ポケモン小説wiki
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こんにちは。最近ショッキングな出来事が続いている南十字です。
今回はそのことを元ネタに小説を書いていきたいと思っています……。
グダグダにならないよう頑張っていきたいです。

南十字

!!注意!!
危険な表現はないですが作者の危険な妄想が止まることなく膨らんでいます。
更新はまったりと。急がず焦らず…。





私の名前はグレイシア。今はこのタワーオブヘブンにすみついている野生ポケモンの一匹なの。
どうしてこんなところに住んでいるのか気になるの?別に教えてあげてもいいけど……。そんなに気なるの?
分かったよ。話してあげるからとりあえずそこに座って。………それじゃあ……




…………教えてあげようか、私の過去を……








「なあ、グレイシア。そのポフィンどうだ?うまいか?」
「ん?別に………」
満面の笑みで私にポフィンの味を評価してもらおうとするマスターに私は冷たい一言を言い放つ。がっくりうなだれて「またか………」といった顔をした後私から少し離れもう一つのモンスターボールを取り出してリーフィアにも同じことをやり始めた。リーフィアがご主人に微笑み返して「おいしいですよ」と言っているのを見て私はため息をつきながら道端でのマスターの手作りポフィン試食会を尻目に草むらでゴロゴロしだした。そりゃあリーフィアのほうが愛想がいいからそうしたくなる気持ちもわかる。でももうこれは私の性分なのだ。仕方のないこと。そう思いながらも自然と寂しさを感じる私にほとほと嫌気がさしているのも今更のことなんだけどね。
人から見れば「捕まえたばかりのポケモンはそんなものさ」そう言われるような毎日繰り返しているこの風景。でも、それは違う。実際私は捕まえられたばかりのポケモンじゃない。マスターが卵から孵してここまで育て上げてくれた今のメンバーの中では最古参&最強のポケモンだ。そんなポケモンがマスターになついていないわけがないと思うけど……。


そんなことを考えているとマスターが私に出発する声をかけ私をモンスターボールの中に戻す。
……しかし、すぐにボールから出された。目の前にはマスターを威嚇しているハトーボーが。野生ポケモンとの戦闘か……。
ハトーボーは威嚇しても動じずに大きなあくびをしている私に少しおびえているようだが私は気にすることもなくマスターの指示を待つ。
「グレイシア!冷凍ビーム!!」
そう叫ぶのとほぼ同時に私は周りの温度を調節しながら頭の前方に…なんていうのかな?気?みたいなものを集中させる。あとはあのトロくさいハトーボーに向けてそれを発射するだけ。
私はそれを2、3秒でやってのけかわいそうだとは思ったけど野生のハトーボーを氷漬けにした。それがマスターの指示だから。私は経験値とかいうものを得ることなく再びモンスターボールに戻される。当たり前だ。私は俗に言うLv100とかいうやつらしいからそうなのだとか。あのレベルアップの快感を味わいたかったがもう無理らしい。それはそれで寂しいけどね。それとこうして野生ポケモンとの勝負に私を使うと野生ポケモンの命が危険にさらされかねないような気もするが私はよく知らない。いつもすぐにボールに戻されてしまうから。
「ありがとう、グレイシア」
モンスターボールの中へ戻る最中にマスター声を聞いた。いつもこう言ってくれる。でも私はそれに相槌を打ったことがない。そんなの恥ずかしくって私には絶対無理だった。





私はほどなくしてもう一度モンスターボールから出された。でもそこには野生のポケモンもおらず。草むらが行く手を阻んでいるわけでもない室内だった。私は室内を見まわしてみるとそこには「ポケモン大好きクラブ」の文字が。私はだいぶ長い間マスターと一緒にいたから人間の文字を読むことができる。そこは他のポケモンに自慢できるところだ。……別に自慢はしてないけどさ。
するとマスターがいきなりリーフィアを指差してムンナを抱きかかえているお姉さんに声をかけた。
「それじゃあ、あの子でお願いします」
「分かったわ。そこのリーフィアちゃん!ちょっとおいで」
そう言われ別に拒絶することなくお姉さんのもとへ小走りで近寄るリーフィア。するとお姉さんがしゃがみこみ真剣なまなざしでリーフィアを観察し始める。少しリーフィアが引いていたがほどなくお姉さんが立ち上がりマスターに声をかける。
「この子。とってもあなたになついているのね!見ているこっちがジェラシーだわ!」
そう言ってリーフィアの頭をなで始めた。マスターは少し照れている風にも見えなくない……。なんだかすごく不快だ。そんなことを考えているとマスターがこっちを見ながらお姉さんに再び声をかけた。
「それじゃあ、あのグレイシアもお願いできます?」
「もちろん!こっちにおいで。グレイシアちゃん」
私は別に小走りになることもなくゆっくりお姉さんのほうへと近づいていく。お姉さんは再びしゃがみこんで私の顔を覗き込んだ後少し怪訝そうな顔をしてマスターに声をかけた。
「この子、あなたになついていないみたいね…。目つきが怖いわ…」
「はあ………。そうですか……」
そう言って首をかしげながら私のほうを見る。そりゃあずっと旅のお供をしていた私が少しもなついていないわけないし、私はマスターのことをすっごく信頼しているよ。…………別に好きってわけじゃないからね!
目つきが悪いのも無愛想なのも全部この性格のせいだしなおそうとはずっと思ってる。がんばってるけど、なかなかうまくいかなくって……。今みたいなことは珍しいことじゃないの。こんな私のこと嫌いにならないのかが心配で…。でも何をやってもうまくいかなくて……。

