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BRAVE~紅蓮の勇魂~Story.0

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BRAVE~紅蓮の勇魂~ by 狐眼


Story.0 ―脱走―



フォース地方、ヒメリタウンにある火山『コータスマウンテン』。
火山とともに存在する温泉の恩恵を受けてこの町は育ってきた。
そして、その火山を観測するために麓の林のなかに建てられている『火山観測所』。
外見はごく普通のそれだが、その地下にどんな世界が広がっているかを知っている者は少ない。



地下深くの一室で、一人の男がPCに文章を打ち込んでいる。画面の横には既に完成したと思われる文書『 対携帯獣用暗黒化兼精神制御装置 (Anti-pokemon Dark-form and Mind-control System)(ADMiS【アドミス】)~設計、波動パターン~』が置いてある。
と、キーボードの脇に置いてある小さなモニターが作動し、別の人間の顔が現れる。
「AAクラス、ナンバー008、フィアーです。例の書類を受け取りにきました。」
モニターに映った女性が話す。
男は無言でモニターの脇にあるボタンを押した。
部屋にある唯一の扉が開き、先程のモニターに映っていた女性が入ってくる。
「ちょうどいいタイミングだな。もう片方の仕様書も今完成したところだ。」
一つ目の書類を渡しながら男は言った。
程なくして、机の横に置いてある大型のプリンタが数枚纏めてクリップで束ねられた書類――タイトルページに『 対携帯獣用電波式進化促進装置 (Anti-pokemon Radio wave type Evolution Accelerate System)(AREAS【エイリアス】) 修正済』と書かれている――を吐き出す。
男はタイトルページに署名を加え――署名を見たところ、この男の名前は『ジン』のようだ――フィアーに手渡す。
「確かに受け取ったわ。」
フィアーは書類のページ抜けが無いか確かめ終えた。
「頼んだぜ。お前次休憩だよな?カフェに行って一緒にお茶でm」
「だ が 断 る」
「(´・ω・`)」
フィアーは扉を開くスイッチに手を伸ばす。がスイッチに触れる前に基地中にサイレンが鳴り響いた。
『緊急、緊急。アドミス実験区域にて、実験素材シリアルEV-403逃走。Aクラス以上の戦闘員は直ちに現場へ急行せよ。繰り返す。・・・』
「・・・休憩時間はまだ先になりそうね。」
フィアーは慌ただしく部屋を出ていった。
「実験素材が逃げ出したぐらいじゃ仕事も休憩も中断されない・・・そんな俺って勝ち組?」
出ていくフィアーを眺めながらジンは呟いた。



研究所の通気孔を一匹のイーブイが走っている。
しきりに後ろを振り返っているのを見ると、何者かに追われているようだ。
イーブイの視線を辿ると、数匹のヘルガーがイーブイ目がけて走っているのが見える。
と、イーブイは細い配管の中へ潜り込む。
ヘルガーの巨体はその配管へ潜り込むことは出来なかった。



(ここなら・・・大丈夫そうだ・・・)
イーブイは配管を抜けて扉が一つしかない小さな部屋にいた。
彼の首には紐に下げられた、蒼き光を放つ水晶のような物がある。
(先祖代々受け継がれてきた『時空の欠片』・・・その力・・・成功させないと!)
イーブイは目を閉じ、時空の欠片に向かって呟きだした。
「先祖より受け継がれし『時空の欠片』に命ずる。我を時空の先へ導け!」
時空の欠片は虹色の光を放つ。そしてイーブイもまたその光を受けて虹色に輝きだす。
と、部屋にある唯一の扉が開き、ヘルガーが走り込んでくる。
「逃がすか!大文字!」
イーブイが振り返ったときには既に遅かった。
「うぎゃあっ!!」
大文字が命中し、イーブイはよろめく。
次の瞬間、イーブイは虹色の光とともに消滅していた。
「ちっ・・・逃がしたか・・・」
後にはヘルガーの悔しそうな唸り声が残るだけだった。



「くっ・・・大文字の衝撃で・・・時空の進路を・・・それてしまったか・・・」
イーブイは大文字の痛みを堪えながら闇に包まれた時空の狭間を漂っていた。
「仕方ない・・・こうなったら強制的に・・・時空に穴を開けて・・・」
イーブイは再び時空の欠片を胸に抱く。
「先祖より受け継がれし『時空の欠片』に命ずる。我を時空の狭間から押し出せ!」
時空の欠片が再び虹色の光を放つ。
イーブイは時空の狭間に開かれた穴から夜の光を感じ取る。そしてそのまま穴に自らの身体を潜らせる。
同時に、歪んだ空間による痛みがイーブイの全身を駆け巡る。
「―――!!」
先程の大文字の痛みを何百倍にも増幅したような痛みに、イーブイは声を上げることすら出来なかった。
時空の狭間を抜け、アスファルトの地面が近づいてくる。
アスファルトの地面に衝突する前に、イーブイの意識は暗い闇に包まれた。



長編小説、ついに開始!
イーブイはこれからどうなってしまうのか!?



次回 BRAVE~紅蓮の勇魂~ Story.1
突然の始まり




ここの小説師にとって感想やファンコールやコメントは活力の源なんだぜ?
俺にとっても例外じゃないんだぜ!

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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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