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雨の日~A rainy day~ 前編

/雨の日~A rainy day~ 前編

作者 海熊

はじめに 


この物語の後半には官能表現が含まれる予定です。
表現内容の詳細は、後半の冒頭に載せる予定となっております。
また、この物語には全体として鬱展開、そして死亡表現、さらには流血などのグロテスク表現などが含まれております。
そういう作品が苦手な方は、すぐにバックすることをお薦めします。

大丈夫な方は、これより下にどうぞ。






その日は、雨の日だった。
外に出ることも出来ずに、彼と話していた。
不意に、不穏なものを感じた。
直後、轟音が鳴り響いた。
崩れていく家。外から聞こえてくる人間たちの声。
それに気が付いて目を開けると、周りは紅蓮に染まっていた。


□□□□□


悲しみは雨の日に始まった。
私の両親は、私の体を醜いとだけ言って、そのままどこかへ行ってしまった。
その日から、私は生きることに貪欲になった。
周りの好奇の目など気にも留めずに、必死で生き延びようとした。
しかし、そんな無茶な生活が続くわけもなかった。
食べるものも見つからず、幾多にも傷つき、ついにはその場に倒れこんでしまった。
ああ、もう駄目なのか。他人事のようにうっすらと考え、私はそのまま目を閉じた。
―――体がふわりと持ち上がった感じがしたのは、きっともうすぐ死ぬということなのだろう。


□□□□□


なにか、ふわふわしたものに乗っているのがわかった。
変だな、死んでも感覚はあるものなのか。
軽い唸り声のようなものを上げながら、目を開けてみる。
まず目に入ったのは、強烈な閃光だった。
顔をしかめながら何度も瞬きをして目を慣れさせると、そこは白を基調とした部屋だった。
ここはどこだろう、私は死んだのでは、と首を傾げながら周りを見渡す。
辺りには用途のわからない器具が幾つも並んでいて、そのうちいくつかから伸びている紐のようなものが私の体に繋がっていることがわかった。
そんな器具たちを、しばらくぼうっと眺めていると部屋の奥から足音が聞こえてきた。
「あ、ようやく目を覚ましたんですね!」
このモモンの実のようなピンク色をしたポケモンは、たしかラッキーといったか―――とにかくそのポケモンがうれしそうな顔で近寄ってきた。
そのまま、あまりいい気はしなかったが体のあちこちを触られ、よし、とラッキーが呟くとそのまま
「今すぐ先生を呼んできますね!」
とだけ言って、部屋に呆然とした私を取り残して足早に去っていってしまった。


□□□□□


せんせい、と呼ばれている人間からいろんな器具で体を調べられているときにラッキーから聞いた話によると、ここは人間の住んでいる街の『びょういん』という場所らしい。
三日ほど前に、衰弱しきった私がここに運ばれてきたらしい。
つまり私は、三日もの間寝ていたことになる。
あの時体が持ち上がった気がしたのは、気がした、では無く本当に持ち上げられたわけか。
他にも、私はアブソルという種族に分類されているということ、さらに『色違い』といってかなり珍しい存在であることを聞いた。
確かに一番古い記憶に残っている親とは体の色が少し変だとは思っていたが、それが原因で捨てられたのか。
そうやって思考を巡らせていると、ようやく調べ終わったらしく、せんせいとやらが台のようなものから優しく降ろしてくれた。扉を開けてくれているところから見ると、もう帰ってもいいようだ。
しかし、これからどうしたものか。
ここがどの辺りにあるかわからないから、もともと住んでいた森に戻ることも出来ない。
かといって私を住まわせてくれるような人間もいない。
そんなことを考えながらびょういんの廊下を歩いていると、外へと続く透明な扉と、先ほどせんせいの近くにいた人間の女が男と会話していた。
「…ということで、どうでしょうか?」
「むしろ大歓迎ですよ!ちょうど手持ちも一匹開いてるんです!」
「最終決定権はあの子にあるので…あ、ちょうど来ましたよ」
こちらを見てうれしそうに男が寄ってきたが、正直言って話の流れがまったくわからない。
まだ若いであろう男に対して首を傾げると、あぁ、そうかと呟いてから言った。
「君、俺のところにこないか?」
その言葉に耳を疑った。
私は人間があまり好きではない。そもそもそんな自己中心的な考えに乗るわけが―――と、そこまで考えてから先ほどまで考えていたことを思い出した。
いま、私には住む場所がない。このまま男の誘いを断って野良ポケモンとして街をうろついていたら、それこそ捕まってしまうだろう。私は『色違い』とらしいので余計その可能性が高まる。
しかしこの男についていったらどうだろう、食べ物をとりにいく必要もないし、捕まえられる心配も無い。
それなら、この男についていったほうがいいのではないか。
それに、ここに居るということは恐らくこの男が私を拾った人間だろう。
そんな考えを巡らし、仕方なく私は首を縦に振った。
―――この考えが、間違いだと気づかずに。


