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Hybrid ~八つの石板~ 4

/Hybrid ~八つの石板~ 4

 一部グロイ表現があります。気を付けてください!
 ……一応、忠告しときますよ? by簾桜


 白く輝く冷気が辺りを覆う。一面が氷と雪に覆われ、まるで雪山のように感じる。近くに流れる熱砂すら完全に凍結し、その場を異様な雰囲気にさせる。まるでダンジョンのその部分だけ氷の世界になってしまったかのようだった。
 そんな世界の中心にいるのは、ドラゴンタイプのポケモン。両手の部分が顔となり、俗に言う三つ首。龍と悪というタイプを持つサザンドラと呼ばれるポケモンは、しかし強力な冷気によって体の殆どを氷漬けにされてしまっていた。
 辛うじて真ん中の首だけを伸ばし荒い息をする中で近づくのは、この氷の世界の支配者たるグレイシア。青白いその体と幼いながらも美しいと思わせるその姿は、雪が舞うこの空間ではとても似合っていた。

「くそがぁ……俺様が、こんな胸なしの小娘に捕まっちまうなんてぇ!」
「タイプ相性が悪かっただけよ。後……」

 ビキっと小娘、グレイシアの顔が怒りで歪む。言ってはならない事を言ってしまったサザンドラはヒィっと恐怖におののくが時すでに遅し。後の祭り。
 グレイシアの口元に集まる氷の力。それはだんだんと大きくなり、やがて一つの大きな礫となる。まるでポチエナ一匹分のかなり大きな塊をサザンドラの脳天にロックオン。
 やめてぇと叫ぶ暇なく、塊は脳天へと直撃、ゴヅンと嫌な音と共にほぼ全身氷漬けの三つ首龍はそのまま冥府の一歩手前へと意識をブッ飛ばされたのだった。
 加害者であるグレイシア……アイスはポシェットから紙を取り出す。指名手配書らしき紙をよく確認し、種族と特徴などをよく確認する。氷漬けにしている時点でもし間違ってたらどうするんだよというツッコミもあるかもだがこの際それは一切無視する。
 確認を終えたアイスはうんっと頷く。どうやら間違いはなかったらしい。

「連続殺傷犯“噛み裂きサザンドラ”。一つ星ランクの犯罪者と……流石になかなか手ごわかったなぁ」

 聞くだけでゾッとするような指名手配名をさも日常的なように軽い口調で語る氷の少女。彼女の実力がよく分かるシーンである。




 深紅の景色。まるで戦争でもあったかのように血が散乱し、異様な雰囲気が自我をも蝕む気にさせる。何匹ものコアルヒー達から流れる真っ赤な液体は、まるでこの世の終わりかと錯覚しそうになるほど。
 純白の羽を持つ白鳥の容姿のスワンナは、しかしその羽を真っ赤に染め上げて逃げ回っていた。最初に言っておこう、彼は一般のポケモンではない。彼は普通の実力程しかない探検隊などから恐れられている犯罪者である。
 現在地面にころがっているコアルヒー達は、彼の部下に当たる。様々な町を彼らは奇襲し、強奪し、悪の限りを尽くした。生きる為に、生き抜くために。彼らに残された道は強盗という道しかなかったのだ。
 だがそれは、たった一匹のポケモンによって終わりを迎えていた。何を間違えたのか、スワンナには分からない。何故こんな事になってしまったのか、考えられない。それほどまでにスワンナは焦っていた。
 目の前で部下たちは血祭りにあげられた。正しく一瞬で。何をされたのかも分からない程の早業だった。そしてその牙は、自分に向けられている事を直感で悟った。
 逃げる、逃げる、逃げる。一体どれほどの長い時間を逃げたのかも分からない。もう翼は石のように重く硬くなっている。このままではいずれ……しかし彼は逃げ続ける。どれだけそれが無駄な事なのかをすでに気付いているが、それでも彼には逃げる事しかできなかった。
 だが……終焉は突然に訪れた。突如周りを炎で覆われる。水タイプである彼でも一歩間違えれば一瞬でウェルダンにされかねないその火力に、彼の目は絶望を写していた。

「つーかまーえたー……」

 背後から聞こえる声。スワンナの背筋は一気に凍える。ジリ、ジリと聞こえる足音に、振り返る勇気がわかない。
 羽を焦がす獄炎が、ジワリジワリと迫ってくる。得意の水技で消そうとするがすぐに蒸発してしまう。どれほどの実力差があればこれほどの圧倒的な差が生まれるのだろうと考えた瞬間、背後の相手のジトッとした声が耳に届く。

「さぁ、フィナーレだ」

 瞬間、炎の渦の火力が一気に上がった。体が焼ける感覚に、スワンナは痛みで吠える。だがその声さえも、炎はかき消していく。
 体が焼ける痛みに意識を持ってかれて、スワンナの意識は一瞬でかき消えていく―――。


「目を覚ましてください、親分、親分っ!!!」

 コアルヒー達の悲痛な声が響く。軽く当て身を食らわした程度のダメージしかない彼らの視線の先にあるのは彼らの親方であるスワンナと、金色の毛を有した九本尾の狐。……そう、今までの語りはスワンナの夢の中の体験だったのだ。……少し、いやかなりエグい。
 神通力による見えない手で鷲づかみにされたスワンナは狐の前へと連れて込まれ、一瞬だけの間。彼らの目があった瞬間スワンナは体をだらんとさせてしまった事しかコアルヒー達には分からなかった。
 意識の奥の奥まで催眠術にて入りこむことによる悪夢。本来ダークライのような伝説のポケモンぐらいしかできないであろう芸当を、現在目の前にいる九本尾の狐はやってのけているのだ。数匹はいるコアルヒー達は親分であるスワンナを助けようと立ち上がろうとするが、どうしても体が言う事を聞いてくれない。それほどまでに見事に封じられてしまったのだった。

「あぁ……やめ、ろぉぉぉ……」
「わりぃなぁ、ちゃんと回復出来るくらいには手加減してやるから、さ」

 悲痛な声のスワンナに対する、狐のどこかトーンの違うような明るい声。紫色の目は随時彼に念を送っている証。ゆらゆらと踊る九本の尾は幻想的で、しかし行われている事を考えると見とれてしまうのはどうかと考えさせられる。
 やがてガクリとスワンナの首が垂れる。それは正しく彼の心が折れた瞬間だった。コアルヒー達の悲痛な視線を浴びる中狐……ブレイズは彼を地面に下ろして、、九本あるうちの一本の尾で紙を持ち、顔の方へと持ってくる。

「強盗犯スワンナ一味、二つ星ランク……ねぇ。悪いけど君たちにも来てもらうよ? 親分さんは、あいにくこの状況だから」

 はにかむブレイズの、だがしかしそのけた違いの実力をまざまざと見せつけられたコアルヒー達は、潔く頭を垂れるのだった。



 風が吹きすさぶ谷間を、二つの影が交錯する。一匹はウォーグル、勇猛ポケモンといわれその発達した爪に捕まったら最後、地面にたたきつけられるフリーフォールによって一瞬であの世に誘われるであろうワシのようなポケモンである。
 そしてもう片方の影は、カベキックの要領で何度も谷を駆け上がる。飛行ポケモンではない為高所を自在に飛べるウォーグルが圧倒的に有利な筈なのだが、しかし苦戦をしているのはウォーグルのほうであった。
 ウォーグルが風をうまく利用し一気に近づこうとすると、影は一瞬でかき消えてしまう。急ブレーキをかけるウォーグルの背後に現れたのは影……黒狐、ゾロアークであった。
 背中を大きく切り裂かれたウォーグルはそのまま谷底へと錐揉みしながら落下していく。ゾロアークもまた壁キックの要領でゆっくりと下へ降りていく。
 どうやら谷底には川が流れていたらしく、ウォーグルは川に落ち浮いている状態であった。ゆっくりと降りてきたゾロアーク……ポトフは崖に張り付いた状態で鬣をガサガサと探り、手配書を取りだした。容姿を確認した後に川へとダイブするのだった。
 右肩にウォーグルを担いだ状態で川から上がるポトフは、全身を震わせて水気を飛ばす。火などは出せない為それぐらいしかできないが、それでもそれなりにはマシになったようだ。

「全く手を焼かせおって……早く報告に戻らないとな」

 担ぎなおし、さっさと戻るポトフ。川には先程彼女が見ていた手配書が浮かんでいた。
 ウォーグルの写真下には“暴れん坊ウォーグル”という名が。そしてその横には星が三つほど輝いていた。


「ビビ、ホシランクのハンザイシャヲイチドニサンニンモツカマエテクレルダナンテ。ハイブリッドサンはホントウニオツヨイデスネェー! コレガサンニンブンノショウキンデス」
「まぁリーダー達の実力は異常ですから。あ、有難うございます」

 青空が広がるナナイロタウン外れにて行われる警察への犯罪者の受け渡し。レアコイル巡査部長は嬉しそうにズッシリと重たそうな袋を渡してくれる。常時スカイフォルムのシェイミ……パフュームは袋を受け取った後に中に入っているポケ*1を確認した後、ニッコリと微笑んだ。
 背には何故か付いてきたプリズムが乗っており、袋の中を覗き見して少し驚いた顔をする。物珍しいのか辺りや捕まったお尋ね者をキョロキョロとしっぱなしである。

「トコロデセニイルソノコハイッタイ?」
「訳ありで今うちで預かっているんですけど、何故か僕に懐いちゃって……」
「ソウデスカ……ビビ、デハワレワレハコレデシツレイシマス」

