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1人と7匹の物語 番外超短編作品2 チョコレート注意報?

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 作呂蒙

 作者から皆様に質問です。2月14日は何の日でしょうか?


 第1章 前夜(2月13日)
 
 大学も長い春休みに入り、リクソンと7匹は家で過ごす時間が長くなった。
 ここ最近、テレビのニュースではある特集が盛んにされていた。それは、店の特集。特に洋菓子店である。
「ご覧ください! ここラクヨウのセイリュウデパートの特設会場には長蛇の列が・・・・・・」
 リポーターのこんな台詞はもう聞き飽きるほどになっていた。
(ふああぁ・・・・・・)
 リクソンにとっても、明日が何の日かは知っている。しかし、別に興味はなかった。リクソンにとって、お菓子は食べる物だ。それ以上でもそれ以下でもなかった。近頃、テレビで取りざたされているチョコレートとても同じこと。好きなときに買い、そして食す。ただそれだけのことだ。リクソンがそういう冷めた考えの持ち主のためなのか、エーフィ、サンダース、ブラッキーも関心を示さなかった。ちなみにブラッキーは甘いものが苦手で、あんこやチョコレートはその主たる典型であった。
 一方女性陣(といってもメスか)はというと・・・・・・。
 その前日から、リクソンにどんなチョコを渡すかで持ち切りだった。
「シャワーズさん、リクソンさんはどんなチョコが好きなんですか?」
 リーフィアが聞く。
「一口で言えば、あまり甘くないやつね。例えばこんなの」
 シャワーズは本棚から海外旅行のガイドブックを1冊抜き取り、ページを開いた。そこはベルギーのみやげ物特集のページだった。
「これね。リクソンが、この前海外旅行して買ってきたのがこれだったわ」
「『ゴディバ』ね」
「今からお店に行って買いますか?」
「いや、買わないわよ。裏ルートで・・・・・・」
 といっても、別に店に忍び込んで盗むといった非合法なやり方ではなく、リクソンの父親が経営する会社からいくつかまわしてもらう、という手段をとっていた。いつも、売り切れないようにと注文するのだが、結局は余らしてしまうと、父親が言ったのを覚えていたシャワーズはそこに目をつけた。許可をもらって格安の値段で買取り、家まで送ってもらうことにしていた。今日がその荷物の届く日。そして、箱から取り出して、次の日にリクソンに渡す。というのがシャワーズのやり方だった。
「何かそれって、ぜんぜん愛がこもっていないような・・・・・・」
 ブースターが言うのも最もだった。が、シャワーズはこう切り返した。
「大丈夫、リクソンは単純だから、チョコを渡して愛のこもった眼差しで見つめれば喜ぶわ」
「ほんとですか?」
「試してみれば?」
「はい」
 その日、リーフィアは期待に胸膨らませながら、寝床に入った。

 第2章 当日(2月14日)
 
 この日も寒い日であった。リクソンはなかなかベッドから出ようとしない。シャワーズが起こしに来る。
「リクソン、リクソン。朝よ」
 声をかけても起きない。
「ねー、リクソン」
 起きそうにないので、シャワーズはイルカの尾びれのような長く太い尻尾でバシバシとたたき始めた。
 リクソンはやむなく起きる。これで起きないと、水の波動が襲い掛かってくる。無駄に抵抗しないほうが得策というものだ。
 
 ◇◇◇

 そんなこんなで、今年も恒例行事のチョコ渡しが始まった。リクソン自身も嬉しくない訳ではないので、頭をなでてやり、ありがとうとお礼を言う。で、最後はリーフィアの番。チョコを渡したリーフィアは、もじもじしながら、茶色の瞳でリクソンを見つめる。
「(ええっ、オレ何かまずいことしちゃったか?)一体、ど、どうしたの?」
「あの・・・・・・」
 遠慮がちに言葉を発するリーフィア。
「え?」
「膝に乗ってもいいですか?」
「あ、うん。何だそんなことか」
 椅子に座っているリクソンの膝に飛び乗ったリーフィアは、尚もリクソンを見つめる。
(か、かわいい。もうだめだ。抱きしめずにはいられない・・・・・・)
 リクソンはリーフィアを抱きしめる。
「え、ちょ、ちょっとリクソンさん!?」
「リーフィア」
「だめですよぉ、皆見てるんですから、恥ずかしいですよぉ」
「頼む、しばらくこうさせてくれ。(あったかい・・・・・・)」
「リクソンさん・・・・・・」
 リクソンは、この時背筋に冷たいものが走った。リクソンとリーフィアのラブラブシーンを見せ付けられている3匹からは今すぐにでも「必殺技」が飛んできそうな感じである。寒気の原因はこれと見て間違いはなさそうであった。