□□□□□


男についていった私は、フォートという名前をもらった。
その後しばらくの間はご飯の合間によくわからない味の飴をたくさん食べさせられた。
なんだか食べるたびに少し体が熱くなったが、その味が嫌いではなかったのもあって大した問題はなかった。
それを数週間食べ続けた後、戦闘の訓練を始めることになった。
戦闘自体は野生の頃、どうしてもしないといけない場面があったので得意なほうだった。
動き方の基礎もちゃんと出来ているらしく、実際の戦闘でも負けることはなかった。
男は勝つのが当然といった態度で褒めてくれたりなどはしなかったが、これが人間の当然の態度なのだろうと気にすることはなかった。
事が起きたのは、雨の振る日にとある大会に出場したときだった。
簡単に勝ち進んだ私たちは、決勝戦でもあっさりと勝てると思っていた。
―――結果は、惨敗だった。
圧倒的、それしか言い表しようの無いほど強かった。
私の攻撃はことごとくかわされ、その隙を逃すことなくダメージを与えてきた。
何より違うのは、トレーナーの指示がほとんど出ていなかったことだ。
私が男の指示を聞いてから行動に移すより、自分で考えて行動に出る相手のほうが一瞬速く動き出せる。その一瞬によって勝敗が決定してしまったのだ。
指示を聞かずに行動する、というのは、互いに信頼しあっていないと不可能に近い芸当だ。
それでも私は、準優勝ならいいかな、などと考えていた。
きっと男も満足しているだろう、豪華な食事も出るだろう、などと少しばかりの期待に胸を躍らせながら家に戻った。
そんな私を出迎えてくれたのは、褒め言葉でも、豪華な食事でもなく、物理的に腹に響くような衝撃だった。
なにが起こったのかもわからず壁に激突してから男のほうを見ると、怒りの感情を露わにしている男の顔が視界に映った。
そしてわなわなと震えている拳を振り上げたかと思ったら、私めがけて振り下ろした。
ゴッという音と共に、頭に鈍い衝撃が走り、私はその場に倒れこんだ。
今度は倒れこんだ私の顔面めがけて、男はまた拳を振り下ろした。
それも幾度と無く、何度も、何度も、何度も。
鈍い音が部屋の中に響き、殴られた衝撃により意識がおぼろげになり始めた。
それでも男は何かを呟きながら、まだ殴る。
ぼそぼそと声は小さく、何を言っているのか理解する気力も無くなり始めた頃、不意に男が立ち上がった。
ああ、やっとこの苦痛から解放されるのか。そんな淡い期待を打ち破ったのは、腹にめり込む男の長い足だった。
骨が軋み、体が宙に浮いた。壁に叩きつけられ、床でバウンドする。そうしてまた、男に蹴られる。
それが一体いつまで続いたのかはわからないが、自分の肋骨と足が変に曲がっていることと、口からたくさんの血が流れていることはわかった。
もう、立ち上がることもできないほどダメージを受けた頃に、ようやく解放された。
薄れ行く意識の中で最後にわかったのは、男が部屋から出て行こうとしていることと、立ち上がることの出来ないはずの足で、確かに立って口の端を吊り上げている自分がいることだった―――


□□□□□


意識が戻った頃には、部屋に男はいなかった。
代わりに、大きな血溜まりと肉塊が転がっていた。
意識がなかった間に、一体何があったのかは容易に想像がつく。
頭の鎌からは肉塊の周りに広がっているのと同じ、紅くて鉄臭い液体が―――
「あ……ああ…」
自分でも聞こえるか聞こえないか、そのくらい掠れた声が口から漏れ出た。
「あああああぁぁぁあああぁああぁあぁぁあぁあ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」
何も考えずに、家から飛び出した。
折れている足など、気にもならなかった。
雨の中、より紅く染まった体で逃げた。
怖い。
恐い。
コワイ。
何が?
あの男が?
いや。
自分。
自分が、こわかった。
何よりも、自分から逃げ出したかった。
そうして、ただひたすらに私は走った。


なかがき的ななにか 


雨の日~A rainy day~前編はここまででございます。
今見直してみると、無駄に場面転換が入ってて読みづらいですねー…。
後半はまだ執筆中なのであしからず。
ちなみにたったこれだけを書くのに大体一ヶ月かかったうえ、官能表現を初めて書くのでおそらくgdgd展開の内容&二ヶ月ほどかかるという恐ろしい状況になるかとorz
どうか二ヶ月ほど長い目で見守ってあげてください。

コメント 


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Last-modified: 2013-05-23 (木) 00:00:00
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