 傍ではコイル達が捕まった犯人達を連行している所だった。とはいえ氷漬け、精神崩壊、大怪我という状態の犯人達はまず先に病院へと搬送される事になるらしい。やりすぎだろ……っと突っ込みたい所であったがここでレアコイル巡査部長はとくに何も言わないのであった。何故なのかはまた後で語ろう。
 戦意を喪失したコアルヒー数匹を連れコイル達は早々と去っていく。レアコイルもお辞儀、に見えなくもないぐらいに体を前に傾けてコイル達の後を追うのだった。
 またねーっとプリズムは手をふりつつ見送り、彼らもまた帰路につく。お尋ね者を連行してきたアイス達は先にアジトに帰っているらしいが約一名程そのまま町でナンパでもしているのではないかと心配になる。まぁちゃんと首に縄をつけられた状態で引っ張られていったので多分大丈夫であろう。……彼の命そのものは安全とは言えないが。
 賞金が入った袋をプリズムに預けて、パフュ―ムはゆっくりと風に乗る。とたんにふわりと宙に浮き、だんだんと高度を上げ始め、晴れ渡った空に溶け込んでいく。既に飛ぶ事に慣れているプリズムは少し楽しそうに離れていく地面を見て、キャッキャとはしゃいでいた。

「ねぇねぇ兄ちゃん、少ししつもーん。星ランクって、どういうものなの? あのはんにんさんと何かかんけーあるの?」
「ん? そうだなーまずはお尋ね者を捕まえるまでのシステムについて説明しないとね」

 ではそこから先はこちらで引き受けましょう。便利屋は主に依頼人から直接依頼を受けて仕事をこなすのに対し探検隊や救助隊は主に最寄りの掲示板やギルドを通じて依頼された仕事をこなすのが普通である。無論両者ともに逆になる事もあり、直接依頼を受ける事も探検隊などもあるし、便利屋も普段はお尋ね者などを警察の掲示板から受け取ってこなすことだってある。
 今回便利屋ハイブリッドもカクレオンの店近くにある掲示板に張ってあった指名手配書を頼りに三匹も捕まえたのだが、ここからが本題。依頼やお尋ね者には難しさの目安であるランクというものが設けられている。
 一番低いランクでE。順にD、C、B、A、Sと高くなっているのだが、無論それ以上も存在し、それが星ランクと呼ばれる物である。
 星が一つ増えるごとに危険度が増し、二桁ともなれば相当危険な連中と取れるのだ。無論そこまで危険な犯罪者など滅多にいないが、ごく少数とは言え存在する事は確かである。
 故に星ランクの犯罪者は大半がデッドオアアライブ*2。流石に殺してしまったら色々と面倒な為正確に言うと違うのだが、面倒なのでこれで。
 ちなみに探検隊や救助隊にもランクが存在する。一番低いノーマルから始まり、ブロンズ、シルバー、ゴールドと続き、さらに上のランクも存在する。

「ちなみに便利屋にはランク制度はないんだ。ギルドとかの大きな組織に属さない個人営業が大半だから、あまり意味をなさないんだ」
「えーそうなのー? でも前にきょーかいみたいな物があるっていってなかったっけ?」

 便利屋協会はあくまでディオブルム側の排除やフィアリオン側を管理する事が目的の為、便利屋それぞれに関与する事は殆どない。便利屋は依頼者との信用で成り立っており、信用される顧客が多ければ多いほど、その便利屋は実力が高いという目安となる、とパフュームは説明する。
 ハイブリッドは主にレアスからの依頼を多く扱っているが、普段はもっと普通の人からの依頼も当然来る。そういうお話を作者が書いていないだけである。仕事放棄という訳だ。
 そっかーと呑気な返事をするプリズムであったが、何かを考え込むようにうーんと唸ってしまう。どうしたのかとパフュームが尋ねるも、彼はなんでもなーいと言うだけであった。
 そんな事を話していると、あっという間にアジトへと戻って来たようだった。少しずつ高度を下げていくと、アジトの入口にて青い顔をしたブレイズが放置されているのを発見した。相変わらずの扱いの悪さにパフュームは思わず同情してしまう。

「おーいおっちゃーん、おーきーろー!」

 やや高めの高度から、プリズムはぴょんととび下りてブレイズの腹に着地する。グフゥと大ダメージを受けるブレイズに対し、上手に着地したプリズムはビシッと決めポーズを決めて満面の表情。
 止めを食らわされたブレイズはガクっと力尽きた模様。哀れな狐にパフュームは無言で胸に十字をきる動作をするのだった。
 満月島での事件から既に半月。もうすぐ夏がやってくるであろうという季節に入っていたが、石板の唯一の手がかりであるレアスからの連絡は途絶えたままであった。




「……剛腕ガブリアス、か」

 カクレオンが構える店の前にあるお尋ね者掲示板を、ワッフルはしみじみといった様子で眺めていた。普段あまり姿を見せない客にカクレオンも一体どうしたのかと不思議顔であったが、ワッフルはそんなことなど露知らずと言った感じで手配書を穴が開くんじゃないかと凝視している。
 主に不思議玉などを扱っている紫カクレオンが声をかけるも、まったく聞こえていないらしくワッフルは手配書を凝視したままだった。

「ちょっと、お客さん!」
「ひゃふぅ!? あ、御免なさい……」

 近づいて大声をあげて、やっとワッフルは気がついたらしく情けない声をあげた。やれやれと言った表情の紫カクレオンだったが、ワッフルが見ていた手配書をみ、深くため息をついたのだった。
 “剛腕ガブリアス”。九つ星ランクの犯罪者で、もう何年もずっと逃げ続けているとも言われているお尋ね者である。その実力は探検隊で言うマスターランク*3にも劣らないとも噂されている程の実力者である。ここ数年は音沙汰がないが、未だにこの辺では恐れられているのは語らずとも分かるであろう。
 元々ある怪盗とコンビを組んでいたらしいという噂もあるが、真実は不明。そんな大物を食い入るように見ていたワッフルにカクレオンは少し興味を持っていたのだが……本人は苦笑しつつすまなそうに謝るのだった。

「便利屋のあなたが手配書を見るのは別段おかしくはないですが……随分長く見ていたようですので。何か因縁でも?」
「そう言う訳でも……ないんだけどねぇ」

 少し悲しそうに言い淀む。そのまま苦しい笑顔をしているワッフルは、しかし目は若干泳いでいるようだった。
 クエスチョンマークを浮かべる紫カクレオンではあったが、今日は所用で本部に行っている相棒のカクレオンがいないのでいつまでも店をほったらかすわけにもいかずそのまま仕事に戻ろうとしたその時、不意に声をかけられた。

「あのぉ……」
「ハイ、なんでしょ――って、あら?」

 振り返るも、声はすれども姿がみえず。キョロキョロと探すもやっぱりいない。頭にクエスチョンマークを再び浮かべる紫カクレオンであったが、ワッフルが下を向けとジェスチャーする。下を向くとまるで星のようなシルエットのピィというポケモンの姿があった。
 小さすぎて見えなかったのかと心の中で納得したカクレオンは、ニッコリと営業スマイルを浮かべるのだった。

「どうしたんだいお嬢ちゃん? 買い物にきたのかい?」

 そう聞くも、ピィはフルフルと首(体?)を横に振る。じゃあどうしたんだいと聞くも、引っ込み思案なのかなかなか語ろうとしない。
 接客に慣れているカクレオンは言いだすまで根気よく待ってあげる。やがてやっと絞りだしたような声をだすのだった。

「――お仕事を、頼みたいの……」




 ここは大陸から遠く離れた名も無き島にあるカクレオン同盟。ここでもあるポケモンがが、ある意味命の危機に瀕していた。
 まるで塔のように積み上がった書類を抱えたカクレオンが次々と社長室に入り一角に書類を置いていく。レアスが座っている椅子の周りにはそれこそ山のように積み上がった書類が辺り一面に積み上がっており、レアスはその書類一枚一枚に判子を素早くペッタンペッタンと押し続けていた。
 ここ半月、正確に言うとそれ以上前からこのような作業を続けているレアスの目の周りはクマになっており、もう何日も眠ってないゾンビになったかのように疲れ果てた顔をしている。そりゃこんな終わりの見えない単調作業やらされていたらそうなっちゃうよ。
 そんな事などお構いなしに、カクレオン達は書類の山を抱えてまた部屋へと入ってくる。

「社長、こちらが今月になって発生した盗難の被害状況を纏めたものです」
「各地にいるカクレオンから納品してほしい品物のリストを持ってきました!」
「お客さまからの苦情などを纏めた物を持ってきました! 目を通してください」
「うぐぅ、そこに置いといてよ……」

 ぺったらぺったらスピードを上げ判子を押しまくるレアスをあざ笑うかのようにさらに書類が運ばれてくる。

「前回会議で話された事を纏めた物に目を通してください!」
「キルリア商会からの書類を持ってきました。まだまだありますので今から持ってきます」
「専用道具も売り出してほしいと言う苦情が山のように来ました! 対策お願いします!」
「レアス社長、一週間分のスケジュールを纏めましたのでご確認してください!」
「オレンの実が品薄状態です! 生産側にもかけあいましたがすぐには無理との事です!」
「あぐぅぅ、置いといて……」

 ベッタンベッタンベッタンベッタンとさらにスピードを上げるがさらにカクレオン達が流れ込んでくる。

「ダンジョン化が進んだ土地がさらに増えました! 資料を纏めましたのでお読みください!」
「各地にいるカクレオン達から有休をもらいたいと言う苦情が殺到しております!」
「社長、今度の社員旅行についてお知らせしたい事が」
「キルリア商会から追加で納品してほしいと言う連絡が」
「石板について調査員からの報告が」
「各地からゲインさんについての情報を纏めた書類が上がっております!」
「料金の値上げを反対する声が各地から上がっております」
「社長、ぜひお目にとおしてほしい事が――――


 バァァァァン!!!!


