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雷の意思

/雷の意思

生きてた人GALD
良い子は閉じてくださるようにお願い申し上げます。


我が家では一匹だけ生き物を飼っていた。野生のものでは勿論なかったが、レアな生物であると自負している。
こういった類の生き物に対する知識というものは殆どなく、物理系というものもあって種類なんてものはわからない。
特徴がはっきりしている物が多過ぎて、名前はわからなくとも別の種類だと見分けはつくので困らないという理由に助けられている。
そんな自分に希少だと言い張れる理由は入手したルートが理由であった。父親はギャンブラーではないが、そういった賭博を楽しむ人間である。
負け越すこともなければ勝ち越すこともなく、徐々にコインを貯蓄していく父であったが、遂に終止符が打たれることになった。
賭博施設の方が閉鎖をすることを決めたのである。詳しいことに興味はなかったが最近は教育だとか何とかケチをつけることが多い社会、目を付けられてもおかしくはない。
そして父はコインと別れるときが来たのだが、その時にすべてのコインをつぎ込んで引き換えてきたものが我が家で暮らしているのである。
しかし、私自身はあまり珍しいものだとは感じていなかった。論理的に考えれば高価であるが故に希少性が高いというのは当然のことである。
それに反するかのように見た目が地味なのである。優美でなければ雄々しくもなく、可愛いというくくりにしては配色が地味というのが見解であった。
そう私は種類、そもそも生物というものに興味がなくそして野外に出るタイプでもないために知識が増えることもないので、ただの父親からの話だけを理由に判断を下していた。
根拠の薄いものだけで決定付けるのはどうにも納得がいかずに、時に観察したりもしてみたが、高貴な存在とはとても思えなかった。
今日も遭遇するとすたすたと寄ってくるだけで、適当に撫でてじゃれたりするペットの枠から飛び出ることはなかった。
また戦闘が得意なタイプなのかとも考えてみた。茶色や白といったような地味な配色から、目立たずに生き残ろうとしているとも考えられた。
学校友達にとりあえず相手をしてもらったが散々な結果に終わった。まずは近接技しか持っていないことが致命的で、家でも見ているようにあんな走り方をしている生物がまともに相手に距離を詰めれるわけがない。
申し訳程度に砂を蹴り飛ばしていたが、ダメージとは言い切れないレベルの火力しかでない。相手のポケモンに軽くけられるだけで戦意を失ってしまった。
得られた情報としては観賞用としかいえず、ある意味では希少価値の高いものの存在意義を満たしていた。
ポケモンというのは本来は育てれば強くなるというとも聞いたので、今は観賞用であっても将来的には何かを起こせるかもしれない。
公園で技の練習をしてはいるが、一向に成長は見られていなかった。体当たりは勢いよくぶつかるだけである。四足というのもあり、それなりの速度で走りはするが体が小さいこともあり脅威は感じられない。
試しに私を攻撃するように命令してみたこともある。その時は勢いよく飛び上り体を極力丸めてぶつかってきた。しかし、毛玉が転がり込んでくるだけでドッジボールの方がまだ怖かった。
砂を蹴り上げることもさせてみたが、素早く振り向き地面を蹴り上げた。速度は速く申し分なかったが、力が足りないせいで速度はあっても飛び散る砂の量が少ない。
力を付けるためにどこかにぶつかる練習から始めたが、木には流石に気が引けたために私自身がサンドバック役をしている。
暇があるときは練習をしているのだが、一向に攻撃力が伸びる気配はなくサンドバック役を変わるのは先の話である。
戦闘はまだまだであったが、一つだけ能力の高いものは見つけていた。しゃべり方だけは一般的なそれとはどこが離れて、上品であった。
一人称は私、丁寧語とか敬語とかそいったような言葉遣いを元々こなしており、喋るだけなら子供よりも遥かに大人に近い。
「今日も公園にいく。」
「あっ、はい、わかりました。」
元気に走ってくる、そんな行動の速さは評価していた。私が歩き出すと足元を歩く。私の足より一歩遅くらせて、そこ距離を保っている。
