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陽と月の古本店 ~古本店にようこそ~

/陽と月の古本店 ~古本店にようこそ~

writer is 双牙連刃

 さて、新年を迎えたという事で…サマバケの時のように、また一つお話を始めてみようかと思います。今回は新光と同時進行で書いていく予定なので更新は不定期&遅めにはなりますが、新たな物語の住人たちをどうぞよろしくお願いします。
今回は冒頭部分という事で短いお話ですが…よろしければお付き合い下さいませ。



 古本屋、まぁ簡単に言えば中古の本の販売を専門にやってる店舗の事だ。
他の店はどうだか知らないが、基本的には退屈なものさ。客なんて、そんなに来る事は無いしな。来るのは物珍しい本が無いか見に来る物好きくらいなもんだ。
しかし、たまに変な客……というか変な物が流れ着く事もある。といっても、今回は俺が拾ってきたんだが。
とりあえず店の本を片付けながら暇を潰すんだが……本は読んでいいと言ったが店の中を漂いながら読めと言った覚えは無いぞ。

「お前、ちょっとはじっとして読む事は出来んのか?」
「楽にして読めと言ったのは陽平、君だったと私は記憶しているが?」
「一応ここは古本屋なんだよ。客が来たらどうすんだ」
「私なら入口に立つ前に気付ける。心配は要らない」

 まったく、居候をしながら好きな事やってとは気楽なもんだな。
店の中を漂いながら、一冊の本を抜き出しては読んで、それを読み終わったらそれを仕舞って次のを読み出す。しかも特に働きもせずにそれを続けながら飯の時間になればしっかり飯まで寄越させる。厄介な拾い物だよ本当に。
腹ペコで行き倒れてたのを助けてやった恩を覚えてるのか分からん奴だ。まだ三日しか経ってないんだし、忘れてはいないだろうがな。
やれやれ、こんなのが最強のポケモンなんて言われた事もある種族だとは到底思えないよなぁ……。

「もういいから、せめて読んだ本はきちんと仕舞えよ、ミュウツー」
「君こそ、もう三日目にもなるんだからいい加減私の名を決めて欲しいものだよ、陽平」
「お前な、そもそもいつまでここに居るつもりなんだよ」
「ふむ、とりあえずは見える範囲の本を読み終えるまでだ。何処かへ行きたいと言うのも無い事だし」

 見える範囲って……本棚五つに壁、ワゴンにまでびっしり本があるんだぞ? 何年居るつもりなんだこいつは?
どっちにしろ、居着かれる原因を作った俺が悪かったと言われたらそこまでだ。こればっかりはどうしようもないんだよなぁ……。



 開店から二時間、未だ来店は無し。居るのは、念力で本と自分を浮かせながら、手も使わずに本を読み続けるミュウツーのみ。よく飽きもせずにずっと読んでられるものだな。
と思ったら目頭の辺りを揉みだした。そりゃあずっと読んでれば目も疲れるわな。

「むぅ……」
「お前なぁ……」
「これだけの本だ、読むのには時間が幾らあっても惜しい。私に追っ手が掛かってるのは間違いないしな」
「あれ、本当だったのか? 自分を創った研究所を壊して逃げ出してきたって」
「仕方ないだろ。陽平、お前は自分を廃棄するなんて言われて心中穏やかでいられるか?」
「まぁ……無理だわな」
「まったく理不尽なものだよ。性格に凶暴性が欠如しているから失敗作だ、等と言われるなんて」

 実際凶暴性は無いよな。基本的に飯と本にしか興味無いし。
しかし、生み出された理由とやらを聞けばまぁ納得出来なくもない。なんせ、戦闘能力だけを追求したポケモンをコントロールする為の研究とやらの成果らしいからな、こいつは。
実際、実物がここに居なければ到底信じられない話だよ。夢物語もいいとこだ、怪しい研究をしてる集団に研究所なんてな。