私は……私はどうしたらいいの?





しばらくしてマスターがほかのトレーナーと戦うとかいうことで私は最後の切り札として一番最後に出されることになった。マスターの手持ちポケモンはおかしいことに私以外は本当に弱いのだ。私は相手とのタイプ相性を無視して戦えるけどほかのメンバーはどうやらそうではないらしい。
結局、ほかの手持ちが相手のポケモンを一匹も倒さなかったため私が一匹で相手を全滅させた。みんなイーブイの進化系だったね。グレイシアはいなかったけど。でもみんな雌だったのはどうかと思う。マスターいわく「そういう趣味のやつ」だそうだが…。
負けたことがショックだったのか相手のトレーナーはがっくりうなだれている。マスターがそんな相手のトレーナーに歩み寄り声をかけていた。
「クロー、そんなに落ち込むなって」
「落ち込むよ……。あんな華奢な感じのグレイシアに全滅させられるなんて……」
なるほど、あのトレーナーはクローという名前なのか……。外人じゃあなさそうだしただのあだ名だよね。
でも華奢だなんて……少しだけうれしいかも。いつもはトレーナー相手にグレイシア無双を繰り広げると「鬼!」「チートだ!」なんて言われていたから…。そんなことを考えているとマスターに呼ばれた。クローという名のトレーナーもマスターのそばに立っている。何なのだろう……。そう思いながら私は二人のもへ歩み寄った。

二人のもとへ来た私をマスターが確認するとマスターがクローに声をかけた。
「それじゃあクロー。よろしく頼む」
「あいよ。僕にまっかせなさ~い」
するといきなり私の目の前にしゃがみこんで私の瞳をじっとのぞきこみながら私に声をかけ始めた。
「僕の名前は南九郎(みなみ くろう)っていうんだ。よろしくな。かわいいグレイシアちゃん」
「………………」
私は押し黙ってそっぽを向いた。ずっと見つめられてそんな言葉をかけられたら恥ずかしくなっちゃって…。今私の顔が少し赤いのもわかる。
そんなことを思っているとクローが微笑みながら静かに立ち上がりマスターに声をかけた。
「このグレイシア、ステータスに書いてある性格は?」
「寂しがり屋だったけど?」
「ふ~ん。僕の見た限りじゃあそれもありうるけど僕だったら性格を書き換えるな……『ツンデレ』だと!」
「…………はあ…」
「僕の第三の目からみるとツンが9割デレが1割ってところだな。そう簡単に甘えてはくれないと思うけど、まあ気長に付き合えばいいんじゃない?」
「なるほど……。参考になったよ。サンキューな」
「それじゃあ鑑定料4500円を……」
「それじゃあバイバイ」
「ツンデレ」とか「第三の目」とか意味のわからない言葉だらけだったけど私のことで話しているのは何となくわかった。別に深追いはしないけどさ。
マスターはクローの言葉をさらりとスルーして私を見つめながら一言。
「ツンデレかぁ……」
とつぶやいて私をボールに戻した。



