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食欲と性欲の同時発散

/食欲と性欲の同時発散

食欲と性欲の同時発散 

writer――――カゲフミ

 中心街ならともかく、街外れでは辺りが暗くなり始めると随分静かになるものだ。
 日が沈んでから一時間程しか経っていないのに、窓から外を見てもほとんど人の姿を確認できない。
 街灯のおかげで明るさこそあっても、歩く人が誰もいないから何だか気味が悪かった。
 暗闇から来る怖さとは違う、別の怖さがある。道幅はあって明るくても、一人でここを歩くのはちょっと遠慮したいなと僕は思った。
 広い空間に自分だけぽつんと置かれると、妙に不安になるのと感覚は似ているだろうか。
 まあ、今日はちゃんと夕食も食べたし、後は次の目的地を確認して寝るだけだから、外出する予定はないのだけれど。
 ここはポケモンセンターの一室。外を眺めていた窓のカーテンを閉めると、僕は机に向かって鞄から地図を取りだした。
 自分が今いるのがこの地点で、次に向かうべきなのがこっちの街か。南の方角だから……ええと、南ってどっちだったっけ。
 初めて来る場所では方向感覚が狂いやすい。太陽も月も見ずに、ぱっと瞬時に方角を言い当てられる人もなかなかいないのでは。
 それに元々僕はあまり地図を読むのが得意でないというのもあって、旅の途中迷子になったのは一度や二度ではなかった。
 だからこそ、失敗を繰り返さないように慎重に方位を確認しようとした矢先。僕の座っていた椅子がまるで地震でも食らったかのようにがたがた揺れ出す。
 机に広げた地図も、目の前のカーテンもぐらぐらと。ずっとこの調子だと気分が悪くなってしまいそうだ。別に災害が起こったわけではない。
 地震みたいな天災じゃなくて人災……いや、起こしてるのは人じゃなくてポケモンだからな。この場合はなんて言えばいいんだろう。ポケ災、うーん。しっくりこない。
 木製の椅子がぎしぎし音を立てて唸っている。ポケモンセンターの備品を壊してしまうのは良くない。とにかくやめさせないと。
「ねー、マスター、お腹すいたよー」
 僕が振りかえるとそこには紫色の物体が。丸くて小さいつぶらな瞳と、口笛でも吹いているかのようにとんがった口先。
 口元からちょろりと伸びた黄色い髭みたいなものが可愛らしい。先の丸くなった円柱みたく寸胴な体つきをしているけど、お腹より少し上の部分に手のようなものが二つ。
 とても短くて申し訳程度にしか見えない手だけど、なかなか器用に動かせるから侮れない。現に僕が座っていた椅子を掴んで揺らしていたのだから。
 お腹の付近には体色よりさらに濃い紫をした菱形の模様がいくつかある。その正体は僕の手持ちのポケモン、マルノームのムムだった。
「やめろってば。集中的できないだろー?」
 僕は手を伸ばしてムムの丸い頭をぐっと押さえる。マルノームの体はぶにぶにしていて柔らかい。
 押さえた後は少しの間手形が残り、徐々に元の形に戻っていく。不思議な弾力があった。
 空腹を椅子に訴えてみたところでお腹が膨れるわけでもない。不服そうな顔をしながらもムムは手を離してくれた。
 もし、動かせば動かすほど自分が満腹になっていく椅子があれば、ムムはその椅子がばらばらになるまで揺らし続けることだろう。
「ムム、夕食はちゃんと食べたじゃないか」
 僕が夕飯に用意したポケモンフーズを瞬く間にぺろりと平らげ、ぴかぴかになるまで皿を舐めていたムム。
 みっともないからやめるように言ってもなかなか聞かない。レストランとかの公共の場だと、さすがに自重はしてくれているみたいだけど。
「だってあれだけじゃ足りないんだもん……。もっと欲しいよう」
 ムムがゴクリンからマルノームに進化したのはつい最近だ。進化前からなかなかの大食らいだったのだが、進化したことで更に磨きが掛かったらしい。
 進化すれば体も大きくなり、食べる量が増えるのは当然と言えば当然だ。もちろんそれを考慮して、ゴクリンの時の食事量より明らかに増やしてはいた。
 だけど、あげればあげた分だけムムは食べてしまうので、どのくらいの食事が適量か僕は未だに掴めずにいる。
 それでも、今まで夜になってお腹が空いたと駄々をこねるようなことはなかった。確かに現在のムムの空腹は僕の不手際が招いた結果だったりする。
 ポケモンフーズの買い置きがなかったため、残っていた分だけしか食べさせてやれなかったのだ。
 量的には普段より若干少ない程度だったので大丈夫だろうと思っていたのに。ムムの胃袋は相当に敏感らしい。
「悪いけど我慢してくれ。もう食べ物はないんだ」
 ポケモン用の品物を売っている店まで急いで向かえば、ぎりぎり間に合うか合わないかくらいの時間。
 ただ、せっかく腰を落ち着けた所にまた外まで出ていくのが億劫だった僕はムムの要求に対して首を横に振っていた。
 街外れだからお店まで結構距離がある。すぐ隣にあったなら、僕も迷わず買いに走ってただろうけど。