「でも、その話が本当ならお前を追いかける理由が無いんじゃないか?」
「建物まるまる一つを完全に倒壊させる存在に力が無いと言えるか? それまでは何もしなかったから廃棄なんて言われたが、研究成果を目の当たりにすれば欲しくなるのが人の性だと思うが?」
「ふーん、そんなもんなのか?」
「……君は、些か人間性に欠如があるように見えるな」
「うるせぇ欠陥ミュウツー」

 苦虫潰したような顔してそっぽ向いた。ふん、俺に口で勝とうなんて一年早いわ。
言いはしたが話をしてる感じ、こいつに欠陥なんてものがあるようには思えない。まぁ、ポケモンとして、喋れるっていう時点でどうかとは思うが。
前にここに持ち込まれたポケモン図鑑、それを興味本位で読んだ時に書かれていた内容を思い出すと……。

1、ミュウツーは実在するポケモン、ミュウの遺伝子から人が作り出したポケモンである。
2、研究の結果、ミュウツーはオリジナルであるミュウ以上の力を持ってしまった。
3、その遺伝子には自身で抑えられない破壊衝動を発露させてしまう危険性が内包されてしまった。

 まぁ、そんな事が書かれてたな。で、目の前のこいつには、その第3項が抜けてしまってるようだ。
聞いたこいつの研究が正しければ、本来の研究はその第3項を残したままのミュウツーをコントロールする研究だった、と。ま、結果は目の前のこいつらしいが。
強大な力を内包したまま、破壊衝動に駆られる事もなくそこに有り続ける……どう考えても、完璧に成功してるよなこいつ。まぁ、争い事を好んでしないって時点でその研究者達には失敗だったのかもしれんが。
とまぁつらつら思ってはみたが、俺にとってはそんなことどうでもいい事だ。しがない古本屋の店主には荷が勝ち過ぎる話でしかない。
そうそう、破壊衝動の代わりなのか、こいつに旺盛なのは知識欲。ようはこいつは極度の知りたがりって訳だ。本をガンガン読むのもその辺が原因なんだろう。
そんな奴に見渡す限り店内に本がぎっしりあるここを見せればどうなるか……こうなるわな。

「おーい、むくれるなって。目薬、要るか?」
「……要る」
「ほらよ」

 目薬を投げてやると、念で受け取ったのか空中で止まった。そのまま、上を向いたミュウツーの目の上まで運ばれる。
なんでこんなの持ってるかって? 俺も疲れ目がちで、すぐに目にくるから常備してるのです。因みに俺はメガネ族だ。
あぁ、目薬は昨日使い方を教えたらすぐに覚えた。学習能力はすこぶる高いらしい。

「うー、キター……」
「……あのな、目薬挿したらそれ言わなきゃならないのは嘘だからな」
「……無知な相手に嘘を吹き込むのは関心しないぞ」
「わ、悪かったよ。だからそんな恨めしそうな顔するなって」

 余計な事まで間違えたまま覚えるのがたまにキズだがな。それなりに面白い奴だよ。
さて、はっきり言って暇だし、奴に習って俺も本でも読むかな。主にポケモン関係の本にはなるが。機嫌を損ねさせない程度の知識は、こっちで先んじて知っておいた方がいいだろ。
何分、読む本には事欠かない。店に出してない本も合わせればどれだけがあるか分かったもんじゃない。……これ、何時になったら整理し終わるんだか……。

「! 陽平、客だぞ」
「ん? そうか」

 と言っても、客が来たって特にやる事は無い。本が幾らかはもう割り振って値札にしてるし、その通りに相手に売るだけだ。
ミュウツーも浮くのは止めるが、読むのを止めはしない。ま、誰も気にはしないだろ。
カランと入口に付いてる鈴が鳴り、本当に客が入ってきた。……見た感じ、掛けてある看板に惹かれてどんなもんか見に来たって感じかな。キョロキョロ店内を女性が見てる。