その日、私たちはポケモンセンターで夜を過ごすことにした。ポケモンセンターの中って思っていたよりも広い。そのためちょっとしたホテルみたいな感じになっている。それでもホテルじゃないから食事は出てこないみたい。ご主人は手持ちのポケモンを部屋の中に出すとテキトーに分けたポケモンフーズをポケモンの食事用に作られた器に分け私たちに声をかけた。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきま~す!」
私を除く全員がそう言ってポケモンフーズに口をつけ始めた。どうもこのセリフを大声で言うのはためらわれる。最近までは小声でも言うようにしていたがそれも面倒になったからこうして何も言わずにポケモンフーズに口をつける。………このポケモンフーズあんまり好きじゃないんだよね…。なんか乾燥しきっていて口の中の水分をみんなポケモンフーズに吸い取られていくような感じがする。そのせいですごく飲み込みにくい……。
私は落ち着いてゆっくりポケモンフーズを食しながらみんなの様子を見る。食べること以外することがないからさ……。
さっきみんなの様子とか言ったけど私がさっきからじっと見ているのは私のマスター。そのマスターはリーフィアと楽しそうにおしゃべりをしている。ううっ、今すぐ冷凍ビームをリーフィアに撃ちたい。今ならきっと最高威力の冷凍ビームが出せるに違いない。
私はそんな気持ちを押し殺しながらリーフィアと談笑しているマスターを見ていた。……べっ、別に妬いてるわけじゃないんだからね!それにあのリーフィアは雄だから変な気がなければマスターとくっつくことはないはず!……って、あれ?私、なんか必死にマスターとくっつこうとしているような発言を?まあいいや。アホな事考えている間に飯も食い終わった。私は伸びをした後ゴロゴロしだした。
マスターはリーフィアと話し終えたのか私の近くによりゴロゴロしている私にあきれたような口調で声をかけてきた。
「グレイシア~。食べた後に寝るとミルタンクになっちゃうぞ~」
「…………なるわけないじゃん………」
私は顔色を変えることなくそう言い返す。あ~あもっと場を和ませるような切り返しは知っているのになんでこんな言い方になっちゃうかなぁ?マスターは相変わらずの私の態度に少しへそを曲げたのか再びリーフィアのもとへ行く。
はぁ……。こんな性格。なおせるのならなおしたいよ。ますます自分のことが嫌いになっていく。ますます私からマスターという存在が遠のいていく……。


夜、すべてのポケモンがモンスターボールの中に戻された。みんなが寝静まった頃私はまだ起きていた。モンスターボールの中からはほんの少しだけだけど外の様子が中から見えるように作られていて外の声や音を聞き取ることもできる。しかし、中にいるポケモンがそれを望まないと外の様子や音などを聞き取ることができないというまさにハイテクの四文字があっているような気がする代物だ。ちなみにポケモンの意志でモンスターボールにはいることはできるらしいがポケモンの意志でモンスターボールから出ることは絶対に出来ないらしい。……話がそれたね。
私は外の様子を見始めた。ちょうどマスターの寝ているベッドが見える。でも、マスターはそこで寝ていなかった。ベッドに腰をかけこちらをじっと見ている。私はマスターの姿が確認できるけど当然マスターは私が起きているだなんて思ってもいないだろう。でも、いつもなら私も含めて寝ている時間。なのにどうして今日に限って?
そんなことを考えていてもわかるわけないなぁ。と思っているとマスターがぽつりぽつりと独り言を言い始めた。
「はぁ……。グレイシアは俺のことどう思っているんだろうな……?……俺のことが嫌いなのかな?」
違う………。違う!!そうモンスターボールの中で叫びモンスターボールの中に広がる空間の壁を前足でたたく。この声が少しでも届いてほしかったから。
「今までずっとグレイシアのことが………大好きだった。でもどう接してやっていいのかが分からなくって………」
えっ………?私のことが……好き?一瞬耳を疑った。頭の整理がつかないまま私はマスターの言葉に再び耳を傾けた。
「こんなぎくしゃくした関係のままでいるのはお互いつらいよな……。でも、どうすれば………」
そんな………マスターの悩むことじゃない!私が素直になれればいいことなのに!
お願い……!この私の思い、マスターに伝えさせて!今すぐに!私は絶対開くことのないモンスターボールの中の空間の壁に攻撃を続けていたが知らないうちに疲れはて眠ってしまった…………。





私はモンスターボールの中で目を覚ました。眠たい目をこすり静かに伸びをしていると昨日の出来事をハッと思いだす。急いで外の様子を確認するとマスターはまた草むらの生い茂った道路を歩いていた。でも、私を手持ちの先頭にして虫よけスプレーのようなたぐいのものをつけたのか野生のポケモンは全くマスターに近寄ろうとしていない。
…………あれ?私はまだご飯食べてないのに出発してるってことは私もしかしてね過ごした!?ガーン、ショック~……。急にあの乾燥しきったポケモンフーズが恋しくなってきた。でも仕方がない。例の話も兼ねてお昼ごはんの時を待とう…。

