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黒炎に染まっていた新人

/黒炎に染まっていた新人

作者GALD
色々と問題なこと入れるつもりです。官能とかと思う方はご遠慮ください。



薄暗い夜、埋葬するための塔があるからだろうか、死者の魂が見えて曇っているのかと思うぐらい塔の中は霧が濃いのだろう。この塔は死んだものを埋葬するためにできた場所だ。中はゴーストタイプにとって住みやすいのだろう。ゴースたちに住みかでもあった。
けれど塔の外の町だからと言って危険がないわけではない。白い霧にまぎれて、ゴーストタイプがうろついていたりするほど、ある種の幽霊スポットなのかもしれない。
そんな中でも僕のお爺さんは夜中に出歩いて町に誤って入り込んできたポケモンや捨てられたポケモンが霧の中でさ迷っているのを町の外逃がしたり、つれ帰ってきて育てたりする善意だけで動いている優しさで、僕も連れてきてもらった者の一匹だった。
霊気のようなものが立ち込めている中、昨夜もみまわりに行って一匹連れて帰ってきたいた、どんなポケモンだったかは全く記憶にないけど。
いつもお爺さんの帰りを待って寝て起きるのが遅いため寝ぼけている僕でも朝起きてこんなに騒がしいのだから、なにかあったのはわかる。
ここであることなんて大抵は連れて帰ってきたものの馴染めずにいてうまくやっていけないという流れだ。馴染めないと言ってもこの家にいるのは小柄なポケモンばかりで大型のものは帰る場所があるだろうし、捨てるやつもいないだろう。
しかし、どうもおかしいのは僕の同僚達の様子がおかしい。いつもなら種族は違えどすぐに仲良くやろうとするはずだ。それが広場に集まって誰も新入りの部屋に入ろうしていない。
「困ったもんじゃの。」
お爺さんも頭を抱え込んでいた。そこで目に入ったのが草が萎れ泣きついているナゾノクサを抱きながらなだめていた。朝から喧嘩したのだろうか、この家の中で今一番年上が僕、だから基本的に僕が新人と会うことになっている。年上だし付き合うのは慣れているからうまい方だろう。言っておくけど僕はまだ19歳ぐらいだ、年上=おっさんとか老人だと思うんじゃないぞ。進化すれば外に出て十分やっていける自信があるんだからな。
「どうしたの?」
「実はのぉ、昨日連れてきたんじゃがどうも変わったやつでの。この子も怯えて飛び出してきてしまったんじゃ。炎タイプだから怖いじゃろう。」
「僕が行ってくるよ。」
周りのピッピやワンリキーなどはいつもなら元気づけてくれるのだが今回は止めくるので一層中にいるのがだれか気になった。どうせ出てきた奴があんな調子だから動揺しているだけだろう。
初対面同士で食い違った位でそこまでするとは言ってもどうせ炎タイプの小さいものと言ったら数が知れているし、そこまで恐れることはない。ガーディとかヒトカゲとかその辺だろうね。
「気をつけるんじゃぞ。ついでにそこの食事を持って言ってやってくれ。」
お爺さんの足元にはトレイの上に数十個の木の実が乗っているのが置いてあった。ナゾノクサが怯えて出てきて中に置くのを忘れたのだろう。僕でも2~3個しか食べないのにいったいどんな奴なんだ。炎タイプって実は食いしん坊で僕だけ例外なのかな。
「お前さんだけが頼りじゃ。同じ属性同士仲良くしてやってくれ。」
なぜだかお爺さんのほうは心配を全くしていない様子だった。このせいで僕はなめきっていた。自分の変な自信と勇気におぼれていたのだろう。
部屋の戸をあけて堂々入った瞬間に僕は溺れるほどの勇気からつまみ出された。向かい合うだけでひしひしと伝わってくる覇気のようなもの。生きている空気が違いすぎたのか、足はすくんでトレイを自然と落とした音は全く耳に入らなかった。
「ちび狐が今度は何の用だ。用がないなら出て行け。」
怒鳴り声に驚かされただけではなく、鋭く尖った視線を送りだす眼は僕を殺そうとしていてもおかしくない、体がすくんでいた。
部屋の奥にいるのは相手なのに自分が逃げ場のない所にまで追い詰められた緊迫感、こんな空気の中にいたら本当に恐怖と黒色以外忘れてしまいそうなほど頭に焼きついた。
体は黒くて目つきは悪く、尻尾の先は消えることなんてないぐらいに勢いよく黒く不気味に炎が燃え盛っていた。体系から見ればドラゴンタイプに近いのだが、飛行と炎を合わせ持つリザードンという種族らしいのだが黒いとは聞いたことはない。町の中をふらついていればトレーナーが連れているのを何度か目にしたが、黒ではなかった。噂に聞く色違いという希少種なのだろうか。
だとすれば逆になんでこんなところにいるのだろうか、普通なら珍しいし強いわけだから持ち主がいても問題はない。訳ありだからこそこんなところに来るのだろうけど、毎日こんな息苦しい部屋に来るのか僕はと思うと嫌になってくる。
「食事置いとくから・・・それじゃ。」
言うこと置くものだけ置いて部屋から逃げ出したというのが正確だろう。あんな殺意や憎悪に満ちた空間に長時間いたら命の取り合いしているわけでもないのにおかしくなりそうだ。
僕は何もしていないはずなんだけどね。何か気に触れるような事でもしたのかな。
「これから毎日頼めるかの、無理はせんでもええぞ。」
心配して見に来てくれたのだろう、あんなのがいるなんて思いもしなかった。大事なことは最初に報告しとて欲しい。
さっきの圧力と安心が混ざってもどかしい、気温の急な変化について行けないのと同じようなものだ。体調の方もあまり好ましくなく、顔色でも悪いのだろう。顔を顔を見て心配そうにしている。
「大丈夫、僕がやるから。心配しないで、何かあったら呼んでよ。」
素直じゃない僕は本心を伏せて部屋に戻って倒れた。僕の部屋はちょうどさっきのリザードンのいた空き部屋の隣だったので幸いにも廊下で倒れずには済んだものの、起きる気力どころか半端じゃないくらい体が重たく、おまけに眠気まで襲ってきて夜まで起き上がることはなかった。


俺はなにしてたんだ?そうか、墓を見に行くために塔を登ったんだったな。眺めてると不思議と腕に力が入って手を握りしめて、怒りと憎しみでいっぱいで叫んでいた。その場に立ち尽くして泣き叫んでいた。
主は落石でなくなってしまった。その時俺はボールに入ったまま放り投げらたから、何が起こったかはいまいち知らないが、ボールの外の光景は悲惨でおよそのことは把握でき、自分は何もできなかった、それだけで十分だった。
あの時も俺はその場で泣き叫ぶことしかできなかった。旅に出たばかりでヒトカゲだった俺は野生に投げ出される以外何もなかった。必死に生き残ろうとして、見てられないような日々を繰り返してリザードンにまでなったのに、ここでこうして向き合うと未熟さしか感じられなかった。
お月見山での落石事故死が一人、死因はもちろんのこと直撃で即死、医者に診てもらうまでもない残酷な最期だった。その時連れていた数匹も同じ道をついて行った、俺一人残してポケモンと一緒にこの塔に永遠に眠ってしまった。人間を埋葬するのは場違いらしいが、親がそうしてやってしてやったらしい。
俺なんかを選んだ奴なんだ、俺に優しく接してくれる俺のいるべき場所のようなものだった。馬鹿にされることは日常茶飯事な俺を連れ出してくれたぐらいのやつだ。よほどポケモンが好きだったんだろうな。最悪の状況に遭遇してしまった以上、あいつにとってこれが幸せなのかもしれない。
過去を振り返り自分が弱かったのに、後悔した?悲しんだ?虚しいかった?違ったんだ、俺は完全に自分を恨んでいた。
何も変えられないのに唸り声だけが響いていた。誰かが聞けば「怪物が出る」などといって噂になりそうな唸り声は低く響き渡っていた。けれど、奇妙なのは叫び声ではなかった。知らぬ間に俺の周りを薄暗く雨雲が取り囲むように覆っていた。雲は濃さを増していき紫色の毒ガスが充満したような風景に取り囲まれていた。
