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魔性の半月

/魔性の半月

執筆者:フォート ?
性懲りも無く見切り発車。



月は何故美しいのだろうかと、よく考える。
大多数のものなら、それはあの丸みが魅惑的だとか、夜空にある金色の丸がよく映える等、満月が美しいと答えるだろう。
そう、ヒトは完璧を求める。不足のあるものなど、たとえどんなにすばらしいものでも芸術品としての観点で見れば価値は無いに等しい。
ところが月は欠けているときのほうが多いのである。それなのに何故常に美しいと感じ続けられるのか。
それはきっと、その欠けた時の姿に無の神秘があるからだ。
単に欠けて見えるだけだが、ひょっとするとその欠けた部分に、何かしら模様として生物の類が描かれていたかもしれない。
あるいは、弓形であれば、その上に美しい女神が突如現れるかもしれない。
そういった、たくさんの想像が出来る。
なんて美しいのだろうか。満ちた時ばかりではなく、欠けていても違った愉しみがある。
しかし、ここからは俺の考えであるが、満月は太陽とどう違うのだろうかと、よく思う。確かに性質が根底から違うし、ましてや共存することも出来ない。
全く違うものだろう。だが肉眼での視覚的にはクレーターが有るか無いかぐらいで、形は同じに見えないだろうか。
それはヒトによってはつまらなく見えないだろうか。現に俺はつまらないと感じる。
だってそうだろう?どうせ違うのであるならば、形もあからさまに違うものの方が、面白くはないだろうか。
だから満月か半月か、と聞かれたら俺は迷わず半月を選ぶ。
惹かれるんだ。何かが欠如した――そう、まるで俺みたいで。



深闇の空に、疎らに撒かれた白点は凛々と輝き、折に、地平の向こうへと舞い落ちる。
夜風は吹き荒び、鋭利に束ねられた気体が、ひゅう、と頬を掠める。
冷たい……。俺の黒と灰色の体毛が不規則に揺れる。くの字に曲がった漆黒の尾が、灰みの尖った耳が、一段と形を整える。
俺を通り過ぎ、一向に当ても無く乱れ飛ぶ風は、耳を澄ませば遠くでさわさわと木々が快音を奏でるのを助けるのが聞こえる。
他に音は無い。俺の体が僅かに震えたのは、寒さのためばかりではないだろう。
気味の悪さを肌で感じ取りながらも、ふと空を眺める。
するなり、俺は目を覆う。
月明かりが眩しい。――否、“俺には”眩しい、というのが正しかっただろうか。
果てしなく暗い闇を突き抜け、足元――小高い丘に、朧気に影を映し出す。
これは俺の影だろうか?
その問に、頭上で輝く満ち損ねた月は教えてくれなかった。
なんだか俺は不安になった。それはお前の影じゃない、お前に光など勿体ない、突き抜けて、そのまま大地だけを照らせばいいと言われているような気がして。

(更新停止中)


中書

なんてむちゃくちゃな理論。
でも、よくこれに近いことを考えます。というのも、自分は他人と同じことをするのがあまり好きじゃないんですよね。
しかし他人の目を気にしすぎるあまり、自分の意思を殺してしまうことがままあります。
ならばせめて小説の中で自由にやってやろうと、こんな出だしで書き始めることにしました。
あまり長くなる予定はありません。


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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