決して前にはでないように、前を向いているけれども身長についてくる。変な気遣いに違和感をぶつけることができずに歩いた。
それなりの付き合いにもなるのに、どこか距離を置かれている感覚、詰めれない間隔、彼女の気の弱さが成長を止めているようにも思えていた。
周りに勝手に配慮をするから、ボールにしまう必要がないというメリットと、周りを気にしすぎる短所の両面を、裏側なのに並んでいるように見せている。
公園についても、気持ちが乗らず、まずはランニングをさせた。公園を走るのを見守るだけであるがこれはすぐにノルマをこなしてしまう。
戻ってきて終わった報告を受けると、ベンチから立ち上がった。正面に立つようにして距離を置いていく。助走距離を作ると、腰を落として衝撃に備えた。
置いた距離から走り出す。加速して飛び込んでくる茶色い毛玉と正面からぶつかることになるが、衝撃は軽く倒れるまでには至らない。
「他に何かできる技とかないのか?」
「かみついたりとかならできるかと思います。」
加減しているようにも感じたこともあり、他にできることがないか聞いてみたが強烈な回答が戻ってくる。ぶつかることとは違って加減がしにくそうで、威力がでることは期待できる。
服が損傷する可能性もある強力な技ではあったが、人であったとしてもやけになってこなせる技であり効果もある程度は保証されている。リスクの割に試す価値がない。
「他にはないのか?」
「申し訳ありませんが、他にできることは……」
目を落としながら言葉を途切れさせる。はっきりと落ち込んでいるようなリアクションを見せつけられると、逆にこちら側が申し訳なくなる。
数回タックルの練習をした後成果が期待できないことから帰宅することにした。走ることに関しては点数は高くつくが、他に関しては何も得られなかった。
疲れている素振りもなく、ただついてくるだけの所を見ると加減していたのかと疑ってしまう。彼女のことというのもあって変に強がっていることもありえた。
変に言いがかりをつけることも望むところではないし、何よりまたへこまれて歩くことに活気がうせてしまうのは避けたい。ちらちらと彼女に目をやりながら言葉が出ることはなかった。
家に帰ってからも話したのは父親が最初だというひどい沈黙を続けた。
「お前は電力か熱量か、どっちが便利だと思う?」
「電気の方が熱の発生も楽だし、電気かと。」
発電所に務める気はないと首を横に振った。頭が固いなと父親は物を私に投げて寝てしまった。ギャンブラーのようなことがあるとはいえ、仕事に対しては真面目なのである。
一方で私は受け取ったであろう物を地面に落としてしまっていた。受け取ったものが予想よりも固く大きさもあったため衝撃が大きく、床に音を立てて転がった。
しかし、私が驚いたのは固さや大きさそういったものでは無ければ、石を投げた父に驚いたということでもなかった。
触れた瞬間のその数秒の間に間違えなく手元に静電気が流れたからである。ドアノブから静電気が走って離してしまうのと同じだ。幸いにも足には直撃をしなかったが、音からみて当たればそれなりの威力があったであろう。
見てみれば色は黄色というか眩しく緑に近いようにも見える。石というよりもクリアで水晶のような物質であるようにも取れる。中には本当に電気がたまっているのか、何かがほとばしっている。
試しにつつくことから始めてみたが、先ほどの様な展開はなくそのまま拾い上げるまでにいたる。掴んでみると鉱石であることは確定してしまった。
そのこと以外は得られることがなく不思議の言葉でしか表せなかった。どういう意味があるのかも分からずに受け取ることしかできなかった。
部屋の机に持って帰ると、変に光っているせいで落ち着けずに適当に物をかぶせてからベットについた。
次の日になっても分かることはなく持ち歩いてみるしかなかった。父親の事であるので、意味はあるのだろうが大概こういったことの説明がないせいで困る。どうすべきなのかと問いかけても、石は何も返してはくれなかった。
暗がりに閉じ込めていた石は昨日とは何も変わる様子はなく、光を遮ることでは何も起きないようであった。窓から差し込む光にかざしてみたが、日航に反応することもなかった。