「お前は憎いんだろう?自分が嫌なんだろ?お前の怨念、見えるぞぉ。」
どうやら住人達のお出ましらしい。怨念の集まりとはまた戦いずらいのに絡まれたものだ。まともに返事を返すわけもなく黙り込んでいた。俺は確かに自分の存在価値なんてないに等しいと思っていた。今の俺がいくら強くても過去は変えられないものだ。
「返事しないとは釣れないなぁ。それにお前は赤なんかじゃない、そんな色に合わないなぁ。ケケケケ。」
奇妙な笑い声と共に取り囲む気体が身を寄せてきたので、切れ味が良すぎるほど切れる爪をふるったがかすりもしなかった。手ごたえなんて全く感じられなく何もできずに戸惑う内に紫の雲に取り込まれていくしかなかった。
「お前も俺達とおんなじ色にしてやるよ。黒炎ってのも悪くないだろ。」
周りから奇妙な黒い炎が全方向から迫ってきて炎タイプなのにも珍しく火傷したような熱い痛みが襲い、全身の皮がめくれそうな位にまで達し、痛みが治まり絶句した時には俺の体は焦がされたみたいに黒色に染まりきっていた。ダメージと疲労も一気に蓄積され、一心不乱の中火炎放射を放つも出てくるのは、鬼火でもないのに憎悪でも込めて吐き出したような黒い炎。
蝕まれた俺の生れ果ての姿と同じように技までもが侵されていた。色違いのような姿になってしまったが尻尾の炎までもが黒に染まりきり、放たれた炎は焼き焦げた跡と変わりないような色合いで気味悪く燃え続けていた。黒炎は赤かったころにはなかったものを感じた。自分はこんな事なんて望んでないのに、背負っていく物としては悪くないのかもしれない。
炎を恐れてか奇妙な雲は一気に晴れ霧が薄暗い程度に戻ると俺は塔を降りはじめた。技をうつ元気はあっても傷ついている、早く休息を取らないとまずいかもしれない。塔をやっとの思いで出てからあの爺さんに助けてもらった訳で今はここにいるんだっけな。
もう夜か、あれから一日たったのか。ちびすけがもってきてくれた木の実をかじりながらボーットしていた。
全身茶色でちゃんと手がいき届いていると言わんばかりの六本の尻尾は印象的だった。目は完全に怯えているようなロコンを怒鳴りつけるほどにまで俺はなってしまったのか。そんなことどうでもいいか、俺はもう一人の身だ。こんな気味悪い体になってしまったのだから今更だれにどう思われようと関係ない。
「お前は俺にどうしてほしいんだ。」
俺は独りで言葉と涙をこぼしながら寝付けずにいた。こk


何にも食べていないからお腹すいたな。夜遅いし多少盗み食いしてもばれないと思い廊下を足を音ひとつ立てることなく歩いていた。家の床は古いので走りまわったりすると潰れるのではないか心配するぐらいミシミシ唸る。中々スリルのあるものでまた挑戦したくなるぐらい我ながらばれることなく台所についた。一応各自の部屋以外は電気が夜でもついていて、他の部屋は電気が消えているのからわかるのは夜でも10時は超えているだろう。木の実のある場所はわかりやすいし親切なことにも木の実の入ったかごは床に置いてあり、罠でも仕掛けてありそうな位簡単に取り出せる。
2個ほど木の実の付け根あたりを咥えて部屋に戻ることにした。ここで見つかっては全部水の泡だからね。
忍び足で戻る途中隣の部屋の前で立ち止まった。まともに言葉すらかわせもしないのになんだか中が見たくなった。ドアを少し開けて覗く位罰は当たらないだろうけど、もしばれたら食い殺されるかもしれない。でも、夜は流石に寝ているだろうと再び安易な気持ちでドアを開けると圧力は微塵も感じられなく、ただ悲しそうにないている姿が目に入った。
「いくら俺のためとはいえ、プライベート覗くのはどういうことだ?餓鬼。」
涙を垂れ流したままの横顔で睨みを利かせてくると肌寒く身震いし始めた。危険察知というか野生の勘、起きてたのは予想外だよ。昼間ほどの圧力は感じないけど、それでも睨みつけられると怖いよ。
「俺に用があるだろ。入ってこい。」
ここで逃げたら本当に食べられちゃうよね。今日は本当に付いてないな僕、油断大敵ってこういうことなんだね。
体を縮めながらも恐る恐る部屋に足を踏み入れてドアを閉めると逃げ場のない二人の空間の出来上がりだ。

「それじゃ部屋に、入ったことだしこの辺で・・・」
「調子に乗るな、食うぞ?」
「うぅ、部屋入いれしか、言われてないんだし・・・」
会話しつつも微妙に後退りしている。食われるのだけは避けたい。
あの口の中にカブリと想像しただけで恐ろしい。
あの舌でじっくり味を味わい、噛みしめられながら死んでいくのか。それだけは絶対に阻止しないと。
長い舌で口の周りをペロリと、舐める動作をするその姿からは、寒気以外の何も感じられないほど、ぞっとする。
悪魔め、この怪獣、僕みたいなのを餌にして、これでも結構か弱いんだぞ。色々とやり残した感があるよ、食べられたら、幽霊になって呪ってやる。
「逃げるなんて、考えてないだろうな?」
「へ?別にそんなつもりは・・・・・」
一回り以上の巨体との距離が縮まって、人生の最後を迎えるかと思い、諦めて目をつぶった。
一口でパクリといってほしいものだなど、色々空想の世界を広げていたら、単に逃げさせまいと、扉の方に回って立ち塞がるだけだった。お陰で寿命は縮んだ。
「今度、素直に返事しなかったら、食うからな。覗き見なんてやめろよ、エロガキ。」
せっかく塞いだ道を、すんなり通してくれるらしい。ドアノブを軽く捻って、わざわざ閉めた扉を開けてくれた。
心配しなくても、雄に興味があるほど頭おかしくないよ。それより僕を、食い殺そうとする方が明らかに、おかしいでしょ。
僕だってさ、小さいとはいえ見た目だけなんだし、好奇心なんだから別に、普通じゃないか。寧ろそんなこと聞く君の頭の方を疑うよ。君が雌だとしても、全く嬉しくないしね。
「食べないの?」
「俺は肉食獣じゃない。ガキの相手するほど、暇じゃないんだよ。」
生意気なのは内で、いつもなら牙を向けるが、相手が相手なので、素直に首を引っ込める。牙を立てたところで、へし折られるのが関の山だろう。
「さっさと帰れ。それとも、泣かせてほしいのか?」
それでも、すくんで動かない演技をしていると、心配でもしてくれたのだろう。
「ちょっと演技で驚かした位で泣くな。」
「部屋から出るよ・・・・泣き虫。」
腕の下を掻い潜り部屋から脱出する際、置き土産に一言吐き捨ててやった。一枚以上、上の相手に最後にはかみついて、自分の7部屋に逃げ込み、すぐに寝ることにした。
寝る時は気にしなかったのだが、後から木の実は置き忘れて、食べていないことを、起きてから気がついた。
お腹に鳴り響く音をこらえながらも、ふらつきそうな足で床を踏みしめて廊下を歩く。隣の部屋からは、相変わらず出てくる気配はない。
今回は覗き見はしない、今まで後悔しかしていないから。朝から悪夢がみたいほど僕はMじゃない。
「ようやく起きたようじゃの、そこの食事を頼んだぞ。もちろんお前さんも、朝飯を食べてからでも構わんぞ。」
ようやく飯を食べれるのに、憂鬱になりながらも木の実に、かじりついていた。喉を通り過ぎると、食べているのがどれだけ幸せなんだろう。口の中に広がるみずみずしさに、今更ながら感動させられた。昨日は食べる前に倒れて、食べずじまい、夜食は落とすで災難だ。
しかし、やっと運が回ってきたと思えば、忘れていた嫌なことを思い出させてくれるものだ。昨日強がったばかりにこうなってしまい、木の実を噛みしめながらも覚悟を決めていた。
口に残っている木の実も、噛みしめてほとんどカスになってきたので、一気に飲み込んで流し込むと、いってくるよと一言、それからトレイを咥え、扉越しまでは余裕で来たのにここで一旦立ち止まる。