 突如机に穴が開くんじゃないかと強力に判子を叩きつけたレアス。突然の事に全員があっけにとられていると蒼い社長はゆらぁりと立ち上がる。背後に漂うどす黒いオーラは何やらやけに殺気だっていた。

「お~ま~え~ら~……ちっとは僕にもぉぉぉ」

 ゴゴゴゴゴゴという音と共に凄まじいエネルギーがレアスの体内に蓄積されていく。危険を感じ取ったカクレオン達は書類をかなぐり捨てて我先にと逃げ出していく。
 体全てが光りだすほどエネルギーを溜めたレアスは破壊のエネルギーへと変換していく。怒りと殺意とその他諸々を込めたそれは最早何時爆発してもおかしくはない。そして――!

「やすませろやぁぁぁぁ!!!!!」









 後日、大陸中にばらまかれた号外にはこう記されていた。

『遠く離れた無人島が突如大爆発! 現地に飛んだ調査員によると島一つが丸々なくなっており、何があったのかを現在捜索中との事。
また島があった場所付近の海にて焼け焦げた紙や机のような残骸が漂っていたことから、島にポケモンが生息いたのではという憶測も飛び交っている。今後も随時調査すると調査団は語っている』



「……という事があって、私を含めた全員が命からがら逃げ出し何とか一命を取り留めたのです」
『いや、そりゃあんたらが悪い。全体的に』

 時は戻って翌日。ハイブリッドアジトにて若干黒こげのカクレオンは全員から突っ込まれシュンとなってしまうのだった。
 ちなみにアイスはテーブル下にて疲れと初夏の暑さによって垂れグレイシアのようぐでぇーっとなっていた。氷タイプは必然的に暑さに弱いのだが、まだあまり気温があがっていないだろうこの時期にこの状態では先が思いやられるというもの。
 プリズムはへたっているアイスに乗ってきゃっきゃと楽しそうに右側の長いヒラヒラを引っ張って遊んでいる。普段ならうっとうしいわと怒っている所だがそんな元気もないのでやられ放題という何だか妙に和む光景である。
 残り四匹はあまり気乗りしない中渋々とカクレオンの話を聞いていた。ブレイズに至っては欠伸を挟みつつまったく興味なさそうといった感じだった。

「で、新しい会社を作るのを手伝ってほしいとか、そういった依頼でしょうか?」
「いえ、それは我々だけでも大丈夫ですパフュームさん。ただ……この混乱に乗じ社長がそのまま行方知れずとなって」
「それを探してほしいと。わざわざ探さなくてもあのシャチョーならだいじょうぶっしょ~」

 ブレイズが愚痴る理由も一理ある。島一つを消し去るほどの実力を持つレアスがそう簡単に根をあげる姿は確かに想像できない。下手な山賊なんかだと逆に有り金すべてをひったくってしまうかもしれない。
 他のメンバーも渋い顔を一つして、うんうんと頷きあう。仮にも伝説と呼ばれるマナフィであるレアスならある程度の物事なら大抵切り抜けて行きそうである。
 だがカクレオンはフルフルと首を横に振り、否定の意思を見せた。そしてとても言いにくそうに口を開く。


「おそらく社長は……ここから西の方角へと行かれたと思われます」


 その一言に、場の空気は一瞬で凍結した。パフュームとポトフは全身の毛を逆立て驚き、ワッフルは絶句したように口をあんぐり開け硬直する。
 ブレイズに至っては九本もある尾も含めた全身がビシッと固まり、目は飛び出すかの如く大きく開かれた。アイスとプリズムは意味が分からず全員の反応を確かめキョトンと首を傾ける。西の方角というだけで何故そのように驚くのか、全くわからないと言った顔だ。

「社長はもしも西の方角へと行っている時に用があるのならば、ブレイズさんに頼めと。――お願いできますか?」

 全員の視線がブレイズに集まる。奥歯の苦虫を噛み潰したような渋顔をするブレイズだったが、何も言わず重い足取りでアジトを後にした。
 アイスとプリズムは依然ポカンとした顔をしたままで、何が何やら分かっていない様子。
 それを確認してかせずか。おもむろにパフュームは地図を取りだしてアイスの前へと広げた。プリズムはアイスの頭へと移動し覗き込むように地図を見る。幼い彼が見ても若干よく分からないような記号の羅列に見えなくもないが、何となく大陸全部を写したものだと言うのは分かるだろう。
 事細かに点在する様々なダンジョンが書かれ、そこに生息するポケモンの大体の種類。約十六対九の割合*4の大陸の周りを白い線が覆い、唯一の切れ目である大陸南東側にポツリとある港町やおよそ中央にある「rainbow」と書かれた町。西側端付近にある大きなどくろマーク。探検初心者でも分かりやすく描かれている地図にアイスは少なからず舌を巻くのだった。

「これは僕が皆さんの探検結果を元に作成した地図です。見て分かるようにこの大陸は白い線……高い山々に囲まれて、空路以外だと東側にある港以外に出入りする場所がありません。ちなみにプリズム君がいた雷鳴ヶ原は北北西の……山脈の近くぐらいにあるんだ。
で、だけどー。ナナイロタウンを境に西と東で難易度の高い低いが分かれていて、西に行けばいくほど危険なダンジョンが多く、東側は比較的安全な場所が目立ちますよね?
その為かは定かではないですけど、次第に凶悪な犯罪者達が西側に集まりだしてくるようになったんです。いつしかそんな人たちが集まって出来たのは――」

 パフュームはゆっくりと西側にあるドクロマークを指さし、重い口を開いた。

「暗黒街……通称、デスタウン」

 始めて聞く単語に、アイスもプリズムもゴクリと唾を飲み込んだ。刻々と時間が過ぎていくような感覚が全員を包む中、ワッフルは何かを思い出したかのようにあっと声を漏らした。

「すっかり忘れてた。悪いけどあたし行かなきゃならない所があるの」
「あれ、珍しいですね。普段は黙っていなくなる感じなのに」
「あたしってそんなにミステリアスじゃないんだけどねパフュームちゃん。昨日可愛いお客様に頼まれて、これからトタスの森に行くの」
「とたすのもり??」

 プリズムがオウム返しのように聞き返す。パフュームの説明によるとトタスの森はここから東に位置する港近くにある小さな森で、かけだしの探検隊などがよく修業をする事が多いと言うダンジョンなのだそうだ。
 昨日ワッフルはピィ――名前はキララと言うらしいが、その森出身の乱暴者に大切な物を奪われてしまったのでそれを取り返してほしいと頼まれたそうだ。よほど大切な物なのか自分も行くと言ってきかないので今日の昼ごろに町で待ち合わせをし向かうとの事。
 ふーんと若干興味なさそう、と言うより無気力になりかけてるアイスと下級ダンジョンとはいえ気を付けろとポトフは先輩らしく注意し、じゃあ回復系の道具を持ってきますねとパフュームは二階へと上がっていった。
 だがアイスにまたがるプリズムは何か迷っているのかもじもじとしている。何を迷っているのか分からないが、すぐに意を決したのかピョンと飛び降りてトコトコとワッフルへと走り寄っていく。

「ねぇ、その……僕も行っていいかな?」

 思わず全員がえ!? と言うようなリアクションを取ってしまった。あまりに唐突な事に状況が把握しきれない中、プリズムは言いにくそうに続ける。

「その、暫くここにいて皆の仕事をする姿を見てきて、僕も一緒に探検したいなぁなんて思って……。危険じゃない所だったら、僕がいても大丈夫かなって、思って……どう、かな?」
「しかし、危険なのでは? 禁断のダンジョン出身とはいえ子供なのに変わりはしないのですし……」

 少年の純粋な願いに、ワッフルは若干悩んでしまう。確かにカクレオンの言う通り危険性が少ないダンジョンとは言え、体力が元々少ない彼女が幼子二匹を守りながら戦うのは少々危険かもしれなかった。
 が、彼女はすぐにその考えを捨てたのだった。

「危険かもしれないけど、それでもいいなら。構わないでしょリーダー?」
「あー、いいんじゃなーい? とりあえず危険だったらすぐに逃げてよー……」

 気の抜けた答えに、思わず全員肩を落としてしまうのだった。


 数十分後、ワッフル、プリズムは大量の回復道具と共にナナイロタウンへと来ていた。道具はカクレオンが「プリズムさんが無事に戻ってくるよう持っていくべきです!」と半ば強引に持たせてくれた物を厳選した物だ。ちなみにこの道具はすべて商品であるが売れ残りだから大丈夫という話である。本当かよと言う突っ込みは割愛する。
 待ち合わせ場所である教会前へと急ぐと経典を持ったスフレがキララと一緒に談笑してる所だった。

「遅れてごめんねぇキララちゃん。スフレちゃんはどうしてここに?」
「いえ、偶然ここで会ったのでお話を。でもどうしてここにプリズム君が?」

 ワッフルは今までの事を割愛しながら説明する。キララも彼が同行する事を許可し、二匹は軽く会釈をするだけで話す事はなかった。年が近いのに……いや、そのせいで気恥ずかしかったと言うのもあるかもしれない。
 三匹はスフレに別れを告げ、ゆっくりと目的地であるトタスの森へと歩いて行くのだった。