電子レンジで温めるや固いものにぶつけるなども考えたはみたが、電子レンジが潰れたり石自体が潰れてしまっては話にならない気がして胸にしまい込んだ。
一日日常を友にしてみたが、何か変化が訪れることはなかった。そこで次の日は周りに見せてみた。
私と同じようにただ学生をしているだけの人間が見ても、同じような感想を述べるだけであった。
そんな中で一人だけ違うことを言った者がいた。ポケモンに使える石があるとか何とか、ポケモン関連であてにしている知り合いが言っていたのだが、貴重なものらしく実物は目にしたことがないらしい。過度の期待はするなと念を押された。
使う相手がわからなければ、使い方さえ分からないが私に思い当たる人間以外の生き物などだいたい的が定まる。百発百中のレベルの精度を誇っているだろう。
「これを見て何か思うこととかないか?」
「いえ、何というか不思議な感じがするぐらいですかね。見覚えもありませんので。」
自宅の廊下で鉢合わせしたところを尋ねてみたが、彼女はこれといった反応はない。人とは違うものを感じ取れるという憶測は見事に空を射抜いた。
外面的にも石が反応している気配はない。それなら直接ぶつけて反応を確かめてみるしかない。不思議そうに石を見つめている彼女は無罪、多少なりとも静電気が流れることに申し訳なさがあった。
投げつけるほどの威力はなかったが、こつんとぶつけてみた。石が触れた瞬間に中から電気が飛び散りだして、慌てて手を放した。実際電気が飛び出したわけではなく、光が飛び出したというのが正しい。
手に走った電気に対する痛みで手放したというわけではなく、条件反射で手で顔を覆ってしまったからであった。しかし、手元を飛び出した石がどこかに直撃することはなかった。
物音一つ立てずに石は大気中に溶け込んだ。中に凝縮されていたエネルギーが光に変わって飛び散った。眩しくて目を伏せてしまったが、光は一時的なものですぐに消滅してしまう。
目を開けた先には茶色い物体はいなくなっていた。一回り大きい生物が立ちはだかっていた。黄色というのがぱっとみた感想であるが、首元だけは白色の鬣のようなものを備えている。
足の長さは伸びており、前の様なちまちました走り方ではなくなるだろうと期待できる逞しさ。耳も尖り長くなったように見え、全体的にとげとげしく攻撃的な仕様になっている。
「お前……なのか?」
「えっ、はい、どうかしましたか?」
当の本人は変化にすら気が付いていないようであったので鏡のある部屋へ連れていった。自分の姿を映した彼女は最初は誰がなんだか理解できていなかったようだが、思考が追い付いた。
最初は手を鏡に当てると向こう側も合わせて動き出す。くるりと回転して自分の姿の大まかにつかむと少し間が空いた。
「どうかしたか?」
「いえ、自分の姿に慣れなかったので……」
「体の方は問題なさそうだが。」
「お前には関係ないだろ。」
一瞬だけ耳を疑ったが、目を丸くする私に対して彼女はしれっとした態度を取っていた。先ほどの発言などありませんでしたと、何もなかったかのようにも見える。
控えめで意見すらまともにしてこなかった彼女が、急に反抗を剥き出しにしたせいで変化に驚いてしまった。姿も随分と変わってしまったこともあり、中身も変わってしまったのだろうか。
攻撃的な印象を受ける容姿になってしまったせいで、外見上は過激な性格に寄ってしまっても仕方のないように思えた。
色々とひっかかることは多いが、一番気になったのはスペックであった。前よりも戦闘能力は高そうな見た目をしているせいか妙に興奮してしまっていた。
いつも通りに公園までいって、とりあえず走らせてみた。得意であった分野は予想外で、前とは比べ物にならなくなっていた。
軽く走っているだけの速度を遥かに超えて、以前の全速力では話にならないと確信できる。
次に攻撃力であったがこれはさほど変わりなかった。受け止めることは容易で、あの速度で加速すればもう少し威力は出せるかもしれない程度であった。
「速くなっただけか。」
「五月蠅いって言ってんだろ。」
急に彼女が正面から消えたかと思うと、同じ視線の高さにまで彼女の顔が来る。こちら側に接近していると認識しているのに反応が間に合わない。