深呼吸して落ち着き、決意を固めると扉をつつくいて、もろそうな音を立てながら、扉は開いた。
「入るよ。寝てるの・・うわぁぁぁぁぁ。」
中に入ったとたんに、扉の蔭から首根っこをつかまれて、持ち上げられた。声をあげて落としてしまったトレイは、もう片方の空いている手で見事にキャッチした。
その時、目の前を過ぎた腕は、黒に変わりなかったので、本日もやってしまった感が湧いてきた。
「ガキ、食われてぇのか?」
耳元でそこまで叫ばなくても、分かると思うぐらいの、鼓膜に響く声で意識がとびそうになる。
首を放してもらえないまま、奥につれていかれる。奥と言っても部屋は広くないが、扉まで走ろうとすれば、たどり着く間に捕まるだろう。
起きた後、片付けをせずに引きっぱなしの布団の上に、丁寧に下してもらえるわけもなく、軽く布団の上に投げ出される。
「おはよう、じゃ、この辺で・・・」
目を合わせたら、初日みたいに圧力に押されてしまうので、上を見上げることはできない。相手から見れば目を合わせずに、話しているのだから、なめてるとしか思われないだろう。
「俺の顔を見て、会話できないのか?」
頭をがっしり掴んで、無理やり目同士の標準を合わせられると、初日とは違って圧力がすさまじい。半分ぐらいは怒りという感情の、一種の表れなんだろう。
「てめぇも、黒に染めてやろうか?まる焦げにな。」
口から微量に漏れ出す炎も真っ黒だ。これは当たれば黒色になりそうだ。タイプや特性の都合上、簡単には黒くならないだろうが、当たればただですまなさそうな、異様なものを感じた。
尻尾の炎も、もちろん不気味な黒い炎に変わりないが、漏れ出している炎を見ると、黒い体も納得がいく。
「火が漏れ出してるよ。しかもドス黒いのが。」
落ち着いてられずに、慌てふためいて暴れ回るにも、片手で抑えられてなにもできない。見つめ合うだけで、心臓が破裂しそうだった。
「おい、燃やされたくないなら、調べ物をしてこい。」
「わかったから睨まないで、本当に死んじゃう。」
「一回しか言わんぞ、あの幽霊の塔に行って、俺の黒炎について調べてこい。たしか、変な宗教みたいなやつらがいたはずだ。」
「調べてくるから、燃やさないで。」
自業自得なのかは、わからないが、あまりにも強く押し付けられたので、脅迫と変わりない気がするが、すんなりと受け入れてしまった。
一時的にだが突き刺す空気も弱まり、少しは機嫌を取り戻してくれたらしい。昨夜は全く感じなかったのも、含めて想定すると、気分次第で空気を操っているのだろう。
もちろん僕が感じている圧力であって、空気をたくみに操り窒息死においやるなんてことは、できないだろうが、僕を壊すのには十分すぎるぐらいの、空間を作り出してくれる。
「それじゃ、さっさと行ってこい。もう一度だけ言っておく。頭のおかしそうな宗教の格好をしている奴等がいるはずだ。あいつらなら、何か知ってるだろう。」
「何について聞けばいいの?」
「おとついの夜か、黒炎を吐く炎タイプについてでも、聞け。」
雑に内容をまとめあげると、ようやく僕の足は床を踏んだ。けれど、胸をなでおろす暇は与えてもらえなく、部屋を飛び出して早足のつもりでいたが、廊下を走っていた。
周りの奴等が、驚いた顔で何か言っていたが、僕の耳には自分の足音で全部聞こえなかった。別に恐怖で急かされているわけではなかった、ただ何となく、あいつのことを知りたかった。
正体でもつかめれば、少しは反抗できるかもしれないと、純粋な期待を走らせながら、数分走り続け、今は不気味な塔を目の前にしていた。
かなりの高さで、そびえ立っている。何回まであるかは知らないが、かなりあるだろう。塔の先の方がとても小さく見える。もちろん僕一人だから塔の1~2階ぐらいが限界だろう。
そもそも、こんなおっかない所に来るなんて嫌だったんだ。幽霊が出るんでしょ、心臓が止まっちゃうじゃない。魂とか持っていかれないよね?
臆病風に吹かれていても仕方がないので、塔へ足を踏み入れると、中は薄い霧が漂っていて、今にも何か出そうな位不気味な空間だ。
たくさんある墓石も、もちろんそういった雰囲気を、醸し出している一員だ。
他にも悲しそうに、墓参りをしている人々もいて、そこらじゅうにいる人達全てが、幽霊に見えてしまう。自分一人だけがポケモンで、あとは実態のない幽霊ばかりとしか考えられなくなってしまっていた。
そんな中でも明らかに目立っているのが、白い服を着て、頭に変なものをつけて、悪霊退散だか何か分からないが呪文を、詠唱している怪しい人物。いやでも目に入るだろう。
お陰で探す手間は省けるが、何とも近寄りがたい、オーラを放っていて声をかける勇気が出せない。
実を言えば、塔に入って自己暗示にかかり、周りがどうのこうの以前から目についていたのだ。
さっさと話して帰れば、終わりなのだが、勇気が未だだぜずに、踏みとどまっているのだ。
「あの、すいません。」
やっとの思いで出した声も、乏しいほど弱く。相手に聞こえているのか、こっちが不安になる。
「きえええええ。」
紙を切って棒の先端に取り付けまくった変な棒を、決しに振り回している。
「すいません、話聞いてください。」
「む、何奴・・・」
やっと話を聞いてもらえそうな、雰囲気になった。生身の生物が、僕以外にもいたのに安心した。
別に、怪しくないだろう。どちらかと言えばその格好の方が怪しい。
「なんだ、話しかけておいて、その顔は。さてはこの服装をなめているな?これは先祖から伝わりし、祈祷師の正装で・・・聞いているのか?」
オカルトに皆無な者に、マニアックな話をしてどんなリアクションを期待しているんだろう。
悪霊を滅しているのは正義かもしれないが、その正義でさえもオカルト教にしか見えないのが、正義と祈祷師との微妙なライン引きだ。
僕には正義には見えないね。
「話を聞いてなかった気はするが、何の用だ?」
「黒炎を吐くリザードンについて知ってる?」
「わしは生物学者などではない。そんなこと言われても分かるわけないだろう。」
蛇足データとして、理科の成績はいつも赤点だったということを断言された。どうやらこの質問では、求めている情報を得ることはできないようだ。
「おとついの夜、いつもと違ったことは?」
今回の手は二つ、片方がダメならもう片方しかない。欲しい情報のどちらを追っても、たどり着く先は一緒だろう。
「おとつい・・・二日前のことじゃな?」
理科の次は日本語も駄目みたいだ。人選ミスだな、これは。
「二日前であってるよ。」
「あの夜はな、いつも通りここで・・・・そうじゃ怪物の声が聞こえたのぉ。」
口調も怪談のように、怖がらせるようにして怪物を強調した。
この曖昧でしかも頼りのない発言を、あてにしてもいいのだろうか。今のところこれと言って、有力な手掛かりは掴めていない。
関係ないかもしれないけど、詳しく聞いてみようかな。
「誰の声かわからない?」
「そこまではわからんが、あんな悪霊とは会いたくないのぉ。」
悪と戦いたがらない正義なんて、やっぱりこの人あてにならないな。
分かったことは、おとついの夜怪物がでて、そして怪物の唸り声に驚いていた。分かったことはこんなぐらいか。
「そのことについて、他に詳しい人はない?」
探しているものとずれてきているかもしれないが、今のところこれを追うしかないだろう。
「おぬしでは厳しいじゃろうが、上に詳しいやつがおるかも知れんのぉ。」
無理だろうね、それこそ幽霊になるのは目に見えている。
出直すしか、方法は考えられない。ここにいたころで、それほど有力な情報とは巡り合えないだろう。
「それでおぬし、いったいなぜそんなことを聞くのじゃ?」