 ◇◇◇

 リクソンは、7匹をつれて大学に来ていた。別に授業があるわけではないのだけれど、部活やサークルをする学生がいるため、ラウンジや図書館、生協等は開いている。
 また、リクソンのように友達と談笑しに来て、ついでに昼御飯を済ませてしまう学生も多くいる。リクソンのように自炊生活をしている人にとっては、毎回毎回自炊というのもなかなか面倒なものなのだ。
 リクソンと友人カンネイ、バリョウとその弟バショク。この4人が集まって昼食というのも珍しいことではなかった。

 第3章 チョコレート地獄

 昼食まではまだ少し時間があるので、しばし4人は談笑する。暖房が効いている上、炎タイプのポケモンが3匹側にいるので、少し暑いくらいだ。
 ふいに、カンネイがこんな事を言った。
「そういえば、バショク君は手持ちのポケモンっていないの?」
「いますよ? そのくらい。結構頭のいいやつなんですよ。ほんとに学者みたいな名前だし。おい、出ておいで」
「え? こいつって確か・・・・・・」
 水色で、つるりとした体。背中には甲羅を背負っていて、やさしい眼差しがこちらに向けられている。
「こいつが自分の手持ちのラプラスです。兄さんのは炎タイプなんでその逆になりますね」
 こうもポケモンがたくさんいると、ポケモンを持っていない人々の視線がリクソンたちに集中する。正直気になって仕方がないが、それは、ポケモンを手元に置く時点で覚悟しなければならないことだ。この国では、ポケモンを持つこと自体が珍しいことなのだ。火炎放射や冷凍ビームの乱射で追い払うのは簡単だが、そんなことをすれば一発で除籍処分になる。
 気軽に誰もがポケモンを持てないのは、かつて、モラルのかけらもないトレーナーが増えたためだという。その為、いろいろと厳しい制限や法律ができてしまったためだ。


 ◇◇◇

 4人が談笑していると、何人かの女子学生がやってきた。実はバリョウと同じゼミに所属する学生なのだが、バリョウにこんな事を聞いてきた。
「チョコレートもうもらった?」
「いいや」
「あ、丁度良かったわ。これ良かったらどうぞ」
「あ、これも」
「え? こんなに・・・・・・」
 その量たるや尋常なものではなかった。紙袋の中に沢山のチョコレートが入っている。そんな袋をバリョウは3袋ももらってしまった。
「あらら、兄さん意外とモテるんだね」
「いや、こんな食べらんないよ」
 困った。かといって捨てるとか他人にあげるなんていうのもできなかった。男として最低ではないか。
 しかし、同様のことは残りの3人にも起こった。まあ、チョコレートをもらったのだが、その量が凄まじいものだった。
「ラプラス、これってモテない人に対するおちょくりかな」
「いや、そうは思わないけど・・・・・・。でもどうする? これ」
「う~ん」
 エーフィが言った。
「とにかくさ、選択肢は4つだよ。その1 捨てる。その2 別の人にあげる。その3 何とか全部食べ切る。その4 家に持って帰ってちょっとずつ食べる」
 1と2は論外。男として最低だ。現実的なのは4だが、こんな量1人で消化し切るのは不可能だ。とすると3か・・・・・・。
「はああああぁ・・・・・・」
 チョコレートをもらった嬉しさよりも、消化せねばならないという重圧が勝ってしまっていた。しかし、去年はこんなことにはならなかったのに、何故今年に限ってこんな事になったのだろう?
「んじゃ、賞味期限が短いものから、な」
 カンネイの言うとおりにし、賞味期限が短いものを探す。
「なんか、某国の事業仕分けみたい・・・・・・」
「そう言うな・・・・・・」
 と、その時バリョウの手が止まった。チョコレートの箱に紙が貼ってあったのだ。何か文字が書いてある。紙を剥がしてみると、ここにはこう書かれてあった。
「バリョウくんのワンちゃんへ」
「へ? まさかこれ・・・・・・。なぁ、まさかだとは思うけど、このチョコ、オレたちにじゃなくて、ウインディたちにかも・・・・・・」
「嘘でしょ?」
 が、バリョウの仮説は当たっていた。
「いや、ほんとかも」
 カンネイのもらったチョコについていた紙は、「カンネイくんのお馬さんへ」であった。リクソンとバショクのも同様だった。
 4人はそれぞれのポケモンをテーブルに呼んだ。皆一様に拒絶反応を見せた。
「・・・・・・というわけだ」
「えええええええええ!? 絶対無理」
 オスのポケモンだけにとどまるかと思ったが、被害はシャワーズたちメスのポケモンにまで及んだ。
「そんな、これって拷問かしら・・・・・・」
 しかし、悪いことに悪いことが重なるというのは世の摂理である。リクソンの恩師 諸葛恪が血相を変えて飛んできた。
「リクソン君、さっき生徒たちがやってきて・・・・・・」
「・・・・・・」
 被害者が1人増えた。恪のところにも手持ちのポケモン宛のチョコレートを生徒が持ってきたという。
「たのむよ、これ、一緒に消化して」
「はい・・・・・・」
 調べてみてわかったのだが、このチョコレートどれも賞味期限が長くない。いくらポケモンでも、こんな大量のチョコを消化するのは不可能だ。まあ、カビゴンなら話は別だろうけど。
 ウインディが、意を決して、チョコレートを1粒食べる。カカオの風味が口の中に広がる。おいしいのだけれど、これからこんな量のチョコを食べなければいけないと思うと、うまいと言う気にもなれなかった。先ほどの学生が来て、おいしいかどうか聞いてくる。ウインディは無言で首を縦に振った。口を開けると勢いあまって火炎放射をしてしまいそうだ。それを察したバリョウが「バカ、我慢しろ」と眼で制した。学生たちは満足したのか去っていった。
 それを見たバリョウが好機とばかりにこう言った。
「ウインディ、加勢する」
「バリョウ・・・・・・」
「ラプラス、お前だけにこんな苦労はさせない」
「バショク」
 リクソンたちと手持ちのポケモンたちでチョコレートは確実に減っていったが、何か妙に体が熱い。おまけに口の中が甘くて仕方がない。水ですすいでも焼け石に水。お茶で中和するより他はなかった。何だかいや確実に今日の昼飯は、チョコレートになりそうだ。食べるペースが確実に落ちていく。
「う~ん、何か、頭に血が上って・・・・・・」
「ああっ、お姉ちゃん、しっかりして」
「グレイシア! シャワーズ、オーロラビームで体を冷やしてやるんだ」
「む、無理、今なんか体が熱くて、ぬるま湯しか出ない」
 他に氷タイプの技が使えるラプラスも同様であった。
「ボクも、もう無理・・・・・・」
「ああっ、ラプラスしっかりしろ」
 これ以上やると、ポケモンが死んでしまいかねない。ボロボロの状態になるまでがんばっても、まだ半分残っていた。
「口の中激甘」
 ブラックコーヒーで中和しても、まだ口の中に違和感が残る。何でこんな事になってしまったんだ。その疑問は偶然やっていたテレビのCMで解けた。
「これからの時代、女性が男性にチョコを渡すのはもう古いっ! 女性がチョコを渡す相手はポケモンだあっ!」