人間の速度を超えるスピードで彼女かとびかかってきているのだ、直撃を逃れる術はない。力はなくとも不意を突かれたことと、体重が全てかけられていたことから、そのまま地面へと倒れ込む。
標的をとらえた彼女はピリピリと音を立てる。歯ぎしりなどではなく、電気が弾けているそれに近しい音を響かせる。睨みつけて、何とでもできると上に載っている。
「びびりやがって、白ける。」
そう一言舌打ちと合わせて残したかと思うと、慌てて上から退いた。
「すいません、何が何だが。」
ぺこぺこと謝る姿勢は、差がありすぎてわざとらしくも感じてしまう。同時に彼女がそのような疑いをかける相手でないことも理解していた。
嘘をつくような性格では無ければ、品のない発言をするようなところを目撃したこともない。単純に考えれば演技だと取れるが、彼女を知るからこそ本当のようにも思える。
しかし、どちらであったとしても、彼女からはまともな答えが返ってくることはあまり期待できない。私自身が彼女から判断していかなければならないだろう。
コインが簡単に裏返せるかのように、目にする彼女が切り替わるというのはこの体が変わってしまったことによるものなのだろうか。
考えても、少ない知識から導き出せる答えなど知れていた。次の日にポケモン友達に聞くことで答えは定まり、公園を後にした。
真意を確かめるべく、早速実践に入った。友人にはいつものように手加減はしてもらい、能力の高いポケモンは避けてもらうように頼んではいた。
しかし、相手はこちらよりも一回りは大きく見て、黒と灰色の何とも地味なカラーリングをしており、見るからに戦闘には向いていそうである。動きのよさそうな体格をしており、特殊な能力よりも物理的攻撃が強そうに取れる。
進化したことで体格に変化があったとは言え、やはり攻撃に当たってしまうことは以前と同じように避けるべきであろう。
「相手の攻撃には気を付けるんだ。」
「言われるまでもない。」
先制は取った。速い、直線的な動きというのもあって駆け出しも速く加速も速い。逃げてばかりいたのとは打って変わり、相手に向かって走り出した。臆病とは変わって果敢であるが、無謀でもあった。
速さを取り柄にしたとは言っても、安直な動きでは相手に読まれる。来るとわかる動きは目で追えなくとも、対応が間に合ってしまう。不意を突いたとしても、単調なものではアドバンテージを活かすことができない。
練習というのもあって、ある程度距離を置いて始めている。敵に到達するまでに時間を僅かに必要としてしまう、相手に立て直すだけの時間を。灰色のそれは速さに驚いた様子はあったが、命令を受けて落ち着いて狙いを絞っていた。
訓練されているだけのことはあって、こちらが来るのを待ち構えている。そこに全速力で彼女は駆け込んだ。危ないと叫ぶ暇もなく、カウンターで前足が振り下ろされる。黄色いその姿をとらえた前足は体を押さえつけるようにして地面にたたきつけられた。
しかし相手は勢い余って前に少し姿勢を崩した。少し前のめりになり頭が落ちると丁度その目の前に発電している彼女の顔が来る。仕掛けなんてタネがあるのかすらわからない光景であったが、確かに彼女の体は叩き潰された。見えないところで何かが起こり、相手がこうして倒れていた。
電光石火の如く突進して接近戦に持ち込むかのような行動はフェイントで、カウンターを誘発させる所まで計算して動いていたのだろうか。それとも直感的によけて攻撃にはいったのか、どの道まともな命令を下していない私にはわかりえなかった。
ただ倒れた相手を見ている彼女の背中を視界にはっきりと捕えていたが、今もそれが半信半疑であった。実物のようにしっかりと影は存在している。
「あれ?」
立ち尽くしていた彼女は何かに気が付いたかのように、動き出した。
「覚えてないのか?」
自分で手を下したことすら覚えていないようで、彼女は再度相手を前にしてリアクションをようやくとった。嬉しさで飛び跳ねたというよりも、驚きで飛び跳ねたようであった。
ぺこぺこと相手に頭を下げて姿勢が低いまま、まるで敗者であるかのような立ち振る舞いでこちら側に戻ってくる。激しい動きとは真逆で、丁寧な歩き方で戻る様はずいぶんと余裕にも見れた。
そのせいもあってか、相手も熟練者ということだけあって負けたままでは終われないようであった。