「うー。じゃあ何か出してよ。マスター」
 無茶言わないでくれ。僕は手品師じゃないし、何もないところからぱっと何かを出すなんて出来やしない。
 今のムムだとシルクハットや懐から飛び出してきた手品用のポッポやムックルでも丸のみしてしまいそうな気がした。
 無理だと言って納得できるほど、ムムの空腹は軽いものじゃないってことなのか。食べることに関しては本当にうるさいからなあ。
「ねえ、お願い。何でもいいから出してよぉ……」
 うう。そんな目で見られてもないものはないんだよ。必死で訴えるムムは今にも泣き出してしまいそう。
 一応今回の件は僕が原因なわけだし、そのせいでムムを苦しませてしまうのは忍びない。
 今からでも買ってくるべきか。でもなあ、間に合う保証もないし、手ぶらで帰ってきたら間違いなくムムの涙腺は崩壊してしまう。
 うーん。何でもいいから出して、かあ。出して、出す……ねえ。その言葉からふと、ある考えが頭を過ぎり僕はちらりとムムの口元を見やる。
 あんまり興味を持って見たことなんてなかったけど、もしかしたら場合によっては使えないこともないかもしれない。
「ムム、ちょっと口を開けてみてくれない?」
「えっ、何かくれるの!」
 沈んでいたムムの表情が途端にぱっと明るくなった。びっくりするくらいの変わり様。食べ物に対する執着心の強さを窺わせる。
 あげられるかどうかはまだ未定だ。この後のムム次第、かな。まずは確認しないと始まらない。
「いいから、あーんして」
「う、うん……」
 僕の口調に只ならぬ気迫を感じたのか、ムムはぐわっと大きく口を開けて見せてくれた。
 普段は小さくすぼまっていて、あまり目立たないマルノームの口。しかし、最大限まで広げると人間の子供くらいならやすやすと飲み込めてしまいそうなくらい大きい。
 小さな口が何倍にもぐんぐんと広がっていく様は、それこそ手品でも見ているかのよう。
 頑張れば僕も入れないこともなさそうだ。だけど、僕が注目していたのはムムの口の大きさではない。
 毒ポケモンということもあってか、人間とは違った紫掛かって毒々しい色をしたムムの舌、そして頬。何でも丸のみしてしまうから歯はないみたいだ。
 僕はムムの口の中にそっと手を伸ばしてみる。ほんのりと生温かくて程良い柔らかさ。
 締まりがなくてぶよぶよしているかと思いきや、案外弾力もある。悪くなさそう。これはいけるんじゃないだろうか。
「……出すのは、何でもいいんだよね?」
「うん。何か、くれるの?」
 ここで頷けば、ムムに期待を持たせてしまうことになる。そうなればきっと後戻りはできない。
 躊躇いが生まれたのは僕にまだ理性が残っていたから。何でもいい、と言われたにしてもこの手段は間違っている。
 まともな頭で考えられていれば僕はここで踏みとどまれていたかもしれない。けれども、長旅が続くと発散させきれなかった欲求が溜まることも多い。
 野宿が続いたり、ポケモンセンターに泊まれた時でも疲れていてやる気にならかなかったりと、考えてみれば最近処理できていなかった。
 今夜は疲れもなくて体力も残っている。コンディションとしては十分だ。この機会を逃したら次はいつできるのか分からない。
 どうやら僕は地図の上だけでなく、思考の中でも迷子になってしまったらしい。いつの間にかやるならば今がいい、という結論に辿りついてしまったのだから。
 一度僕の中で答えが出てしまうと、もう頭はそのことで一杯だった。ムムの弾力のある頬、そして舌。どんな感じなのか試してみたくてたまらなくなってきて。
「すぐには無理だけど、ムムが協力してくれるなら」
 それほど抵抗も感じずに、僕はムムの要求を承諾する返事をしてしまっていた。
 何やってるんだろう、という考えが僕の頭を掠めたけどもう冷静になるのは後でいいか。
「やる、やるよっ。何をすればいいの?」
 僕の返答を聞いた途端、目の色を変えてムムは迫ってくる。その気迫に一瞬たじろいでしまったほど。
 どこまでも意地汚いんだから、もう。今のムムなら食べ物をちらつかせれば、何でも言うことを聞いてくれそうだ。
 どうしようもない食い意地もこういったことに利用できるなら、便利といえば便利なのかな。 
 ちょっと待ってて、と僕はズボンのベルトを外してパンツも脱ぎ、下だけ何もまとわぬ姿になる。
 上は別に裸になる必要なんてありはしない。ムムのリクエストに答えられるのは僕の下半身だけだ。
 僕が突然服を脱ぎだしても、ムムは慌てたり顔色を変えたりはしなかった。何やってるんだろ、と物珍しそうな顔はしていたけれど。
 まだ進化したばかりで幼いからというのではなく、人間である僕に対して異性を見る時のような感情を抱いていないからだろう。
 でもムムが別のポケモンにときめいている姿は想像がつかない。これでも一応雌だってのに、色気より食い気だもんなあ。
「お待たせ。ここを舐めてくれれば出せるよ」
 僕は椅子に座り、股間にぶら下がっていた肉棒をそっと持ち上げてムムに差し出す。