理由を説明せずに、話を発展させていたらしい。説明する気なんてなかったが、別に尋ねられれば黙っておくつもりもなく、進みすぎる前に聞かれると思っていたのだ。どうやら順番が逆になってしまったが、成り行きを一通り伝えると、以外にも真面目に聞いてくれた。
「なんとも奇妙な話じゃの、上のことも気になるし、よしわしは上を見てこよう。」
思いのほか、話かいい方向に転がりこんでいる気がする。よすぎる気がしてならない。
「お前さんも、そ奴に何をしに行ったのか聞きだしてくれい。問題があれば、解決の糸口になるやもしれん。」
やはり、それ相応のリスクは背負わなければいけないらしい。捜し求めている物には少しずつ近づきはじめている。ここで頼まなければ、他の方法すら思いつかない以上捜索は難しいと判断し、案に乗ることとを踏みきった。
「よし、明日またここで会おうぞ。」
そう言って、階段の方へ向かっていった。僕も、もたもたしていられない、課題がある以上それをこなさなければ。向かい合ってまともに話し合えた覚えがないが、この際当たって砕けろだ。なんだが不思議なくらい、あいつとまともに向き合おうとしていた。いや、もうこんな問題を解決しようとしている時点で、向き合えなければいけないのかもしれない。
塔をでると、空は建物の中からは見れなかったので、夕暮れまでは訪れていないものの、それに近い時間であった。
空を見上げているのも悪くはないが、僕は急ぎ足で一目散に家に戻った。帰るまでにかかった時間は、行きよりも早く、夕飯前ではなく、夕暮れ前には帰宅していた。
いつも通り、部屋から出た気配もないし出ている感じもない。相変わらずの隠遁生活が続いているみたいだ。
明るく振る舞うことはないだろうが、温厚に平和的に話を進めて、解決すればいいのだと勇み足で踏み込んだ。
「よぉ、おせぇじゃねぇか。」
黒い巨体が、首を回してじろりと睨みを利かせる。羽の内側は、時間が経って新鮮さを失った血のような赤紫だった。羽の内側が、黒ではないことは意外であったが、外見は黒いままだ。
「ただいま、さっそくで悪いんだけど、いくつか質問したいんだけど。」
「その前に、聞くのは俺が先だ。」
ほとんど手に収まる形の綺麗な物は見つけてこれなかったが、あやふやにも掴んできたことを話すと、なんだそれだけかとがっかりしていた。僕自身はかなりの進展があったと思っていたが、相手からすれば結果が分からないからなんだろう。
「それで、俺に質問なわけか。」
「まず、何で羽の内側の色が黒色じゃないの?」
別に聞くことにはなっていないが、どう考えても昨日は黒色だった気がする。今朝もまだ血の濁った色は体のどこにもなかった。ペンキで塗り替えたとか馬鹿げた事をしない限りは不可能に等しい。僕の知ってる範囲では、そこまで間抜けなことはしない。となれば、別の理由が隠れていることになる。
「これか、昼寝してたらな。勝手に変色しやがって、困るぜ全く。」
寝れば治るって風邪じゃないんだから、そんなことはありえないはずだ。しかし現に、内側の色が変わった翼を平然とバタつかせている。謎が謎を呼んでいる。そして僕はその謎たちに視界を阻まれていた。
「それじゃ、二日前の夜何のために、何をしてたの?」
「それを聞く必要があるのか?」
セリフ一つ叩きつけるだけで、場を凍らす。気迫の宿った一言には妙な迫力があり、圧巻されて僕は黙りこんだ。
「こんなもんで押されてるやつに、話すことじゃないんだよ。」
元気の抜けた声で、寂しそうに眼を細め、横を向いてしまった。それにより、今度は別の沈黙に支配された。閉じたままの口をお互いに、こじ開けようともせず、唇は微動足りともしない。
「わかったよ、君に認めてもらえるようになるよ。」
先に行き止まりから引き返したのは僕で、部屋を一人にしておいた。向かう先はすでに決まっていた。
野生の脅威に立ち向かうのは難しいだろう。ましてや小柄な僕では、あんな巨体でレベルの高く、能力も優れているポケモンにとっては餌同様なものだ。
それなりの修羅場を潜らない限りは無理な話かもしれないが、潜らなくても強くなる方法はいくらかある。
僕がすぐに導き出した答えは進化の二文字だった。通常なら、それこそ経験が必要な代物だが、僕の場合は特別な種族で石ころ一個で見違える。もちろん、能力だって飛躍的な進歩を遂げるだろう。
レベル自体は上がらないが、もともと実戦経験の浅い僕にとって、戦闘で能力を磨くなどということは無茶だ。それならば、近道でずるいかもしれないが、選ぶしかないだろう。
一度、お爺さんに野生に帰るかと聞かれて、石を見せて持ったことはある。その時は進化すればここを去ると誤解して、僕はその機会を棒に振った。
今は、去るつもりはなく、進化する気はあると都合のいい考えだが、あいつのためにやり遂げると言う、勝手な覚悟でもあった。
進化には、他にも問題が残る。進化後どんな様になるのかを知らないのだ。戻ることができない不便な面を、兼ね備えているのは知っている。もし、今より弱そうな外見になってしまったら、説得するどころか逆効果になってしまう。能力が進歩すると言っても、もともとの僕の程度が知れているなら、強くなるのも測れるだろう。そんなので会っても、逆なでするだけだと、失敗した時の不安を抱えていた。
家中を探す必要はなく、広場で他のポケモンたちに時間を費やしていた。平穏な空間が広がっているのを再確認すると、やはりあの部屋だけが違うものだと認識を改めた。
少しは圧力に耐えるのに慣れたのに、こちらにずっといれば、また苦労しそうだ。それほどにここは優しい場所である。
お爺さんに邪魔をすることになるのは明白だが、横やりを入れた。
「ちょっといいかな?」
そんなに意識したつもりはなかったが、向こうで話そうと言われたのには、何か読まれたとしか思えなかった。
何か誤解してるんじゃないかな、僕の表情のどこから何を発掘したっていうのさ。
「何の用じゃ?」
「てっとり早く言うなら、あの石ころが欲しんだけど。」
するとさっきまでの優しさを隠して、険しい面を表に出す。お笑いごとではない、人生に大きな影響をもたらす事であるがために、そんなに容易く判断できることもないだろう。
やっぱりそんなに簡単には、無理なんだよ。でも急がないといけないんだ。
「理由は聞かんぞ。お主が決めたことじゃ、わしは親ではないからの。」
そういって広場に戻って戸棚をあさり始め、手探りの腕がぴたりと止まると、中からそっと腕を引き上げた。そこには赤い石ころが握られていた。
炎の石と言う割には、火傷するほどのものではなく、その辺に置いておいても引火はしないし、何の変哲もない普通とは違った珍しそうな石としか見えない。石自体結構透き通っていて、中は炎が燃えているような、本当に不思議な石であるが、進化に関係しているようには見えない。
「ほれ、自由に使いなさい。」
地面にそっと置かれた赤い塊にそっと手を置くと、中から何か流れ込んでくるような、僕を侵食するのではなく、血とともに流れていくような。体中に流れ込んで漲ってくる、僕自身のものではない力が体中に溶け込んでいく。
体が大きくなるような感じは全くない、縮んでいるかもしれない。
「立派になったのぉ。」
歓喜を上げるおじいさん。石に触れた瞬時に、光に変わりその光の溶け合いを終えた僕を、まじまじと見ている。尻尾が前よりも動かせるようになり、本数も変わっているだろう。お陰で、どの尻尾をどう操作しているか、いまいち分からない。視界に入る位じゃあるようで、場合によっては手足を使うよりも都合が好さそうだ。こんなに長い尻尾があれば、邪魔で下半身の重荷になるかと思えば、難なく歩ける。
進化ってふしぎだね。極端に強くなった気もしないんだけど、今までの自分とは、全く別物なんだよね。
何本あるか知らない尻尾を、周辺に見せびらかして遊んでいるだけで、他のポケモンは目を丸くしていた。