次の手は、頭から炎が出ている。二足で立っており、肉質も筋肉を帯びているようで先ほどのように殴り合いを狙っているようには見えた。
全身を白い毛で覆い、顔は茶色いようであったが、地面タイプではなそうであった。タイプの相性という物は聞かされていたので、対策されたらこちらは一匹しかいないので詰んでしまっていた。
正々堂々とした戦いを望んでいるあたり、勝負師な所が見受けられる。
こちらは同じポケモンを出すことしかできないために、彼女を前に出させた。全身尖ったままで元気はありそうであった。
速さを活かして先制攻撃を仕掛けることができればというは期待が生んだ甘さであった。始まった直後、彼女は足を出そうと曲げた瞬間であった。
相手の方が速く彼女の目の前に飛び出して軽くパンチを入れようとしたが、彼女はその攻撃を避けた。しかし、それによって無理に踏み込む動作をキャンセルしてしまい姿勢を崩してしまう。
すかさずに拳が叩き込まれて彼女は後方へバックする。下がって体勢を立て直そうとする彼女に、休む暇を与えることなく相手も押し寄せてくる。
こちらは四足であるし、物理攻撃が得意ではないので後ろに逃げることしかできないのに対して、相手はスピードか追い付いているのでパンチを出すだけで一方的な流れになってしまう。
軽いステップを踏みながら彼女はよけてはいたが、それよりも激しく相手の頭の炎は揺れている。
相手の手の動きをみて何とか避けてはいるが、経験差が物を言っているのか彼女はよけることが限界である。相手も相手で当たらないことに焦るを覚えたのか、彼女がバックステップの着地に合わせて遂に拳の連打を放った。
逃げる彼女に守りを捨てて目で追えない速さで連打を繰り出す相手に、彼女は遂に捕えられる。相手の手が止まるとぐったりと倒れた彼女の姿。そしてすぐに白い煙となってきた。
煙が登っていく先に別の彼女の姿があり、無防備に踏み込んできた相手をレンジに捕えて電撃を放った。直線状ではなく球体のように無差別な電撃の動きを読めずに相手に直撃する。
防御が間に合わない相手はもろに直撃をしてダメージを受け流すことができずにそのまま倒れ込んだ。
色々と詰め込まれた時間であっても、密度が濃いだけで時間的には短く殆ど頭に入ってきていない。
「お疲れ様。」
「退屈なことに呼ぶな。」
最後まで尖っていたが、これを最後に戦うことがなくなってしまったのでまた丸くなってしまった。
彼女はよく理解していなかったが結果だけ見ればプラスでしかなかったので、素直に喜んではいるようであった。
しかし、私としてはあまり喜ばしくはなかった。明らかに別人のように変わってしたことが気になって仕方がなかった。
そして何より指示に従わないことが気に食わなかった。日々の彼女がこちらのいう事通りに動いていないということもあって、増して気になっていた。
苛立ちからか、彼女を陥れることを考え出し、機械系の知識を活かして着実に準備を始めた。仕掛けを組み終えるとあとは誘導するだけであった。
計画自体は仕掛けが上手くいくかどうかだけが問題で、彼女を誘導すること自体人格が変わっていなければ駒ように動く。
だから練習だと呼び出し、両前足を縛り上げることをバランス感覚だとでも言っておけばすんなりと受け入れる。
立ち位置を確認すると、彼女の後ろ脚の谷の下にある紐の様なものが浮上した。彼女の両足の間に突き当たるまで浮き上がり、それがぶつかってから彼女はようやく疑問を持った。
「あの、これは。」
「お前に用はない。」
そのまま紐は動き出した。性格に言うなら紐が歯車に引っかかっているために紐が引かれるようにしかけてある。しかし、紐がこすれるだけでは効果はそこまで期待できなかった。
そこで紐にプラスチックのある程度の大きさのあるビーズを通せるだけ通しておいた。紐に凸凹が生まれ、更にそれなりの方さを持たせることができた。
これを股に直撃させて擦らせるようにするだけで自分の手を使わずとも、彼女を弄ることが可能である。
それといって大きな音も立つことがなく、回転している歯車の機械音が部屋の大半をしめている。ギアも外れることがなく順調に動いているようだった。