 まだ何の準備も出来ていない柔らかい状態だったけど、刺激が加わればおそらくムムの望んでいた何かは出せると思う。
「分かった。これを舐めればいいのね」
 ムムは頭からぐいっと前のめりになって、足を広げた僕の股間に顔を近づけてくる。結構無理がありそうな体勢だったけど、特に苦しいわけでもなさそう。
 体全体が柔らかいムムなら、柔軟に体勢を変えることができるのか。どこを触っても柔らかいし、骨や関節がどこにあるのか分からないもんなあ。
「ひゃっ」
 ムムの舌先が肉棒の先端に触れた瞬間、僕は思わず声をあげてしまっていた。じっとりと湿り気を帯びた生温かい彼女の舌。
 肉厚で柔らかくて、雄をくすぐるには十分すぎる代物。想像以上の感触。これは期待できそうだった。
「ど、どうしたの、マスター。大丈夫……?」
 体をびくんと反応させた僕を見て、てっきり苦しんでいるのと勘違いしたのだろう。ムムは股から顔を上げて怪訝そうな顔つきで見上げてくる。
 きっと彼女はこの行為の意味も分かっていない。何かくれると言う自分の主人の言葉に縋りついて、必死でそれをこなそうとしている。
 食に対しては貪欲でも、性に関しては無知なムムが何だか愛おしく思えてきた。そんな彼女を下手に心配させたくはない。
「大丈夫だよ、ムム。この先僕が変な声を上げたりするかもしれないけど、心配しなくていいから」
「わ、分かった。それじゃあ続けるね?」
 再び舌先を伸ばしてぺろり、ぺろぺろと念入りに。僕の一物はムムの舌に愛撫されていく。
 大丈夫という僕の言葉に安心したのか、ムムの舌の動きも徐々にエスカレートしてくる。
 最初は先端部分を控え目に舐める程度だったのだが、少しずつ範囲を伸ばして今や根元付近まで侵食しつつあった。
 また、裏筋だけでなく表側も念入りに舐めてくれている。いつしか椅子と床の上には行き場を失った彼女の唾液が染みを作っていた。
 もしかすると、唾液だけじゃなかったかもしれない。もちろんくすぐったい感覚もあったけど、それだけじゃなかった。
 言うまでもなく敏感な個所だし、ここのところ溜めこんでいたというのも手伝って。肉棒がむくむくと膨張し始めるのにそんなに時間は掛からなかった。
「あれ……何か硬くなって。おっきくなってきたよ?」
「あ、ああ。これでいいんだよ、ムム」
 それは僕も分かってるから、あんまり声に出さないでほしいな。何も知らないムムだから、仕方がないといえばそうなのだけれど。
 さて。準備は整った。少々過剰なくらいだ。まさかムムがこんなに舌使いが上手いなんて。
 これも僕の注意を聞かずに皿を舐め続けてきた賜物なのだろうか。それを考えると今後、ムムの行為を咎めにくくなってしまいそうだ。
「ムム、もう少しだから……頼まれてくれる?」
「いいよー」
 このまま舐め続けてもらっても、おそらくは出せることには出せる。だけどそれだと飛び散ってしまってムムがうまく受け止められないだろう。
 床や椅子の後処理をするのも面倒になる。それに、舌だけで終わりというのも勿体ない。せっかく魅力的な口なのだ。もっと堪能しなければ。
「これを口で咥えて……吸ってほしい」
「ん、吸えばいいのー?」
 本当に僕は何をやってるんだろうという自己嫌悪を吹き飛ばしてしまいそうなくらい、何の躊躇もなくムムは聞き返してきた。
 旅の途中、僕が道を決めた時にこっちでいいのかと尋ねるのと同じ口調。ああ、そうか。ムムにとってはこれは日常の一ページ。
 変に意識しているのは僕だけで、彼女からすれば特別な行為でも何でもない。
 トレーナーと一緒にポケモンセンターに泊まっている程度の認識でしかないのだろう。
 中途半端に理性が残っているせいでもやもやしていたけど、何だかそれも馬鹿らしく思えてきた。僕は僕で楽しませてもらう、今はそれでいいか。
「初めはゆっくりでいいよ。徐々に強く吸ってくれると出せると思う」
「分かった。ふふ、もう少しなんだよね。楽しみー」
 そう、もう少し。もう少しだ。僕も楽しみだよ。僕は目を細めて微笑むと、ムムの頭をそっと撫でた。
 痛いくらいに膨張して、先走りが湧き出してくるのを感じている今。いきなり強く吸われたら、あっという間に限界を迎えてしまう自信がある。
 それはそれで気持ちいいのかもしれないけど、僕は出来るだけ長く楽しみたかったのだ。
 突き出た口先でぱくりと、僕の一物を口に含んだムム。それだけだと舐められていたときと大して変わらなかった。
「ふあっ!」
 だが、彼女が肉棒を吸おうと口に力を込めたとき。僕は衝撃に耐えきれずに、両手でムムの頭を掴んでしまっていた。
 別にそうしたかったわけじゃない。ただ、何か体を支えてくれるものが欲しくて。丁度目の前にあったのがムムの頭部だったのだ。
「まふはぁ?」
「だ、大丈夫だ、ムム……続けてくれっ」
 まだ、僕のことが心配なのかい。反応なんて気にしないで、思う存分吸い上げてくれて構わないのに。可愛い奴め。
 吸ってくれないとちゃんと出せないぞ、の意味合いも込めて僕は彼女の頭をぽんぽんと軽くたたく。
