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1人と7匹の物語 番外超短編作品5

/1人と7匹の物語 番外超短編作品5

<登場キャラクター紹介・簡易版>
 諸葛恪(ショカツ=カク)・ラクヨウ大学文学部教授
 リクソン=ハクゲン・恪の愛弟子、そこそこ優秀 
 バリョウ=ヨウジョウ・リクソンの友人、むちゃくちゃ優秀 
 このほか多数


 セイリュウの首都、ラクヨウにある高層マンション。ここの12階の一室に1人の男性と2匹のポケモンが暮らしていた。
この部屋の住人、姓を諸葛、名を恪という。恪の朝は早い。勤め先は近くなのだが、職場で朝食を食べながら、新聞にじっくりと目を通すのが日課になっているためだ。
 朝の7時30分、恪はいつも通り大学のカフェテリアにいた。菓子パンを食べ、温かいコーヒーを飲みながら新聞に目を通す。こうしているときが一番幸せだ。に、しても最近は物騒な事件が多いなぁ。ま、自分とは関係の無いことだろうけどね。徐々に学生が多くなってくる。1人暮らしで朝から授業のある生徒はここで朝食を済ませる割合が高いという。
 彼の愛弟子、リクソン=ハクゲンもその1人。リクソンは必ず何かしら(いや、誰かしらかな)のポケモンを連れている。この日はシャワーズを連れていた。
「先生、おはようございます」
「おお、おはよう」
 リクソンと恪は挨拶を交わした。
「おや、他の6匹は留守番かな?」
「いえいえ、家に置いといたら何しでかすか分かりませんからね」
 そう言うと、6匹をボールから出した。
「ああ、やっと出れたぁ~」
「狭かったですよ」
「と、まぁ、こうしているわけですよ。普段は正門のところで出しているんですけどね」
 リクソンは7匹と楽しそうに会話をしている。
「しかしなぁ、これだけいると世話が大変だろ?」
「いえ、もう慣れました。そうだ、すごいものをご覧に入れましょう」
 そう言うと、リクソンは一杯の熱いコーヒーを買ってきた。白い湯気が立ち上っている。このままでは熱くて飲めないのは明らかだった。
「グレイシア、頼む」
「任せて」
 グレイシアがコーヒーにふっと冷気を吹きかけた。さっきまで立ち上っていた湯気がぴたりと止んだ。
「さあ、先生。飲んでみてください」
「アイスコーヒーになっちゃったんじゃないか、むっ、これは」
 恐ろしいほど冷たいかと思ったが、そんなことは無い。丁度良い温度になっている。一気飲みするには最適の温度だ。
「いやぁ、驚いた。すごいなぁ。ウチにいるのも氷タイプだから、今度特訓してみるか」
「ってさ。良かったね、グレイシア」
 グレイシアは、何も言わなかったが表情は嬉しそうだった。さて、コーヒーも飲んだことだしそろそろ研究室へ向かうとしよう。恪は、コーヒーの代金をリクソンに渡した。リクソンは別にいいですと言って、受け取ろうとしなかったが、恪の説得でようやく代金を受け取った。

 ◇◇◇
「・・・・・・よって、30年戦争に巻き込まれなかったオランダは、黄金期を迎えるのである。今日はちょっと早いけどここまでにしよう」
 恪は講義を終え、研究室に戻った。が、何かが違う、ような気がする。物の配置が変わっているわけではないのだけれど。ん? 見ると、時計の針がもとに戻っていた。恪は、授業に遅刻するのを避けるために、時計の針を5分だけ進めているのである。掃除の人が、気を遣って元に戻したのだろう。その時はそう思っていた。さて、この後は、「お楽しみの時間」だ。
 恪が正門に行くと、3人の青年が待っていた。リクソンと彼の友人バリョウ=ヨウジョウ、その弟バショクである。4人は月1回、こうして集まり、一緒に酒を飲みに行くのである。さて、これから行くかってあれ? 財布が無い。おかしいな、スラックスのポケットに入れたはずなんだが。研究室かな?
「すまん、ちょっと研究室に忘れ物をしたみたいだ。とってくるからちょっと待っててくれないかな?」
 親切にも、3人はついてきてくれた。3人はそれぞれポケモンを従えている。仮になんかいたとしても大丈夫、いるわけないだろうけど。
 ロックを解除して、ドアを開けた。
「え?」
 誰もいないはずの室内、だが、そこには黒い布をまとった生き物がいて、部屋を物色していた。
 何だ、お前は!? が、恪は恐怖で声が出なかった。42年生きてきたけど、これほどまで身の危険を感じたことはなかった。ごくりと唾を飲む。三十六計逃げるにしかずという言葉があるが、ここで、私が逃げれば彼らに危険が及ぶかもしれない。
 恪は、ジャケットの内ポケットからそっと、手戟を取り出した。
「せ、先生、何ですか? それ」
 リクソンのリーフィアが小声でたずねた。
「これは、章武に古くから伝わる護身用の武器、こうして使うのさッ」
 恪は素早く生き物に向かって手戟を投げつけた。が、その生き物はひらりと身を挺して、手戟をかわした。
「こんなもので、仕留めようとするとは、甘く見られたものだ」
「何者だ、正体を現せ」
 リクソンが恪にそっと言う。
「後は、こいつらに任せましょう」
 リクソンの7匹は戦闘態勢をとっていたが、恪は正直不安だった。大丈夫かなぁ。見た目はとてもかわいらしいのばかり・・・・・・。弱いんじゃないか? が、杞憂だった。
「一瞬で片付けてやるぜ、ぬおりゃああああッ!」
「へ?」
 サンダースは、体内に溜めていた電気を一気に放出した。部屋全体が閃光に包まれた。なんていう技だ、これって、机が焦げてる。相当量の電流が流れた証拠である。
「ふふっ、私を倒したくば、さらに精進することだな」
 部屋を物色していた不審者は、跡形もなく姿を消していた。まぁ、とにかく助かった。机などまた買えばいい話だ。4人は大学を出たが、言葉少なだった。居酒屋に入り、料理とビールを注文する。4人とも、ビールを一口飲むとようやく緊張状態から解放されたのか、次第に口数が多くなっていった。
「まぁ、助かって何よりだね」
「そーですね」
「まぁ、どんどん飲んで忘れよう」
 会話が弾む。
「ところで、先生」
 エーフィが恪に話しかける。
「ん?」
「さっき、失礼なこと思ってませんでした?」
「えっ? いやいやいやいや、まーったく身に覚えが無いなぁ。あ、バショク君、グラスが空だ」
(流された、できる・・・・・・)
「しかし、リクソン君、さっきの技は何だったんだい?」
「あれ、ですか?『でんげきは』とかいうらしいですよ」
「ふーん、おっと、料理が運ばれてきた」
 リクソンは、7匹と楽しそうに談笑している。42にもなって独り身の恪には、なんとなく羨ましく思えた。
 


 まだまだ続きます。コメントお待ちしております。

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    ――呂蒙 2009-10-03 (土) 00:20:05
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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