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1人と7匹の物語 ・ 第1話

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<新たに登場するポケモン>
ブースター(20)・性別 牝
ラクヨウシティ北方のホクヘイタウンの森に多くの仲間と住んでいたが、
突如、森を焼き討ちにされ、何者かに仲間と連れ去られ、どこかの施設に
収容されたが、さらにどこかに移送される最中に脱走する。
体力78 攻撃85 防御67 知力72 教養45


 暖かな春の日差しがあたりに降り注いでいる。
 ここは、首都ラクヨウシティの西方、シドウタウンの住宅街。
 春ともなれば、人間ポケモン問わず活動的になる・・・はずである。
 この街の一角にある家の主、リクソンはソファでうとうとしていた。昨夜、友人たちと夜通し酒を飲んでいてほとんど寝ていないのだ。
 が、そんなことポケモンたちの知ったことではない。リクソンに次々と要求が降りかかる。
「リクソーン、ゲームしようぜ」
 ブラッキーは、どこで習得したのか、ゲームがとてもうまい。が、卑怯な手をよく使うので内心うんざりしていた。
「イヤだ。と言ったら?」
「あー、じゃあいい」
 ふう、やれやれ。が、次の瞬間、体に痛みが走った。まさか・・・。
「お目覚め?」
 やっぱりお前か・・・。黄色と白の体毛を持ち、それは剛毛で武器にさえなる。
「こら、サンダース! 家の中で技を使うなといってるだろ!!今度言いつけを破ったら、お仕置きだ」
「月に代わって?」
「うるさい!!!」
 言って聞くようなやつなら、苦労はしないのだ。
 と、そろそろ昼ご飯の時間だ。何か材料を買いに行かなければならない。
 リクソンは、グレイシアとシャワーズを残して買い物に出た。最近は町中でも、人間がポケモンに襲われているので、護衛は多いに越したことはない。
 買い物を無事に終えて、いつもの帰り道を急ぐ。が、今日は、「いつも」の帰り道ではなかった。
 家まであと10分というところまで時に、エーフィがふいにこう言った。
「ねえ、リクソン。何か変な音しない?」
「ん?そうか?みんなは?」
「する、します」
 と異口同音に答えた。が、やっぱりリクソンには聞こえなかった。しかし、リクソンにも聞こえてくるようになった。何だか、地響きに近いような音である。でも、ここは山地ではないので、落石や噴火は起こり得なかった。
 すると、今度は1匹のポケモンが駆けてきた。4本足で、オレンジと乳白色の豊かな体毛を持っていた。
「え?」
 それは、両者の反応であった。リクソン側からしたら、「何でここに?」ということになるし、ブースターのほうからしたら、「何で4匹も?」ということである。
「お、お願いです。助けてください!!」
「へ?」
 ますます訳がわからない。が、少なくともさっきの地響きの主ではなさそうだった。ケガをしているようなので、とりあえず手当てしてやらないと・・・。
 が、タイミングの悪いことにその地響きの主が現れた。げげっ・・・。オーダイル。というか、何で
こんなのがいるのだ?
「おい、人間」
「ん?オレ?」
「死にたくなければ、そのブースターをこっちに渡してもらおうか」
「何故?」
「そいつは、我々のものだからだ」
「あ、そう。しかし、こいつは自分のでね。見当違いでは?」
「しらばっくれるのなら、お前を殺してその4匹も奪ってやる」
 そういうと、本当に襲いかかってきた。なんて短絡的な思考の持ち主だ。
「ここは、私に任せてくださいっ」
 リーフィアは、持ち前の能力で植物の蔓を操って、オーダイルの動きを封じ込めた。これが「くさ
むすび」か、初めて見た。
「さあっ、立ち去らないのなら、この蔓で絞め殺しますよ?」
「ええいっ、小癪なっ。こんなもの」
 オーダイルは馬鹿力で、蔓を引きちぎった。
「えっ、そんな・・・」
「死にやが・・・」
 しかし、4匹を相手にそう簡単に事が進むはずはなかった。
「オレの実力、見せてやる!!」
 そう言うと、サンダースは、オーダイルに「かみなり」を落とした。リクソンは眩しさのあまり、
目を覆ったので、当たる瞬間は見ていないが、倒れているオーダイルから白煙が上がっているところを見ると、多分、直撃したのだろう。
 しかし、こいつらこんなに強かったんだ。ある程度鍛えておいてよかったな・・・。
「なぁ、サンダース。あいつ死んじゃったのか?」
「急所は一応はずしたから、死んではいないと思うぜ。本気かつ急所だったら今頃、黒コゲだからな」
「しかし、お前すごいな・・・」
 リクソンは途中で、バリョウの家に寄った。彼の家は医者で、彼もまた医者の卵だから簡単な治療位してもらえるだろう。
「ウチの対象は人間なんだけど・・・」
 と言いつつも、ブースターのケガを診てくれた。
「出血はひどいけど、傷は浅いからすぐ治るよ。ただ、治り具合を見たいから、1週間後にまた来てくれ」
 そう言って、傷口を消毒して包帯を巻いてくれた。
「ところでさ、こいつってリクソンのポケモン?」
「いやそういうわけじゃないんだけど・・・」
「じゃあ、リクソン家で面倒見てやれよ」
 ・・・まぁ、少なくとも仲間たちは喜ぶだろう。が、リクソンの負担が増えることは間違いなかった。
 しかし、最終的な判断はブースターに委ねた。
 1週間後、傷も全快したブースターがリクソンにこう言ってきた。
「リクソンさん。私は、ホクヘイタウンの森に住んでいました。けれど、ある日大火事で森は焼けて、住む場所を失いその後、人間に捕まってどこかの建物に入れられ、さらにどこかに移される途中に隙を見て逃げてきたんです。そして・・・」
「ひどい、ねぇ、リクソンっ、私たちでそいつらをとっ捕まえて、牢獄へ送ってやりましょうよ」
 そうシャワーズが言ってきた。
「もちろんだ。人間として最低の部類に属するヤツは許しておけないからな」
 が、内心その場の勢いで言ってしまったことをリクソンは少し後悔した。
 ちなみに、ブースターは、当分の間リクソンの家にいることになった。
 リクソンは、1人ベランダに出て、空を見上げた。そしてこう呟いた。
「賽は投げられたな」
 と。
 


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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