でも、のんびりしていられるほど心に余裕がなかったからマスターの様子をモンスターボールの中から見ることにした。すると、少し根暗な感じのするトレーナーにマスターが声をかけられていた。内容が気になる。話の途中からだけど気にしないよ。盗み聞き開始!
根暗な男がマスターに話を持ちかけていた。
「それじゃあ、バトルを開始する……。制限なし賞金制もなしだが……例のルールでいいな……?」
「……………ああ、かまわないよ。でも、負けたほうの意見も尊重の方向で……」
「了解した……それでは、始めるぞ………!」
例のルールって何なんだろう?そんなことを考えているとすると急に視界が反転する。ちょっと!乱暴に扱わないでよ!!そんなことを思っていると手持ちの最後にモンスターボールを移動させられた。ここからだとマスターの背中しか見えない。バトルの様子が全く把握できないと悟ったため私はバトルに備えて完全に眠気を飛ばそうとしていた。
しばらくして私は外に出される。バトルの真っ最中だってわかっているけど今私の気持ちを伝えても問題ないよね?私はマスターのほうに体ごと振り返りマスターに声をかけようとした。
「あの…………マスター…………」
蚊の鳴くような声で私は声をかけようと試みる。こんな声じゃあ聞こえないかな?そんなことを思っていると案の定聞こえてなかったみたい。マスターは必死に私に大声で指示を出す。
「グレイシア!!あいつらかなり手ごわいぞ!朝飯抜いててきついかもしれないけど頼む!がんばってくれ!
 それじゃあ、アーケオスに冷凍ビーム!!」
私はしぶしぶ後ろを振り返ってみるともうすぐそこに私に頭突きをかまそうとしているアーケオスが迫っていた。
私は急いで冷凍ビームをアーケオスに向けて放つ。あまり力をためてなかったのもあって氷がアーケオスの全身を覆った後地面に落ちた衝撃で分厚い氷が割れた。いつもはこれしきじゃあ割れないんだけどね。それでも十分ノックアウトできたみたいだけど。
バトルフィールドにいる相手のアブソルは完全に私におびえている感じがする。特性はプレッシャーみたいな雰囲気がするけどこれじゃあまるで私が相手を威圧しているみたいだ。
「戻れ……アーケオス。ついでにアブソルもだ」
相手がポケモンをみんな引き上げてしまった。するとすぐに二つのボールを構え私の目の前に二匹のポケモンを繰り出した。ピクシーとゴウカザルか……。タイプ相性まずいのがいるけど大丈夫だろう。私の力でたたきつぶすだけだし。
「グレイシア!!先にゴウカザルを倒す方向でいくよ!フルパワーで冷凍ビーム!!」
私はいつもよりも強大なエネルギーを空気中から得るため力を一点に集中させ始めた。そして発射するのと同時に敵のトレーナーが指示を出す声が聞こえた。
「ピクシー、この指とまれ。ゴウカザルは……隙を突いて例の技だ……」
ピクシーがその短い指を振り始める。私の発射したエネルギーの塊はピクシーの方向へと軌道を変える。しかし、ピクシーはよけることはかなわず完全に氷塊の中に閉じ込められた。それを確認しゴウカザルのほうへ視線を戻しt……。
わき腹に激痛が走り全身に一気に伝わっていくような感覚がした。横を見てみると鬼のような形相のゴウカザルが。そのゴウカザルは紅蓮の炎に包まれその体は少しだけ傷ついていた。この技は……フレアドライブ?そう思った瞬間ゴウカザルは身にまとった炎を解き体勢を変え私に容赦なく守りを捨てすべての力を破壊に使うインファイトを放っ…………。

