感触ないまま魂は体の中に吸い込まれていった。



目を覚ますと、太陽が高く昇っていた。

「リーフィア……」

「ブラッキー、おはよう」

「おはようじゃあないだろ、このバカ」

きつく言われるが、私のしたことからいえば当然と言えば当然だ。

「あれ、ヨマワルは……?」

「昼になったからもう見えないだろうな、
まあ、大方どこかの洞窟とかにいるのだろう」

そういうと、ブラッキーは大きくため息をつく。

「ご、ごめん……その、勝手なことして」

「いいよ別に、気にするな」

「うん……」

そっけないが、そこがまたいい。

「ブラッキー、助けてくれてありがとう」

「あ、いや、別に、好きな奴助けるのは普通だろ」

「そっか……えっ」

「あ、いや、友達としてだ、うん」

そう返すが、若干頬を染めている時点でとても分かりやすい。
むしろ、あからさまな気がしてならない。

「ねえ、本当にそれだけ?」

「あ、ああ」

つまり、口を滑らせたふりで私の出方を待つという事なのか。
それならば、私から、告白してもいいのかな。
それに、告白するためにずっと、追いかけてきた。
これって、結構なチャンスなのではないだろうか。
しばらく考えたが、決断をする。

「あ、あのさ、ブラッキー、ずっと言いたかったことがあるの」

「なんだ?」

とぼけている様だが、ブラッキーは少し緊張している。
私も少し、一言を出すのに緊張する。

「私、ブラッキーの事が好きです」

長い間言いたかった言葉。
ブラッキーの、一番望んでいたであろう言葉。

「……こんな奴でもか、それに、
俺とリーフィアじゃあ、住む世界が違う」

嬉しそうなのをかくしつつ、尋ねてくる。
確かにそれを解決しなければ、これから先は暗い。
私は少し詰まるが、すぐに返す。

「確かにそう、ちゃんと私は太陽の下で生きていかなきゃいけない。
でも、太陽の下で寝れば問題ないでしょ」

これにはブラッキーも反論できかねないようで、
目が宙を泳いでいた。
実際、そういう草タイプが居ることは
聞いたことが在った気がする。

「わかった、リーフィアにはもう知られたが、
俺もリーフィアが好きだ。
こんな奴で良いなら、これから、よろしく頼む」

返事もし終わらないうちに、私はブラッキーの背に飛びつく。

「っと、いきなり飛びつくな」

「いいじゃない、さてと、一緒に寝ようよ」

「ああ、いいよ」

そのまま、私とブラッキーは並んで転がる。
しばらく後、ブラッキーは寝息を立て始めた。
私も夜に備えて目を閉じる。
太陽の下で、頭の葉は風にそよぎながら命を支えている。



そんなわけで、書かせていただきました。
ここで書くのは二作目になりますね
閲覧ありがとうございました。





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Last-modified: 2015-02-13 (金) 12:55:27
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