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1人と7匹の物語 ・ 第4話 ・ 連休(前編)

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 時が経つのは早いものだ。5月になり、街路樹の緑の色も濃くなってくるのがわかる。
「あー、やっぱ、朝の風は気持ちいいね、リーフィア」
「ほんとですね」
 リクソンとリーフィアは、道を歩きながらそんな会話をする。
「それよか、今度の大型連休、みんなでどこかへ行こうか」
「実家には帰らなくていいんですか?」
「いーよ、別に」
 どうせ、実家に帰ったところで父親から説教じみた話を聞かされるだけだ。それに、最近の出来事のせいもあって、みんな神経がピリピリしているだろうから、丁度いい息抜きになるかもしれない。しばらく歩いて、家に着いた。
「ただいまー」
「あ、お帰り、リクソン」
 特徴のある長い尻尾を振りながら、シャワーズがこちらにやってきた。他にも、5匹の色とりどりのポケモンがリビングにいる。見ているだけならカラフルなのだが、実際面倒を見るとなると、かなり大変である。しかし、それももう慣れてしまった。今では、7匹揃っていないほうが不自然な感じさえする。
 7匹に朝食を作ってやり、それが済むと、速攻で片付ける。リーフィアやグレイシア、シャワーズが手伝ってくれるので、今では、その作業もそれほど苦ではない。さて、今日は日曜だしのんびりするとしよう。大型連休は来週から1週間、どこへ行くかは夕食のときにでも話題にして、話合いさせればいいだろう。
(それにしても・・・、ここのところの7匹の活躍は本当にすごかった。数の上では劣勢であったのに、連戦連勝。先日の・・・、ってこんなときに客か)
 リクソンの思考は、来客を告げるベルで中断させられた。何と、タイミングの悪い・・・。
「誰だよ、こんな時に。誰か応対してくれ」
「あ、じゃあ、私が・・・」
「ありがとー、グレイシア。新聞の勧誘だったら撃退してもいーから」
 全体的に青系の体毛を持ち、顔から垂れ下がる飾り毛が特徴のポケモンは、玄関のほうへと歩いていった。
「あ、バリョウさん」
「リクソンいる?」
「ええ。リクソン、バリョウさん」
「あ、うん。わかった、今行くよ」
 玄関には、バリョウが紙袋を手に立っていた。
「あ、あがって。ちょっと、うるさいけど・・・」
 リクソンはバリョウを中に招き入れた。
「あ、そうだ、エーフィって今いる?」
 バリョウが尋ねる。
「いるけど?」
 リビングには6匹のポケモンがめいめいくつろいでいる。
「こんにちは」
 バリョウが挨拶をすると、
「こんにちは」
 と、それぞれ返す。
「あ、エーフィ、これ。この間助けてもらったお礼」
 バリョウは、紙袋から箱を取り出して、エーフィに渡した。中身は、お菓子の詰め合わせ。
「いいよ、そんな。悪いよ」
「いや、でもあの時、エーフィの超能力がなかったら、どうなっていたか・・・」
 この会話、お互いにあまり聞かれたくなかったので小声で交わされていた。が、イーブイはもともと聴力に優れた種族といわれている。無論、進化してもその性質は変わらないので、この会話、ほとんど聞かれてしまっていた。
「この間、何かあったの?」
 シャワーズがバリョウに尋ねる。
「まぁ、なかった・・・、わけじゃない」
 バリョウは、咄嗟にそう答えた。相手は頭のいいシャワーズ。「ない」なんて答えたら、「何もないのにお礼なんかしないでしょ」と、言われるのは明白だった。そのことを予想していたバリョウの方が一枚上手と言うべきか。
「じゃあ、何があったの?」
「ん、エーフィと街を歩いているときに、野生のポケモンに襲われて、エーフィが撃退してくれたのさ」
 バリョウは、そう答えた。この時、かなりあせっていたが表には出さなかった。
「あ、そうだったの・・・」
(やれやれ。まぁ、まんざら嘘でもなかったし。ただ、相手が悪いやつとはいえ、重傷を負わせて見殺しにしてしまったという事実は、永遠に自分の胸に秘めておきたかった。これは、誰にも知られたくない。自分を守ってくれたエーフィの名誉のためにも)
(バリョウさん・・・)
 エーフィには、バリョウが何を考えているか、全て読み取れた。そのたびに思ってしまう。本当に優しい人なんだな、と。