 大陸を西へ西へと進むと、次第に治安は悪くなっていく。強盗や殺傷、喧嘩などふっかけられるなど当たり前になっていき、道ばたには何度も強姦されてしまい心を砕かれてしまった雌性が呻き声を発していたり血まみれの腐敗が進んだ死体などが転がっているという光景が次第に珍しい光景とはならなくなるのだった。
 次第に道も荒れていく。森の木々は枯れかけていき、道は砂利や岩が転がっていくのが目立ち、その色はまるで乾いた血の如く赤黒く変色している道が延々と続いていく。
 途中の物陰には今まさにお楽しみの最中であったマスキッパとチラーミィもいた。蔓の鞭によってチラーミィを捕捉したマスキッパは無数の蔓で彼女の性体感を的確に刺激していた。所謂強姦と呼ばれるものだ。既に何時間も犯されてしまったからかチラーミィの目には光が宿っておらず心を屈されたのが簡単に分かった。
 そんな中を真っ白な毛並みをしたキュウコン……ブレイズは黙々と、淡々と、全てを受け流すが如く冷徹な顔のまま進んで行く。希に分をわきまえないチンピラ達に襲われたりもしたが皆アイアンテールで一蹴していく。時には催眠術なども使うこともあったが、そんな強敵に出会うのは稀であった。
 一日、二日とゆっくり――というよりむしろ重い足取りといったペースで進み、三日目の真夜中に一つの集落に到着した。

「……もう、来ることはないと思ってたけどな。レアスの野郎、何だってわざわざこんな所に……」

 街、と呼ぶのも嘆かわしいと思うほどに荒れた土地。掘っ立て小屋のような木材を急ごしらえで組み合わせたような家々。道ばたには度数の高い木の実酒を飲み過ぎたらしい中年のゴーリキーやズルズキンがそこかしこに転がっている。
 皆薄汚れ、古傷や生傷が目立ち、中には片腕を無くした者もいてちゃんとした体をした者は殆どいなかった。……あまりにむごいこの光景であったが、ブレイズはしかしこの光景にどこか安堵している気持ちがほんの少しだけあった。
 首を傾けゴキッと骨を鳴らし、ブレイズはゆっくりと道を進んでいく。行けども行けども生気が抜けたポケモン達が転がっているだけであり、いっこうに話を聞けるようなポケモンに出会えなかった。
 ブレイズは数十分徘徊し、チッと舌打ちを一つ。やがてため息をはいた後ある場所へと歩を進めた。やがて辿り着いたのは廃墟のような家が目立つ中、何故か地下へと続く階段と一つの看板であった。
『BAR ナイチンゲール』と書かれた看板を読みもせずブレイズはその階段を下りていき、やがて少し大きめの丸いテーブルが左右に二個あるぐらいの広いスペースへと出た。
 店内には誰もおらず、奥のカウンターに少しくすんだ色をしたチラチーノが一匹いるだけ。ブレイズは何も言わずにチラチーノの前に座る。チラチーノはブレイズを一目見、とても驚いた顔をする。

「随分と懐かしいお客様が来たじゃない。かれこれ四年ぶり……かしら?」
「はっ、変わらないなぁあんたは。俺様だって来たくて来た訳じゃねーよ」

 苦い顔のブレイズをほっときチラチーノはカクテルを作り始めた。差し出されたグラスに注がれた液体の色は、まるで吸血鬼が好んで飲みそうな程に生々しい見事なワインレッドであった。

「B・ルージュ。あなたが好んで飲んでいたカクテル。懐かしいでしょ?」
「そうだな。だがあいにく過去は断ち切らされてしまってね。もう、飲みたいとは思わない」
「あら残念。だけど折角作ったんだから飲みなさいな。おごりで構わないから」

 ニコリと、だがそれは普通の笑顔ではなくどこか影があるような、そんな笑顔。ブレイズの顔は変化することなく、ただ黙って尻尾でグラスを握り、ゆっくりとカクテルを口に含んだ。
 舌で転がすようにゆったりと飲み込み、そしてすぐにグラスを置いた。悲しそうにも見えるその姿は、普段の彼を見知っている者が見れば間違いなく目を疑うだろう。
 チラチーノは憂いのある笑顔のままグラスを下げる。ここまでの会話で分かる事はこの二匹が顔なじみであることとブレイズはかつてこの町に滞在していたことがあると言うこと。一体ブレイズの過去に何があったのだろうか?

「で、どうしてここに来たのかしら。さしずめ情報収集といったところかしら?」
「気付いているのならさっさと聞け。例の蒼い奴がこの付近にいるはずなんだ。何か知らないか?」
「残念だけどここのところ売り上げはサッパリでね。そういった噂をするお客もいないのよ」
「客がいないのは昔からだろ。どうせ裏ルートのネタをたんまり抱え込んでるのは分かっているんだ、金なら払うからさっさと」
「分かった分かった。まぁネタと言ってもさっき偶然みただけだからただで教えてあげる」

 やれやれといった様子のチラチーノを、ブレイズはチッと舌打ちする。そんな様子をクスリと笑うようにみている余裕があるのは流石はバーのママと言った所なのだろうか。

「その子なら確かついさっきここに来てね。賭博をするとかいって出て行ったわ」
「……それ偶然見たってレベルじゃねーだろうが。ったく……邪魔したな」
「待って、ぶら――」

 チラチーノが言いかけた言葉に、ブレイズはギッと睨みつけた。この町に来てから始めて表情がかわり……憤怒の顔をしていた。
 思わずチラチーノは口をつぐむ。かつての彼を知る彼女だからこそ、口を噤まざるおえなかった。まるでアブソル種の切れ味鋭い鎌をも思わせるような殺気をまともに受けた彼女は知らず知らずのうちに身震いを覚える。

「その名前は既に捨てた。無理矢理であったとはいえ、その名前を呼ぶことは許さない。例えあんたでも……」

 そう吐き捨て、ブレイズはその場を後にした。残されたチラチーノは思わず安堵の息を漏らす。
 ふぅ、とゆっくり先程下げたグラスをカウンターに置く。B・ルージュと呼ばれるカクテルをゆっくりと眺め、小さく呟いた。

「あなたの名前をもらって作ったこのカクテル……もう、頼む人なんていないのよ? ――ブラッド」



 更に暗く落ち込んだ様に歩くブレイズであったが、何とか賭博場へと到着する。賭博場とはいえ道にどっかりと長いすを並べて作ったような急ごしらえの物である為賭博場とはいえないのだが。
 そこに、複数の人だかりが出来ていた。少しのぞき込んでみると、ちょうど探していた人物の分かりやすい姿が見えた。

「さぁ、どうしたんだい? 早く勝負を始めようじゃないか」

 ニタニタ顔が顔に張り付き、そこら辺のチンピラよりもよっぽど悪役が似合う奴。レアス社長は五枚のトランプを持ってドヤ顔で勝負を仕掛けていた。
 相手であるミミロップの雄はギチギチと歯を噛みしめつつ三枚のカードを捨て三枚カードを引く。どうやらポーカーゲーム*5をしているようだ。レアスもまた二枚カードを捨て同枚数カードを引く。
 ミミロップはぐっと顔を歪ませて手札をかなぐり捨てる。彼の手札には三のカードが二枚あり、それ以外は七、一、Kとバラバラ。ワンペア。
 レアスはニッコリと笑ってゆっくり手札を見せる。五のカードが三枚、スリーカードであった。

「ちくしょぉぉぉぉ!! また俺様の負けかよ!!」
「残念だねー惜しかったねー頑張ってたんだけどねぇー♪」
「くっそ、折角二連勝したのに二連敗してたんじゃいみねーじゃね―かよ……イカサマさえ使えれば」
「そんな事したら僕は君から何千万も搾り取ってあげられるんだけどねぇ♪」
「分かってるよ。前に貴様にやって酷い目に会った奴を知っている。まだ死にたくないんでな」
「僕だってただの気分転換にやっているのにそんな事したくないもん。さ、続きをやろやろっ!」

 ミミロップは悔しそうにトランプを全て拾い、少しだけ手荒にシャッフルしていく。レアスはニコニコ顔でそれを待っている。
 はぁ、とブレイズはため息を漏らした。前にも見た光景に自然と昔の事を思い出してしまう。何故今更になってこんな事をとぼやいていると、レアスの方がブレイズに気がついたのかこちらを見て、むすぅーと嫌な顔をした。

「ちぇーもう来やがった。ゴメンけどお迎え来ちゃったみたーい。続きはまた今度ねぇ~」

 本当に嫌々という雰囲気を出しまくってレアスが椅子から飛び降りトコトコとこちらに来る。その為ブレイズの方へと向いた観客の顔が一気に青ざめていった。
 皆ブレイズの顔を凝視し、明らかな恐怖を全面に押し出している。分かりきっていたとはいえブレイズは顔をそらし、この場にいる全員からの視線を出来るだけ躱そうとする。無論そんな事は不可能に近い事だが、そうする事しか出来なかった。
 レアスがぴょんと背中に乗ったのを確認した後、まるで逃げるようにそそくさとその場を後にする。後ろからのヒソヒソ声が微かに聞こえ、その中には明らかにかつての自分の名前が含まれていた。

「――ブラッドだ、あいつは絶対にあのブラッドだ」
「何で今更ここに。四年前に……」
「あのマナフィの部下になっていたのか……?」

 グッと奥歯を噛みしめ、走り出す。ただ何も考えずに走り続ける中でも体はこの町の隅々までを網羅している。気がついたときには町からずっと離れた場所で荒い息をゼハゼハと吐き出し続けていた。

 何とか息を整えようと右前足を顔に近づけようとし、絶句した。付けた覚えのない真っ赤な液体がべっとりと付いているではないか。
 全身を見ると真っ白な毛皮が大量の朱色で染まっている。目を見開き辺りを見回すと目の前に忘れられない姿があった。こんこんと広がり続ける朱の池に浸る一つの姿。まだ小さく幼いそれを目の前にして、自分自身が表情もなくそれを見続けている。
 あれは、あの姿は……!!