持っちゃいけないかもしれないけど、優越感ってのを感じるよ。
口笛を吹きたくなるぐらいの機嫌のよさで、あいつの部屋に戻ろうとしていたが、窓ガラスに映った自分に、僕も目を丸くした。
ほっそりとした体形だ。スリムというか、スマートというか。目もお茶目に赤色だし、尻尾は合計九本で肌色。尻尾の先が見えた時は茶色だから、全身どんな色かと思えば、茶色の部分から根元まで見えなかったが茶色の続いていた肌色だった。
これはとんだちゃぶ台返し、全然強そうじゃない。面影もほとんどないし、ないより雄っぽくない。
直前までの余裕はどこに置き忘れたのか、うつむくしかなかった。窓の自分を見るだけで、なんだか嫌になる。だって、想像と全く違うじゃないか。


馬鹿じゃないのか。何であんなガキ一人を簡単にあしらおうとしないんだ。
自分の力を見せつけて、相手を負かす必要なんてなかった。そこまで相手にするほどでもないのに、過剰に反応して、命令までして、何がしたいんだろう。
自然と口が先走って、勝手に進めて、別に悪くないと思えて、けど何がしたいかなんてさっぱり。少しは落ち着くことを覚えろ。
これもこの体のせいなのか、自分のしたいことがはっきりとしないなんて、馬鹿馬鹿しい。
内面が赤紫に戻った羽でゆっくりと体を包む込み、体のほとんどを覆い隠した。色の戻った内側も、陰になってしまえば黒っぽいが、それでも黒色と断定するには相応しくない。今の俺のように、はっきりしない色に取り囲まれて座り込んでいた。内面が戻ったと言っても、俺の元の体の色とは全くの別物だが、これはこれで悪くないかもしれない。
俺は生かされた、あの時に。でも、今その事を引きずってこの様だ。なぁ、教えてくれよ。お前は俺に何をしてほしいんだ。お前がいない俺に何ができるんだよ。
萎えていると言えばそうだが、その一言で片付けるには無理がある。答えを教えてくれる者はすでにいない、となれば自分で見つけるしかない。永遠に考えても、見つかりそうにもないのにそれを続ける、まさに呪縛に縛られているようなもの。過去の悲劇に縛り付けるためだけに、俺は生きているのか、と背を向けるだけ。
今もそうだ、環境は自然に比べればえらく違うが、だからと言って解放されるわけではない。俺が生き続ける限り、見つけない限りは、張り付いてくるのだろう。そして悩ませ、時には俺を縛りあげて苦しめようとする。本当に、俺がいる意味があるか疑わしいものだ。
「入るよ。」
聞き覚えがある声のせいで、自分を取り戻す。あいつが戻ってくるまでの時間、ずっと自分の世界に閉じこもっていたらしい。
が、どうやら自分の夢の世界にでもいるみたいだ。さっきまで小さなのは仮の姿で、とうとう正体を現したのか、俺が本当に夢の世界で、幻覚を目の当たりにしていたのか。化け狐の9本尻尾バージョンが恐る恐る侵入してくる。その姿は優美なもで、さっきまでのみすぼらしいと言えばあれだが、これはまた派手なものだ。
その辺で、ナンパされもおかしくない魅惑の化け狐が、何でまたこんなとこに。それこそ、雄でも捕まえて遊んでいればいいものを。
「誰だ?」
そこまで鋭くしたつもりはなかったが、目つきが怖いよと言われてしまい、一層むきになってしまう、大人げない話である。
「誰だって聞いてるんだよ。」
「数分で忘れるなんてひどいよ。お願いだから殺気向けないで。」
自然と出てしまう物で、見知らぬ相手となればどれだけ気にしようと、ついうっかりと出してしまうのだ。一旦目を閉じ、深呼吸で平常心に戻ると、ようやく誰だか正体が掴めた。
「なんだその格好は?さっきまで化けてたのか?」
「言い方が悪いよ。そもそも、僕は化けることなんてできないし、これは進化だよ。」
流れが読めたな。要はそれで強くなったから、という魂胆だろう。俺なんかに前向きにたち会おうとしてどうする。得することなんてない、周りから評価が得れるわけでもない。お前の肉体までをそうまでして、俺を追いかける理由はあるのか。
「分ったよ。俺は墓参りに行っただけだ。俺は自分の仲間や主人を見捨てたも同然だ。」
確かに、あいつの努力を認めないわけにもいかない、けどこうも素直にすらすらと口が動きだすとは思っていなかったし、半分ぐらい意図せず勝手に動いている感じだ。
「この町来るのは初めてだったな。数年前事故に遭い、一人で野生の中を過ごしてきた。はるばるここを目指してな。そしたらこの様だ。そりゃそうだ、俺は一人でのこのこと生き残ったんだ。これぐらいで報われるのなら、いいものなのかもしれないな。」
同情なんて貰ったところで、わずかな痛み分けでしか過ぎないのは分かっている。そんな物が欲しかったのかは定かではないが、とにかく自分の思うことを伝えたかった現時点で、平常心を取り戻し損ねているのかもしれない。ひたすら自分のことをさらけ出し、終えるころには気分が楽になっていた。
「助けれないじゃなくて、助けようがないじゃない?」
「黙れ、俺は・・・俺は、無力なだけだった。」
一通り聞いての感想、正論以外の何でもない。正論がために言い返せず、余計に悔しくなって見境なく叫び散らかす。自分が正当化出来なければ、逃げ道もない。
「そんなことないよ。仕方ないことは仕方ないんだし、無理なものは無理なんだからさ。」
相手も説得しようとだろうか、必死にこちらに対応するが、余計なお世話とは違い、ただ単に追い込まれているだけである。今の自分では、現実を受け止めれないの除外して、正当化して道を切り開こうと必至なだけだった。
「五月蠅い、頼むから一人にしてくれ。」
「話を聞かせてもらえば、今度は怒ってさ。こっちだって、少しは心配したつもりだよ。」
愛想を尽かしたような口ぶりで、部屋から立ち去っていくのを、どこか恋しく思っていながら、指をくわえてみているだけだった。相手を怒らせ、自分も怒り狂っただけなのに、体はなぜか気分が良かった。
俺は本当にどうしたんだ、早いとこ見つけてくれよ。俺の体の真意を、などと淡い期待を半面に持ちながらも、裏返せば過去を引きずり回したり、自分の体に対する不安などマイナスな要素が溜り込んでいる、表裏均等な重さではない状況だった。
あんな態度は流石にないよ。心配してやってるつもりだったけど、こっちが嫌になるよ。だって、無理だったものは無理だったわけだし、それを自分のせいにして何のメリットがあるんだよ。なんだかよくわかんないけど、悩まされてるんだろうね。でもやっぱり、わからないものはわからないよ。
知りたかったものは手に入れたものの、むしゃくしゃして愚痴を一人でつぶやいていた。なんだか、自分のしていることが実感のないものに変わりつつある。
進化したり、出歩き回ったり、よく分からずに怒られられたりと振り回されまくりで、視界が曇っている。明日起きたら筋肉痛で、上げるのに一苦労しそうな、張りつめた足で隣の自室にたどり着いた。
一番落ち着けるのは、自分の住みかなんだろう、知らない間に寝息を立てながら眠りについていた。
目を開くと、眩しい光が差し込み気分のいい朝のはずなのにあまり調子が出ない。尻尾の長さと本数が前とは比にならない事を忘れていた。寝相悪いのもあるが、お陰で尻尾が体に絡みついたり、毛同士が絡みついて無理やり離すと毛が何箇所もボサついたり、丁寧にやればよかったのかもしれないが、嫌になって一気に尻尾を立てると、整えないとまずい位爆発してしまった。筋肉痛での前足に、絡み合う尻尾とは朝からよく効くダブルパンチなものだ。
身だしなみが全く整っていない状態で、眼をこすりながら部屋を去ると、広場には待っていましたと言わんばかりのトレイと僕の食事、それに食べ終えた他のポケモンたちが騒いでいた。寝起きがあまりよくないし、起きてみれば時間は経っているし、その上やること残っているし。