(なんだよ、このCM )
 忌々しげに画面を見つめる一同。
「ポケモンはチョコがダイスキ、ほ~ら、このベロリンガの顔を見て頂戴! チョコを食べさせれば食べさせるほど、ポケモンは喜ぶッッ!! セイリュウデパート特設売り場で今日まで! 今日を過ぎたら二度と手に入らないぞ!」
(何なんだ?)
 この胡散臭いCMに先ほどの学生たちは乗せられたらしい。しかし、リクソンが驚くのはこれからだった。
(げっ、親父・・・・・・)
「このチョコレートはおいしすぎるという注意報が出ているぞっ!」
 リクソンの父でハクゲン財閥会長、シュウユ=ハクゲン自らのアピールの後、「ハクゲン製菓」という文字が画面に出て、CMは終わった。
(そうか、わけの分からん騒動の発端は親父だったか~)

 ◇◇◇

「はっはっは、『ポケモンにいっぱいチョコをあげようキャンペーン』大成功だったな。前年と比べて利益が3倍になったぞ」
 ご満悦のシュウユ。
「しかり、笑いが止まりませんな、はっはっは」
 と、秘書。
「はっはっはっはっはっ」
 しかし、この強引な利益倍増計画の犠牲者が自分の息子であるとは、さしものシュウユも気づいていなかった。

「1人と7匹の物語 番外超短編作品2 チョコレート注意報?」終わり


 追記
 チョコレートを何十個も食べるのは私にはできません・・・・・・(作者)

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • テストコメント
    ――呂蒙 2010-02-14 (日) 04:02:18
  • あれ? 最初の質問文に「?」が入ってる。
    どなたか存じませんが、ありがとうございました。
    (入れたの私じゃありません)
    ――呂蒙 2010-02-14 (日) 17:17:22
  • オイ!ヤリスギだ!
    やり過ぎはヨクナイ
    ――ガキのころチョコレート1パック食べた ? 2010-02-14 (日) 23:36:28
  • 一つも貰えない俺よりはましさ・・・
    ―― 2010-02-15 (月) 00:14:11
  • ↑↑の方へ
    会長よりメッセージが届きました。
    シュウユ「利益を大幅に増やすには、こうするしかあるまいて」
    ――呂蒙 2010-02-15 (月) 12:31:44
  • ご心中お察しいたします
    ――呂蒙 2010-02-15 (月) 12:35:15
お名前:

 


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Last-modified: 2010-02-13 (土) 00:00:00
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