「――ぉ、ちょっとブレイズ、しっかりして!」

 ハッと気がついたとき、目の前に広がっていた光景は全て消失していた。はぁ、はぁと荒い息を何とか整えるがなかなか回復しない。背に乗っていたレアスはやれやれと言った顔で飛び降り、目の前まで来て軽くため息。

「全く、情けないねぇ。てっきり克服してるかと思ってたのに」
「ふざ、けるな。事情を知ってるくせに、わざわざ俺、使うんじゃねぇ」
「仕方ないでしょ? あの町をアイスちゃんやパフューム君みたいな子供がまともな精神で帰ってこれる訳ないし、ポトフもしかり。ワッフルの過去は不明でファントム君は行方が不明。
あの町に入れるのは君しかいないんだよ。あの町で何年も暮らしていた……君にしかね」

 まともな返答に思わず口を噤む。ギリギリと歯を食いしばり、しかし何も返せない自分が情けなく、悔しい。そんな様子のブレイズに突きつける様にレアスが続ける。

「何時までも逃げられると思わない方がいいよ。いずれ、決着を付けないと……何時か痛い目を見るはずだよ」

 淡々とした声で発せられたレアスの一言に、ブレイズは完全に頭を垂れるだけであった。


 その頃トタスの森では順調な探索をおこなっていた。この森に住むポケモンは全体的にレベルが低い為にワッフルだけでも十分に何とかなったし、プリズムもまたなかなかの活躍を見せていた。
 現在目の前にはミミロルが一匹。その可愛い見た目とは裏腹に耳による強力なパンチはなかなか侮りがたい。そして今戦っているのは、何とプリズムであった。
 全身擦り傷切り傷が目立ち息切れをしているもののしっかりと立ちミミロルと対峙する。ワッフルとキララはその後ろにてただ見守っているだけであるが、キララは少しだけハラハラしながら、ワッフルはいざという時にはすぐに助けられるように足に力を入れている状況である。
 先に動き出したのはミミロル。軽快に左右に飛び一気に間合いを詰め一撃を狙う。プリズムはすぐに対応し口に指を押し当て、投げキッスをするようにハート型エネルギーとして飛ばす。天使のキッスと呼ばれるそれはまともに食らえば混乱状態になってしまうというもの。時間をかけずに出した為そこまでの効果はないが、それでも立ちくらみを起こすほどの効果はもっているだろう。
 だがそれを知らないミミロルは危険な攻撃なのではと警戒し急ブレーキをかけストップする。それを狙いプリズムは体内の電力を『電気ショック』として前方に出来うる限り飛ばす。
 素早い電気攻撃に避ける事叶わずミミロルはまともに食らってしまう。威力はまださほどないとは言え全身が麻痺状態となってしまった。
 一方のプリズムもまた攻撃の余波により全身をビリビリと痺れさせつつも何とか体に鞭打ち立ち上がる。体中の電力をかき集め右手に集約、放電させる。右手はあっという間にバチバチと叫び声を上げ、強力な雷パンチとして発動した。
 危険な一撃だと判断しミミロルは逃げようとするも全身のしびれが取れずに動く事が出来ない。その隙を見逃すことなくプリズムは叫びながら一気に近づき、渾身の一撃をミミロルの腹に決めた。直撃の瞬間眩しく辺りを照らす中バチバチと言う音と共にミミロルは遠くへと吹っ飛んでいった。
 何とか勝利したプリズムは荒い息をつきつつ嬉しそうに微笑み、そのまま前方に倒れてしまうのだった。ビックリしたキララはすぐに彼を介抱するもただくぅくぅと眠っているだけであった。

「何だかんだで連戦したからね。少し休みましょうか」
「は、はい……」

 入った直後はワッフルが全て応戦し、プリズムはキララを守りながらワッフルの援護のみをやっていた。だが数階上がった頃に「僕も戦う!」と言って前線に出始め、あっという間に戦闘のコツを掴んでしまった。
 元々のステータスが高かった為かレベルの高いダンジョン出身だからか……いずれにせよまだまだお粗末な戦いしかできない彼をレクチャーしつつキララの大切な物を奪った暴れん坊を捜しもうすぐ最奥という所までやってきたのだった。


 ワッフルはなるべく優しくプリズムを背に抱え、キララを連れ出来るだけ振動を与えずに近くにあった上り階段を上がる。ちょうど敵もいない場所に出たので彼を下ろし、バックの中をあさりオレンの実を取り出した。
 小さくカットし唇に当てる。ん、と声を漏らし無意識ながらほんの少しだけ実を囓ってくれた。それだけでも少しだけ顔色がよくなったようだ。
 心配するキララの頭を撫で、少し休憩をしましょうとワッフルは提案する。幼いピィは心配そうにしながらもコクンと頷いた。

 約数十分、平和な時が流れる。そこかしこからヤセイ化したポケモンの視線を感じるもワッフルの存在感*6が程よく辺りを威嚇する効果を出し襲われる事はなかった。
 程なくしてん、と声を漏らしプリズムの目が覚める。ようやく安心したのかキララはほっと胸をなで下ろしていた。

「い、つつ。ゴメンみんな、迷惑かけちゃって」
「初めての冒険なんだもの、目を瞑ってあげる。立てる?」

 ワッフルの手を貸り、プリズムは何とか立ち上がる。まだフラフラとおぼつかない足取りではあり完全に回復はしていないようだった。するとキララがバックからオレンの実を取り出して差し出してくれた。思わず顔を真っ赤に染めるプリズムだが、素直にそれを受取りゆっくりと食べていった。
 即効性の回復薬の効果でそれなりに回復したプリズムをそのままにし、ワッフルは軽く辺りを見回す。ここまで広く捜索していったが、未だに例の暴れん坊は見つかっていない。そろそろ最奥のはずなのに見あたらないというのは一体……?
 そんな事を考えていると、ふと水たまりに足を入れてしまう。瞬間体中が一気に震えだし、思わず飛び退いてしまった。

「な、何これ!? もの凄く熱い!」

 熱に弱い氷タイプ故という問題ではなく、本当に熱いのだ。まるで今しがたやかんで沸騰させた大量の水をここに流し込んだかのように熱を持っている。こんな森の奥でそんな事がありえるのだろうか、いやまずありえないだろう。
 騒ぎを聞きつけた二匹もおそるおそる水たまりにさわり、ヒッと悲鳴を上げた。一体何故こんな所にこんなものが、と悩んでいるとワッフルがある事を思い出した。

「そう言えば水タイプの技の中に「熱湯」と呼ばれる技があるわね」
「え、そんな技あるんだ」「私は知りませんけど……」

 ほぼ同時にプリズム達は言い、思わず二匹とも顔を見合わせ顔を真っ赤にしてしまう。思わずほほえましいという顔を漏らすもワッフルはそのまま説明を続ける。

「まぁ最近使われ始めた技だから。文字通り熱々のお湯を相手にかけてやけどさせるって技だけど……多分私たち以外に誰かがこの近くにいると見て」

 瞬間、まるで水の爆弾を落としたかのような爆音と衝撃が響いて来る。とっさに戦闘中だと理解した三匹は急いでその場所へと向かうのだった。
 奥へと向かう道々には多数の傷つき、時には酷いやけどや凍傷を負った草ポケモンや虫ポケモンがいた。時にラムやナナシ等の木の実を置きつつ三匹は奥地へと急ぐ。
 そこかしこにある湯気が立った水たまりを避けつつ三匹は何とか最奥へと到着した。だがそこは既に死地と化していた。

「う、わぁ……!」

 思わず声を漏らしたプリズムの顔は真っ青に染まる。とっさにワッフルはキララを抱き寄せ見えないようにした。
 何十匹もの猿のようなポケモン、マンキーが辺り一面に散乱している。ある者はぴくりとも体を動かさず、ある者は血だまりにその身を預け、ある者は体の一部が無くなっているというのも少なくなかった。目視での確認とはいえ少なからず息をしている者もいるが、すぐに治療をしなければ命が危ないかも知れない。
 ぎり、と歯を食いしばりながらもワッフルは辺りを見回し、奥の方で戦闘が行われているのが確認した。ここまでの惨状を目の当たりにした今、二匹をこれ以上進ませるのは危険と判断し、バックに入っていた穴抜けの球と共にゆっくりとキララをプリズムに預けた。

「二匹共すぐにここから離れて。どんな事があってもここに戻って来ちゃダメ。あたしが戻ってこなくてもすぐに町へと帰る事」
「姉ちゃん……だけど」
「いいわね?」

 彼女が浮かべたそれは、今まで見た事がないような穏やかな笑顔だった。思わず顔を赤らめるプリズムは、そこから先の言葉が出る事はなかった。
 ぽむぽむと二匹の頭を撫でた後、ワッフルは背を向けて奥へと走っていった。残されたプリズムはえもいわれぬ大きな不安を直感しつつも、どうする事も出来ずに怯えるキララと共にただ佇むだけであった。