 夕食後、バリョウが持ってきたお菓子を食べながら、連休にどこへ行くかの話し合いがされた。様々な意見が出る。
「ハワイ」
「今からじゃ、飛行機のチケットは無理、却下」
「ユ○バーサルスタジオ」
「んーまぁ、かなり混むと思うけど、とりあえず保留」
 といった会話が交わされる。が、とにかくゆっくりしたい・・・というのが、全員の一致した希望だった。
 で、結局、温泉になった。
「じゃあ、遠いけど、ミササ温泉でいいか?」
「遠過ぎるんじゃない?」
「いや、たまには遠出もいいでしょ」
「ホテルの予約とか取れるんですか?」
「ん、ホテルには泊まらないぞ」
「えっ?日帰りかよ?」
「父さんの会社の保養所がある。多分泊めてくれるだろう」
 早速、リクソンは予約の電話を入れた。名前を言うと、二つ返事で予約が取れた。権威ってすげぇ、と思う瞬間であった。
「予約取れたよ。3泊もすれば、日頃の疲れも取れるでしょ」
「あの、リクソン・・・」
 グレイシアが遠慮がちに話しかけてきた。まぁ、言いたいことは予想がつくが。
「私、氷タイプなんだけど・・・」
「そんなことは織り込み済みだよ。そこには、水風呂がついてるから、それだったら平気でしょ」
「なら、早く言ってよ」 
 翌日、リクソンは列車のチケットを予約し、これで準備万端。

 7日後、リクソンは、5万ルピーの現金を持ち、旅行カバンに着替えと身のまわりの物を詰め込み、一行を引き連れ、家を出た。




  


 コメント、お待ちしております。あと、この作品、このままだと後編が前編よりかなり長くなりそうなので、バランスを考えて前・中・後の構成になりそうです。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 新wikiに入れなくなり、こっちで読ませて戴きましたが、新wikiの方と微妙に展開が違うと思うのは、私だけでしょうか?
    750(ナナハン)なんて向こうで、出てきました?
    ――ナルト ? 2009-11-15 (日) 21:11:22
  • え、え~っとですね、その、大まかな話の流れは覚えているんですが、
    バックアップをとっていない部分の細かい内容を忘れてしまったので、
    リメイク(?)いたしました。なので、トリックや結末は同じです。
    混乱させて申し訳ありません。
    ――呂蒙 2009-11-15 (日) 21:42:59
  • このひとつ上と、二つ上のコメントは、ここのサーバーが落ちたときに、
    避難場所で頂いたコメントと、それへのお礼のコメントです。
    と、いうことを念のため記載しておきます。それにしても、
    やはりちゃんとバックアップを取っておくべきでした。
    ――呂蒙 2009-11-16 (月) 21:16:40
  • ミスをするのが人間だ!
    ミスをしないのがロボットだ!
    ―― 2009-11-25 (水) 22:18:05
  • ミスっていうか、あの時は「バックアップは明日でいいか」
    なんて思ってたら、次の日にサーバーが落ちたんですね。
    やっぱ、今やっておけることは先送りするもんじゃない
    ですね。
    ――呂蒙 2009-11-26 (木) 03:02:13
  • 知力(笑)
    魅力(笑)
    ―― 2009-12-02 (水) 20:30:52
  • お褒めですね? これは。
    ありがとうがざいます。
    ――呂蒙 2009-12-02 (水) 21:04:02
  • ×「ありがとうがざいます」
    ○「ありがとうございます」
    以上訂正でした
    ――呂蒙 2009-12-03 (木) 00:11:31
  • を??
    カメックスの「レートービーム」か?
    ―― 2009-12-13 (日) 22:31:36
  • ああ、最後のところですか。
    すんなり「リーフブレード」で
    ぶちのめされてもいいんですけどね、
    かといって、単に裏をかくだけじゃ・・・・・・
    まぁ、構想中ですので少々お待ちください。
    ――呂蒙 2009-12-14 (月) 01:03:41
お名前:



 

 


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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