 それでようやく安堵したのか、ムムは小さく頷くと再び吸い上げを開始した。柔らかくて肉厚なムムの口内が一物にきゅうっと密着してくる。
 舌と違って局所的ではなく、全体への抜かりない刺激。それだけでも危なかったというのに、さらにぐいぐいと吸い上げられるのだから恐ろしい。
 僕の肉棒がムムの口に引っ張られて、頬に撫でられて。これは、やばいな。腰や足ががくがくで立っていられそうにない。椅子に座っていてよかった。
 気を抜くと本当に弾けてしまいそうになっていたところに、ムムはさらに力を込めて圧迫してきた。
 最初に口先で根元を押さえ、そこから徐々に先端部分へ締め付ける個所を移動させていく。まるで、中に溜まったものを絞り出すかのように。
 そのリズミカルな行為を繰り返し行われたのだ。吸われ始めた時点で、ぎりぎりだった僕がこれ以上耐えられるはずもなく。
「あぁっ……ひうっ……」
 ムムの頭を掴んだまま、びくりと体を強張らせて僕は果てた。目の前で火花が散り、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。
 舐めてもらったときから予測はできていたが、自分で処理してやるのとは比べ物にならない。情けない声を上げ、息を荒げながら僕は絶頂を迎えた余韻に浸っていた。
 射精の瞬間、本来ならばひくひくと暴れる肉棒のおかげで意外と狙いが定まらないもの。
 しかし今回はムムの口先でがっちりと押さえつけられていたので、着実に彼女の口の中へと流れ込んでいる。
 それを貪るかのように、こくこくと喉を鳴らしてムムは僕が放った白濁液を嚥下していた。
 瞳がぎらぎらと妖しく光っており、まるで獲物を捕えた獣の様。何だか怖くて声を掛けるのを躊躇ってしまったほど。
 やがて僕が出した分は全て飲み込んでしまったらしく、もっと出ないのかと咥えたままの肉棒を更に吸われ始めたのだから堪らない。
「む、ムムっ……もういい、もういいって!」
 ついさっき出したばかりの竿にこの仕打ちはきつい。ムムが同じ要領で口を動かしてくれれば、辛うじてもう一発ぐらいはいけそうだが。
 それをやってしまうと僕の体力が持ちそうにない。明日の朝出発するときに支障が出てしまうのは避けたかった。
「んー、これでおしまい?」
 物足りなさそうにしながらも、口を開けて僕の一物を解放してくれたムム。雌が行為の後に雄に掛ける言葉としては、結構辛辣なもの。
 もちろん、自分が今飲み込んだものが何なのかも知らないムムが、そんなつもりで言っているはずはないのだが。
 何となく小馬鹿にされているように思え、もうちょっとならいけると言ってしまいそうになったところをどうにか抑える。
 ここで迂闊に返事をしてしまえば、間違いなく第二ラウンドに突入してしまう。もう一度果てるまでムムは僕を解放してくれなさそうな気がした。
「……一応、ちゃんと出ただろう?」
「うん。でも、何なのこれ。ねばねばして苦くて……あんまりおいしくないね」
 渋い顔をしつつもちゃっかり完食してしまっている辺り、彼女の底なしの食い意地を感じさせる。
 僕は自分のを味見してみたことはなかったけど、生臭い匂いやどろりとした外見からしても美味しいものじゃないことは想像がつく。
 好き嫌いなく何でも食べるムムが微妙な表情をしているということは、やはり味は今一つだったのだろう。
「けど、お腹の足しにはなったよ。ありがとね、マスター」
「あ、ああ……。それは良かった」
 食べ物が関わらないと、ムムは本当に無邪気なもの。あんなに気持ちいいご奉仕をしてもらったのだ。お礼を言うのは僕の方かもしれないのに。
 屈託のない笑顔でありがとうと言われ、溜まっていたものを発散させて冷静になった僕の心に一抹の罪悪感が浮かび上がってくる。
 ムムの空腹と無知さを利用して、僕は自分の欲望を満たしてしまった。トレーナーとしてはあるまじき行為なんじゃないだろうか。
「ふああ。まだお腹空いてるけど、どうにか眠れるかなー」
 僕が真剣になろうとしていたのに、当のムムは呑気なもの。大欠伸をして眠たそうに目を細くしている。
 やれやれ。彼女の振る舞いは、僕の真面目な思考を簡単に中断させてしまう。
 ムムが気にも留めてないのならそれはそれで僕もありがたい。今回のことは、お互いのためのギブアンドテイクってことでこじつけられなくもなかった。
 吸ってもらったことで僕は気持ちよくなれて、ムムは空腹を紛らわすことができて。
 一石二鳥だね、これは。そうなるとムムがちょっと割に合ってないんだけど。
 まあ、何か欲しいとせがんできたのはムムの方だ。僕はそれを満たす手段を提供してあげたまでのこと。
 そういうことで、いいかな。……いいよね。僕がいくら悩んでみたところでムムはムムのまま。無邪気で可愛い、食い意地が玉に瑕な僕のパートナー。
 今回ムムにあんなことをさせてしまった分と十分に満足させてやれなかった分との埋め合わせは、いつもより高級なポケモンフーズを買ってあげることで勘弁してもらおう。