彼女は信じられないというよりも、まだ信じているといったような顔でこちらに助けを期待している。それでも擦れる僅かな音に顔を歪ませていく。
苦痛というよりも、何かを抑えようとして必死にバランスを取っていた。普段四足歩行をしているせいで、前足が吊り上げられるだけでも辛い。少しの良心は痛んだが、普段の彼女がみせない赤面には期待の方が大きかった。
期待はもちろん彼女の恥じらいなどではなく、他にある。今の優越感に駆られて忘れてしまうわけにはいかない。
「お前、どういうつもりだ!」
「やっとか。お前に聞きたいことがたくさんあるんだ。」
「誰が貴様などに……」
威勢はいつも通りで不利な状況という物を呑み込めていないようだった。いつまで威勢を保っていられるのか、そんな余裕に顔を歪ませた。
優越感に苛立ちを隠せない彼女は鋭くにらんで噛みついてきたが、こちらには届きようがない。先ほどの彼女よりは強気ではあったが、余裕があるわけではない。
睨んでいても、歯車の音が彼女に蓄積させていっていることを確信させる。鋭い目つきも微妙に振動しだしている。所詮は女なんだと表情が語りだそうとしている。
話題の切り出しをこちらからしようと、彼女の後ろに回った。そして、前足の下の脇より腹に近い部分を掴んだ。毛はあるが、他にはあまり何かあるようには感じさせない。
殆ど毛ばかりで触り心地としては悪くはなかったが、期待していた感触とは大きく異なる。毛の下は平坦の一言に尽きる。だからこそ、そこに何かがあるとすぐにわかってしまうのである。
平らなテーブルの上に、固い出っ張りがへばりついていることはすぐに手に当たって気が付いた。中身が変わったところで、体はそのままだということである。
「随分と楽しそうじゃないか。」
「やめろ、お前!」
指先で固い突起を突くと彼女は口を強めた。それが更に好奇心を掻き立て指を動かす。両手を使って、左右両サイドを攻め立てる。
騒ぎ出した彼女の反応は徐々に罵倒ではなく、抑えきれない声が混ざりだしてくる。只でさえ耐えるために口を閉ざしていたのに、上乗せされた攻撃を受けながら口を開いてしまったのだからこうなってしまう。
そこを見逃すすべもなくこのまま本心を引きずりだそうと手を休めることはしない。もうひと押しで勝つことができると思うとむしろ手が勝手に動いていった。
胸は直接触れているのでどれほどなのかはまだ分かったが、ずっと擦れている股は耐えられたものではないだろう。紐の付属品であるビーズには彼女の体液が随分と付着してしまったようである。
「嫌だ、お前なんかに……っ」
最後にちゃんとした言葉を発した彼女は急に静まり返り息を吸い込んだかと思うと、ビーズを突き抜けて床に強く体液を叩きつけた。床には激しく物かって液体が飛び散った。
そこから彼女は随分と口を動かすようになった。どうやら元々石の中に入っていたらしいのだが、石を使ってしまったために気あの徐の中に意識が紛れ込んでしまったらしい。
元々のことはよくわかっていないらしいが、ある程度の言語能力など必要最低限の知識はもっているらしく彼女の意識と入れ替わることで、外界を楽しんでいるらしい。
戦う時だけに入れ替わっていたのは、戦うことぐらいにしか興味がなく身体能力はそれなりにある体であったため不自由はしなかったようである。
彼女の体を使いまわしているだけで、中身が根本的に別な存在であるために彼女の意識には映らないシーンが存在していたようである。だから今の醜態を本来の彼女が見られるわけもなかった。
絶え間なく彼女のために機械は動き続け、彼女もまたそれに陶酔した。今まで知りえなかったものを知ってしまったかのように楽しんでいた。
口は開きっぱなしで、口元に涎を垂らしてもそれを拭おうともせずに、更には涎を股に擦れる紐にまでぶつけた。
床には彼女の上か下か、どちらからのものかわからなくなってしまった液体がちりばめられていた。そしてまた床の湿った面積を彼女は増やしていく。
擦れる音も液体がぶつかることで、また違った音を出すようになっていたが変わらず彼女は叫び声をあげていた。もう一人の意思は戦い以外のものに興味をもったようだ。
疲弊することよりも快楽へと身を投じて、自分の下半身を強く紐に押し当てた。彼女に接している部分だけ一層沈むようになり、体重がかかっているのが見れる。そうやって機械を楽しめるだけ楽しんだ。
