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BRAVE～紅蓮の勇魂～Story.1 突然の始まり

BRAVE～紅蓮の勇魂～ by 火炎狐　



Story.1 突然の始まり



俺は車のほとんど通らない夜の道を自転車で駆け抜けている。
何故かって？別に意味はない。いつも通り、家に帰ろうとしているだけだ。
ここ最近は夜でも暑い。夏だな。
暇だな・・・なんかこう・・・『地球外生物の侵略』とかないのか？・・・いや、あったら困るか。
　・・・どうでもいいことを考えているうちに、俺の家が見えてきた。
俺は自転車をこぐ足を速め――
「うぉっ！？」
突然視界に入ってきた「それ」を急ブレーキをかけながらのハンドル操作で間一髪のところでかわす。
「ギリギリセーフだな・・・ん？」
倒れている「それ」は危機一髪の場面に直面していたにもかかわらず、全く動く気配を見せなかった。
「・・・生きてんのか？」
近くで見ると、呼吸に合わせて胸の辺りが上下しているのが見える。
「死んではいない・・・と。」
だがこのまま放置しておいたら、もし車が通ったりしたら命はない。
「とりあえず安全なところへ運んでおくか。」
俺は「それ」を抱き上げる。
「これは――？」
「それ」の毛色は褐色、しかし長いふさふさの尻尾の先と首まわりに生えている毛は乳白色。今は垂れている耳は犬や猫の物より遥かに長い――
「マジかよ・・・」
「それ」は――本来この世界に存在しないはずのもの――「イーブイ」だった。
と、そのイーブイは抱き上げられたことに気付いたのか、呻き声を上げる。
「助・・・けて・・・」
その言葉で、俺はそれまで見えていなかったもう一つのことに気付く。
イーブイの毛の一部は焦げて縮れていた。
「俺は今普通の何事もない世界とハリ●タ並にすごいことになりそうな世界の別れ目にいるのかっ！？」
気分が乗っていたので一声放つと、イーブイを自転車の前カゴに寝かせる。
「俺は選ぶ！ 普通の生活 (ノーマル)より、 変化のある生活 (カオス)を！！」
俺は再び自転車をこぎだした。





ここはどこだろうか。
今まで長い間眠っていたような気がする。
何だか暑い。



イーブイは薄目を開けた。
「ここは・・・」
周り三方を段ボールの壁に囲まれていて、残り一方向には切り取られた跡がある。
「お？気が付いたみたいだな。」
誰かが近づいてくる。
「とりあえずお前が普段何食ってるかは知らんが・・・飲むか？」
イーブイの前に小さめの器に注がれたミルクが置かれた。
ほのかな甘い香りを嗅いでいるうちに、イーブイは自分が空腹であることに気付いた。
イーブイは一口飲んでみた。
人肌に温められた、ほんのりと甘い液体が、疲れ切った身体を癒していくのを感じる。
数分とたたないうちに、イーブイは全て飲み干していた。
「あの・・・ありがとうございます・・・」
男はイーブイの方を見て微笑んでいる。
「これなら大丈夫そうだな。少し休めば元気になるだろう。ところで・・・」
男は急に真面目な顔をしてイーブイに尋ねる。
「お前は・・・何処から来たんだ？」
イーブイは自分の記憶を辿る。
僕は確か・・・
　・・・あれ？
「虹色の光・・・暗い闇・・・激しい痛み・・・それ以外は思い出せない・・・」
これって・・・記憶喪失？
「そうか・・・それなら記憶が戻るまででもいいが、しばらくここで過ごすといい。」
「あの・・・いいんですか？」
いきなり泊めてもらうのは迷惑なのではないか。イーブイは尋ねる。
「俺の方じゃ問題は何もないぜ。ところで・・・名前とかも分からないのか？」
男の質問に対してイーブイは無言でうなずく。
「名前も分からないか・・・それなら・・・」
そう言うと彼はイーブイを抱き上げる。
その視線はイーブイの股間部に集中している。
「あ・・・あの・・・何を・・・」
イーブイは戸惑っている。急に自分の股間を見られているのだから、無理もない。
「ふむ・・・雄か・・・それなら・・・」
男はイーブイを降ろし、微笑みかける。
「お前の名は―この世界で『勇敢な者』を意味する名前―『ブレイブ』だ。」
「勇敢な者『ブレイブ』・・・僕の・・・名前・・・」
「というわけで・・・よろしくな！ブレイブ！」
何故だか分からないが、イーブイはうれしくなった。
「はい！あの・・・」
「ん？どした？」
イーブイはしばらく迷っていたが、
「『ご主人』って呼んでもいいですか？」
男に尋ねる。
「あぁ・・・いいよ。」
イーブイ―ブレイブに笑顔が表れる。
「よろしく・・・ご主人」
男とブレイブの生活が始まった。