行き違いをしたたまま、向かい合えることなく別れてしまって、今出会っても向き合うどころか、少しでも交差できることが微かな希望になるっているほど、あまり昨日はよくなかった。
「おはよう。」
いつから曇りが好きになったかは知らないが、曇りが恋しくなるほどの嫌になる朝。真剣に朝が嫌になったというより、相当なネガティブ思想に囚われてしまったのだろう。なんだか、時間が進んで欲しくないというか、単に仕事をしたくないと駄々をこねているだけかもしれないが、気が進まない。
朝は一日の始まりだというのに、この思想に賛同するかのように最悪の踏み出しとなった。自分の萎えた心境が、顔が真っ青になり一気に焦りに荒れ狂った。自分の気分次第でころころ変わる感情の騒ぎではなく、気分ではどうにもならないが、せめてもの青ざめである。
状況把握なんてレベルは飛び越えて、焦りに焦って助けを呼ぶこともせず、顔色を倒れている目の前のリザードンの様に悪くしていく。
奇妙な色合いで、不審で、分かろうとするにも全く噛み合いようのない偏見で、短所しか見当たらないのに、どうでもいいはずなのに。昨日の僕に対する当て付けなら、それこそ冗談のつもりなら、悪ふざけをほどほどにしてくれと苦笑いしてやりたいぐらい、悪戯であった欲しかった。
遊びな感じはなく、プロの演技のように見事に苦しそうに倒れこんでいる。
「なんだ、っ…お前か。」
強がっているのが丸わかりなのに、よろめいて起き上がる。動こうとしたがらない体で、何を無茶しているのだろうか。
「お前かじゃなくて、何があったの?」
顔色は元に戻っているかもしれないが、その分ほかの感情が出てしまったのに、大丈夫だと強がって笑う。
「ただの寝不足だ。少しほっといてくれ。」
何かを伏せるように、部屋を追い返された。出た瞬時に倒れこむ音が聞こえることは僕にはなかった。なぜなら、重症の正体を掴むチャンスを目の前にしているからだ。
まさかだとは思うけど、くたばったりしないよね。
急がないと、早いとこ聞きにいかないと、足を前に動かしていた。追い返されたら、外でできる限りのことをしてやるんだと、骨の折れる反骨精神を働かせていた。
曲りくねって行くぐらいなら、斜めに進ませろと目に入る建物が邪魔で仕方ない。飛行タイプや羽が生えていたり、浮遊しているなら出来るだろう。僕が飛び跳ねても建物の上から上へ飛び移る技術どころか、建物に飛び乗ることするから厳しい。
進化前なんてジャンプしたところで、縄跳びぐらいがせいぜいなものだ。進化により身体能力は成長しているが、脚力がどこまで成長しているのか、果たして器用に跳ねまわれるのか、落ちたらどうなるのか、落ちないと言い切れのだろうか、言っていたら切りがないが、地面を這うことしか方法がないと言う事だ。
歩いていると地面に垂れさがる尻尾も、風に乗って後ろに伸び切り、体よりも風に乗って広がっている九本の尻尾の方が面積を取っているように見えてもおかしくない。尻尾を動かすのも、ここまで本数が多いと腰を痛めそうである。
前も軽かったけど、こっちの体だと体重も増えているだろうしなんて思ったけど、足の筋力もバージョンアップしてるみたいだ。自分のぺースを崩すこともなく、飛び跳ねるように路地を走りぬけていく。家を角次々に曲りくねり、角という角を駆け抜ける。それでも、屋根の上にチャレンジするきにはなれない。
昔は住みたがる人たちが少なくて、ハゲばっかりだったけど、変なおばさんが塔に増えたり、活気も出てきたりして、今や良い住宅地だ。そういや、もう少しでこの塔潰して別の建物になるんだっけ、何になるだろう。思っていれば、おばさんの集まる塔に直面していた。
「出たな化け狐め、覚悟せい。悪霊退散ーーー。」
入るやいなやさっそく、それこそお前はどこの変人…妖怪だとつっかかりたくなる変な格好のおばさんが、素早くわけのわからないお札を一枚額めがけて投げつけ、どんな紙でできているのか一直線に軌道がそれることなく、見事に僕に張り付く。
塔に飛び込んだ僕の足も固まり、相手も何を期待しているのかこちらに睨みを利かせて止まっている。僕たち二人の空間は数秒止まっていた。
「あの、僕誰だか分かってないよね?」
「なんだと、この妖狐め。その忌々しい九本の尻尾に、優美な外見で相手を惑わす。なんとも卑劣な輩、このわしが成敗してくれる。」
あー、救えないねこれ。だいたいこの世にお化けなんているわけないでしょ。いてもポケモンの一種とかその辺でしょ。真剣に変な紙切れ張り付けないでよ。別に何にも起こらないからさ。
「ねぇ、わかったでしょ。僕は幽霊とか妖怪じゃないからね。昨日のほら、きたでしょ。」
「どこかで聞き覚えがある声…さては幻術じゃな。」
今度は白い紙きれが棒の先にたくさんついてるのを振り回し始める。やくばらいでもないのに、あまりにも大袈裟な動作に開く口も開かない。
「きえぇぇい、悪霊滅殺……」
乱心状態で周りの人からどん引きされているのに、一向にやめようとしない。変な呪文まで唱え続けている。一緒にいる自分までなにやらあまりよろしくない視線が飛んできているのに、耐えられなくなり、弱火のつもりだったが、周りを驚かすぐらいの量を出してしまう。
「炎を吐く狐なんて…炎…炎タイプ…おぉ、おぬしか。一晩でそこまで大きくなるとは。それにしてもあれじゃ。女だったとは知らなかったの。どうじゃわしと一緒に修業せんか?」
何回目だ、僕は雌じゃない。そりゃ、外見が全くそう思わせないほど変わったのは事実だけど、妖怪よばわりの次は変なおばさんの後継ぎとはひどい扱いだよ。
「いや、僕は雄だから。誘惑とかそんなために進化したんじゃないし、それはそうと何か分かったの?」
「なんじゃ、男なら坊主になるしなかないのぉ。」
残念そうに首を曲げて考え込んでいる。もちろんこちらの話には耳を傾けてくれていない。この間に頭に張り付けられた紙をはがす。テープか接着剤の類かと思っていたが、触るとすぐにひらりと地面に落ちていく。なんとも不思議な紙だ、いったいどういう機能が備わっていると言うのだろう。見た目は白い長方形の紙に、墨と筆を使用して書かれた文字が書かれている。これといった仕掛けは、一見見当たらない。
「ねぇ、この紙どうやってくっつけるの?」
「よくぞ聞いてくれた。これは代々受け継がれし、悪霊や妖怪を追い払うための物で、この文字をわしのような祈祷師の力で投げると張り付くようになっておって、詳しく言うならこの文字が……。」
勝手に何やら語り始め、暴走してブレーキが掛かる様子はない。周りの人たちも半径5m以内に入ってくれるのもいなくなった。少しの間は尻尾を揺らしながら気長に待っていたが、ここで止めないと、来た意味もないので尻尾の遊びをやめて、脅しに炎をと吐くと思った通りに口が塞がる。
「それで、何か分かったの?」
そうだそうだとようやく本題に入る気になったのか、表情が今までのは冗談だったと言わんばかりの真面目なものに変わる。
「いいか、よく聞くんじゃ。恐らく、そやつは呪の一種に陥っておる。幸い、悪霊が憑依するものではなかったので、普通よりは治すのが簡単なんじゃが。
これは昔愚かな者共が、ポケモンの体の色が変色すると言ってはしゃぎおったんじゃ。しかし、変色した者たちは全身黒く染まるにつれ衰弱し、最後に命を落とした。」
それでと先に焦る僕に、落ちつけといったん話を区切り、続ける。
「原因はおそらくこのような幽霊のたまり場のあるようじゃ。昔の一件も、墓場の近辺で多発したらしいの。孤独、怒りや悲しみで主を追い続け、そんな所悪霊が目をつけたとも言われておる。
はっきりと何が悪いとは言えん。しかし、病状からしてこれに間違いないじゃろう。」
「呪なら専門職だし、治せるでしょ。」