 奥では今まさに血みどろの戦闘が行われいた。戦っているうち一方はマンキー種の進化形であるオコリザル。恐らく先程のマンキー達の親分的存在であろう彼はぜぇぜぇと荒い息を整えているところだったが、その姿は肩や足から血が出ておりとても痛々しい。
 一方の相手はというとどうやら二人組らしい。一方は多進化で有名なブイズの一匹で水色の体と魚のような尾を持つシャワーズ、もう一方は発達した筋肉と背にある浮き袋が特徴のフローゼル。手は真っ赤に染まり頬に鮮血のあとが残っている事から先程のマンキー達に手を下したのはこの二匹である事は明白だった。
 オコリザルは左腕をかばうようにしながら立ち上がり二匹に近づこうとする。だがそれを制するようにシャワーズは湯気が出るほど熱せられた熱湯で攻撃してくる。近接攻撃がメインのオコリザルは辛うじてその攻撃を避けるも手が出せずにぐぅっ、と悔しそうな声を漏らすしか出来なかった。

「タフだねぇあんた。だけどいい加減飽きちゃったよ……そろそろ死んでもらうよ」

 少し高めの雄の声でシャワーズがそう宣言する。瞬間周りの大気がビリビリと震えだし、シャワーズの周りに水の渦が立ち上ってきたではないか。あまりのエネルギー余波にオコリザルは軽く吹き飛ばされ、ワッフルも踏ん張るだけで精一杯であった。
 コォォという音と共にシャワーズの口に集約されるエネルギー。これ以上は危険と判断しワッフルは速やかに二人組の背後をとり氷の粒をまとった凍える風を発動した。シュンシュンとまるで大気を切るように二人組を襲う冷気は、しかし相手に届く寸前にフローゼルのソニックブームによって阻まれてしまうのだった。
 こちらに気付いたシャワーズは集約するのを中断し、ワッフルの方へと向く。とても整った顔立ちをしているが、その裏にある影をワッフルは見逃さなかった。

「……酷いなぁ。背後から攻撃するなんて礼儀がなってないんじゃないの?」
「既に勝負はついてるのにわざわざトドメを刺すのもどうかと思うけどねぇ。何故必要以上に殺戮を繰り返すのかしら」

 ぎっとにらみ付けるワッフル。その顔は幼子が見れば確実に泣き出すであろうどぎつい顔。だがそんな殺意をまざまざと受け止めてもなお目の前にいる二匹には効果はないようであった。
 ニコリ、その言葉が似合うほどに柔らかな笑顔をするシャワーズは、しかしそれはまやかしに過ぎないのだろうと思う一言を続けた。

「単純に気に入らなかったから……弱いくせに粋がる奴を踏みつぶすのが楽しいから、じゃダメかな?」

 この一言でワッフルの堪忍袋はぶちぎれた。ぎりっと歯を食いしばり一言「そう」とだけ答えただけだったが、その顔は普段とは比べものにならないほどに険しいものだった。
 この攻防の中、オコリザルは負傷した体に鞭打ち速やかに、逃げる様に退却していた。オコリザルが逃げるのを確認した後でワッフルはかぎ爪を構え戦闘体制となる。シャワーズの前をフローゼルが立ちふさがるも、ワッフルにとって無いに等しい壁であった。
 自慢の電光石火で素早く相手に近づき、相手の顔に体を捻らせつつの回し蹴り。隙を突かれたフローゼルは呻き声と共に吹き飛ばされシャワーズもまたあまりの素早さに驚きを隠せていなかった。一気に仕留めようと着地した瞬間に辻斬りをシャワーズ向けて一閃、相手は鮮血を吹き出した――筈だった。
 だが真っ二つにしたはずのシャワーズの体は液体のように辺りに飛び散る。飛び散った水は雫となって辺りに舞い、まるで矢の切っ先のように鋭く尖りワッフルへと照準を合わす。驚くワッフルだったがとっさにある技を思い浮かべ、反射的に体を捻らせつつ回転しながら凍える風をまき散らす。一瞬で周りの水滴は凍りついたのを確認せずにワッフルはバク転、片手側転、さらにバク宙とアクロバティックに後方に退却する。
 凍った部分がフルフルと震え、バキバキと音を立てて崩れるとまるで意志を持っているかのように……いな、本当に意志を持っている水は一点に集まり元の姿……シャワーズの姿へと戻っていった。

「驚いたよ。まさかこの僕が動きを追いきれないだなんて。世界は広いものだね」
「そう言いながら体を"溶かして"防御するあなたもなかなかしたたかね。だけどちょっとおかしいわね」

 溶ける、と呼ばれる技は自身の体を液状みたいに柔らかくし相手の物理攻撃の衝撃を和らげるという技。さっきのように体を引き裂かれてもダメージはないだろうが、少なくとも切り傷ぐらいは付く。だが目の前にいるシャワーズは"完全に"液状化し攻撃を無効化し、なおかつ飛び散った自分自身である水を"それぞれ変化させ"攻撃しようとしたのだ。明らかに物理的な問題でおかしい。どんなに液状化しても、本体から切り離された水が自ら意志で攻撃は出来ない。それは切り離された腕が動き出す事と同じなのだから。
 ワッフルがそう言おうとするも、しかしシャワーズの押し殺したかのような笑いを浮かべるシャワーズに言葉を失った。何故か背筋を凍らせるその笑いにワッフルは無意識に一歩後退してしまう。
 一種の直感が、すぐにこの雄から距離を取れワッフルに叫ぶ。自然と垂れる冷や汗、荒れる息。心臓さえも不意にバクバクとなり始める。それほどまでの存在感が今目の前にいるシャワーズからだだ漏れているのだ。

「どうやら生半可な攻撃ではダメらしい……少し、本気を出してあげるよ」

 復活したフローゼルがフラフラと彼に近づく。まるで使えない奴だと言いたいように睨むシャワーズだったが、ふんっと鼻をならし命令する。

「あれをやれ。何があっても絶対に解除するなよ」

 こくり、とまるで意志がないかのように頷くフローゼル。妙な違和感を覚えるも、すぐに別の事に集中せざるおえなくなる。
 フローゼルが大きく両手を高く広げ、力を発動する。すると突如ポツポツと雨音が聞こえ、すぐに大粒の豪雨となって辺りに降り注いだ。"雨乞い"と呼ばれるその技は辺りを一時的に雨にする。水ポケモンにとっては、まさしく恵みの雨となる状況。
 全身ずぶ濡れになる両者。だがワッフルは何故ここで雨乞いをするのかを理解出来ずにいた。確かにこの雨の中ならば水タイプの攻撃は遙かに威力を増すが、ただそれだけの為にこの状況を作ったとは到底思えなかった。
 するとシャワーズの周りの雨が、まるでスポンジで吸い取っているかの如く吸い寄せられていく。目を疑うと同時にシャワーズの体が徐々に液状化していき、雨水を吸い込んでドンドンと大きくなっていくではないか。

「君には地獄を見せてあげるよ……骨の髄までたっぷりと、ね」






 その頃プリズム達は、未だ前の部屋にて立ち尽くしている所であった。手に持っている穴抜けの球を使えばすぐにでもダンジョンを脱出できる。しかしワッフルの安否が気になりなかなか使う事が出来ずにいた。
 未だ震えるキララを放っておく事も出来ずどうしようかと思っていたとき、前方から傷だらけのオコリザルが走って来る。血だらけのその様子につい喉を鳴らしてしまう。

「何でこんな場所にガキが……そうか、さっきのマニューラの連れだな。さっさと逃げろ! この先には悪魔がいる」
「だけど、ワッフル姉ちゃんが」
「諦めろ! あんな奴ら相手じゃ命はない!! ここにいる奴らは全員俺の部下だ、だけど一匹がただ彼奴らに話しかけた……ただそれだけでこの有様だ! 彼奴らは他人の命なんてその辺の雑草と同じように扱う、殺戮者だ!!」

 プリズムは目の前にいる数十匹のマンキーを見る。辺り一面血が散布されたように真っ赤に染まっている。気絶している者、致命傷を避けた者も確かにいるが半分以上は命を絶たれてしまっているのが子供であるプリズムであったとしても嫌でも分かる。
 体中が震えだす。息をするのも苦しくなる。くらくらして立つ事も困難になってくる。だけど。
 プリズムは奥歯をギュッと噛みしめる。こんな事になるとは確かに考えていなかった。だけど僕は覚悟を決めてこのダンジョンに入ったのだ。怖いから、殺されるからと言って仲間が……ほぼ目の前で殺される事なんて……想像したくはない。
 震えるキララを体から離し、オコリザルへと託す。その時ふと彼女の顔を見たけど、涙でぐしゃぐしゃになっていた。そしてゆっくりと前方へと歩き出す。

「おい坊主、お前まさか!?」
「おじさんはその子をお願いします!」

 プリズムは全速力で走り出した。後ろからはオコリザルとキララが叫ぶ声が聞こえるが、既に何を言っているのかは分からなかった。


 前へと進むにつれて次第に雨がポツリポツリと降り出してすぐにどしゃ降りとなった。だがプリズムは気にすることなく走り続ける。そして広い部屋へと出た瞬間、思わず絶句してしまうのだった。