「いらっしゃいませ」

 おっ、声を掛けたら驚かれた。万引き防止の為にも、人が居るって事は理解しておいて貰わないと。

「あ、あの……あなたがご店主なんですか?」
「え? はい、そうですが……」

 おや、客から声を掛けられるのは珍しいな。大抵、店主なんて気にしないで買い物なり立ち読みをする客しか来ないだけにかなり珍しい。

「いえ、こういうお店って、お年を召した方が開いてる事が多いので気になっちゃって」
「まぁ、それは言えるかもしれませんね。私も祖父母からこの店を継げと言われた口でして」
「そうだったんですか。それで、その祖父母の方は?」
「どちらも、一年前に。祖父が先で、後を追うように祖母が」
「あ……ご、ごめんなさい」
「お気になさらずに。……もしや、祖父母のお知り合いでしたか?」
「い、いえ! 私、最近この辺りに来たばかりで、今日もこの辺りに何があるのか見て回ってるところなんです!」

 だろうな。爺ちゃん達の知り合いにしては若すぎる。そうか、引っ越してきたばかりねぇ……。
おっ、そう言えば最近買い取った物に良い物があったっけ。どれ……あ、あったあった。

「それならば、この辺りの地図はお持ちですか? そんなに迷う事は無いでしょうが、あれば便利ですよ」
「地図、ですか? あ、そういえばまだ……」
「でしたら、こちらを差し上げましょう。なに、引越し祝いとでも思って下さい」
「えっ、いいんですか!? でもこれ、売り物ですよね?」
「店主は私ですからね。気まぐれにこのような事をしても、怒るような相手はいませんよ」

 それに、それも結局誰かから買い取った物だし。別に気にする程高値で買い取った訳でもないしなぁ。
それでも感謝しながら受け取られるとなかなか嬉しいもんだ。地図なんかはあまり売れる試しが無いし、誰かが利用してくれるならその方がいいだろ。

「本当に助かります! よかったぁ、親切な人に知り合えて。本当は、知り合いの誰も居ない土地に来ちゃったから不安だったんですよ」
「それは大変ですね。大した事は出来ませんが、店がここにある以上私はここに居ますからね。暇な時にでも気兼ねなく来て下さい」
「ありがとうございます! ……ところで、気になってたんですけど……」

 女性の見る先には、奴が居るわな。まぁ、そりゃあ気になるか。

「あれですか? まぁなんと言うか……ここの居候、ってところでしょうか?」
「居候って、私が覚えてる限りであの姿のポケモンは……ミュウツーって言うのしか居ないんですけど……」
「よくお分かりですね、その通りですよ。三日前に店の前に行き倒れてたのを拾ったらここに居着いたんです」
「だから私の事を犬猫のように言うなと……あ」
「しゃ、喋った!?」

 何やってんだか……他に客が居ないのが幸いだ。

「……まぁ、こんなおかしな奴が居ますが、基本普通の古書店なので」
「は、はぁ……」
「おかしな奴とは失礼だな。この際開き直って話すが、そのおかしな奴を平然とした顔をしてここに置いている君も大概だと私は思うぞ、陽平」
「うるせぇよ。っていうか開き直るなし」
「あっははは……と、とりあえず危ない事は無いみたいですね……」
「あ、すいません騒がしくて。危険が無いのはまぁ見た通りです」

 今までは喋らないようにしてたから寄ってきてなかったミュウツーもカウンターの近くに来た。バレた以上、別に喋っちゃならないって事も無いしな。

「あの、陽平さんって言うんですか?」
「はい、沖宮 陽平と申します。こいつは……まぁ特に名前を決めてないのでミュウツーと」
「だから早く決めておけと言ったんだ。まともに紹介もされないじゃないか」
「お前なぁ……」
「あ、私は時雨 実里って言います。よろしくお願いします!」
「そんなに畏まらなくていいですよ。基本的に、万引き等以外はお客様には自由にしてもらってますから」
「だから私も自由に本を読んでいられると言う訳だな」
「お前はちょっとは働けし」