呪の類なんて子供騙しだと思っていたが、そこは改めるとして、治ることが決定したも当然。あとはプロに任せてればと、緊張感が抜け出しているのに、肝心のプロが緊張どころか表情が硬く重く、不安が溜っている。
「残念じゃが、わしは悪を取り払うだけで、呪となれば治せる範囲も限られておる。
狩に治せても、ほとんど黒いままで、後遺症となり一生元の色には戻らぬ。それに、何より、昔になくなり最近見かけなくなったものじゃ。治せるものがおるかおらんかわからぬ。」
明るくな始めたのも、すぐに終わりに向かい、自然と下に、尻尾は床に、弱弱しく何か方法はと最後に尋ねると、意外な返事に顔を上げる。
「負の感情が引き金、それに勝るプラスの感情を与えれば。しかし、わしはそやつにあったことがないので、力にはなれんのぉ。」
「それだけで十分だよ、ありがとう。それじゃ僕行くね。」
「そうか、すまんのう。それはそうと、今度わしと一緒に修業でもせんか?服の余りもあることだしの。」
首を横に即座に振って、行く宛もないので、路中悩みが絶えることなく、頭を抱えていた。
帰還するにも、することがない。焦る勢いに任せても、何一つこれだと言えるようなものはひらめかない。意識しなくても尻尾を中に漂わせて、勝手にそわそわしている。
落ちつこうと、動きを止めるにもそれをするだけで、集中力がすり減る。
仕舞には尻尾の上に乗って動きを止めようと、どこまでやけになっているのか。もちろん9本の上に乗るには、一人ではお釣りが返ってくる。傍から見れば、尻尾を追いかけまわす子供なんだろう。
真剣なつもりが遊びでしかない。これを一部始終見ていたやつらがしゃしゃり出てきて、渦の中心になる。囲まれると言っても十匹にも満たないが、9本の尻尾が暇を持て余すことなく働けるには丁度な数である。
尻尾を縦横無尽に動かしたり、火を吹いて驚かせたり、脱線しても続けているから、原点に戻るのにも一苦労。考えても前よりひどいアイデアしか思いつかない。どう言い訳しようと、遊び疲れたことには揺るぎない。目先のことばかりしているとこの様である。
時間的にも、正確にえばまだ半日は過ぎ去っていないが、三食必要なため、まともに考えれるようになるのは、半日たった後と言うことになった。
しかし、昼食前は昼から頭を絞ればと甘言に甘えていたが、食べえ終えていざとなれば、腹が膨れてウトウトと頭を一分間に何回もカウンカクン揺らせていた。
昼寝はどうだと、睡魔の誘惑に迫られていた。二度も甘言に頼ってはと、別のことでぐだぐだになり本当に何も進まない。
こんな調子だから、考えを張り巡らすことがろくに出来ず、大きな見落としを犯してしまっていた。
「そう言えば、何か忘れておる……」
こちらでも、同じく悩む者が一人。大事であって、悪い事ではなかった気がするとしか記憶を甦らすことしかできない。
見落としを僕はようやく思い出した。そうだ、昼食に出向かないのを一匹忘れているのに。悪寒を感じた。
「食事がいるんだった。」
昼食はみんなが、あさり回すからなくなって残っていることはまずない。仕方なく、手ぶらではあるが、行かなくて良いわけでもないので、恐る恐る魔の扉に力を加えた。
「ごめん、昼飯なくなっちゃった。」
「そんなことは、どうでもいい。それよりも俺の容態はどうなんだ?」
「治せることは出来るんだけど、プラスの感情なんて分かんないよ。」
案外、飯のことは気にしていないのには安心したが、死がかかっているとなればそんな安心なんて、すぐにゴミ箱へ直行である。さっぱり、プラスの感情の見当がつかない。
友情、優しさ、その辺なのかなとは思ってみたけど、そんなものをどうやってこいつに向ければいいというのだ。
僕はそこまで、それこそ勇気と言うプラスが足りないよ。
「そんなもん、簡単じゃねぇか。悪いが、そのためにも食事にさせてもらうぜ。」
もしかして、僕を食い殺してそれで体力を回復するなんてことないよね。
重そうな体を、軽々立ち上げると、僕の方に歩いてくる時点で視界など、ないようなものだった。
「おぉ、追い出した。もしも、そ奴が孤独なら愛情を欲しがる。ましてや、異性同士なら、まぁ、悪いことではないんじゃがなぁ。」
今更思い出すなと突っ込みたいがあいにく僕はそこにはいない。それどころか、そのことを知らぬ間に、危機はすぐそばに迫ってきている。
棒立ちで、目がまともに見えないのと変わりないような僕を、床に押し付けて、頭が少しましに動けば覆われるような。顔の距離は尋常ではない。
「それじゃ、俺を救ってくれよ。」
「いや、僕とか相手間違ってない?君、同性はまずいでしょ。人の年齢考えてる?下手すれば、君ショタコンと変わりないよ?」
すぐさま、状況を把握できる自分も自分である。こんな方向にしか持って行けない自分はやはり、ただのエロガキなのかもしれない。
「心配するな。俺はこれでも雌だ。ショタコンでもなんでも別にいい。」
僕を圧倒的力でしかも片手で余裕で抑え、もう方出て下半身に這わせていたが、普通よりも。そして普通ならこうまででしゃばらないであろう物に、手を伸ばしていた。
「次に嘘ついたらどうするっていたっけな。」
「僕を食い…」
あぁ、終わった。そうか、そんな意味で言ったのか。そんな同音異義語…ずるいじゃないか。
文句を並べれるものの、体の方が素直であり。心のどこかでは喜んで受け入れることもなくはない。そもそも、必死にこいつのためにやってきたのだ。別に今更何が起こってもである。
「せめて名前ぐらい、教えてくれてもいいんじゃないの?」
「タイラント、昔はそう呼ばれた。」
真横に向かって緊張感の余り噛みそうなった粘りの悪あがきも簡単に、そして次の悪あがきを発する前に、口本が、掴んだでしゃばりから手をはなし、そして中に長い舌が。
僕も、その舌に立ち向かうように動かしてお互い避けようとはしない。目を閉じ心までそれに集中しようとし、耳を澄ませば唾液で乾燥するはずのない二本が、いやらしい音を立てていた。が、分と数えるには至らないまでに、それは終わってしまう。
「俺じゃ、不満か?」
「最初を持っていかれて、断る理由もないよ。僕はレッジ、今更だけどね。」
今度は僕が、相手が何を言おうとしたかお構いなしに口内に舌を侵入させた。自分の口の中だとあまり熱くは感じないが、相手の中だと確かなぬくもりを感じる。そこから、抜け出すと透明な糸が垂れさがる。そいてもろい吊り橋に踏み込んだように、すぐに床に崩れ落ちる。
「人が喋ろうとしている時にいい度胸してるじゃねぇか。」
下の方に手を持っていき、すぐに何かを掴んで動きが止まる。
「なんだ、まだキスだけなのにこんなにか。」
普段なら埋もれて探すのも苦労するものを、手間をかけることなくつかみ取って、その手で上下に動かす。たった、それだけなのに体は素直に声をあげる。
「自分でやるより、よっぽどいいだろ。」
「うっ…ぁ、不意打ちなんてずるいよぉ。」
「先制攻撃したのはお前だろ。それにしてもこれだけじゃ、面白くないな。」
確かに、他人にされるとなんだか感じが違う。僕自身一人でやった回数なんて数えれる回数だけどね。
そこをつかまれた時点で僕には反抗することはできない。それに両腕もがっしり片腕で固められている。
次は、首筋に舌を這わせて、毛をかりあげる。あまりに慣れない感覚に、身震いする。
「毛繕いで感じるのか。駄目な子だなぁ。」
「そんなにぃ…いっぱいいじらないでよぉ。」
「そんなに嬉しそうな顔されてもなぁ。そうか、攻められるのが大好きなんだな。」
「違っ…ぅ。」
色々と誤解して、首も攻撃の標的に増やして攻めてくる。達する一歩手前、別の種類の汁が先端から染み出す。それでもタイラントは手を休めない。
硬くなった所に塗り込むにしては雑だが、全体に行きわたり、そのせいで動くたびに微妙に嫌な音がする。
「やっ…んぁぅ…でっ、うわぁぁぁ。」