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!! さっさと串刺しになりなよぉぉぉぉぉ!!!」

 どこからか聞こえる怒声が若干気になりつつもそれでも目の前に広がる光景は異様であった。前方に見えるのはまるで巨大な湖からごっそりまるごと水を取り出して固めたかのような水の球体、ぱっと見てもホエルオーより少し小さいだろうというサイズ。そんな球体から無数の、それこそ百とか千とかではなく万単位かもしれない水の槍が伸びて何かを追撃していく。
 それは、まるで忍者のような速さで万単位の槍を躱し続けているワッフルであった。あまりの足の速さに壁走りをしている気もするが、多分見間違いだろうとプリズムは現実逃避した。
 ワッフルは辛うじて水の槍を躱しつつ氷の礫を球体に何度も発射する。しかし万単位の槍に隙などなく被弾することなく防御されてしまう。
 それでもワッフルは無数の槍の隙間を縫い礫をぶつけていく。当たった部分が少し冷えて氷になっているようにも見えるが多分ほぼ意味がないであろう。
 自分とはレベルの違いすぎる戦いに、プリズムは思わず呆然としてしまう。思わず口に溜まっている唾をゴクリと飲み込みこの激戦を食い入るように見続ける。
 だが水球がプリズムに気付き、水の槍を向けたときは流石に見続けるという訳にはいかなかった。すぐに何本もの槍がプリズムを突き殺す為に発射される。プリズムは体中の筋肉を酷使し何とか飛び避ける。間髪入れずに襲いかかる槍を屈み、ジャンプし、走る事で何とか避けるも水たまりに足を滑らせてしまい顔から突っ込む形で転んでしまった。
 その隙を水の槍の猛攻が見逃す筈はなかった。まるで意志を持つようにまばらに広がりつつ、百八十度全方向から突き刺そうと伸びてくる。逃げられない、そうプリズムは直感した。
 だが思わぬ所で突破口が開けた。横から風が吹くと同時に彼の体はフワリと浮かび、無数の槍の合間を縫って脱出した。あまりの速さに目が追いつかず気付いたときは既に槍の猛攻から抜けた後であった。
 横を向くと、荒い息をしたワッフルが。腕や肩が血で真っ赤に染まっている事から恐らく先程の攻撃が掠ってしまったのだろうか、だがその顔は怒りで歪んでいた。

「なんで来たのこの大馬鹿!! 今からでも遅くないからさっさと逃げなさい!」
「嫌だよ! 僕だって戦える……僕だってワッフル姉さんが怪我をしたり、死んじゃうのは嫌なんだよ!!」

 くっと舌打ちするワッフルだったが、その瞬間にも槍はこちらを突き殺そうと伸び続ける。ワッフルはまるで背中にも目があるように動きを察知し、プリズムを抱えたまま次々と躱していく。
 バックステップで十分距離を取り、プリズムを地面に下ろす。イライラしているのか気むずかしい顔をしているがすぐに気持ちを切り替え目の前の敵に視線をシフトした。

「こうなったらもう逃げられないでしょうから、絶対に無理はしない。それが約束できるなら戦ってもいいわ」
「……うん!」

 プリズムもまた戦闘態勢を取る。すかさず一本の水の槍がまっすぐとこちらに向かってくる。横っ飛びで避けようと足に力を入れるプリズムだったが、しかしワッフルが腕で前をふさいで止めてしまう。ぐんぐんと伸びてくる槍にプリズムは目をギュッと瞑り耐えようとするも、しかしそれは無意味な行動となった。
 シュキィン、と音を立てワッフルの目の前約数ミリという所で止まってしまう。おそるおそる目を開けたプリズムがひぃ、と悲鳴を上げるが、やはり槍は微動だにしない。勝ち誇ったような顔をするワッフルに球体は悔しそうに叫ぶが、それでも槍はいっこうに伸びて来る事はなかった。

「ぐぅぅぅぅぅぅ! きさまぁぁぁぁぁぁ!!」
「……どゆこと?」
「簡単に言うとねプリズムちゃん、こいつの攻撃は殆ど暴走しかけているわ」

 衝撃過ぎる事実にプリズムはさっきとは違う意味で絶句してしまう。確かに目の前の状況は凄い事になってはいるが、どうして暴走していると彼女は分かったのであろうか?
 ワッフル曰く、プリズムが来る数分前に敵は雨乞いを発動させ本気で戦い始めたそうだ。今現在の状況はシャワーズの特性である貯水*7で雨水を大量に取り込み、自身を溶けるの効果で液状化し取り込んだ水と融合する。あとは自分自身と化した水を伸ばして攻撃する、と説明を受ければ確かに納得のいく理にかなった攻撃ではある。しかもずっと雨が降り続ければダメージを受けてもすぐに回復する、雨が降れば降るほど攻撃力攻撃範囲ともに尋常じゃない事にもなる。今の状況がまさにそれであろう。
 ……ではどういった事が暴走しているということなのだろう? プリズムは分からないという風に首をかしげると、ワッフルは優しく丁寧に教えてくれた。

「よく見て、あの水球は水の槍を伸ばしてくるだけで自分で動こうとしないでしょ? 多分あまりに水を取り込みすぎて動けなくなってしまったの。しかもあの状態を維持する事にもエネルギーを使っているから、射程範囲がどうしても限定されてしまう。そしてあの水球はあの大きさなってから少しも大きくなっていない。操作できるキャパシティを大幅に超えてしまった事に他ならないわね」

 的確な看破に思わずおーっと感嘆してしまうプリズム。敵の弱点を見破る洞察力に長けたワッフルは、既にもう一つの敵についても気がついていた。彼女は視線で水球の下を見ろと促す。プリズムが目を凝らしてよく見てみると、まるで神に祈りを捧げるように両腕を大きく上に広げ、エネルギーを放出し続けるフローゼルがいた。水球に守られるようにされているフローゼルもまた、何か尋常じゃない雰囲気をだしていた。
 ワッフルはプリズムを抱えて更にバックステップで後方へと下がる。数メートル離れた後で彼を下ろし、大きく咳き込んだ。くいっと口を手で擦った後は、なにやら少し赤みを帯びていた。

「姉ちゃん、それってまさか――」
「気にしないで。私があれの相手をしてあげるから、真下のイタチは任せてもいい?」
 
 プリズムの言葉を遮り、少しだけ強めの口調でそう提案した。……表情にはおくびにも出していないが、既にワッフルの体は限界ギリギリの所まで弱っていた。先程のような怒濤の槍攻撃を常にトップスピードで避け続けていた為、まるで悲鳴を上げるかのように体はぎしぎしと痛み、足はがくがくと震え、目も少しだけ霞みつつもあった。
 少しでも弱みを見せればすぐに狙われる。弱肉強食の世界における鉄則。ワッフルは何時崩れ倒れるのか分からない程の爆弾を抱えつつも再び酷使する茨の道を選んだのだ。
 プリズムもまた、気付いてはいないとはいえ彼女の並々ならぬ決意を肌で感じたのかただ静かに頷くだけであった。ありがと、と答えるワッフルは思い出したように左手に持っていた物をプリズムに手渡す。
 それはプリズムが運び込まれたときに持っていた、あの不思議なトパーズ色の宝石であった。プリズムのバックの中に入っていたのだが、どうやら先程転んだときに落としてしまったらしい。それをさっき助けたときに一緒に拾っていたのだ。

「大事な物なら大切にしなさいよ」
「……ゴメン」

 ワッフルはにっこりと笑い、しかし次の瞬間には戦士の顔へと戻っていた。大きく息を整えた瞬間、大きく踏み込み電光石火の如く突進していった。
 先程から攻撃できずにうなり声をあげていたばかりであった水球は、一直線に無数の水槍を伸ばし突き刺そうと躍起になる。だが先程よりも単調になったのか槍同士がぶつかり相殺されていっている。ワッフルはその隙を見逃さずに、先程よりもスムーズに攻撃を避けていく。
 遠くから見ているだけのプリズムも水球が冷静な動きをしていないというのがハッキリと分かる。槍は何度も何度も相殺していき、まばらとなったその攻撃をワッフルは簡単に避け続けていく。時に冷凍ビームや凍える風を使って相手を攻撃し、敵を刺激していく。水球はまるでドラゴンような怒りの咆哮をあげてさらに激しくワッフルへ攻撃してくるが、ワッフルは難なく避けていった。
 プリズムも見ているだけでなく行動を開始する。右手にある宝石を握りしめながらゆっくりと射程距離ギリギリまで近づきつつ、体中の雷エネルギーを集約させ一点に集中させていく。体中が激しく痛むのを必死に堪え、隙を突き渾身の電気ショックを放つ。電撃は無数の槍の合間を縫って一直線にフローゼルへと向かっていく、筈だった。
 だが全身全霊をかけた攻撃は、攻撃に気付いた水球が瞬間的に作った槍を重ねた壁によってあっけなく防がれてしまうのだった。あっ、とつい大きな声を出してしまったプリズムに間髪入れずに無数の槍が迫る。激しいしびれにより逃げられないプリズムは思わず息をする事も忘れてしまう。ふと目に入ったワッフルが必死な顔でこちらへと走ってくるが、恐らく間に合わないと直感した。
 プリズムは自分自身でも驚く程に冷静に、自分の死を直感した。迫ってくる槍が目前に迫っているのにもかかわらずまるで他人事のようにしか感じる事が出来なかった。すぐに来るであろう激痛に備えるようにゆっくりと目を閉じる。



 直後に聞こえる、肉を切るような不快な音。脳髄の奥底まで聞こえるような音。だけど痛みを感じる事は無かった。あの状況で痛いと思わないというのは妙な事で。

「殺ったぁぁぁ!! ざまぁみろやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 不意に聞こえるまるで野生児の雄叫びのような歓喜に、不意に嫌な予感がして。プリズムがゆっくりと目を開けると同時に明けた事を激しく後悔した。

 目の前に、ワッフルの背中が見える。それだけならまだ良かった。彼女の体を貫く何本もの水。瞬間的に悟ってしまう。悟らざるおえなかった。


 ……彼女が、自分をかばって……!!