 そんな俺達のやり取りを見て、実里さんは笑っている。退屈させたりしないだけまだマシと思うのがいいか。
どうやら実里さんはもうしばらくここに居る事に決めたようだ。ま、こっちに知り合いも居ないと言ってたし、別にこんなところなら幾らでも居てくれて構わないけど。



「へぇ~、ミュウツーちゃんって物知りだね~」
「そうは言われても、大体の知識はここで読んだ本の物になるがな」

 実里さんとミュウツーはすっかり意気投合してしまっている。あ、ちゃんって呼ばれた通りミュウツーはどうやら牝らしい。確認? する訳ないだろ。

「でも、前に見たテレビで紹介されたミュウツーってもっと危険なポケモンだった筈だけど……」
「それは、私の元となったオリジナルのミュウツーだろう。私は、それの研究をしていた場所で見つかった細胞サンプルから創られたと聞いている」
「つまり、二匹目のミュウツーって事?」
「らしいな」

 おや、実里さんが何か考え出したな。どうかしたかな?

「実里さん、どうかされましたか?」
「え!? あ、いえ……そんな研究、違法には引っ掛からないのかなと思っちゃって」
「恐らく引っかかっていただろう。私の研究所も、人里離れた山麓の中にあった」
「そうなの? ふーん……」

 おぉ、凄い真剣な顔をしてる。何か思うところでもあるのか?

「あの、失礼で無ければお聞きしていいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「実里さんのご職業ってなんなんですか? どうも、ミュウツーの研究に興味がありそうですが」
「あ、えっと……こういう物を持ってる仕事なんです」

 そう言って見せられたのは……警察手帳じゃないか! つまり、実里さんは婦警って事か! そりゃあ違法性のある研究なんて聞いて顔が変わる訳だ。
これはまた驚かされたな……。あ、ならついでにこいつ引き取ってもらうか。そもそもミュウツーの奴は拾ったポケモンだし。

「陽平~? 私はまだまだここを出て行くつもりは無いからな?」
「ぬぉぉ!? ち、近い! 顔をいきなり近付けてくるな! って言うか考えを読むな!」
「え? え? 何があったんですか?」
「陽平の奴が、君に私を引き取ってもらおうなどと算段していたので釘を刺したのだよ」
「えぇ!? あの……赴任は明日からなんで今日はそういう事出来ないんです……」
「いえ、無理にとは言いません。……梃でもここから出て行く気もこいつに無さそうなんで」
「当然だ。これだけ本が揃っているところをみすみす出て行く理由が無い」

 そう言ったと思ったら、椅子に座ってる俺の上まで浮いてきて、首に腕を回した。なんだよ唐突に?

「それに、存外に私は君の事を気に入ってるぞ。面白い人間だしな」
「気に入られてメリットがあれば俺も喜ぶんだがな」
「……こうして第三者から見ると、とても三日前に出会ったとは思えないくらい仲が良いように思えるんですが……」
「陽平は研究者達以外で始めて接した人間だからな。私も好意が無いと言えば嘘になる」
「そりゃどうも……もういいから、大人しく本読んでろよ」
「なんだ、君はスキンシップは嫌いか?」
「ふふ、お二人の相性が良いのはよーく分かりました」

 いや、これはこいつが勝手に……やれやれだ。こいつも一向に離れようとしないし、今日は退屈しない日だな、まったく。
おや、実里さんが腕時計を確認してハッとした顔をした。店内に掛けてある時計を見ると……なんだ、もう昼か。

「いけない、ちょっと長居し過ぎちゃったみたい。そろそろ出なきゃ」
「そうですね。うちはこの通り滅多に客も来ませんし、暇潰しの際にでもまたご来店ください」
「ありがとうございます! じゃあ、お言葉に甘えて……また遊びに来ますね」
「いつでもどうぞ」

