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1人と7匹の物語 5

/1人と7匹の物語 5
この話は、かなり短いということだけ申し上げておきます。


 このセイリュウ国には、北に首都ラクヨウがあり、南に第二の都市、ケンギョウがある。
 リクソン=ハクゲンと、シャワーズ、サンダース、エーフィ、ブラッキーの4匹はここの出身である。大学受験をしていたときから、リクソンはケンギョウを去る決意を固めていた。建前は、自分のやりたいことがラクヨウ国立大学にある、というものだったが、本音は、色々と口出しをする両親が鬱陶しかった、というものだった。
 無論、両親には本音の方は黙っていた。言えば口げんかになるのは火を見るより明らかだった。けれど、自分になついていたシャワーズには、大学に受かった後に、そのことを告げた。しかし、
「どこへ行っても構わないわ」
 という返事が返ってきただけだった。リクソンは、硬いもので頭を殴られたような気がした。15年も世話をしてきてやってその態度は何だ、怒鳴りたくなったが、ひとまず抑えた。ふん、まぁ、いいさ。こんなところ、誰が帰ってきてやるものか。
 両親は、名の通った国立大学に受かったので、リクソンが1人暮らしをするのはとりあえず認めてくれた。ふはは、大義名分さえ手に入れれば、こっちのものよ。リクソンは、すこぶる上機嫌だった。が、いつまでもウキウキしているわけにはいかない。引越しの準備を始めなければならなかったからだ。
 とりあえず、部屋にあるものを片っ端からダンボールにつめていった。もっとも、長年使用してきた机は大きすぎて持ち出すのが困難だったので、部屋に置いておくにした。あとは、新居(っていっても、アパートだが)に送れば、万事終了である。

 5日後、リクソンと4匹はラクヨウのはずれにあるボロアパートにいた。大学に近いし家賃も安いので妥協したのである。
 アパートの名前はなんてったっけな? 忘れてしまった。そのアパート、今はもう無いからね。
 当初、リクソンはエーフィだけアパートに連れて行くつもりだった。頭がいいし、戦闘能力もそこそこあったからね。しかし、前日になって状況が変わった。
 リクソンが、部屋でごろごろしていると、シャワーズがやってきてこんな事を言ったのである。
「ねぇ、リクソン。その・・・・・・、お願いがあるんだけど」
「ん? 何だよ」
「・・・・・・」
「黙ってたら、分かんないだろ。できることなら何でもしてやるから、言ってみ」
「ホント? ・・・・・・じゃあ、お願い、私もラクヨウに連れて行って」
「え? でもそれは」
 リクソンは立ち上がって部屋から出ようとした。が、足が動かない。見るとシャワーズが前足でしがみついていたのだ。
「そんなぁ~、15年も世話してもらって、私から何もできないで、どっか行っちゃうなんて嫌よぉぉ」
 な、泣いてる!? 泣きを入れられるのは、リクソンの最も苦手とするものだった。別に、意地悪しているわけではない。経済的な問題で、4匹も不自由しないだけの金がないだけのことだった。できれば、リクソンだって4匹とも連れて行きたいのだ。リクソンは迷った。迷いに迷ったが、やはり、4匹のうち1匹だけ連れて行くことはできなかった。
 1年目は、金に困らないわけではなかったが、バイトと奨学金をもらうことによって何とかした。その他、諸葛恪教授とひょんなことから仲良くなった。このことが、後々役に立つことになった。進級する際に、恪に経済面のことで相談をした。やはり、経済的にはきつかったのだ。
「よし、私に任せなさい」
 恪は胸を張ってそう言った。 
 どうするのか、リクソンには分かりかねたが、とりあえず言われた通りの事をした。といっても、奨学金の継続申請を出しただけなのだが。
 それから、しばらくして恪がリクソンに一通の通知を持ってきた。
「ほい、これ。給付金学生の採用通知」
「ええっ、これって、成績が超優秀でないともらえないっていうやつじゃないですか」
「表向きはね。ウラでは、教授が推薦した学生なら、ほぼ無条件でもらえちゃうのさ。私もこれを利用したクチだからね」
 もらえる金額は、1年で50万ルピー。すげぇ。1ヶ月で4万ルピー強。もっとも、バリョウのように成績が超優秀でこの制度を利用すると、さらに多くの金額を手にすることができるという。いやはや、人脈って大事だ。
 シャワーズたちはこの知らせに喜んでくれた。これなら、贅沢しなければバイトをしなくても何とかなるが、貯金もしたいので、2年の間はバイトを続けた。

 リクソンが大学2年のときにもう1つ大きな出来事があった。ある日のこと、
「なぁ、リクソン。今度この辺で道路の拡張工事があるって知ってた?」
 サンダースがそんなことを言ってきた。
「いやぁ、知らなかったなぁ」
「で、なんかこのアパート、ぶっ壊されるらしいぞ」
 じょ、冗談じゃないぞ。こんな掘り出し物を見つけたって言うのに。
 案の定、次の日に担当者が説得に来た。リクソンは強硬に反対したので、その日はあきらめて帰っていった。が、来る日も来る日もそんなことが続いて、リクソンはうんざりしてきた。リクソンは、住む場所と多額の補償金を提供してくれるならという条件付きで、立ち退きに合意した。
 で、提供されたのが、シドウの今住んでいる家というわけである。ちなみに補償金はいまだに半分以上が残っている。今は、バイトを辞め、給付金が足りず、どうしてもというときだけその金を使うことにしている。

                       ◇◇◇

「てな感じでね。今に、至っているというわけだよ」
 リクソンが締めくくると、リーフィアが言った。
「偶然に偶然が重なってここまで来たんですね」
「そういうことだね」
 リクソンは、自分の意思で親元を離れ、自力でここまで来たつもりだったが、実際には、恪先生や偶然によるところがほとんどだったな、ふりかってみてそう思った。












 













                                


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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