 声が出ない。叫び、泣き、絶望する事も。ただただ目の前の光景が信じられず、立ち尽くす。

 何も出来なかった。助けられてばかりだった。子供だったからという理由では片付けられない。この戦いに飛び込んだのは自分自身の決意からだから。

 彼は、目の前で散った仲間の死を涙するよりも先に自分自身を呪った。力もないくせに粋がった自分自身を恨み尽くした。

 目の前が真っ暗になってくる。時間が止まったかのように全てが遅く見える。プリズムはただただ、立ち尽くすだけであった。


 ぼ く が よ わ か っ た か ら … … ! !


「そう、君は弱い。弱い者は強い者に助けてもらう以外に生き残る術はない」

 ふいに聞こえた声にはっとする。辺りを見回すも一筋の光も無い程に闇が広がっていた。360度ぐるっと見回してみても、闇、闇、闇。唐突な出来事に言葉を失うプリズム。ここは一体どこなのだろう?
 ふと目の前を見ると、一つの影が見えた。こんな真っ暗な中で何かが見えること自体あり得ないが、何故かくっきりとそこに誰かいるという事が分かる。だが深い影がかかっているかのようにどんな種類のポケモンなのかは分からなかった。

「だけど本当にそうかな? 弱いからって必ずしも生き残れない訳じゃない。弱者には弱者の、戦う術があるものなのさ」

 謎の影はニッコリと笑った、ような気がした。プリズムは何となくそう感じる程に影の声は透き通っていた。

「少しだけ君を試させてもらったよ。いくら適合者とはいえまだ子供の君には早かったかもしれないから。だけど大丈夫。君なら、踏み外す事はない」

 一体何を話しているのか全く分からないという顔をするプリズムは困惑しているのか少しだけ後ずさる。それに合わせるように影がこちらに近づいてきた。
 次第に薄くなる影から見えてきたのは、まるで針のように鋭く尖った黄色い毛。プリズムはおぼろげにサンダースという種族であった事を思い出した。だが決定的に違うのは、左目。まるで焼け焦げたかのような酷いやけどの跡が、左目の下辺りに大きくありありと浮かんでいた。
 サンダースは目の前までやって来ると、不意に右手を差し出した。少しだけ渋るプリズムだったが、サンダースの柔らかい笑顔に警戒心を解き手に触れた。
 瞬間、触れた場所から眩しい程の光があふれる。どんどんと大きくなる光にとっさに目を瞑るプリズムは最後にこんな言葉を聞いたような気がした。

「僕の可能性の一つを、君に託すよ……」


 未だに降り続く豪雨。上空に漂う雨雲から、一筋の雷鳴が降り注ぐ。爆音が響くなか、水の球と化したシャワーズは信じられない光景を目の当たりにする。前方に見えるのは、確かに突き殺した筈の姿が。だが見えるのは周囲にまるで電気のバリアのような細い線を纏い、右手を尋常じゃない程に光らせ悠然と立つピチュー……プリズムの姿だった。
 知らず知らずに舌打ちをするシャワーズは自らの体を伸ばし、突き殺そうとする。だが電磁のバリアに触れた瞬間に水はあっという間に蒸発してしまった。あまりの自体に何本もの槍を伸ばし攻撃するも結果は同じ、全ての攻撃が蒸発し全く意味をなさなかった。

「無駄だよ。もうそんな攻撃、全く怖くない」
「だまれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 次々と槍を伸ばすも、たちどころに蒸発されていく。プリズムはただ無言で体中から沸き起こる電気を一点に集中し、電撃を飛ばした。本人は電気ショックのつもりであったがそれはまるでストライクが放つ居合い切りの様に一瞬で槍を蒸発させながら真下にいるフローゼルへと直撃させた。
 ぎゃぁ、と短い悲鳴をあげてフローゼルはぐったりと倒れてしまう。麻痺したように体をびくびくとさせながら戦闘不能となった。相手の異常な程の早い攻撃に度肝を抜かされたシャワーズは、恐怖に駆られたのか声がうわずってしまう。そんな事などお構いなしにプリズムは全身を大きく光らせ特大の一発を使おうとする。

「お前、まさか俺と同じ石版の力を……!?」
「ぶっとべぇぇぇぇ!!」

 全身の光を右手に集中させ、全速力で駆ける。シャワーズは恐怖の声と共に体内の水全てを前方へと押しやって密度の高い水の壁を作り出す。プリズムは大きくジャンプをし、壁へと迫る。そして。
 プリズムの全電力を込めた雷パンチが炸裂すると同時に、爆音が辺りに響く。バチバチと水の壁と拮抗するプリズム、だがそれは一瞬の事で。まるでリボルバーを零距離で発射されたかのように極太の雷が水の球を、シャワーズすらも貫いた。
 激しい叫び声と同時に、水の球は大きく原型を歪ませて地面へと落ちていく。落ちた水が津波となって辺りに広がっていく中力尽きたプリズムがゆっくりと波の中へと落ちていった。水が辺りへと完全に流れるとその場にいた全員の姿があらわになる。
 先に戦闘不能となったフローゼルは未だに痺れているのか全く動かない。シャワーズは全身を大きく振るわせながら弱点である雷をまともに食らったせいで息も絶え絶えと言った感じだった。そしてプリズムもまた全身を痺れさせていたが、ふと何か暖かい物に抱かれたような感覚を感じた。何とか目をこじ開けてみると、そこには先程彼の代わりに刺されたはずのワッフルの姿があった。

「ねぇ、ちゃん? なんで、あの時……?」
「あたし実は身代わりが使えるのよねぇ。まぁホントギリギリだったんだけどさ」

 自分の体力を削り自分と瓜二つの姿の分身を作り出す技、身代わり。とっさの判断でプリズムの前に分身を作り出し、攻撃を防いだという事だったのだ。まさか彼女もこれがプリズム覚醒の切っ掛けになるとは思ってなかったようで、プリズムに雷が落ちた後すぐに身を隠して様子を窺っていたらしい。思わぬ事につい笑顔がこぼれるプリズムだったが、すぐにくたっと気絶してしまうのだった。
 ニッコリと微笑んだ後にワッフルはゆっくりとシャワーズへと視線を向ける。既に息も絶え絶えの様子ではあったが、口になにやら種を含み、ガリッとかみ砕いた。

「許さない。お前ら必ず……ぶっ殺してやる」

 言うと同時に彼の体はまるで大砲で撃たれたかの如くまっすぐに空へとぶっ飛んでいった。その効果から恐らくワープの種を使ったのだろうと判断したワッフルは、全身の筋肉がぎしぎしと傷むのを堪えつつフローゼルの元へと歩く。
 近くで一目見ただけで、ワッフルはかぶりを振ってその場を後にした。長時間雨乞いを発動させた事によりエネルギーを多量消費したフローゼルは、既に息をしていなかった。


「……そうか、敵は討ってくれたか。すまない、助けに行く事も出来なくて」
「構わないわ。むしろ来てくれなかった事で無駄に守る必要なかったから全然良かったし」
「手厳しいな」

 全身泥まみれとなったオコリザルは自嘲じみた笑みを浮かべた。彼は戦闘が行われていた間、ずっと亡くなった仲間の墓を掘り続け、弔い続けていたのだった。キララもまたカクレオンからもらった回復薬をフルに使い何とか一命を取り留めたマンキー達の介護を必死になっておこなっていたらしい。今はワッフルの体に包帯を巻いている最中である。プリズムは近くでこんこんと眠り続けていた。恐らく多量の電気の消費を回復する為だろうと思われる。
 オコリザルは新しく掘った穴に、まだ幼かったであろう子供のマンキーを抱えてゆっくりと穴の中へと入れる。ふと手に握ってあるあるものを少し強引に取り、ゆっくりとキララへと歩み寄った。

「ほら嬢ちゃん、捜し物はこいつかい?」

 それは三日月をかたどったペンダントであった。驚きつつもコクリと頷いたキララに、オコリザルは消えるような声で語り出した。

「こいつは俺の息子でな。この前帰って来たときにこいつを持っていた。気になる子がいたからつい悪戯してこれを持って来ちまったってな。
俺はすぐに叱ってすぐに返してこいって言った。その時は嫌がっていたが今朝になってようやく決心が付いて明日返しに行くって、言ってたのによぉ……なんで、何でこんな事に……」

 オコリザルは溢れる涙を抑える事が出来ず、項垂れるように涙を流すのだった。キララはゆっくりとオコリザルの手を握り、そして小さく嗚咽を漏らすのだった。
 ワッフルはグッと下唇を噛みしめ、自分自身の弱さを心の中で呪う。そして、ある事を決意するのだった。



 静かに、そして確実に、物語は動き始めるのだった……。


プリズム「なんか僕が僕じゃないみたい」
パフューム「いよいよ物語が動き始めましたね」
ワッフル「次回は誰かが大変な目に逢うそうよ。期待せずに待っててねぇ」


*1 この世界における通貨。一円=一ポケに相当する
*2 生死問わずと言う意味。ここでは殺さない程度にボコボコにしてもOKという意味で
*3 探検隊における最高ランク。マスターランク自体もさらに細かく格付けされている
*4 ハイビジョンテレビでよく言う比率。大体そんな形だと言う意味
*5 五枚のカードを引き、その組合せの強弱で勝敗を決めるトランプゲームの定番。主に同数字の数が多い、番号が並んでいるという形が多い
*6 =プレッシャー
*7 本来は水タイプの技を食らうと逆に回復してしまうという効果

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Last-modified: 2011-03-27 (日) 00:00:00
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