 ぱたぱたという音が出ていそうな走り方で実里さんは店から出て行った。楽しんでくれてたみたいだし、仕事は明日かららしいから大丈夫だろう。

「ふむ、実里と言ったか、あれもなかなか面白そうな人間だな」
「ま、良い人だったな。お前が喋ってもそんなにショック受けてる様子は無かったし」
「一応警戒はしたようだがな」
「そうなのか?」
「当然だと思うが? 警察ならば、ポケモンを行使しての取締もするであろうし、危険と称されているポケモンが居れば警戒するだろう。でなければ警察失格だ」
「なるほど、それも一理あるな」

 って言うか本当にいい加減離れろっての。何がしたいし。

「ところで陽平、そろそろ昼食じゃないか?」
「ん? そんなに腹減ってないんだが?」
「だが、三食きちんと食べるのは健康的な生活の基本であると本で読んだが」
「あまり動かないで食べても健康的では無いが」

 ちょっとだけ意地悪でもしてやろうかと思って現在実行中だ。どうせこいつは腹減ったから言ってるんだろうってのは分かってるし。
またポケモンの紹介の載った本を広げると、今度は目の前に降りてきた。何食わぬ顔をしてると、上目遣いでちょこっと涙目になったミュウツーがこっちを見てくる。

「……お腹空いた」
「……ふぅ、燃費の悪い奴だなまったく。そうならそうとさっさと言えばいいんだ。変に言い回しを変えて誘導しようとしたって無駄無駄」
「なっ、分かっててその気の無い振りをしたな! 君は酷い奴だ!」
「はっはっは、まぁそう怒るなよ。確か冷蔵庫の中に杏仁豆腐があったし、デザートにそれ付けてやるからさ」

 デザートと聞いて、そっぽを向いた奴の尻尾がピンッと真っ直ぐになった。分かり易い奴め。

「主菜は焼き魚だが、異論は無いだろ」
「……無い」
「そんじゃ、店の札を休憩中に……」

 立とうとしたら、ミュウツーがすっと店の扉の方に腕を伸ばす。……どうやら、念で店の前の標識を変えたらしい。
ついでに店の入口の鍵が閉まる音もした。便利なもんだな本当に。

「これで問題ないな。さっ、早く食事にしよう」
「お、おぅ……」

 こういう時は率先して動くんだから、普段からもうちょい動いてくれればなぁ……。
カウンターの奥にある二階へ上がる階段、これを上った先が現在の俺の家。一室しかないけど、人が三人くらいなら悠々と生活出来る。キッチンも風呂ももちろんあるし。

「って、勝手に店から本を持ってくるなっての」
「君が調理をしてる間の時間を有意義に過ごす為だ。それに、読み終われば戻すのだから問題無い」
「はぁ……いいか、絶対に食べながらは読むなよ」
「そんな礼を欠いた行動をする気は無い。心配無用だ」

 当事者がこう言ってるし、その辺は理解してるだろ。そんじゃ、米は朝炊いたのが十分に残ってるし、魚でも焼くか。
珍しく、美味そうだった金目鯛なんか買ってみたからちょっと豪華な昼食だ。下手な味付けしないで塩を振って焼くのが一番だろう。

「ところで陽平、本当にそろそろ私の名を決めてはくれないか?」
「そんなに気になるか? ミュウツーでもいいと思うがな?」
「私は……オリジナルとは違う存在だ。それに、あまりそう呼ばれるのも好んではいない。それに……」
「それに?」
「その、誰かから貰った名の方が……う、嬉しい」

 ふーん、そんなもんなのかね? ポケモンの事については疎いからよく分からないな。

「面倒だなぁ……あ、キンメとかどうだ?」
「それは今君が焼いている魚の名称だろう! もっとちゃんと考えてほしい!」
「まぁ、自分でも無いなーって思って言ったからな。うーん……」

 ふとミュウツーの方を向くと、読んでいる本の背表紙が見えた。ふむ……『月明かりの夜』か。

「なぁ、その今読んでる本ってどんな内容なんだ?」
「これか? 冒険小説、と言うのかな? 二人の少年が夏の夜に虫取りに出掛けて、月明かりの中を探索していると不思議な兎を見つける。それが月の兎だと名乗って、それを月に返す方法を探し始める……冒頭はそんな話だな」
「ほーん、そんな本あったのか……」