 END



何かあればお気軽にどうぞ。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • あ・・・マルノーム好きになりましたw
    ―― 2010-10-03 (日) 02:42:10
  • 変態選手権と言うタイトルが似合う作品パート3
    まさしく発想の勝利ですね。
    私が気に入ったのはこの主人公です。思春期の中学生を彷彿とさせる『とにかくヤリたい』的な欲求をよく表しているような気がします。
    変な貞操観念に邪魔されることなく気持ちよくなることを選んだ主人公は今回のお話の仲では良くも悪くも異端です。
    しかし、私としては『ああ、あるある』と言った感じで非常に共感が持てました。

    どうでもいい事ですが、絶対に食欲を満たせる量を出せるとは思えな(ry
    ――引っ越し屋 ? 2010-10-03 (日) 09:36:03
  • 一番目の名無しさん>
    そういっていただけると何よりです。不定形なので体の仕組み云々はあやふやですが、こういった形ならエロに持っていけます。

    引っ越し屋さん>
    そう、私でした。今回は変態選手権なのでこういう話でもいいかな、とw
    主人公に理性が戻ってきて踏みとどまってしまっては官能にならないので性欲を優先してもらいました。
    食欲を満たすってのはあれですよ。久々に濃いのが出て喉に引っかかったりしてその量以上に多く感じて(ry

    お二方、レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2010-10-10 (日) 22:12:54
  • 色があれですから…
    でもマルノーム好きになりましたとも!
    ありがとうございました
    ―― ? 2013-05-14 (火) 09:42:56
  • 確かに毒タイプで健康的な色合いとは程遠いかもしれませんね。
    マルノームを好きになってくださったのならうれしい限りです。レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2013-05-27 (月) 21:19:14
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Last-modified: 2010-10-01 (金) 00:00:00
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