ゴウカザルの荒い息遣いのあいまにかすかにマスターの呼ぶ声がする……。しかし、そこで私の意識は途絶えた………。






私はしばらくしてから目を覚ました。どうやらモンスターボールの中で眠っていたらしい。傷が体からきれいさっぱり消え去っているところをみるとポケモンセンターのような施設で回復してもらったのかな?
私はそんなことを考えながら外の様子をモンスターボールの中から確認すると案の定ポケモンセンターの中だった。私は初めてバトルに負けたショックよりもマスターの心配をしだした。たいていポケモン勝負に負けた場合その責任はトレーナーのほうへのしかかる。ほら、あなただってポケモン勝負に負けたら賞金を払わされるでしょう?ポケモンの力不足、ミスなどが原因であっても最終的に損をするのは負けたほうのトレーナーなのだ。そんなことを考えながら勝負していると如何に自分の戦いがマスターに大きな影響を及ぼすのか考えさせられるような気がする。……話がずれたね。
マスターは案の定暗い顔をしながら根暗なトレーナーと向かい合うように座っていた。今回の戦いの場合賞金制ではないからその分怖い。一体どんなルールでマスターが戦っていたのか私には理解できなかったがこちらの利益になるようなことはない。それだけは理解していた。
「それじゃあ、例のルールに従って君がポケモンを指定してくれないか?」
「……分かった。それじゃあ………グレイシアがいい。……先ほど戦っていたやつな……」
えっ!私のことを言っているの?この男は?そもそも私をどうするつもりなの?例のルールっていったい何なの?
私は頭がパニックになりながらもマスターたちの会話に再び耳を傾けた。
「うっ…………。グレイシアか………」
「どうする……?いやならほかのポケモンも考えておくが………?」
マスターが悩んでいる。なんで悩んでいるのか大体察しがついた。きっとこの二人が言っているのはポケモン交換のことだ。負けたほうのポケモンを勝ったほうのカスポケモンと交換するんだ……きっと。
嫌だ!!そんなの絶対に!私は知らないうちに叫んでいた。まだこの思いマスターに届けてないのに!!
私がそうしているのにも気づかず二人は会話を進める。
「いや…………。グレイシアでいいよ。……こいつのためにも………」
「本当にいいのか………?」
「ああ」
短くマスターがそう答えた瞬間私は目の前が真っ暗になった。
マスターが何か言っていたがそんなこと気にもせず、私はただただ茫然と宙を眺めていた。

ほどなくして何か私の近くに落ちているのに気がついた。私はそれを拾った。人間には「メール」と呼ばれているものだ。私はそれを読み始めた。そこには私のステータスには載っていないような特徴が雪をイメージしたような便せんに細かい字でたくさん書かれていた。こんなに私のこと分かっていてくれていたんだ……。急に悲しくなった。こんなにいいマスターと私はもうすぐわかれてしまうなんて。
もっと甘えればよかった。もっと話せばよかった。もっとふれていたかった。もっと………もっと………………。
後悔の念があふれだす。しかし、私にそれを止める術は無かった……。





気が付いたらもうすでにマスターは私のマスターではなくなっていた。私はどこかの道路で根暗なトレーナーの前にモンスターボールから出された。近くで見て初めて気がついたけどマスターよりも若いまだ少年という雰囲気を漂わせていた。帽子を深くかぶり目が見えなかった分根暗というイメージが付きまとっていたが下から彼の顔を見上げ初めて彼の少年らしい瞳を見たときただの短パン小僧なんだと感じた。
私はもっていたマスターの匂いがかすかに感じられるメールを少年に渡した。少年は少し目を通しすぐにポケットにしまいこんだ。クシャッという紙が折れる音がした。マスターが一生懸命書いたものをなぜあんなにも乱雑に扱えられるのだろう?私は少年から目をそらしながらそんなことを考えていた。

それからしばらく少年の手持ちで「ドラゴンタイプ撃破要員」として参加していた。彼は少年とは思えないほど理知的な戦い方だった。そんなトレーナーにもらわれれば人生幸せだ。そう考えるポケモンは数知れないだろう。でもやはり私にとってのマスターはひとりしかいなかった……。




それから私は悲しみに暮れた。食べることを忘れ、かわりに物思いにふけるようになった。寝ることを忘れ今まで流したことなど一度もなかった涙を流し続けるようになった。


私はほどなくして力尽きた。少年がポケモンセンターに連れて行きポケモンドクターに診せようとした直前だったような気がする。最期に小さくマスターの名前をつぶやき目をとじ、そこで私の人生は終わった…………。





これが私の人生。私のすべて。



そのあと魂だけでここにとどまり続けていることぐらい言わなくてもわかるよね?



…………あの後私のマスターにはあっていない。もうずっとあえない。そんな気もする……。






でもね。もし、もしもマスターが来てくれたらね。


そっと近くで呟きたいの。


「ありがと………」

ってね……。





元ネタはこの小説と本当に同じです。
僕が友達との勝負に負け手持ちのグレイシアを拉致られました(泣)
今どうしているだろうあの娘……。そんなことを考えていたら自然に手がキーボードのほうへ………。
そんな作品です。最後まで読んでいただきありがとうございました。



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(コメント=南十字の活動力)




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Last-modified: 2013-08-14 (水) 00:00:00
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