 まぁ内容は置いといて、題名を捩ればそのまま名前に出来そうだな。
そうだな……月明かりの夜、月の出る夜、月の夜……俺が思いつくものの中ではマシな方かな。

「お前の名前さ、月の夜って書いて『つくよ』でどうだ?」
「……それ、この本の題名から取ったのか?」
「当たり。でもさ、俺が陽平だろ? で、お前が月夜、陽と月なんてのも風流じゃないか?」
「ふむ……まぁ、悪くはない、かな」

 決まりだな。尻尾も自覚して振ってるのかは知らんが揺れてるし、悪くはないとは言いながらなかなか気に入ってるみたいじゃないか。
魚も良い感じに焼けたし、名をせがまれる事もこれで無くなった。ゆっくり出来そうだ。

「では、これから私は沖宮 月夜だな」
「なんで苗字まで名乗る必要があるんだよ……」
「この家に世話になるのだから当たり前だと思うが?」
「……はぁ……もう好きにしてくれ」
「ふふ、用心棒としてこれ以上ない逸材だと思うぞ」
「何処に用心棒の必要な古本屋なんてあるんだよ。いいから食べるぞ」
「うむ、頂こう!」

 そんな感じで、この居候はまだまだここに居座るつもりらしい。困ったもんだよ。
今のところは大した被害も無いからいいが、これからどうなるかなぁ……あぁ、非常に心配だ……。


後書き~
という訳で、今回の主人公は眼鏡の古本屋店主『沖宮 陽平』(21才)と一応相棒でミュウツー『沖宮 月夜』(??才)でお送りいたします! …とは言っても、プロット等もぼんやりとしか出来ていないのでまだまだこれからな作品です。そんな私ですが…これからもお付き合い頂ければ幸い。よろしくお願いします!

次話出来ました!こちら

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • まずは、誤字だと思われる物の報告を
    冒頭の、客はそんなに来ない、という所が、そんなにの後にもう一つそんながついていました
    月夜はミュウツーの印象のクールという所は残しながらも、陽平に対してのデレみたいな所があり好感がもてました。
    陽平は零次の感じに似ているんですが、この次の話で違いがでてくるんだろうなと思ってます。
    今はインフルエンザが流行っていますから体調に気をつけて執筆頑張ってください!
    応援してます!
    ――ポロ 2013-01-31 (木) 19:32:43
  • やだ、なにこのミュウツー可愛い……(
    月夜に萌えてしまった。なんというデレデレっぷりか。
    どういう展開になっていくのか楽しみです。月夜マジヒロイン(
    ―― 2013-01-31 (木) 20:12:36
  • >>ポロさん
    はい、見事に二重書きしておりました。ご報告、ありがとうございます。ナンテコッタイ
    月夜はミュウツーらしさを残しつつ違うものだというところを与えたかったので、そう受け取ってもらえるとありがたいです。
    陽平の感じは、確かに今のところは似てますね。ただ、零次よりも年は上なので、その辺りを出していければな~という状態ですね。…零次の精神年齢が若干高めなのも問題だったりするのですがw
    インフルエンザ、確かに流行ってますね。気を付けねば…応援、ありがとうございます!

    >>01-31の名無しさん
    ミュウツーのイメージとしてどうかなーとは思ったんですが、まぁ私の小説のポケモン達は大体イメージブレイカーですからねw
    月夜は、まぁ確かにメインヒロインであり陽平の相棒ですからね。これからもお楽しみ頂けるものを書けるよう、頑張りますよー!
    ――双牙連刃 2013-01-31 (木) 21:22:58
  • イメージブレイカーですか…月夜以外は、そんな感じはしないんですが…。
    ―― 2013-03-29 (金) 22:32:29
お名前:

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Last-modified: 2013-01-31 (木) 00:00:00
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