満足が行くまで堪能した彼女はばったりと意識を失ったかと思うと、彼女に意識が入れ替わったようで、そそくさと拘束をほどいて公園へ連れ出した。
幸いにも肝心な部分は覚えていないらしく、いつものように接しているだけで何事もなかったように一日を終わることができた。
少し私のことを不安にも思っていたようだが、機嫌がよかったこともありいつも以上の笑顔が彼女に安心感を与えた。
この一見でもう片方の意思にこちらから干渉することはなくな目的を果たすことができた。
「おい、その……」
戦い以外でも時より意識が入れ替わりこちらの部屋へと尋ねてくるようになった。毎回、極まりの悪そうな顔をして言葉を濁してはいた。
「おまえか。」
どちらかが来たかを判断すると部屋へと招き入れて、彼女へとむけてあるものを突き出した。彼女もそれを見るなり何も言わずに食らいついた。
最初見せた時には流石に困惑していたが、最近では言葉に戸惑いがある程度で行動に移すとすぐに乗り気なってこちらへと寄ってくるようにもなる。
舐めることから入るぐらいにあった不信感も、今では咥えるぐらいにまでは欲望に代わり口から水音を立てた。
両足の間に頭を潜らせるようにして獲物を差し押さえて必死に上下に動く様は、もう片方の彼女からではそうぞうもできない。舐める手際もよくなりがむしゃらというよりは、規則的に舐めるようになり技に磨きをかけていた。
彼女の眼はこちらの顔をとらえることもなく、両目でしっかりとものだけをとらえていた。そんな彼女の物欲を満たすために彼女の頭に手で抑え、もう片手は胸に当てがった。
そして気を止めずに舐め続ける彼女の頭をさらに強く押さえつけた。頭の毛をかき分けるように、指が体毛にわってはいった。
「んっ……」
吸い付くようにして根元まで彼女に咥えこませたまま流し込んだ。彼女も嫌がることもなくただこの主観に得られるものに満足をしていた。
そのまま咥えて離れない彼女にいつまでも構っている暇もないので、吸い付いたまま離さない彼女の口内で再び準備を整えると無理やり抜き去った。
彼女を方向転換させると、何も気にせずに彼女の中へと整えたものを突き立てた。彼女はただ情けのない声を上げるだけで反抗など示したりはしない。
最初のころとさほど変わりがない締め付けを味わっているのにもかかわらず、舌をだらしなく垂らして楽しめるように彼女はなったようであった。
戦いの時にはあれだけ強気になっていても、こうなってしまうとただ鳴くだけの犬同然。どこを触っても喜ぶだけであった。
「あ……あー。」
快楽だけに切り替わった彼女の頭の中はひどいありさまで、まともな言葉を発したりはしない。そんな貧相な様に何を言ったところで、まともな返事がくるはずもなくようを足すだけである。
馬鹿にしてもへらへらと笑うだけで目線すらまともにかわすことができない。無駄だとわかってしまっているので、何もせずにただ彼女を突き立てた。
体の方ではしっかりと受け答えをしてくれるようで、こちらのを強く離さないように飽きさせない。故にこちらも自分の欲望のために動いた。
彼女の情けのない恍惚とした表情に対する優越感に浸りながらも、彼女を今自分のものにしている満足感を味わっていた。
しかし、そうやって長い間行為を続けれ入れるわけでもなく、どこかで休憩を挟まなければならない、
自分に限界を感じるとその状況で限界を爆発させるだけであった。彼女に許可を求めたところで何もまともな返答などかえってこないのである。
しっかりと奥まで押し込みながらも彼女の体をこちらに引き寄せた後、行為に一旦終わりを告げた。満足したものを抜き取ると、彼女も行為が止まったことで少し頭がまともになった。
「待って。」
その一言だけをしゃべりこちらに舐めよってくる雌犬に、今日も最後まで付き合った。これがもう一つの意思。


りはビリビリ


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Last-modified: 2015-12-31 (木) 23:06:34
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