とうとう、僕の耐久では持たなくなり。噴水のように真上に吹き出し、仰向けにより腹に降りかかる。もちろん、よこで寝ながら作業していた彼女にもかからないわけではない。被害は少ないだろうが。
噴出を終えたら、枯れた植物の花のようにしぼんでいく。
腹は白いまだらみたいな綺麗なわけでもなく、何か所かに集中して白い絵の具が雑に塗られたような有様。
出すものを出したのに満足したのか、ようやく腕を解放してくれる。そして、次に白濁を彼女の舌で、舐めはじめる。
「くすぐったいよ。それ以前に…その、ね。汚いよ?」
くすぐったいだけで、さっきのような刺激はない。しかし、何故か見ていられない。自分の体液の類を快く飲まれて、それもそいうとこからそれなりのことで出るものである。
舐めるのに夢中なのか、汚染物を毛一本一本から、舐めとり、その代りに彼女の唾液で毛が湿る。
見ていられない行為を一通り終えると、軽く笑ってみせる。今までの企みを伏せた笑みではなく、ただ純粋なものを。
「毛繕いしただけだぞ?まさかそんなとこで感じるのか?」
「いや、そうじゃなくて。美味しくないし、と言うか飲料物じゃないよ?」
「愛してるって意思表示だよ。」
恥ずかしいことを何の戸惑いも見せずに言う、その姿勢から僕は顔を真っ赤にしてして目線をそらしてしまう。
本当に、相手にしては大変な奴だよ…けど、僕も最後まで付き合わないとね。
タイラントは口元をひと舐めし、僕が恥ずかしさを感じているのを嬉しそうにしている。そこを突如尻尾で襲いかかり、床に一気に叩きつけ、尻尾を器用に動かし腕や足に絡めていく。拘束と快楽から僕は解放されることになり、自由を取り戻した僕は反撃ののろしを上げる。
「お前なにしやがる。」
タイラントは突然の反逆に反抗はするが、捕えてしまえばこちらのもの、何も怖くはない。手足一本ずつに2本で巻きつけ、首をソフトに巻き上げる。そして、それは仰向けの磔と言う結果に至った。
これにより、この場での自由を奪い優先権を掌握することになる。暴力的ではあるが、これぐらいしないと彼女に力負けする。
「てめぇ、放せ。」
「今度は君がおとなしくする番だよ。」
「なっ、お前。やめろ、放せそれ以上近寄るな。」
タイラントは捕まっても激しく暴れようとする。僕だってそこまで力があるわけではないので、どうにかして抑え込まないといけない。
僕は手で急所軽く摩る。タイラントは抵抗をしなくなるが、快感でわずかにもがきだす。
「やめろっ…放せっ…」
「ずいぶん濡れてるね。ちゃんと、処理しないとね。」
彼女は心だけは折れまいと、口で依然と抵抗する。しかし、肉体的にはくずれ始めて、抜け出す力はなくなりはじめる。
声も雌らしくなり、通常の彼女の面影はかけている。僕は指を一本差し込む。
「やだっ、放して…」
「中もこんなにして、どっちが淫乱なんだろうね。」
僕が笑いかけると、彼女は涙をためてにらみ返す。なんだか、子供がだだをこねているようで可愛かった。彼女の体は僕の指で感じないことを許さない。証拠に声だけではなく、彼女が全身を震わせているのが、縛りつけている尻尾から伝わってくる。
「どうせっ、抜かないんでしょ。」
「もちろん。」
「もう、やだぁ。好きにすればぁ…」
彼女は涙をこぼしながらも、諦めがついたのか言っていることがあまりに投げやりだ。
「じゃ、遠慮しないよ。」
僕は湿った前足を遠ざけ、今度は舌が秘所に触れる。
「なめるのはらめぇぇ。」
よっぽど舐められるのが嫌なのか、タイラントは絶句する。よっぽど感じるのか、悲鳴は後を絶たない。
「もうでるぅぅぅ。」
彼女は独特の液体を分泌する。舐めてみると、僕にとって嫌な味ではない。なんとも言えないが故、何度も手を伸ばしたくなる。
「お前は激しすぎるんだよ、エロガキ。」
「君が投げだしたのがいけないんでしょ。」
「あれは癖なんだよ。野生だと強姦なんて珍しくねぇんだよ。俺も被害者だ。」
彼女にとって辛い過去なんだろう、もちろんされて嬉しいわけがないが。
「つまり、性行為は経験済みなわけだね。」
僕は暗い話になりそうだったので、話を茶化す。
「お前なぁ。」
彼女は呆れて硬かった表情をほぐす。僕はただ笑ってみせると、肩の力を抜いて彼女は笑い返してくれた。ただ、自然に笑う彼女の純粋さが心に妙に居座った。
「初めて笑ったね。」
「そうか?何度か笑ったけどな。」
「僕の方が大人ってことだね。」
自分の違いに気付かないなんて、子供だね。ほんと最初とは見違えたよ。君の笑顔にここまで魅せられるなんてさ。愛してるって言うのかな。好きだよ、タイラント。
「分けわかんねぇ。次はボーットして何処が大人だ。」
「ちょっと考えことをね。」
「ありがとな、お前のおかげだ。俺が笑ってるのもお前のお陰だ。愛してる、レッジ。」
急に悟りだして、僕は心の中で彼女の子供という看板を降ろせざるえなくなる。
「最後に少しぐらい、甘えてもいいよな?」
「何でもいいよ。」
「仰向けになってくれ、一度やってみたかったんだ。」
あぁ、なるほどやっぱりそうだよね。
僕は全くの無防備な体勢をとる。お互いが了承する正当な儀式である。タイラントは僕の突き立ったものに対して垂直に体を降ろす。
「お前の入れてみると大きいな。」
「恥ずかしいこと言わないで。だいたい挿れてから言わないでよ。」
彼女は一言謝ると、おろした腰を持ち上げまた下ろす。一回様子見をした彼女は、行くぞと言うと今度は止まらずに行動を続ける。彼女は再び雌っぽい声で、僕も息を切らして快楽を噛みしめる。彼女を僕のが突き刺すたびに、お互いに弾けそして彼女は深く食い込ませる。今までしてきた準備運動とは違い、接合部分からは粘液をかき回す音が出ている。
舐めら回された時とは違った、温かさと柔らかさが僕の物を包んで僕を限界につれていく。彼女も本来受け入れるべきものを自ずから入れ込み、真の悦びを感じているのだろう。
「どう、今の気分は?」
「っ、まぁ悪くないなぁっ。」
彼女は息切れ切れながら、遠まわしに嬉しそうに答える。
僕も笑って返してやりたいところだが、どうやら余裕はないようだ。
「もう、出そうだよ…」
「俺もだぁぁぁ。」
彼女の中で僕の精液と彼女の愛液が中和する。大事なことのなのに僕の頭にそんな計算はなかった。
「熱いじゃねぇか、もう少し加減しろよ。」
「加減ってどうすればできるの?」
そもそも、破裂するのと同じなんだから加減なんてできるわけがないじゃないか。
「そんなもん知るか。疲れたし、俺は寝るぞ。久々に寝むれそうだ。」
抜くものも刺したたまま彼女は人が顔を真っ赤にしていると言うのに、のんきに寝始める。
これで、病気治るんだよね。そしたらどうなるんだろう。


何かありましたらどうぞ。

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  • 生意気にすいません……誤字?「お構いなしに口内に下を侵入させた」→「舌を侵入」?
    本当、生意気に誤字報告なんて……もし間違ってたらすいません。
    物語はとても素敵でした♪
    ――ブイズ好き ? 2009-12-27 (日) 22:41:54
  • >ブイズ好きさん
    誤字報告どうもわざわざすいません。
    素敵とはもったいないお言葉あちがとうございます。
    ――GALD 2009-12-28 (月) 19:52:22
お名前:

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Last-modified: 2009-12-27 (日) 00:00:00
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